ドラムのモニター環境構築 番外編「要領が良い/悪い」
前回までインピーダンスの話をゴチャゴチャと書いてきました。
何回にも分けて、分量もかなりのものになってきましたが、実はエッセンスだけならあれほどの分量はまるで不要です。
ただ、モノを覚えるときというのは「覚えなくてはいけない最低限の量」だけをミッチリやるよりは、その最低限の量より多い分量を一緒にやっちゃった方が実は効率がいいんですね。
それは人間ってのは100%が苦手な生き物だからです。必ず覚え違えをするし、必ず忘れていきます。だから10覚えなきゃいけないときは多めに50くらい覚えるようにしておくと多少忘れても大事なところは覚えてられます。
ただ、ここで大事なのは全く関係ない事柄でカサ増しして30覚えるんじゃ意味がないってトコです。それだと大事なところと余計なところの区別なく全部を等しく忘れていくんで、スケールの違いだけになってしまいます。スケールではなく構造を変えていくのが大事だということです。
世の中には大別すれば、
A. まったく脈絡のない単純知識(電話番号など)
B. 多くの事象・経験・法則などから導き出された結論としての知識(科学的知識など)
の2種類があると思います。
特にBのような場合において、なぜその結論が得られたのか?という背景までを一緒にさらうことが重要です。なぜなら背景・理論を学ぶことで、記憶の個々のパーツ同士が階層構造とネットワーク構造を持つようになるからです。
たとえば「貧血の人はほうじ茶を飲むといい」という知識があったとしましょう。
これを覚えるときには、
・貧血とは血が薄い状態で、鉄分不足で起こりやすい
・血の濃さはヘモグロビンの多寡で決まる
・ヘモグロビンには鉄原子が含まれている
・他のお茶と違ってほうじ茶にはタンニンの含有量が少ない
・タンニンとはカテキンなどのポリフェノールの総称である
・タンニンは鉄分と結合しやすいので鉄分の吸収が阻害される
・ほうじ茶はその名の通り番茶を焙じたもの
・番茶とは8月以降に摘まれる茶のこと
などの知識も合わせて入れておくと、どこかの知識が欠落しても、ほかの知識をもとに欠落した部分を導き出すことが出来るはずです。
このように、元になる知識の要素を掘り下げていくように他の知識を用意しておけば、
・それは何なのか
・それは何故なのか
という理解を伴った知識が拡充されていき、論理性が養われます。
とくに、「鉄分の吸収阻害要因にはタンニンだけでなくカフェインもある」というような知識があとから入ってきた場合に、これまでの知識のみでは理論が片手落ちだということに気付いたりして、論理の穴をフィードフォワードで塞いでいけるような「悟性」が発達していくわけです。
この悟性の磨かれた状態がいわゆる「要領が良い」というやつですね。
世の中の人を観察していると、要領が悪いと自嘲・落胆する人のほとんどは、要領の良さを養うような習慣付けが出来ていないと思います。
楽器の練習をしなければ楽器はうまくならないように、要領をよくする練習をしていなければ要領などよくなりようがないのです。
「なぜこうなるのか?」
「法則性はあるか?」
「本質はなんだ?」
「類似例はないか?」
「応用可能か?」
こうしたことを常日頃から意識しているのとしていないのでは生きる質が変わります。
ただ情報をうわべだけ垂れ流しにインプットしていても成長はしません。
それは効率の悪い練習をひたすら続ける人と同じです。
練習すらしない人もいます。それが情報を入れることすらしていない状態です。
知識や経験のインプット/アウトプットをひたすらに繰り返しフィードバックをしっかりとやっていく。そしてそのフィードバックが積み重なりフィードフォワードができる人間になるのです。
似たようなことを前々回も書きましたが、こうしたことを意識して生きていくことは楽器に限らず人生の質を向上させるものであると思うので書きました。
さらに言えばこのブログにインピーダンスやもろもろの知識を書き綴るのは私自身のアウトプットの練習なんですね。
主述の不一致や誤字脱字をせず、論理性を保った文章を短時間で書き下ろすのは、多くの場面で役に立つ能力だと思います。
何もかも楽器と同じです。練習あるのみ。Practice makes Perfectとはよく言ったものです。
今日のところはこの辺にしておきましょう。冗長な文章を今後も投稿する言い訳ができたので本来の目的が達成できました。おしまい。