![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/161228001/rectangle_large_type_2_1e645230e5776cb402243e8eb49db09e.png?width=1200)
The better landing
移動性の高気圧が東京を覆い、秋空から強めの直射日光が降り注ぐ朝のバス停。
休日の倉庫街。
バス停は、何もない広い歩道に存在感際立たせ、丸い顔をしてポツンと立っていた。
片側6車線、計12車線の広い幹線道路には、走る車は少なく、まして歩く人もいない。窓のない巨大な倉庫がひしめき建ち並ぶ向こうに、海につながる橋が、青空に映えて白く小さく見えた。時が止まったかのような静けさ。
バスが来るまでのあと5分の時間が、普段の忙しさに浸かっている私には、とてつもなく長く感じた。
バスの姿が、広い道路の向こう側から揺らめきながら遠くに見えてきた。私の乗るバスだ。1時間に1本しか来ないバス。このバスを逃すと、1時間待たなければならない。電車の時間よりも、バスの時間をよく確認してここまで来た。
バスが停留所に止まり、自動ドアが開く。ステップに足をかけ、料金を支払い、車内を見渡す。車内には誰も乗っていない。乗客は私一人だけだった。全席空席だと、むしろ座る場所を選ぶのに困惑する。とは言え、出口に近い一人用の座席に座った。
次のバス停。誰もいない。通過。
さらに次のバス停。誰もいない。通過。
バスは私一人を乗せて、小刻みにバス停を通過しながら、目的地に向かい淡々と進んで行く。
そして次のバス停。予定にないバス停を通過した。
違和感を抱いた私は、車内に掲げてある路線図を見た。今しがた通過したバス停の名前を見つける。目的のルートから外れたバス停だ。どうやら間違ったバスに乗ってしまったらしい。
仕方がない・・・。
引き返すのも面倒だ。
このまま乗って、適当な所で降りよう。
特に慌てることもなく、そう思いながら、バスが淡々と走るように私も淡々と乗り続け、窓の景色を眺めていた。
しばらくすると、「公園」が名付くバス停が車内放送で流れた。どんな所かも分からないまま『とまります』ボタンを押し、バスが止まると、私はとりあえず降り立った。
海沿いのその公園は、縦に細長く、海に沿って遊歩道があるだけだった。時折点在するベンチに座り、対岸の島からひっきりなしに離陸する飛行機を眺めていた。
離陸の合間に訪れる静寂の間、やや強い潮風の、木々を雑草を揺らす吹き抜けていく音が耳に心地よかった。
何も予定通りでなくてもよい。
思いがけない良い結果であれば、それはそれで一つの着地点として、着陸するのもまた良いものだ。
また一機、ジェット音を轟かせながら頭の上を通り過ぎた。
首を90度後ろに曲げ、白い機体を見送った。
見上げた空は眩しかった。
![](https://assets.st-note.com/img/1731126651-Sxok4d1YOu9PBJyH5CMfVhLU.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1731126086-U7Plmtx0RWgSyzB3dFqrCae9.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1731141338-c93IXDT7G0ueNKdLhlqavpCx.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1731126196-p5JeLny1qmU7tCsBMYFZHzuA.jpg?width=1200)