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蜩ひかり
2021年3月26日 22:15
鵜飼くんはとてもきれいだ。 いつも窓際の席に座って、空っぽの眼で、どこでもないどこかを眺めている。かれの机はいつしか空っぽになり、いまはそのうえに花瓶がぽつんと乗っていた。鵜飼くんは鳥になった。なんでもない晴れた日に突然席を立って、わたしたちには見えないどこかへ飛んでいってしまった。 鵜飼くんが死んで何ヶ月か経って、進路を決めたりするのに忙しくなって、あの日のかれが校庭に刻みつけた鮮烈な