ミシュラン三つ星レストランへの挑戦 vol.1
東京・白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ、柴田が日々、何を考えているかを綴ります。
はじめに
初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。
[フランス料理] レストラン ラクレリエール柴田秀之
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[映像] ルブトンワン 佐々木優
2020年 10月26日~11月1日まで(29日木曜日は店休なので除きます)の6日間のディナータイムに、
これまでの柴田の料理人生や、料理哲学を映像で表現したmovie(30分ほど)を
ご覧になって頂いた後、クレリエールのお料理(12品ほど)を楽しむというディナーイベントです。
ご予約はHPからお願いいたします。
第一章 レストランのシェフになる
1.シェフになろうと思ったきっかけ
友達と作ったクッキー
今でこそフレンチレストランのオーナーシェフですが、最初はパティシエになろうと思っていました。
思い始めたのは中学生の頃。当時、僕は悪ガキ仲間4人で山にぶどうを摘みに行ったり川に魚を釣りに行ったりと、よくつるんで遊んでいました。その内の一人が、母親とクッキーを作っていたんです。
どういうきっかけか忘れてしまいましたし、いま考えると不思議なのですが、ある時からそのクッキーを作る会に僕も参加するようになったんです。その時に作ったクッキーが、すごく美味しかった!!いま思えばシンプルで素朴なクッキーですけどね。山に持って行ってみんなで食べたりしていました。
その後も友達の家でちょこちょこ作っていました。自分の家で作ったり、家族にあげたりしたことは、なかったように記憶しています。たぶん、中学生の自分がクッキーを作っているっていうのが何となく親には恥ずかしくて、知られたくなかったんじゃないかと思います。
桃のゼリー
僕の実家は学校から近くて、学校のグラウンドの先に家があるような感じでした。部活ではサッカー部に入っていて、ある日、人数分のゼリーを作って持って行ったんです。桃のネクターを寒天で固めたような簡単なものでしたが、部活が終わる頃にちょうど溶けるように凍らせて持って行きました。
そうしたら、もう、みんなすごく喜んでくれて。練習して疲れたところに甘くて冷たいものが出てきたら美味しいに決まってるんですが、こんなに喜んでもらえるんだ!と思いました。
アップルパイ
最初にパティシエになろうと思ったのにはもう一つ理由があって、僕の記憶では、当時、僕の生まれ育った街(北海道留辺蘂)にお菓子屋さんはたった2軒あるだけ。どちらも和菓子屋さんでしたが、その内の1軒でアップルパイを売っていて、それが“街で唯一の洋菓子”でした。コンビニもありませんでしたしね。
パイ生地の上に白いフォンダンがたっぷりかかった甘~いアップルパイでしたが、僕にとっては世の中で一番美味しい食べ物だった。「お菓子っていいなあ」と感じさせてくれる存在でした。
東京のレストランのシェフになる
そう思う一方で、料理にも興味を持っていて、頭の中に「料理人」という考えもありました。そして家族と話す中でフランス料理という選択肢が出て来て、「フランス料理ならお菓子も作れるな」と(笑)
中学の卒業アルバムには「料理人になる!」と書いていました。
そして高校の卒業アルバムには「東京の僕のフレンチレストランに食べに来てください」と書いていた。寄せ書きでもマネージャーに「将来お店を開いた時には招待するのでぜひ来てください」と書いたりして、もうこの時点で「東京」と「オーナーシェフ」は自分の中で決まっていたんです。
◆レストラン ラ クレリエール◆
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