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 朝が来て、昼が過ぎ、夜が巡る。花を散らせた夏の嵐もやがてつめたい凩に変わる。花も紅葉も朱を錆びさせてしまうものだから、私の足跡はいつでも冬の獣道の上。鋼鉄の爪先で雪を蹴れば悪魔の跫音がするの、私とお前がとても近しいけだものだから。
 いのちを形づくる水の名と色は、お前だってよく知っているでしょう。『 』に縛られ、『 』を渇望し、最期は『 』の上で果てるわ私達。だから走るなら雪の上がいいの、白くて冷たくてとても厳しい、そんな雪が、いいわ。
 雪は生命のくれないを隠さず、お前の暗く澱んだ心臓を、なにより鮮やかに暴いてくれるでしょう。錦に彩を灯された私の掌はなにより艶めいて、甘い呪いにかじかんだ指先をようやくこじ開けてくれることでしょう。お前の罪も、私の業も、忌まわしくいとおしい赤を喪い、無色透明な水に生まれ変わる。でもそのとき私達、一体どこに残っているのかしらね。
 あまねく白に閉ざされて獣道はもう見えない。進むばかりで戻るすべはない。お前も覚悟し振り返らずに、吹雪の中を来たのでしょう。優しい春の風が冬をさらいにくる前に、雪は逃げるようにとけて、居なくなってしまうのに。
 朝が来て、昼が過ぎ、夜が巡る。私の足跡はゆるやかな速度で春に埋もれていく。
 愛しているわ。なにより憎くて可哀想な、私の亡骸。温いいのちは雪上にしか冴えぬ花。明けない冬の只中で私達、共に滅びにきたの。

(2014/10/31)

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