こんにゃく閻魔
だいぶ昔の話。
とある大手シャッター会社への提案に向け、提案資料を作成した。
カラーで印刷し、提案当日、会議室で先方の方にそれぞれ配布した。
「それではご説明いたします」と言い終わると、
「いや、申し訳ないですがお引き取りください」と、言葉は丁寧だが、断固たる口調で告げられた。
まだなんの説明をしていないにもかかわらずである。
「紛らわしいのは事実ですが、私どもの社名を間違えて記載する御社からのご提案はお受けできませんので」
瞬間、パワーポイントの表紙に目を落とし、「◯◯シャッター株式会社御中」と記載されているのに気付いた時には、もう釈明の余地がなかった。
不戦敗で肩を落とすメンバーと一緒に、道すがら出会った「こんにゃくえんま」と呼ばれる源覚寺に立ち寄った。
「ここなら、こんにゃくだからよかったのになぁ」とグチを言いながら、お祓いがてらこうべを垂れた。
お祓いも済み、寺を出たところに、「こんにゃくえんま」と書かれた石柱があった。ところがよく見ると、「こんにやくえんま」と書かれている。
「ゃ」ではなく「や」なのだ。
社名を間違えたバチが当たったかのように、メンバー皆呆然とした。
今となれば、企業名が大文字の「や」でなければならない企業があることなど、基本中の基本ではあるが、当時はそんな苦労もした。
晴天の今日、撮影のため、小石川植物園に行った。
丸の内線・後楽園駅で降り、歩いて行った。
その途中、その「こんにゃくえんま」を見つけた。
そんな苦い思い出もあったなぁ、と「こんにやくえんま」の石柱を見ながら、えんま通り商店街を抜け歩いた。