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パンプキングス/MASTER PLAN
おすすメタル! と声を大にして言うにはめちゃくちゃ微妙な1枚なのだけれど、世間で小馬鹿にされているほどには私は嫌いじゃなかったりします。純正HELLOWEENファン的にはやっぱりローランド・グラポウは黒歴史で、バンドを破壊した悪いやつで、ウリカッシュも道連れにした大悪党みたいな位置付けなのだろうけれど、私個人の好みからすると少し見方が違っていて、ローランド・グラポウのやりたい音楽、見せたい方向性はそれほど嫌いではない。その一方で生粋のアンチ・キスクなのでカメレオンの戦犯は私からすればキスク。そして、私はウリカッシュの作る曲やドラミングのセンスははっきり言って好みではなくて、少しうるさく感じる。だからグラポウのみをただ「人気バンドに入ったのに小馬鹿にされてどんまいっっっw」みたいな扱いにはそこまで同意できなくて、割とマスプラの中にも好きな曲はあったりするのです。まあ、いかに私がHELLOWEENファンの裏街道かって感じですよね。今となってはファンですらないし。結局私はHELLOWEEN的な壮大系の純なメタルよりももう1段階、2段階ひねくれている方が好みなんですよね。だからね、それこそHELLOWEENファンからすれば「ありえない」なんだろうけどDARK RIDEの表題曲なんかめちゃくちゃ好きなんですよ。あのガラクタ箱ひっくり返したみたいなまとまりのない展開とか本当、好きなんですよね。
さて、今回紹介するのはそんなグラポウが作ったHELLOWEENカヴァーアルバムで要するに自身が作曲したHELLOWEEN楽曲のセルフカヴァーですね。かなり辛辣なレビューがつく同作も、上に挙げたのと同じような理由で私は嫌いじゃなかったり。なんだかんだでリリースされたのが確か2017年あたりなんだけれど、今日に至るまで不定期に聴いていたりします。サウンド自体は面白みのないドスーンとした重低音を効かせた感じで煌びやかさは皆無。でもやっている曲はHELLOWEEN的な、腹の底からはダークサイドになりきれないテイストの純メタル曲なので今ひとつ噛み合ってはいないんですが、逆にそのアンバランスさがね、当時グラポウがこのアルバムに収録されている、彼の代表的なHELLOWEENでの楽曲でやりたかったスタイルやサウンドってこういう雰囲気なんだろうなというのが見えて興味深い。そりゃこの路線でHELLOWEENすればマイケル・ヴァイカートに追放されるよ。
このアルバムの少し惜しい点はヴォーカルで、これ、もうちょっと上手い人連れて来れなかったのでしょうかね。バンドにワンマン君臨するならやっぱり周りは若手でもなんでもいいから実力のあるのを引っ張ってこないとダメですね。ただその分差し引いても、私はこのアルバムは好きだしもっとみんなに聴いてほしいと思うのです。なかなか、わかってもらうのが(特にHELLOWEEN好きの人には)難しいのだけれど。
今回はそんなアルバムをご紹介。サブスクで聴いた方が良い1枚かもしれませんが、個人的には手元にコレクションしておきたい1作、マスタープランのパンプキングスをご紹介いたしました。