Valheimという物語
ゲームレビューを書くといいつつ、レビューするヒマがないくらいゲームしまくりのひげよしです。今はSteamで「圧倒的に好評」と評判のValheimというサバイバルクラフトゲームにドハマり中なんですが、どんなゲームかは概要のレビューがいっぱいあると思うのでそちらをご覧ください。こちらでは「なんでこんなにドハマりしたか」を書き連ねて行こうと思う。
物語がある。探検がある。発見がある。そして失敗がある。
マインクラフトに始まり、TerrariaやARKなどなど、いま大人気のジャンルであるサバイバルクラフトゲーム。Valheimもそのジャンルに分類されるゲームではあるが、後発だけあって他のゲームをよく研究しているのがわかる。
そこには物語があり、探検があり、発見がある。そして失敗も…。
物語がある。
Valheimをスタートすると、プレイヤーは巨大カラスにぶら下げられ「さあ生き残れ、敵を倒せ」と大自然に放り出される。システム側が提示してくる物語はこれだけ。サバイバルクラフトゲームではよくあるパターンだ。
しかし、そこからプレイヤーの物語が始まる。
右も左もわからない土地で、明示されたのは最初のボスの居場所のみ。ふらふらと森に分け入り、妙な敵やイノシシに追い回されながら、斧を作り、食料を確保。さ迷い歩くうちに、海辺に開けた草原を見つける。
「ここは住むのに良さそうだ」
慣れない手つきで小屋を建て、たき火を設置し、拙いながらもどうにか生活の基盤を確保したあたりでふと気がつく。
「さて、どうやってボスを倒そうか」
ボスというからには強いはずで、石と木で作った斧一つではきっと戦うのもままならない。まずはこの掘っ建て小屋を作り直して、それから食料や防具の調達…。
クエストがあるわけでも、NPCが色々語るわけでもないが、ボスを倒すという目標設定があるおかげで、プレイヤーの行動・思考・準備その全てが、ひとりひとり違った唯一の物語になっている。
探検がある。
Valheimには多彩な景色がある。最初に降り立つ「草原」、ドワーフやトロルが徘徊する「黒い森」、ドラウグルやスライムが跋扈する「沼」、凍てつく空気さえも敵になる「雪山」などなど…。
マップはプレイヤーが訪れた場所が開けていく方式。そのため世界の全容は行ってみないとわからない。
黒い森はどれくらい深いのだろうか、敵はどれくらいいるのだろうか、斧を準備し、盾を背中に背負い、生き残れるだけの食料を持って森に入る。思ったより敵が多い。なんとか捌いて、敵を蹴散らしたあと、地面が揺れる。遠くの木々の間に青い巨大な姿が見える!トロルだ!!
レア素材を掘りにバイオームに行くのではない。まぎれもなくそれは探検だ。
この探検がとんでもなく楽しい。レア素材が手に入らなかったとしても、そして探検した場所が思ったより小さかったとしても、地図が開け、ここがどんな土地なのかわかっていく過程がめちゃくちゃに楽しい。
発見がある。
Valheimのマップは自動生成なのだが、その景色は自然でとても美しい。
探検していく先々でつい足を止めて景色に見入ってしまうし、お気に入りの場所が見つかったらそこに住むのもいい。探検していると、そういう発見がある。
そして、草原以外のいくつかの場所にはダンジョンが存在している。
暗いダンジョンに入り込み、たいまつの光を頼りに奥に進んでいく。敵を蹴散らし、お宝を手に入れる。そして手にした宝を素材にして、新しく作れるものが増える。何が作れるんだろう。おお、溶鉱炉だ。これで青銅が作れるぞ。おっとポータルだ。これで拠点間の移動が楽になるな。
いままで手にした事がない素材を手に入れる事で、クラフト出来るものが一気に増えていく。その発見の瞬間が気持ちいい。
そして失敗がある。
もちろん成功ばかりじゃない。物語に失敗はつきものだ。
黒い森に、鉱石精練のためのログハウスを建てた。目の前には湖があり、近くには銅やスズなどのレア素材も豊富だ。立地も悪くないし、家も自慢できるくらい良い出来栄えだ。
でも失敗した。この土地は襲撃が多すぎる。
ポータルで移動すると、窓の外でトロルが暴れている。壁は壊され、屋根は吹き飛ばされ、トロルを倒そうにも灰色ドワーフがうじゃうじゃやってきて、とても鉱石精練なんかしているヒマはない。
哀れ、素敵なログハウスは破棄され、更地へと姿を変えた。
これは船旅で見つけた沼島を探検するために、海岸沿いに建てた拠点。襲撃は多いものの、幾多の戦いをくぐり抜けてきた戦士にとって、敵の対策は慣れたもの。壁を張り巡らせ、いくつか祠を建て、敵を抑制し、ノルド風のロングハウスも完成した。沼は強敵も多いが、レア素材が手に入る。これだけ強固な砦があれば探索も容易だ。
でも失敗した。
沼があるのは海岸沿いだけで島はとても小さく、レア素材が取れる沼のダンジョンはひとつも無かった…。そして島が小さいということは、他の素材も数が少なく…。
哀れ、数日かけて作った砦は、あえなく廃棄されたのだ。
しかし、失敗も悪い事ばかりではない。
このゲームは建築した資材を破壊すると、素材が全て戻ってくる。のである。
いくらでも失敗できる。試行錯誤ができる。これが嬉しい。失敗を積み重ね、次にもっとイイものを作ればいい。
気楽に失敗が出来るのだ。
絶妙なレベルデザイン。
Valheimは今や一大ジャンルとなったサバイバルクラフト系ゲームだ。
サバイバルクラフトゲームというと、場所だけ用意され「さあ生き残れ」というパターンも多いが、Valheimは「ボスを倒していく」という明確な目的があるため、むしろRPG色が強く出ている。そしてそれはValheimの最大の強みだ。
Valheimはこの「明示された目標」と「目標達成時の報酬」のバランスがたいへん良い。そりゃあ「圧倒的に好評」になろうというものだ。
草原のボスを倒すという大目標の前に、「斧を作る」「食料を食べる」「家を造る」という小目標があるのだが、プレイヤーは最初のヒントを元に自然とチュートリアルをこなし、その小目標を達成していく。ひとつ達成するたびに次のヒントが提示され、新しいクラフトアイテムが開放され、その積み重ねの先にボスの攻略がある。そして草原のボスを倒すと、次は黒い森のボスだ。
いままで入手できなかった素材が手に入り、クラフトアイテムが開放され、武器や防具も強化される。畑で作物を栽培できるようになり、蜂蜜酒や料理を愉しむ事ができる。
ボスはプレイヤーの好きなタイミングで挑んでもいいし、攻略方法もプレイヤーに委ねられている。クラフトゲームの強みを活かし、ボス戦の場所を戦闘に優位なように作り替える事もできる。
そしていくらでも失敗できるゲームデザイン。前述のように建材は破壊すると全て戻ってくるし、死亡したとしても自分が所持していたアイテムや素材はその場所に墓となって残り続ける。回収できずに死んだとしても、墓は残っているのでよっぽどの事がない限りロストすることは無い。(ただし大海原の真ん中で死んだり、世界の端に行ったりしてしまったら…)
いくらでも試行錯誤ができる、挑戦できる。
こんなに楽しいことはない。
建築物ばかりが話題に上るゲームだが、真価はプレイした中で得る体験にある。
これが「早期アクセス」のゲームだなんて信じられないくらいに、やる事が尽きないゲームだ。発売から1年ほどを早期アクセス期間として設け、精力的にアップデートを計画しているようで、楽しみは尽きない。
今飛び込んだとしても、充分楽しめる。
さあ、Valheimの世界へようこそ。