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【MTB】脱法トレイルビルダーの流儀【Podcast和訳】

今回和訳するのは、言わずと知れたトレイル天国、カナダはBC州スコーミッシュの脱法トレイルビルダー”Jimmy”を迎えたPinkbike Podcast。

以前和訳したウィスラー創世記がパークビルダー、完全『ホワイト』な世界のお話だとしたら、今回のはそれと対をなす『グレー〜ブラック』な世界のお話。"Jimmy"さんはボイスチェンジャー通しての出演です。


※※※本記事は『グレートレイル』の造成を推奨するものではありません※※※


アメリカ人気小説/ドラマのタイトルになぞらえ『50 Shades of Grey』と表現されたりもする「グレートレイル」。グレー=脱法とは一言にいってもさまざまな階層と状態があり、人や立場によっても受け止め方が全くちがい、国やエリアによっても扱いがさまざま。だからこそ議論を呼びがちなこの話題。完全排除のエリアもあれば、黙認、融和路線、それぞれに良い付き合い方を模索し続けているというのが各地の現状ではないでしょうか。

そんな中、パブリックでホワイトなトレイルが段違いに多いことで知られるカナダBC州。お役所仕事が遅いのは日本に限ったことではないのに、なぜこんなに多いのか?もしかしたらその一端を担っているのはグレーな世界かもしれません。

このインタビューでは、そんな界隈で長年活動してきた"Jimmy"さんのトレイルビルディングの流儀を知ることができます。綿密な計画、相応の責任、精神的奉仕、知識やノウハウ、何よりも半端ない熱意と共に完成させてきたトレイル群は、本人も『芸術作品』と称するほどの完成度。パークビルディングとは異なるベース思想、実践的ノウハウ、行政との関わりなどを語りつつ、スコーミッシュのMTBカルチャーのリアルを切り取ってくれています。

また、”Jimmy”さんがかつてクライミングのルート開拓もしていたというのがこのエピソードのもう一つ面白いところ。クライミングは地形改変こそしないものの、マイナースポーツであることや、カウンターカルチャー的バックグラウンド、それによるグレー感やBANされる時の経緯などが、MTBと似ていたりします。特に”Jimmy”さんの中では「そこにもっとも相応しく美しいラインを引く」という美学めいたところが通底しているように感じられました。(ちなみにスコーミッシュは世界でも指折りのクライミング天国でもあります)

普段、表には現れないけど、実利的・文化的に広く深く根をめぐらせている『グレートレイル』の世界。一例として"Jimmy"さんの付き合い方を垣間見ることで、身近にあるトレイルシーンや各自のトレイルとの関わり方を俯瞰する材料にしていただければと思います。


※以下内容はThe Pinkbike Podcastによるものであり、執筆者(はゆ)はいかなる権利も保有しません。

提供元: The Pinkbike Podcast: Episode 144 - Interview with an Illegal Trail Builder、2022年9月17日

https://www.pinkbike.com/news/pinkbike-podcast-episode-144-interview-with-an-illegal-trail-builder.html





みなさん、こんにちは!またPinkbikeポッドキャストにようこそ。ホストのマイク・レヴィです。今日はまた別のインタビューをお届けします。今回は、数十年にわたって太平洋岸北西部でシングルトラックを作り続けている多作なトレイルビルダーにお話を伺います。

彼は、クールなダウンヒルコースや流れるようなブルートレイル、登りのトレイルなど、さまざまなトレイルを作ってきました。今日は、どの地形が適しているかや、どこにラインを引くべきか、メンテナンスと浸食のバランスを取りつつ自然なトレイルを維持する方法、雨や泥の中でのライディング、彼が使っているツールやテクニック、そしてもちろん、トレイルビルディングの政治的な側面についても話していきます。トレイルを作るって、単に道を作るだけじゃないですよね? 彼は、許可を得ていないシングルトラックもいくつか作ってきました。だから、そこについては彼を公に称賛するわけにはいきません。でも、その方法や理由、そしてなぜ違法なトレイルを作るべきではないのかについても少し話していきます。なので、彼の声を少し加工してお届けし、本名は使わないことにします。


自己紹介

こんにちは、ジミー。

ジミーが本名だよ、何言ってんだ?笑

あっ、しまった、そうだった。ごめんよ、ジミー。では早速、あなたのバックグラウンドについて少し話していきましょう。たぶん、ずっとライディングしていて、トレイル作りもほぼ同じくらい長いんだよね。どれくらいやってるの?

ライディングは30年以上やってて、トレイル作りは90年代中頃からだから、まあ、それくらいだね。

ジミー、僕は最近トレイル作りをほとんどしてないんだ。恥ずべきことに何年もやってない。当時は、自分が乗りたいものを作りたかった。それが僕の原点。だから、君が最初にシャベルを手に取った理由を知りたいんだけど、同じような理由なの?

いや、実はそれとは違って、ただ自分にできるかどうか試してみたかったんだよね。挑戦してみたかったんだ。今までやったことがなかったし、自由な時間を何かに費やしたいと思ってさ。で、それが結果的にすごく気に入ったんだ。

さっき録音を始める前に話してた内容によると、トレイルビルディングが実は最初に外でやったビルドじゃないって言ってたよね。昔はクライマーだったって。ルートを設定したり、そういうこともやってたんだよね。それってトレイル作りに影響してるの?君は外に出て何かを作るのが好きそうだよね。

うん、クライマーだった時がきっかけだったかな。住んでる場所の近くに登れる場所が欲しかったんだ。だから、自分でクライミングルートを作るのが一番簡単だって思ったんだ。岩を掃除して、ルートを設定してね。多分、それは僕の性格の一部にあるOCD的(強迫性障害)な部分が関係してるんだろうね。他のクライマーが適当なルートを選んで同じ場所に行くのが嫌で、ちゃんとしたルートを一つ作りたかったんだ。

それで、作ったんだね。これまで作ったトレイルの中で、特に思い入れのあるものってある?名前は言わなくていいけど、これは自分の『子供』みたいに大事だなって思うトレイルとか。それと、何かレガシーのように感じることってある?例えば、僕が25年とか30年近くライディングしてるトレイルを思い返すと、それを作った人たちのことを考えるんだ。君も、自分のトレイルを何十年も先に人々がライディングしてるのを想像したりする?

うん、もちろんそうだね。トレイルが何年も残ってくれるといいなって思うけど、土地開発でダメになるかもしれない。でも、クライミングルートは何年たっても使われ続けるだろうね。開発されないエリアだから。マウンテンバイクのトレイルも残ってほしいな。だって、今でも守ってる場所がいくつかあるからね。

確かに、特にここ太平洋岸北西部には素晴らしい地形とトレイルがたくさんあるよね。

それに、素晴らしいトレイルビルダーも。

その通りだね。ブリティッシュコロンビア、マウンテンバイカーにとっての約束の地と呼ばれているのも納得だ。大きな山々に多様な地形がたくさんある。でも、ここでトレイルを作るのは、ただシャベルとピックアックスを持って森に行けばいいってわけじゃないんだよね。特に、きちんとした方法で合法的にやるならね。


合法なトレイルビルディングについて

まずは合法トレイルの話をしよう。君もいくつか作ってるよね。まず最初のステップって何するの?行政にアプローチする必要があるの?セクション57って何?僕が全然知らないふりをしてると思ってくれてもいいよ。

実際、知らないかもね(笑)まず最初のステップは、自分のラインを見つけることだ。僕にとっては、これが一番重要なステップだ。だって、ただトレイルを作るだけじゃなくて、自分が好きなトレイル、他の人も好きになるトレイルを作りたいから。役人が『ここで作っていいよ』って言ったからって、その場所にトレイルを作るなんてクソくだらない。それだけの労力をかける価値がないし、報酬もないし。これは情熱を持ってやるプロジェクトだし、森の中でアートを作ってるようなものだし。だから、自分が作りたいキャンバスを見つけないとね。だから、まず自分のラインを見つけて、それがうまくいけば、問題なく作れる場所か、まあ見つからない場所に作るって感じだね。

じゃあ、まずはそのエリアで合法的に作れるとして話を進めよう。まず、旗を立てたり、GPSで位置を記録したりして、その後に誰かが承認しに来るの?

そうだね。旗を立てて、GPSで記録して、それから申請を出すんだ。できれば、何かの管理団体を通してね。個人で申請するんじゃなくて、地元のサイクリング協会なんかのバックアップを受けて、その団体の名義で申請を出すんだ。君がビルダーになるって形でね。

そのプロセスってどれくらい時間がかかるの?結構やばい数字を聞いたことがあるんだけど。

永遠にかかるさ(笑)調べてみると、彼らには決められたスケジュールがあって、対応するべき期限があるんだけど、それを守ってないんだ。だから、なんで俺が規則を守らなきゃいけないんだって思うよ。

これまでにトレイルを却下されたり、別のエリアにルートを変更されたことってある?

ルート変更はされたことないけど、そういう経験をした人は知ってるし、その理由も知ってる。正当な理由とも言えるし、ちょっと怪しい理由とも言えるかな。却下されたことはあるよ。それは政治的な理由でね、ちょっとムカついたね。

トレイルビルディングには本当に政治的な要素が多いよね。このポッドキャストの後半でその話もするけど、大きなトピックだよね。

トレイルビルディングに政治が絡むなんて全く解せないよ!

だね。承認されたトレイルを作るときって、何かしらの基準に従わなきゃいけないんだよね。例えば、M-Bus基準とかそういうものがあるけど、トレイルが完成した後に誰かがその基準に合ってるかどうかチェックしに来るのかな?どういう仕組みなの?

理論的にはそうすることになってるんだろうけど、他の仕事と同じように、作業量によるんだ。もし君が経験豊富なビルダーで、彼らが君のことを知ってるなら、ざっと見て信用してくれるかもしれないし、ちゃんとした作業を続けてねって感じになるかも。状況によって違うんだ。誰が関わるかとか、どこで作るかとか、簡単なトレイルなのか、短いトレイルなのか、問題の多いエリアなのか、誰も行かないような場所なのか、そういうのが関係する。行くのが難しい場所なら、チェックしに来たがらないかもね。歩いて行かなきゃならないなら、行きたくないかもしれないね。だから、いろんな要素が絡んでくるよ。

これまでに、『ここなら誰もチェックしに来ないだろう』って思って、こっそり作ったことある?

チェックされることはない場所なら、捕まることもないだろうね。

なるほどね。

そうそう、アクセスが少し難しい場所で、アプローチや出口をうまく隠せればね。作っちゃえばもう終わりだし。

うん、まあそうだね。でも、今は合法な話にしておこうか。


トレイル維持にかかる手間

他の話も興味あるけど、もう少し合法な話を続けよう、ジミー。じゃあ、トレイルを作ったとしよう。素晴らしいトレイルだ。Trailforksにも載って、たくさんの人が知ってるとする。誰がそのトレイルの管理をすることになるの?例えば、5年後も君が見て回らなきゃいけないの?その辺りはどうなってる?

現実的には、地元のサイクリング協会やトレイルクルーがその責任を負うことになるだろうね。それが理論的にも現実的にもそうなるはずなんだけどね。実際に何が起こるか、または何が起こるべきか...いや、今は合法な話をしてるんだから、どうあるべきだってことだね。つまり、そのトレイルに君の名前がついて回ることになる。だから、どのビルダーも自分の作ったものにはすごく誇りを持ってる。たとえ質が悪くても、それにさえ。だから、できる限り自分で手入れをしに行くだろうね。だって、それが自分の作品だから。

じゃあ、トレイルを作ったことがない人や、トレイル作業をしたことがない人のために聞くね。大まかに言って、ここブリティッシュコロンビアのシー・トゥ・スカイエリアで、1000フィート(約300メートル)のダウンヒルを作るのにどれくらい時間がかかる?

僕の場合だと、藪漕ぎだけで数ヶ月かかる。でも、例えば『ジミー・カム・レイトリー』みたいな人なら、週末でやっちゃうだろうね。岩を一つ落として、『ああ、ここにラインがあるじゃん』って。

その違いって何?何でそんなに時間がかかるの?

主に、そうだね、レガシーを残すことに関係するかもしれないね。僕が作るものは僕の名前がついて、長い間残るものだから。だから、面白いものにしたいんだ。多くの人に楽しんでもらいたい。でも、他の人がやるときは、自分のためにやってるんだよね?もちろん、僕も自分のためにやってるんだけど、でも、『ローマー』みたいに一直線に下るトレイルを作る人たちは、想像力が欠けてて、長期的な視点で考えてない。すぐに結果が欲しいだけで、ちょっとゴミを片付けて、すぐに滑り降りたいって感じ。

ジミー、でも僕、数日前にローマーを走ったけどめちゃくちゃ楽しかったよ。

カーブはあった?

うーん、片手で数えられるくらいかな。

じゃあ、僕が乗ったあのトレイルかな。いや、待てよ、あれはあっちのトレイルだったかな。いや、やっぱりあれはあっちのトレイルだったかも。だって、どれも同じだから。

そうだね。僕の言いたいことは、たとえそのトレイルがそれほど手間がかからなくても、長持ちはしないかもしれないけど、それでもやっぱりすごく楽しいってことだよ。たまにはローマーみたいに滑り降りたいと思わない?

うん、僕もローマーは作るよ。でも、そのままにしておくんだ。ライダーが滑ったり、いろんなスタイルでたくさん走ることで、だんだん良くなっていくんだよ。いわゆる『ほんとのローマー』とは違うんだ。ローマーは走れば走るほど悪くなっちゃうから。

それ、いい説明だね。ちょうど聞きたかったのが、楽しさと持続可能性のバランスについてなんだけど、僕たちが住んでる場所って、雨の日に乗らないとほぼ乗れないよね。年中、雨の中で乗る感じだから。だから、認可されたトレイルに急勾配のセクションを作りたいとき、持続可能性と楽しさのバランスをどう取ってるの?

そこを迂回するようにオプションのラインを入れるよ。天候に対応できるように、例えばぬかるんだ状態でも走れるようにね。そして、経験を活かして他の人に意見を聞いたり、試してもらったりするんだ。それで、トレイルを作りながら弱点を見つけられる。人に乗ってもらいながらね。それを補強すれば、長持ちして楽しいトレイルになる。例えば、濡れた根っこじゃなくて濡れた岩にするとかね。それで少し変わるし、一度ちゃんと作ればもう修理に戻らなくて済む。もし友達が転んで肩を脱臼したら、修正しに戻らなきゃならないでしょ。だから最初からちゃんと作るんだよ。

今、18歳の頃の僕に話しかけてるみたいだよ。あの頃、バームをにシダを敷き詰めて、その上を走ったらフロントホイールが消えて、ハンドルから飛び出したんだ。

僕も初めてバームを作ったときに同じことがあったよ。僕の友達がやって、フロントが沈んじゃったんだ。

教訓だね。でも、それが君の言ってることを裏付けてるよ。長持ちするように作らなきゃいけないってことだよね。急なところも作れるけど、それには時間と努力が必要と。

そうだね。でも、人は時間と労力かけたがらない。早く仕上げたいだけなんだよ。僕は藪漕ぎにたくさん時間をかけるけど、結果として驚くような場所を見つけることもできる。手を抜かずにね。

トレイル作りを諦めたことはある?例えば、ある場所にトレイルを作ろうとして始めたけど、クリアカットや薮のせいで途中で無理だってなったこととか。

いや、それがないんだよ。だから徹底的に藪漕ぎするんだ。

ジミーは無敗だ、みんな。

完全無敗さ。クリーンレコードだよ。

じゃあ、メンテナンスについてはどう?もちろん、エリアによって違うんだろうけど、僕が言いたいのは、過剰にメンテナンスされてて、楽しさが減ってるトレイルがあるんじゃないかってことなんだ。そんな経験ある?僕の考え違いかな?

いや、君の言う通りだよ。これはどんなものでもそうなんだけど、過剰に規制されると、その規制は必ずしもそのスポーツやアクティビティをしている人たちを守るためのものじゃなくて、周りの人たちを守るためのものなんだ。つまり、責任問題を避けるためだ。だから、行政が君にどう作れって指示する場合、楽しさが奪われる。彼らはみんながブルートレイルを走ることを望んでるからね。確かにそうだけど、それだけが楽しいわけじゃない。

ちなみに、ブルーもたくさん作ったことあるよね?全部がすごくハードなやつばかりじゃないよね。

そうだよ

ところで、最近はどこに行ってもバームだらけだよね?君は長い間この世界にいるから、バームが新しいものだった頃も知ってるよね?

バーム?昔はそんなのなかったよ(笑)

今は本当にバームが多いよね。バームは確かに楽しいけど、新しいトレイルってバーム、バーム、バーム、バームって感じがするんだよね。

そうだね。どっちか極端なんだよ。僕は地形と一緒に作る方が好きで、地形に逆らうのは好きじゃないんだ。それはメンテナンスのことを考えてのことでもあるんだけど、大きなバームを作るときって、たくさんの土を運んでこなきゃいけないだろう?それを修理するのは大変な作業だし、最初の頃の情熱も失っちゃうんだよね。結局は、他の誰かがその仕事を引き継ぐことになっちゃう。大きなバームにはそんな影響があるんだよ。もちろん、すごく楽しいけどね。他のスタイルのライディングが少しずつ失われてる気がするよね。

確かにそうだね。バームを高速で抜けて次のセクションに進むときは、まるでスーパーヒーローみたいな気分になるから、バームが多いのも理解できるけど、僕たちは長い間ライディングしてきて、昔の不格好で難しいトレイルも恋しいんだ。最近あまり見かけないよね。君なら『自分で作りに行け』って言いそうな気がするよ。

いやいや、君はデスクワークばかりだから、外に出ても役に立たないよ(笑)

その通りだ、みんな(笑)


e-Bikeがトレイルに与える影響

それじゃ、次の質問はeバイクについて。eバイクが人気になり始めた頃、トレイルにもっと浸食が進むって話があったよね。理由は二つあって、一つはエンジンが付いてるからパワーが増えるってこと、もう一つは、もっとたくさんの周回をこなせるってこと。経験したことはある?

いや。

そうだと思ったよ!そんなのデタラメだよね。eバイクだからって、みんながもっと周回が増えてるわけじゃないと思うんだ。同じライディングをただ早く終わらせられるだけだよね。

まさにそうだよ。例えば、1時間半しか時間がないけど、通常4時間かかる大きなラップを今なら2時間半でこなせるって感じだね。それで家に帰って庭仕事したり、昼寝したり、テレビを見たり、パブに行ったりする。そういう感じで使ってる人が多いんだと思う。でも、少数の人は長い1日をかけてたくさん走ることもあるだろうけど、それが多数派ではない。問題は、eバイクが新しいものだから、何か新しいものが好きじゃない人たちがいるってこと。それに、eバイクのおかげで君より強くない人が君より速く走れるようになっちゃう。それは自尊心には良くない(笑)

でもさ、僕はスノーボードの黎明期にやってたから、スキー業界を破壊した一人だったんだ。そして、スポーツクライミングの黎明期にもクリッピングボルトを使ってたから、ロッククライミングを破壊した一人でもあるんだ。そしてバイクをそんなにやってなかった時期があって、でもフレックスステムは持ってたから、初期のサスペンションにも手を出してたんだよ。

そうそう、最初の2インチフォークね。ひどかったけど、ちょっとカッコよかったよね。それからリアサスペンションも覚えてる?あの時は『ズルだ』って言われたけど、今じゃみんな使ってる。まあ、一部のコアな人たちはまだハードテイルにこだわってるけどね。で、今はeバイクが『ズルだ』って言われてる。クリッピングボルトもスノーボードも、最初はみんな批判されたんだ。

でもトレイルビルダーとして、eバイクに対して脅威を感じたことはある?自分の作ったトレイルにモーター付きのバイクが乗るのは嫌だなって思ったこととか?

いや、全然そんなことはないよ。だって、もし僕が作ったトレイルが、1日に10人か20人増えただけで壊れるようなものなら、それは僕の作り方が悪いってことだからね。トレイルはどんな天候でも、それなりの交通量に耐えられるべきだよね。

そうだね、納得できるよ。さっき言った通り、トレイルの損傷が進んでるわけじゃないと思う。過去2、3年でこのスポーツが成長してるけど、それはeバイクがあってもなくても起こったことで、ただ単にライダーの数が増えてるだけだと。

そうだよね。溝が掘れたトレイルを見ると、元の地面から1フィートとか2フィート下にえぐれてる箇所があるけど、それってeバイクのせいじゃないよね。あれは、急なラインでライダーがブレーキをかけすぎてるせいだと思うんだ。そして、実際のところ、マウンテンバイク自体がトレイルを削ってるわけじゃないって読んだことがあるんだ。バイクが地面を少し緩めて、その後で雨や大雨の時に土が流されちゃうんだよね。でも、スピードチェックやグレードリバーサル(斜度の切り返し)があれば、そんなに影響はない。

そして、スピードを求める人たちも、例えば傾斜が比較的緩やかなトレイルだと、直滑降でローマーするよりも速く走れることがあるんだ。下まで到達するのは速くないかもしれないけど、トレイル上にいる時間は2倍長くなる。それでも速く進んでると感じる。だって、直線でダウンヒルしてるだけだからね。そうそう、ある程度のコントロールが必要だよね。直線で飛ばしてると、一気にエネルギーを使い果たしちゃう。

ある人が言ってよ、『最高のトレイルは漕ぎなし、ブレーキなし』ってね。まあ、ちょっとペダルを漕いでスピードを上げるのもアリだけど。ちゃんと作られたトレイルだとスピードを保って速く走れるんだよね。


トレイル設計について

ここでは匿名を保ちたいので好きなトレイルの名前は聞かない。けど、君の理想のトレイルの要素が知りたいな。例えば、5分間のダウンヒルがあるとして、どんな要素を取り入れる?

土地次第だね。だから、まず藪漕ぎして、地形を見て歩いて、良いエリアにいるときは、いろんな小さな特徴を見つけられるんだ。もし自然の特徴、たとえば岩とかちょっとしたジャンプとかが見つからなければ、自分で作る必要があるかもしれないけど、ただのトレイルじゃなくて、記憶に残るものにしたいんだよ。直線のローマーは記憶に残らない。

そうだね。直線のローマーで忘れられないクラッシュをしたことはあるけどね。でも、君の言う通りだよ。過去30年の間に世界中で乗ったお気に入りのトレイルを思い出すと、どれも山を直線で下るだけのものじゃない。全部、何か独特なキャラクターや個性があって、それが記憶に残ってるよ。

個性っていい言葉だね。トレイルにも個性があるし、エリアやゾーンごとに個性がある。そして、その個性を引き出さなきゃいけないんだ。

ああ。地形が持つ自然な個性に逆らうのはよくないよね。ちょっと変な言い方だけど、岩だらけの場所にフローゾーンを作ろうとするのは無理があるんだよね。

そうそう。その場所を『フローがないゾーン』として受け入れて作るのさ。

その通り。トレイルビルディングで一番楽しい部分は何?

一番楽しい部分?たぶん、自分でも怖いなって思うものを作って、これ絶対に乗れないって思ったけど、実際に乗る瞬間かな。それも仕事の一部といえる?

もちろん、100%そうだよ。このポッドキャストの最初で言ったけど、最近は何も作ってないんだ。でも昔、僕と友達のウェインは、森に行ってはちょっと自分たちには無理っぽい一発もののジャンプを作ってばかりいたんだ。それを作って、微調整して、当時は完璧だと思ってたんだよね。シダでいっぱいのバームとかさ。

それで、僕たちは少しずつ走り始めて、最終的には誰かがそのジャンプに挑戦するんだ。自分たちのレベルを少し超えたものを作って、しばらくは怖くて乗れないって感じなんだけど、それが楽しいんだよね。

特にこのエリアでは、何を作っても誰かが乗れるからさ。他の人が乗ってるのを見ると、自分もできるかもって思うんだよね。

僕たちほんとに狂った地域に住んでるよね。このシー・トゥ・スカイエリアは本当にすごい場所だよ。その辺の60歳のスーパーのレジおばさんが、めちゃくちゃうまいライダーだったりするしね。僕のかかりつけ医なんて、大きなステップダウンをガンガン攻めてるんだよ。このエリアの平均レベルは本当に異常だよね。でも、それってトレイルビルダーとしてインスピレーションになるんじゃない?

うん、もちろんインスパイアされるよ。でも時々、混乱することもあるんだ。たとえば、ただのダメなハイキングトレイルだと思ってた場所が実はバイク用のトレイルで、『誰がこんなところを走ろうとしたんだ?』って思ってたら、実際に走ってる動画を見て、『あ、これって可能なんだ』って驚くことがあるし。

君も年取ったね、ジミー(笑)

そうだね!まったくだ!!

ライダーから何か作ってくれって頼まれたことはある?ライダー用とか、映像のために何か作ったことは?

いや、ないよ。昔、クライミングルートをボルトを固定してた時に、『もっと簡単なルートを作ってくれ』って頼まれることはあって、それにすごくイライラしてたけどね。だから、基本的には森の中で自分ひとりでラインを探して、それを見つけたら、時々バリエーションを加えることもあるんだ。誰かがリクエストしたり、自分で怖すぎると感じたりしたら、みんなが使う前にちょっと変えることもある。

ちょっとやりすぎたかな?って(笑)

そうだね。でも、みんなが使う前に変更を加えればいいんだよね。ある程度は自分に合うように作って、それから変更するのは大丈夫さ。そうすれば、Facebookで文句を言われることもないからね。

政治的な話は今は置いといて。昔、僕がバカみたいなジャンプを作ってた時に、一度だけ誰かがそれでケガをしたことがあったんだ。ちょっと不格好なテイクオフで完璧じゃなかったんだけど、その時はそれが限界だったんだよね。そしてケガ人を出してしまった。何かを作っている時、誰もケガをしないといいなって思うことはある?もし誰かがケガをしたら、どう感じる?

まあ、正直に言うと、ケガしてもいいかなって思う人も数人いるけどね(笑)でもそれ以外は、基本的にはそういうことは考えないかな。自分が乗れるなら、他の人も大体乗れるだろうって思ってるからね。

だから、あまり無理なものは作らないようにしてるし、時々自分より上手なライダーを呼んで、意見を聞くこともあるよ。みんなそれぞれ違った視点を持っているからね。そして、もし誰かが『このラインはこうした方がいい』って言ってくれたら迷わず変更するよ。論理的に考えて、そうする方がいいなら。

この週末に僕がクラッシュしたのは、どれもバカみたいに小さいこと。まるで歩道の縁石みたいに簡単なところでね。ただ集中してなかったんだよ。誰かが何かでクラッシュすることを気にしすぎるのも良くないよね。世の中には本当にドジな人もいるし…

なんで僕を見ながら言うの(笑)

ごめん、鏡を探してただけさ。

ところで、簡単にされてしまうことについてはどう思う?僕が作ったものが、他の人ができなかったからって理由で安易に改造されたことがあって。僕たちが住んでる場所は、難しいものが無限にあるような場所で、むしろ簡単なものが足りないくらいだよね。だから気持ちはわかるけど、それでもトレイルが変えられるのは嫌なんだ。難しいトレイルやセクションがあっても、それをフロートレイルに変えたくない。別のトレイルを作って、それをフロートレイルにすればいいのにって。

完全に同意するよ。クライミングだと、ホールドを削ったり、接着剤で何かをくっつけたり、穴を開けたりするのは完全なる御法度なんだ。2年後にはそのムーブができるようになるかもしれないし、君の子どもができるようになるかもしれない。子どもたちって、不可能を可能にしてくれることがあるから。だからそういう意味で、簡単にしちゃうのには反対なんだ。でも、その言葉は都合よく使われることもあって。トレイルのメンテナンスに行くと、最初はスムーズできれいだったけど、時間が経つと根っこやゴミがいっぱい出てくる。だから、それを元の状態に戻すんだけど、そうすると『簡単にしてる』って言われるんだ。でも、違うんだ。何も簡単にしてるわけじゃなくて、ただトレイルを元の状態に戻してるだけで。

そういうことを言う人には、実際に来てどうやって正しくやるのか見せてほしいよね。

これは僕もずっと言ってるんだけど、誰かがトレイルを自分のために変えちゃうと、そのトレイルを本来の形で楽しむはずだった人たちの経験を奪ってるんだよね。それが毎日のことかもしれないし、初挑戦でできるかもしれない。僕たちみんな違うんだから、その経験を他の人から奪っちゃいけない。

そういう人は自分自身も裏切ってるよね。君が言ったように、自分ができないって思ってたことに挑戦して、最終的にできるようになったときの達成感は素晴らしい。でも、今のレベルに合わせて変えちゃったら、どうやって成長するんだ?

そうだね。君のトレイルが無断で簡単にされたことはある?

いや、子どもが少しいじったことはあるけど、大きな変更はされてないよ。少しだけ手が加えられたことはあるけど、基本的には誰かがトレイルで作業する場合は、僕に連絡するか、サイクリング協会に連絡して許可を取る。ほとんどの場合、みんなちゃんとしてるよ。まあ中には、自分がやりたいことをすぐにやりたがる人たちがいて、勝手にやっちゃう。それには困るけど、僕は戻ってきて直すから。

君のそういうとこが好きだよ(笑)

そういう一面があるんだ。でも、一度だけあったんだ。簡単にするためじゃなかったけど、僕がトレイルに施した作業が必要ないと判断した人がいて、自分で勝手に取り除いたんだ。誰がやったのかはわからないけど、僕の作業を自分の理想に合わせて変えてしまった。僕は戻って、さらに難しく作り直したよ。

素晴らしいね(笑)

その上、二度と改変できないようにしておいたんだ。


ネーミングについて

さて、少しトレイルの名前について話そうか。不適切だと感じる名前も確かにあるよね。それが原因でトレイルの名前が変更されることもある。君のトレイルの名前が変えられたり、無きものにされたことはある?

トレイルの名前はないけど、ガイドブックに載ったクライミングルートの名前が元の名前と違う名前だったことはあるね。僕はちょっと挑発的な名前をつけるのが好きで、人々に考えさせたいんだ。だけど、世の中には、他人の意見に耳を傾けたり、それについて考えたりするのが嫌いな人が結構いるんだよね。

言葉って怖い。

考えるのは難しいよ。でも、人をちょっと挑発するのが好きなんだ。何か誤解されそうなことでも、ちゃんと話を聞けば『ああ、そういうことか』って納得できるようなものが好きなんだよ。昔、MEC(Mountain Equipment Co-op)とクライミングの名前について議論したことがあって。

彼らはその名前が攻撃的だって思ってて、いろいろな仮定をしてたんだ。だから、僕はいくつか別のシナリオを提案して、『これについてはどう?あれについてはどう?』って言ったんだ。そしたら彼らも、『ああ、確かに反論できないな』ってなったんだよ。企業が実際に意見を変えたのは驚きだったけど、どんな場合でも歴史は大切だよね。歴史から学ぶことができるんだから。それを消してしまったら、どこでその教訓を学ぶんだって話だよね。

君にとってトレイルの名前にはどんな意味があるの?中にはただキャッチーな名前をつけるだけの人もいるけど、君の場合はもっと意味があるの?何かインスピレーションがあるの?

うん、必ず何かインスピレーションがある。僕の夢は、『Cunning Stunts』みたいな素晴らしい名前を思いつくことだよ。

思いついたら教えてよ。あれは本当に最高の名前だ。

そうなんだよ、最高だよね。『古くなったトレイルの名前を盗んじゃおうか』って考えたこともあったけど、それはできなかった。自分の名前を思いつかないとね。そしてトレイルの名前にはいつも何か意味があるんだ。それが内輪のジョークだったり、表現だったり、思い出だったりするけど、何かしらの意味が込められてる。

作り始める前に名前を決めることもある?

たまにあるけど、そんなに頻繁じゃないね。実際にやってみると、途中で変わることもある。何かが起こって、その出来事や瞬間、表現がきっかけで名前が変わることもある。


グレートレイルが生まれる理由

さて、次は君が手がけた非公認のトレイルについて話そう。もちろん、みんなが勝手に森や公園で好き勝手なことをしていいわけじゃないってことは強調しておきたい。許可されてない場所でトレイルを作るのは絶対にダメだよ。違法なトレイルを作るな!僕たちはそれを推奨してないからね。

そう、違法なトレイルは作らないように、みんな。非公認のトレイルって言いたいんだよね?

そう、非公認のトレイルだ。でもジミー、君がここにいるからこそ聞きたいんだ。君はたくさんの公認トレイルも作ってきたよね。僕も君が作ったトレイルをいくつか走ったことがあるけど、それらは世界中で走った中でもお気に入りのトレイルなんだ。本当に素晴らしいものばかりだよ。でも、なんで違法なトレイルも作るんだい?理由はなんとなくわかるけど、許可された場所で作った方が、リスクや頭痛の種がないんじゃない?

もしシステムがちゃんと機能していれば、その通りだよ。でも、そのシステムが壊れてるんだ。

どういうこと?

タイムフレームの話なんだけど、たとえば、君とビールを飲みに行こうって話になり、『ちょっと妻に確認してくる』ってなったとする。普通の状況だよね。でも、彼女の返事にかかるのが3分かと思ってたら、3週間だったりする。次に同じ状況が来たら、『もういいや、勝手にビール飲みに行こう』ってなる。許可を気にしないでね。そういうこと。許可を求めると、今のところシステム上では、まあそのシステムは機能してないんだけど、非対立的なエリアでさえ許可を得るのに何年もかかる。

たった一つのトレイルを作るのに?

そう、たった一つのトレイルをね。

時間の問題だけじゃなくて、エリアの問題だったこともある?たとえば、君が本来は許可されていないエリアでも、地形が良すぎて作りたくなることはある?

許可されてないってのは、非公認と同じ意味?

そうだね。

そういうことなら非公認だけど、実質的には公認されてるトレイルもあるよ。許可を出す立場の人たちは、あえて知らないふりをしてるんだ。公式には何も知らないってことになってるけど、非公式には『触れないで』って感じなんだ。『俺はお前を邪魔しないから、お前も俺を邪魔しないでくれ』ってね。

それってまあまあなシステムだね。

うん、いいシステムだけどそんなのは稀だよ。他のエリアでは、いろんな理由で政治も絡んでくるんだ。キーマンを知ってたり、その人たちに気に入られると許可が取れたりするんだけど、他の人は取れなかったりする。いわゆる『優先処理』ってやつさ。一方で、他の申請は棚に置かれたまま。つまり、えこひいきだね。

もし君が毎回2年も待たなきゃいけなかったら、今までに作ったシングルトラックの数なんてとてもじゃないけど作れなかったよね。

そうだよ。それに、このシステムのせいで、取り締まりが厳しくなってるのが現状だ。アメリカではもっとひどくて、行政のエージェントがトレイルビルダーを追いかけ回してるなんて話もあるし。特に、ローマーに対する反対意見が多いんだと思う。というのも、ローマーが10フィートおきにあって、山の斜面がめちゃくちゃになっちゃうからね。

確かに。自分の山にそれがあったら嫌だし。

そうなんだ。それを止めたいと思ってるんだろうけど、システムが壊れてるせいで、非公認のトレイルを作る選択肢しか残ってないんだ。というのも、そこに長居するほど見つかる可能性が高くなるから。

許可が下りることなんて、数年は無理だし、その頃にはもうそこに住んでないかもしれないよ。だから、ひたすら待つか、トレイルを作って達成感を味わうかの二択になる。でも、捕まりたくないし、罰金も嫌だし、追いかけられるのも嫌だから、急いで質の悪いローマーを作っちゃう。

システムが人々をそんなふうに追い込んで、長持ちしないローマーを作らせてしまってるんだよね。

うん、それが僕の考えだ。これは自己増殖する問題なんだ。良質なトレイルを作りたい人を支援する代わりに、ただ待たせて、結局は永遠に待たされるだけだからね。永遠に待てる人なんかいない。もちろん、何かを承認したり、検査したりする仕組みは必要だけど、実際にそれを取り仕切ってるのは誰かっていうと、行政の職員だよね。彼らの主な目的は何だろう?

書類作業とか、物事を遅らせることとか?

あと、自分たちの仕事を守ること。あと年金とか。だから、システムをスムーズに動かすためにいるわけじゃなくて、来年も再来年も自分たちの仕事があるようにするためにいる。

君が作ったのは、公認トレイルと非公認トレイル、どっちが多い?

そうだね、たぶん非公認トレイルの方が多いかな。

アメリカの話をしてたけど、カナダはそれに比べてまだ緩い方だと思うんだ。アメリカでは、レンジャーに追いかけられたり、巨額の罰金を課せられたりって話をよく聞くよね。もちろん、それが妥当な場合もあるんだろうけど。君自身は、経済的な罰則とかそういうことに対して怖くないの?見つかったことはある?危ういところは?

いや、全然ないよ。工具が没収されたことはあるかもしれないけど、実際には森に隠して、その後見つけられなかっただけかもね。

それって、どのトレイルビルダーも一度は経験してることだと思うよ。

森にはたくさんの工具が埋もれてるよね。

そうだね、シャベルとかバケツとか、いっぱいあるよ。

僕も賢くやろうとはしてるよ。質の高いものを作ろうとしてるんだ。それには時間がかかるし、リスクもあるかもしれないけど、最終的に評価されるときには、その基準に達してるはずなんだよね。だから、『捕まえないで、心配しないで』って感じかな。

非公認トレイルを作らないようにさせる抑止力って何だと思う?

抑止力?うーん、ケガとか?年齢を重ねることとか?

罰金やレンジャーは?

いや、もし実際にそういうことが起きたら考えるかもしれないけど、基本的にはシステム内でやれる方法を探してるよ。その方が安心して質の高い仕事ができるし、後ろを気にする必要もなくなるから。だから、常にシステム内でやれる方法を探してるんだけど、まあ、難しいこともある。場所によっては協力してくれたり、手続きを早めてくれたりするところもあるけど、どうしてもやりたがらないところもあるんだ。

僕は外でリクリエーションを楽しむことが優先されるべきだと思うんだよ。太陽の下で。

健康的なこととか?

そう、まさにそうだよ。呼吸を整えて、運動して。わかるよね?


お役所との付き合い方

一旦、ちょっと冷静に考えてみよう。もし君がマウンテンバイカーじゃなくて、どこかの行政機関でデスクワークをしている人だとしたら、その手の申請が来ても、それが優先事項にならないのも理解できるだろ?だから、地元行政がそういうことに時間を割かないのもある意味納得できる。でも、反対に、もっと人々を外に出して、トレイルを増やすべきだとも思うよ。それは観光にも良いし、他のことにもプラスになるから。

彼らは他に何をやってるんだろう?

わからないけど、擁護してみようと思ったんだ!(笑)

まあ、ペンを押すだけの仕事だろうね。もっと効果的なシステムを作れば、作業負担も減るし、自分たちでやらなくてもいいことも増えるんじゃないかな。だってさ、ボランティアがたくさんいるんだよ。熱心すぎるボランティアがね。彼らは感謝されるだけで、金銭的な報酬はない。それなのにインフラを作り上げるんだ。そして君たちは、そのボランティアたちを、取り替える必要がなくて、メンテナンスも少なくて済む、質の高いものを作る方向に導くだけでいいんだよ。ある意味で自己管理できるシステムになるんじゃないかな。つまり、トレイルビルダーが他のトレイルビルダーを見張るんだ。新しいやる気満々の若者が現れたら、『いやいや、ここではそんなやり方しないんだ』って言えるようにね。

ちょっと、政治的な感じがするね。

政治的?まあ、少しはそうかもしれないけど、チームみたいなもんだよ。ホッケーチームとか、フットボールチームみたいな感じでさ。選手同士が他の選手を監視するんだ。たとえば、誰かがアイスリンクでスティックを使ってやりすぎてる時に、ベンチの仲間が『それはダメだ』って言うようにね。選手が限界を超えようとしてるのが見えたら、それを止めることができる。トレイルビルダーも自己監視できるはずだよ。新しい若者が現れて変なものを作ろうとしてる時には、『いやいや、ここではそうしないんだよ』って言えるんだ。森にはいつも誰かがいて、藪漕ぎしたり、何か作業をしてるんだから。だから、それを止めることはできない。コントロールするか、正しい方向に導くしかないんだ。

そう。行政機関とトレイルビルダーの間に連携する役割が必要だよね。行政が『ジミー、トレイル作っていいよ』って承認する人と、実際に作るトレイルビルダーたちをつなぐ誰かが。マウンテンバイクを理解してる人が、その承認をするかどうか判断できるようになったらいいんじゃないかな。

環境面での懸念もあると思うんだよね。僕たちには簡単そうに見えるけど、実際にはそうじゃなくて、窓の外を見れば広がる大自然がある。でも、そこに1.3キロくらいの幅1フィートのトレイルを作っても、何が問題なの?って思うんだ。『そんなに大したことじゃないじゃん』ってね。でも、誰でも勝手にやりたい放題やるのを許したら、自然がひどい扱いを受けることになるんじゃないかな。だから、システムは必要なんだ。でも、そのシステムを直す必要がある。

そう、その通り。実際、ある公園では、トレイルを作るのが許可されてるけど、事前にそのエリアをチェックする担当者がいる。もしその規則を守らなかったら、その地域から出禁になる。つまり、『お前たちがこれを責任持って管理して』って感じでね。僕が提案されたものをチェックするけど、管理するのは君たちだよ、ってこと。それでうまくいってる。だから、誰がそこに行くかもわかってる。車が向かってるのを見れば、誰が何をしてるか大体わかるし。つまり、うまく機能してるシステムの例もあるってことだね。完全に無秩序にはできない。だって、人って結構バカなことするからさ。キャンプに行ってゴミを捨てたり、人間の排泄物やら火災やら、そういう問題が出てくるから、ちゃんと規制しないといけない。でもどこかで、トレイル作りを理解してる誰かを信用して助けてもらう必要もあるんだ。まあ、ペンばかり持ってる役人たちには、彼らが抱えてる仕事が多すぎるっていう問題もあるんだけどさ。だから、その仕事を分散させるべきなんだよ。でも、やってない。なぜ?君はどう思う?

さっぱりわからないよ。

そうだよね。彼らがデスクに仕事を積み上げておけば、少なくとも数年は仕事が安泰だからってことなのかな?

うん、たぶんそうだね。意思決定をしてる人にとって、それが優先事項じゃないってことかな。

そう、僕たちにとっては優先事項でも、他の人にとってはそうじゃないんだろうね。

君の作った非公認トレイルが見つかって閉鎖されたことってある?

いや、ないよ。

本当に?

ないんだ。そういうトレイルを走ったことはあるけどね。

僕もある。

でも、一度開通したトレイルを閉鎖するのはかなり難しいことだね。トレイルを使う人の方が、閉鎖しようとする人よりもずっと多いから。だから森にチェーンソーがたくさんあるんだ。つまり、一度開けられたものを閉鎖するのは本当に難しい。だからこそ、開けるものは質が高く、長持ちするものにしないとならない。

もし非公認の、ちょっとリスキーなトレイルを作るなら、しっかり下調べをすることが大事ってことだね。20年前、僕と友達でトレイルを丸ごと作ったことがあってね。下るのに5、6分くらいかかるトレイルで、ベンチカットもたくさんあって、すごく手間がかかったんだ。でも今そのトレイルを見たら、君だったら『これゴミじゃん』って言うだろうね。でも当時は僕たち、ただの子供だったんだ。

結構大きいトレイルでさ、自分たちで結構誇りに思ってたんだ。でもある日、たぶん作ってから2週間後くらいだった、行ってみたら入口に黄色いテープが貼ってあって、さらに進むともっとテープがあって、サインがあって、サラマンダーがどうのこうのって。公園の土地にトレイルを作っちゃってたんだ。今思うと、子供ながらにどれだけバカだったんだって恥ずかしくなるよ。でも、それが証明してるのは、やっぱりトレイルを作るならちゃんと下調べをしなきゃいけないってことだよね。その経験は苦い思い出になったけど、振り返ってみると、それは完全に僕のミスだったんだよ。100%自分のミスだったんだ。

でもさ、子供の頃にどうやってそんなリサーチをするんだろう?特に20年前なんて、図書館に行ってサラマンダーがどこにいるか調べるのか?

さっぱりわからないよね。トレイルを隠すために特別な対策をとったりしてる?例えば、完成するまでは入り口を隠しておくとか、違うルートで出入りするとか。

うん、やってるよ。

夜にディグったことはある?

そこまではやってないな。でも、夜中にやってる人は知ってる。極端なことをする人もいるけど、僕はそこまでやらないな。基本的には、デリケートじゃないエリアとか、ほとんど人がいない場所でやることが多いかな。サラマンダーとかカエルがいる湿った場所とか、そういうところには近づかないようにしてる。

18歳の頃のマイク・レヴィはそんなこと知らなかったよ。ジミー、その時教えてくれればよかったのに。

僕はただ、足が濡れるのが嫌だから、湿った場所には近づかないだけなんだけどね。18歳の時は、足が濡れてることなんて気にもしないよね。


SNSとの付き合い方

さて、Trailforksやソーシャルメディアについて話そうか。トレイルの場所をシェアしたり、スポットを広めたりすることについて、君が作ったもの、合法・非合法に関わらず、誰かが場所をシェアしちゃって、広まりすぎたことはある?

広まりすぎたってどういう意味?トレイルが荒れたり、壊れたりしたってこと?

予想以上に人が押し寄せてきて、トレイルが耐えられないほどの交通量になったとか、元々半ば隠して作ったトレイルなのに、思ってたより多くの人に知られちゃったとか。

いや、そういう経験はないな。むしろ逆のパターンが多いよ。最初はシークレットトレイルにしようと思ってたけど、途中で『いや、やっぱり人に走ってもらいたいな』って思って、場所を公開したことはある。入り口や出口がわかりにくい場所だったりすると、そこに人を送るために宣伝しなきゃいけなくなるよね。他の人と一緒にそういうことをやったこともあるよ。人をトレイルに誘導するための方法がいくつかあるんだ。でも、僕のトレイルではないけど、Instagramで広まりすぎちゃったトレイルも知ってる。

地元の人たちの意向を知ってるはずなのに、それでも広めちゃうんだよね。そして、『でもビジネスを宣伝しなきゃいけないんだ』って言い訳されるんだ。そんなビジネスなんて気にするな、他のトレイル使えばいいじゃん。美しいトレイルなんていっぱいあるんだからさ。インフルエンサーのせいで、どんなシークレットスポットも台無しにされる必要はないよね。彼らはトレイルそのものを楽しんでるわけじゃなくて、自分たちの宣伝をしてるだけで、後片付けなんて考えてないんだ。

シェアしすぎないようにするのと、トレイルは走られるためにあるってバランスを取るのは難しいよね。でも、サーフィンの世界みたいに『ここは俺の波だから、他の人は来るな』みたいな態度は嫌いなんだよね。僕たちが住んでる場所では、そんな感じが時々出ちゃうけど。

『ここは俺の場所だから、お前はどっか行け』ってね。でも、バイキングコミュニティでは、それよりも『ただの知らない奴が急に来たな』って感じの方が強いと思う。ちょっとイラつくけど。でも街にたまたま来たばかりの人でも、トレイルで会って少し話してみると、良い感じの人だなって思うことがあるよね。で、『一緒に来ない?』って誘って、シークレットスポットや、見つけにくいトレイルを教えてあげたりするんだ。そんな感じで、中に入る努力をしてきたわけじゃないけど、ただ30秒話して、感じのいい人だってわかると、自然と誘いたくなる。


非ビルダーができること

そうそう。トレイルビルダーに聞いてみたかったんだけど、君がトレイルを作ってる時に、ライダーが走ってきて、少し話しかけてくることがあるよね。僕はいつも『5分か10分手伝った方がいいかな』って思うんだけど、どう思う?

状況次第だね。時には、ただ自分の作業に没頭してるだけだから、手伝いはいらないんだけど、例えば石で補強してる時なんかは助けが欲しいこともある。これまでに、たくさんの人が『手伝おうか?』って言ってくれてね。『じゃあ、石を探してきてくれる?』ってお願いすることがあるんだ。で、彼らが5つくらい石を見つけてきて、置いてくれて、僕が『ありがとう!また』って言って、それでおしまい。

まさにそんな感じだね。僕も時々そういうのが好きなんだ。でも、時には『俺のトレイルだから、邪魔しないで』って感じが伝わってくることもある。

そうだね。人によっては、ただみんなから離れて一人になりたくてトレイル作りをしてることもあるからね。誰とも話したくないんだよ。

自転車に乗る理由と似てるよね。

うん、似てるね。でも、そこが難しいところだね。完全に一人になりたくても、誰かと遭遇しちゃうと、社会的な状況に巻き込まれちゃうんだ。だから、交流しなきゃいけないよね。お互いにうなずいたりとか、そんな感じでさ。何も言わずに石を拾ったりね。

まさにそうだよ。ジミー、最後に聞きたいんだけど、トレイルビルダーとして一番イライラすることって何?

枝分かれするトレイルだね。あれが大嫌いだ。

一番速いラインってやつだね、ブルース・Dが言うには。

そうだね。前に言ったみたいに、僕はどこでも藪漕ぎをする。だから、Stravaのタイムとか、自分のプライドのために、最速で下りたいなら、どこでもショートカットできる。大きなトラバースの横を走ってる時に、スイッチバックする前に20フィートくらいの斜面をショートカットして、君より先に行けるかもしれない。さらにもう一つショートカットして、1キロメートルくらいの距離を飛ばして、最終的に君より先にゴールに着けるかも。同じ場所からスタートして、同じ場所でゴールしたとして、僕が5分で下に着いて、君が6分だったら、それって僕の方が速いってことになる?ずるしてただけだよね。一方で、コーナーをカットしたり、木を避けたりして。

それって、違うトレイルを走ってるようなもんだってことだね。

そうだね。Stravaやタイムを計る目的ってさ、いいライドをして、上手く走る満足感を得るためのものだと思うんだ。でも、それって同じトレイルを走ってる他の人たちと自分を比べるためのものでしょ?ただ、コーナーをカットしたり、地元の知識があるからって、そういうのを活用して速くなったわけじゃないんだよ。ちゃんとトレイルを走って、自分がどれだけできるかを試してみればいいんだよ。もしそのトレイルのコーナーが気に入らないなら、別のトレイルを作ればいいんじゃない?そんな感じさ。でも、ブレーディング(ショートカット)に全く問題を感じない人たちもいるよね。そういう人たちを困らせるのは全然構わないけど。

そうだね、君はできる限りそのブレーディングをブロックしてるんだろうね?

うん、そうしてるよ。

それで、次のラップで誰かがマッハ10の速さで、その速いラインを通り抜けると。

そうだね、マレーシア式のトラップでも作りたくなるよね。でも、あのノースショアのクレイジーなおばさんみたいに、人に対してトラップを仕掛けるわけにはいかないんだよ。やっぱり、うまく抑止する方法を考えなきゃね。ブレーダー(ショートカットする人)に、なぜそのトレイルをちゃんと走る必要がないのか、直接聞いてみたいね。

そうだね、微妙な問題だね。トレイルを毎週何回も何年も走ってると、徐々に内側を攻めたくなるんだよね。ちょっとずつ内側に、ちょっとずつ内側に、気がついたらその木の内側に入っちゃってるってこともある。トレイルを30フィートも削ってるんだよ。でも、大半の人はわざと大きくトレイルを削ってるわけじゃなくて、少しずつ削っていって、最終的にダメージが大きくなる。

まあ、それには同意するけど、昨日か一昨日、そのまさにこの話をしたよ。しかも、かなり上手いライダーでさ、これは男性だけの問題じゃないんだよ。彼女はレース中で、こう思ったんだ。『ここをショートカットすれば、あのセクション全部飛ばせるじゃん』って。それで彼女はそのレースでかなり良い成績を収めたんだけど、結局そのことが大会の主催者に伝わって、なんでそんなに速かったのか理由がわかったんだよ。でも、彼女はこう言ったんだ。『それが何か問題?』って。

まあ状況にもよるけど、もしテープの内側なら問題ないって思うかもしれないね。

そうだね。でも、そういうことがどこでも起こりうるんだよ。だから、トレイル全体にテープを張る必要があるってことになる。だから、環境の問題もあるわけだ。トレイル全体に何キロもテープを貼るなんて、無駄だ。みんながちゃんとトレイルを走れば済む話だよ。

結局、『自分を裏切ってるだけだ』って話に戻るよね。

でも、彼女はみんなを裏切ってたんだよ。本当にズルしてたんだ。でも彼女はそうは思ってなかった。ただ、いいラインを見つけただけだって思ってたんだ。でも、そうじゃなかった。

さて、そろそろ終わりにしようか。でも、その前に、今何を作ってるのか教えてくれる?名前とか場所は言わなくていいから、どんなトレイルを作ってるか少しだけ教えてくれる?

いやだね!

完璧だよ、ジミー。それでこそ。さてみんな、ジミーとの会話を楽しんでくれたかな。彼のトレイルの中には公認のものもあれば、そうでないものもある。

次回もお楽しみに。今後はトレイル団体の人とも話をする予定だから、違った視点も聞けるかもしれない。いつものように、質問があれば下に書いてくれれば、できるだけ答えるよ。それじゃあ、次回のエピソードで会おう!




《参考文献など》

訳出にあたり参考にした情報を置いておきます。ご興味あればこちらもぜひ。

↓Trail Builder MagazineのUnsanctioned(非公認)シリーズ連載

↓レンジャーから見た違法トレイル(アメリカ、ユタ州)

↓unsanctioned trailsがバイクパークになった事例

最後に。Jim Harveyさん(Jimmyさんと関係があるとは言ってない)↓

https://nsmb.com/articles/built-jim-getting-know-one-squamishs-original-trail-builders/

↓Hot Lapで走ってたのがJimさん作として著名なCredit Line。ほんとうにほれぼれするようなトレイル。(この動画2823回は見た)

Jimさん現在はトレイル団体に所属し活動をしているそうです。知る人ぞ知るローカルレジェンド。

↓おまけスコーミッシュで最も有名なクライミングルート(初登 2005年 クリス・シャーマ)


補足 クライミング課題のネーミング
クライミングでは、課題を作った人ではなく初登者(最初に上まで全部登れた人)が名前をつけます。意味深なやつ、シュッとしたやつ、俗っぽいやつ、ちょっと厨二っぽいやつ、いろいろ。日本にも日本語名のトレイルがたくさんできたらいいなの気持ちをこめて、クライミング有名課題の名前を何個か置いときます。

参考にしたブログ:


最後に、音源や参考文献の原文には『グレー』にあたる英語表現が何種類がありましたので、参考までに列挙しておきます。

・unsanctioned trail = 未承認 ≒ unauthorized = 非公認
グレーに当たる
法に反してるわけではないが承認されてもない状態

・social trail ←→ official trail
承認のレベルの違い
コミュニティの承認か、行政の承認か

・illegal trail
違法。ブラック。