降り止まない雨
わたしは雨である。
雨というものは表現手法においてまったく便利な代物で、いついかなる時も適当に降らせておけばよいのである、と思われている。
悲しみや希望やエモみを付与するために塩胡椒感覚で振られるこちらの身にもなってほしいものだ、と食品界隈にぼやいたら「それはどっちかというと僕みたいな感じだよ。なにと合わせてもなんとなく合ってしまうんだ」と卵に言われたし(卵のやつは食べられる側のくせに妙なドヤ顔を浮かべていた)、デジタル画材界隈からは「わかる、戦場塵ブラシみたいなものだよね」と言われてしまった。戦場塵ブラシ?
戦場の塵とは、雨が降るような感覚で降っていいものなのだろうか。わたしには到底理解が及ばない話題だった。
こうしている間にもまた連続ドラマの演出としてお呼びがかかっている。
わたしは誰よりも多忙な俳優のはずなのだが、知名度はまったくの無であるし、スタッフロールにクレジットされたこともない。永遠の友情出演・雨。ただし誰とも友人になった覚えはない。
一度でいい、わたしも米津玄師やYOASOBIや福山雅治になんか良い感じのエンディングテーマを歌われてみたい。だが、いや待て。一番わたしを酷使しているのは作詞家と小説家ではないだろうか?
今日も何かが行われているのだろう。
雨の酷使が止まらない。
仕方がないので回数券を採用することにした。今後奴らが「雨」というフレーズを使用するたびに百円を徴収してやろう。十回使えば一回おまけがついてくるのだ、お得だろう。
雨の降らせ放題は本日をもちましてサービス終了させていただくことにする。 君たちも雨のサブスクリプションに加入しないか?
ご支援は資料や消耗品の購入、機材の新調等にあてさせていただきます。