ミシュラン三つ星レストランへの挑戦 vol.19
東京・白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ、柴田が日々、何を考えているかを綴ります。
第四章 レストラン ラ クレリエール
vol.1からご覧いただく場合、あるいは章ごとにご覧いただく場合はコチラからどうぞ
→ 第一章 レストランのシェフになる
→ 第二章 プロの世界へ
→ 第三章 「料理長」を見据えて
19.初めてづくしの店づくり
今、レストラン ラ クレリエールがある場所は、その前もフレンチレストランでした。1月に契約を結び、2月まで営業され、3月に引き渡しとなりました。
そこから、クレリエールの具体的な店づくりがスタートしました。これまで僕は出来上がった店でしか働いたことがなかったので、初めての店づくりです。でも、独立を決める前から“自分のレストラン”について軸となるイメージは明確に持っていたので、それを具現化する作業を一つ一つ進めていきました。
森林に降り注ぐ陽の光
そのイメージが「クレリエール」。お店のホームページに書いたように、フランス語で「森林に降り注ぐ陽の光」のことです。それを表現するために、僕は出来るだけ余計な物は置かず、自然を感じさせるシンプルな店内にしたいと考えていました。
居抜き物件でしたが、あらゆる部分が10年も営業されていたとは思えないほどきれいで驚きました。ダイニングも厨房も、特に大きな工事や修繕は必要なし。壁や照明など部分的に僕のイメージに合わせて変えるくらいでした。床などは今も譲り受けた時のままなんですよ。
まず壁は、明るい白みを帯びたアイボリーに塗り替え、ソファ席の後ろにあった鏡も外しました。照明は、窓から差し込む陽の光を存分に感じていただけるようシンプルでミニマムな間接照明に。カーテンやタッセル、テーブルクロスも、ナチュラルな色合いの物を選びました。
さらに窓の外に植え込みを作り、木を植えました。店の中に木漏れ日を作りたかったのです。元々タイル敷きだった場所を作り変えたので、今回の店づくりの中では最も大きな工事でした。
ところで、クレリエールにいらしたことのある方は気づいていらっしゃるでしょうか?僕は、お店の中に絵やお花を一切飾っていません。それは、「鮮やかな色は料理で表現する」と決めているからです。
唯一飾られているのは、店の “シンボルツリー”。アーティストの方に「森」をイメージして創っていただいた木のオブジェです。
そうそう、お料理で思い出しましたが、お皿は全て買い換えました。お料理の色の表現を生かすため、白、黒、グレーの無地、ガラス、木の皿を選びました。
ハイスペックな厨房
厨房も修理が必要な箇所はなかったのですが、どうしても僕が使いたいコンベクションオーブンがあって、それを入れるためにいくつか変えざるを得ませんでした。そのコンベクションは50~100人分の料理を作るスペックのもので、クレリエールのような十数席の店の厨房には想定外の規模。電力面の問題は、洗浄機を200Vから100Vの物に変えることでクリアしました。そしてスペースを作るために冷凍庫も買い換えました。搬入に来た業者の方もクレリエールの厨房を見て「ここに入れるんですか?」と驚くほどの規模のギャップでしたが、このハイスペックなコンベクションだからこそ僕の求めるパイ料理が作れていますし、クレリエールの料理に対して決してオーバースペックではないと思っています。それに今から思えば、このコンベクションに救われたと思えることもあり・・・。その辺りはまた改めてお話します!
前に店をやられていたシェフはキレイ好きなだけじゃなく、「ここは古くなっているから近いうちに直さないといけないかも」といったマイナス面も引き渡しの時に教えてくださっていました。しかも「1年くらいで」と言われた箇所でも実際には3年使えましたし、とても誠実な対応をしてくださり有難かったです。
そんなこんなで、大きなトラブルもなく僕の初めての店づくりは順調に進み、物件引き渡しから約1ヶ月半後、レストラン ラ クレリエールは晴れてオープンを迎えることができたのでした。
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このnoteを初めて読んでくださった方へ
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はじめに初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。
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