#ロンドンのウソつき 「キッカケ」 No.15
小説 #ロンドンのウソつき 「キッカケ」 無料連載中です。
最初から読んで頂ける方はマガジンにまとめていますのでNo.1からどうぞ。
#ロンドンのウソつき 「キッカケ」 No.15
信じられなかった。
もう4月だというのに、テレビのニュースに映るロンドンは真冬のように雪が降っていた。
珍しい気象だということで、テレビをつけた時から繰り返しロンドンの街の様子などが映っていた。
朝の6時、1人リビングでテレビを見ながら朝ごはんを食べている。
今日は1年間のイギリス留学へ旅立つ日。
今日は自分にとって緊張の日。
それでも周りには日常が流れていて、母親は早朝からパートの仕事へ。父親はいつも通りまだ寝ていた。
「ロンドンが雪って、、、マジかよ。。」
僕は今日飛行機に乗って、もう16〜7時間後にはロンドンへ着く予定だ。
遠くの街の寒そうな様子をテレビで見て不安になった。
大丈夫だろうか。。。
僕が準備したのはとりあえずバックパック1つの荷物だけ。
今日、関西国際空港からロンドンのヒースロー空港へ向かう。
朝の7時に自宅を出て、最寄り駅に行けば間に合う計算だ。
僕はさっさと朝ごはんのパンとコーヒーを食べ終わり、歯磨きと着替えを済ました。
フと携帯電話を見ると友達の秋山からメールが来ていた。
“ お前の家の前におるよ! “
そう一言だけ書かれたメールを見て、急いで外に出た。
中学の同級生になってからずっと友達の秋山が見送りに来てくれていた。
「本当に来てくれたんだ!」
僕は驚きながら、それでも嬉しくて声を出した。
実は二日前に秋山の家で会った時に、冗談で見送りに来てくれると言ってくれていた。
「ちゃんと起きれたからさ。」
秋山が笑顔でそう答えた。
乗って来た自転車に跨ったまま、ハンドルに頬杖をつきながらこっちを見ている。
「ありがとう!まさか来てくれてるとは思ってなかったよ。」
僕はとても嬉しい気持ちになって、「持つべきモノは友」だなと当たり前のような解釈を自分の心の中で行なった。
同時に大学の春休み中なのに早起きさせてしまって申し訳ない気持ちにもなった。
秋山には少し待ってもらって、予め準備していたバックパックを玄関に持ってきた。
バックパッカー用の大きなバッグであり、ある程度の必需品はこの中に入っている。
「荷物はそれだけ?!」
秋山が驚いたように聞いて来た。
「うん、飛行機に乗せることができる重量の制限もあるし。それに必要なものがあればロンドンで買えばいいし。」
僕はヒョイとバックパックを背負って、自宅の鍵を閉めた。
これからイギリスに行くというのに、出発の朝は両親に会うことがなかった。
でも、それが僕の家族っぽいところ。みんな独立して行動し、お互いを干渉しない。でも仲が悪いわけでもない。そんな距離感だ。
駅までは歩いて15分程度。
秋山は自転車を押しながら僕と一緒に歩いてくれた。
「さっきテレビでニュースを見たら、ロンドンに雪が降ってたよ。」
「えっ!4月なのに?何それ!」
秋山もロンドンの異常な気候に驚いていた。
駅まで歩いている時間は、朝が早いこともあり静かで全体的に景色が白く感じた。
チチチチと秋山が押している自転車のタイヤの音だけが聞こえている。
駅で切符を買って、改札にきたところで秋山とはお別れとなった。
「がんばれよー。」
「ありがとう!」
そんな会話だけして、明日また会うかのようにあっさりと別れた。
僕が乗る電車は5分後くらいに来る。
僕は比較的空いていそうな後方車両に乗るためにプラットホームの奥へ奥へと歩いた。
自宅を出発して自分のこれからのイギリス留学が始まった実感はなかったけれど、何だか引き返せないプレッシャーはズッシリと感じていた。
「関空までの乗り換え方法、確認しておこうかな。」
冷静になり、自分の乗り換え駅など手順をプリントアウトした紙を後ろポケットから取り出した。
続く
・
・
・
最後までお読み頂きありがとうございます。
「スキ」や「コメント」など頂けますと執筆の励みになります。
フォローをして頂けますと、更新時に見逃さずに読んで頂けます。ぜひフォローをよろしくお願いいたします。
またツイッターのフォローもよろしくお願いします。
この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。