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大曽根でシェアハウスをする住人たちに話を聞いてみた(3)かっきー編③最終回ーなんちゃってシェアハウス「ひどこ」

「なんちゃってシェアハウス ひどこ」住人、かっきーこと、貝原さんへのインタビュー記事第三弾、最終回です。

貝原さんにとっての「哲学」や「対話」について、そして、今後ひどこで実現していきたいことなどについてお話しています。
第一弾、第二弾と合わせて、最後まで読んでくれたら嬉しいです。



以下、
インタビュアー YU(以下、田中)
今回のゲスト かっきー(以下、貝原)


「哲学」する自分と、「対話」する自分

対話の内容を、事細かに模造紙へ記します。

田中:今そう、深い話がしたい、みたいなところで思い出したんだけど、「哲学カフェ」やってるじゃん?それはまず、「哲学カフェ」っていうのはどういう趣旨でやっているの?具体的にどういう内容をやるのかとか、 どういう思いから始まったのかとか。


貝原:発端は、僕と蟹江くんが出会ったキャンプの話はしたと思うんですけど、その二回目が一年後にあって、その二回目の時にその運営主体がもう来年以降はやらないっていう感じだったので、ちょっと寂しく思って、なんで寂しく思った かというと、そのキャンプでしかしっかり話せない話があるというか、深みにはまったり、本当に話したいことをじっくり話したりっていうことは、他ではできなかったっていうか。
そのキャンプに行って帰ってきたメンバーのなかでも、いわば深い話をするっていうことは起こらなかったから、このキャンプが無くなったら二度とその空気感というかそういう話し合いの場に出会えないんだなと思って。
もしかしたらどっかで出会えるかもしれないけど、俺の人生はそんなに面白いものになるとは思っていなくて、何かやらないとそういう場には出会えないなと思って。
そのくらい、また絶対出会いたいと思うくらい、そういう対話の場というものに、魅力というか関心をもって、 その流れだけでも残すことでそんな場がまたどこかで生まれるんじゃないかなって思って、っていうのが発端かな。
そのキャンプに来てくれた人たちのなかから、「そういう話し合いをしたいなって思うんですけど、乗ってもいいっていう方はちょっと来てくれませんか」っていうお誘いのしかたをして、個人の声かけで集まってもらって、話し合うっていうことをやったかな。


田中:具体的にはどういう流れでやっていったんですか?


貝原:具体的には、単純で、ユースクエアの部屋を一部屋借りて、四時間~五時間くらい時間を取って、少人数で集まって、模造紙を広げて、ホワイトボードにその日の約束、グランドルールみたいなものを書いて。
最初はチェックインから始まって、回によって違うんだけど、「僕は今こういうことを疑問に思ってて...」みたいなかたちで問いを出すところから始まったり、みんなからの問いをホワイトボードに書き出していったり、その興味を繋げたりしながら、模造紙とかに思ったことをメモしながら話し合うっていうのを続けて、最後に「今日はこんな感じでした」っていうのをまとめてチェックアウト して終わるっていう、本当に単純な構成でやってました。あんまりイベントっていう感じではなかったかもね。


田中:かっきー先輩は結構私の中でも、深く考えていくのが好きっていうイメージがあって、それって、自分の中で自分を分析したときに、どういうことを考えるのが一番好き?今まで (哲学カフェとか)そういう場を開いてやったこととか、自分で哲学していて「これすごい面白いな」と思いながら考えてたこととか、興味関心ってどこにあるのかなって。


貝原:正直なところを言うと、自分で考えててこれすっげー面白いなってなったっていうよりかは、すっげー面白いなっていうのは、自分とは違う人の考えであったり、本であったり、そういうものを見て思うことであって、自分の考えに対してすっげー面白いなと思うことはなくて。
自分の中でそういう風な人間でありたいっていうのがあるから、そういう自分を肯定できるし、必要だからやってるっていうのもある。好きでやっているっていう下地のもと、でもやっぱり悩んじゃうっていうか、人が簡単にわかることがわからなかったり、人が簡単にできることができなかったり、自分の人生が辛すぎて救いを求めるであったり、そういう動機で、しんどいものを成り立たせるそもそもの部分を覆すっていうことを考えるっていうか、それが哲学っぽくなっていったっていうか。
元々悩むことはあったんだけど、ここ数年人と対話することが増えてきてから、そういうふうにものを考えられるふうになったかな。そういう風に悩んじゃう自分のあり方を「哲学者っぽいな」ってしらさんに言われてっていうのも結構大きくて。
哲学っていうものに触れていこうっていうふうに思ったし、それで色々な考え方に出会って、その考え方を使えるようになったっていうのも、自分がもやもやした思考を整理するであったり言語化するであったり、っていうことを発展させることがやりやすくなった。
自分の思考に「哲学」っていう名前がついたのは結構大きいかな。


田中:私が話を聞いてて意外だったのは、かっきー先輩は一人で考えていくのが好きなんだなって思ってたの。
 一人で考えを深めたりとか、みんながすっと通りすぎてしまうところで立ち止まって、今起こってることってどういうことなんだろうとか、それこそ哲学者みたいなイメージがあったんだけど、思ってたよりも、他者との対話とか、他者の存在みたいなものをすごく大切に思ってるというか、そんな気がして。


貝原:言われてみればそうなのかな。


田中:そんなに意識はしてなかった?


貝原:うん、してなかった。自分の中では、自分で考えるってことが悩むになってしまうというか、もちろん自分で考えられるときもあるんだけど、それってそれなりに頑張らなきゃいけなくて。
論理的にちゃんと考えるなら。だから悩むだけで進まないっていう状況も結構あって、そうなってしまいがちなところで他者がいるっていうのは、結構大きいかなって思う。


「ひどこ」がつくりあげる対話の場

模造紙でアウトプットしながら、対話を深めていきます


田中:私もなんか、結構ひどこにいるときの私って結構べらべら喋ってるんだけど、今までかっきー先輩と同じように、自分の中で溜め込んで、アウトプットするとしても、溜め込んで溜め込んである程度熟成したものがポンと出てくるというか。
自分の中ですごく悩んだり、自問自答を自分の中でやって、煮詰まった状態になったら初めて自分の考えや思いがポンと出てくるっていう感じだったんだけど、ひどこにいると人がいるから自然と話すことができて、一方的に他者との対話を自分の考えの整理に使うっていうことももちろんあるんだけど、そうじゃなくて、相手とお互い何を考えているのかっていうのを考えながら、かつ相手が何を考えているのかっていうのも考えながら対話をすると、すごく学んでいけるし、かつ新しいものに目が向いていくというか。
今まで自分の中にあった材料をいかして何かをつくるんじゃなくて、ここで対話して、その関係性の中で生まれてくる新しいものに目が向くというか。それがすごく楽しいなって思うよね。


貝原:わかるよ。最近そのへんの仕組みがイメージできるようになってきて。人間が考えることには前提がどうしてもあって、人間はとても論理的に考えられる生き物だから当たり前にしてる前提なんかないって言いたくなるんだけど、カントとか有名な哲学者たちが、 人間が考えてることにはどう足掻いても時間と空間とか、因果性っていう概念があるから、それでない語り方で考えることができないっていうことを言っていて 。
自分が生きている中で作り上げられた前提っていうものがあって、 自分の頭の中だけで考えるとそこに気づけないし、その中でしか考えられないから、哲学みたいに抽象度を一つ上げるみたいなことが結構難しかったり、自分をメタ認知というか、客観的に見るっていうのは、紙に書いたりとか、外在化しないと難しいから、他者がいるっていうことで自分と全く違う部分に気づけるっていうか。


最近思うのは、自分一人では自分の人生に立ち向かえないというか、強大すぎて、自分の人生というものが。それになにかしてくれるわけじゃないけど、一緒に立ち向かってくれる人っていうか、それがいることで、自分の肩の荷が下りるっていうか、そういう存在だと思っていて。
対話をする上で、他者っていう存在はそれを引っ張ってくれる存在でもあり、外在化のフィールドでもあって、っていう感じで大事な存在なんだと思う。


田中:びっくりしたんだけど、もう一時間も話してるんだね(笑)


貝原:対話ができるっていうのは


田中:こういうことだね(笑)


貝原:うん(笑) 強制してない自由のもとで、お互いがお互いのことを認めあった上で話し合ってるから、いていいんだなって思えるし。

「ひどこ」を通して面白く生きる

面白い瞬間をみんなで共有。


田中:これからやってみたいこととか、今やってるラジオの中でもいいし、哲学カフェの話でもいいし、個人的にもっとこういうことがしてみたいとか、ひどこっていう場所をこういうふうに使ってみたいとかっていうのはある?


貝原:もちろん哲学カフェはやりたい。あとは、大曽根を舞台にした合宿をやってみたい。


田中 :どういう合宿?


貝原:ファシリテーションキャンプみたいな部分もありつつ、大曽根っていうフィールドもあるから、単に町を歩くとか紹介するっていうのではなくて、この場所があることで面白いっていうものであったらいいなって思うし。夜は ひどこで泊まって、早く寝たい人は奥の部屋で、だらだら話し続けたい人はリビングでろうそく一本だけ点けて...


田中:それは怪談話でしょ(笑)


貝原:とかね(笑)

あとやりたいことは、asobiba(田中の個人企画)早くやってくださいよ!


田中:それはちゃんとやります(笑)


貝原:あとはカニちゃんが毎月ABD読書会をやってて、今度ニシカズも初めて挑戦するんですけど、俺もやってみたいなっていうのは思った。


田中:そこまできたら三人やりたいよね。どういう本でやりたいの?


貝原:まだ決めてはないんだけど、自分が知りたい本がいいかなと思いつつ、なんか哲学書みたいなものって、飲み込むのに時間がかかるから、それをストレートにやるんじゃなくて、教育を絡めたものであったり、最近資料を読んでて出て来た「シティズンシップ教育」とかが一つの候補としてあるんだけど、まだいまいち「これ!」みたいなものには出会えてないかな。


田中:じゃあ最後に、どういうこと聞きたいかなって思って話聞いてたんだけど、かっきー先輩自身がひどこっていう場所を通してだったり、自分のやっていく活動、サードプレイスでの活動とか、あとは本を読んで新しい知識を得て新しい考えを育むみたいなことを通して、これからどういう貝原になっていきたい?


貝原:どういう貝原になっていきたい?(笑)

まあ、いろんなことがあっても多分自分の人生はしんどいので、どうせしんどい人生生きるなら、自由で面白く生きたいなと思ってるんですけど。ひどこの守り人的なポジションになりつつあるんだけど、ここ三年間あるからしっかり居たいなって最近思っちゃって。

最近しらさんに「人間好きでしょ?」って言われて、人間嫌いって公言してきたのにそれを否定できなくて、とはいえ特段人間に興味があるわけではないというか、みたいなところは、実は結構サードプレイスの オーナー向きなんじゃないかなって自分で思ってて。 あとは自分のプライベートに入られることにそんなに抵抗がなかったりっていうところだったり。とりあえずひどこでそういう存在であり続けたいっていうか。


田中:「そういう存在」っていうのは?


貝原:この場所にいて、人に居場所を提供できる存在であり、いろんな人を交ぜたり、自分がいろんな人と出会って、いろんな考えに触れて、自分の考えを広く持ってたり。
軸をたくさん持つことで、 自分をより自由な存在にしたり、っていうのはやっていきたいかな。どんな自分になりたいかっていう問いの答えにはなってないんだけど。よくわかんないな(笑)


田中:よくわかんないなっていうのも一つの答えだと思う。


貝原:なにか一つにめちゃくちゃ秀でたいみたいなものが、結構前まであったんだけど、最近そういうのも無くなってきて、秀でる必要はないけど、こうやって目の前で認めてくれる誰かがいればいいと思うし、自分は自分で、単に楽しくじゃないけど、「こうしなきゃ」みたいなものから逃れながらも、自由な人間ではありたいなと思うし、ちゃんと現状の自分を肯定できる人間でありたいなっていうふうに思う、かな。


ここまで読んでくださった読者様、ありがとうございます。
このインタビューは、2021年7月、なんちゃってシェアハウスひどこがスタートして半年ほどが経ったときに行われたものでした。
私はひどこの住人として、そしてひどこにおけるライターとして、一人でも多くの人にひどこについて知ってもらいたいと思っています。そしてそれが、ひどこ住人それぞれの語りの中で伝えられればいいなと思っています。

今後、こうしたインタビュー記事をいくつかあげていく予定でいます。
ひどこの住人達が何を思うのか、何を考えているかを通して、ひどこがどんな場所であるのかを多くの人に知ってもらえたらと思います。

今回のひどこインタビュー記事は以上です!次回のひどこインタビュー記事もお楽しみに!



インタビュアー: YU(たなかゆう)
大学休学中の女子大学生。なんちゃってシェアハウス・ひどこの公式ライター。
社会学、福祉、当事者研究に関心をおく。





追記: 2022年12月31日(貝原)
なんと、もうインタビューを受けてから1年半近くになるんですね…なんか…残りのシェアハウス期間でもう1回ぐらい…インタビュー受けてみたいです…YUさん…

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