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ミシュラン三つ星レストランへの挑戦 vol.5

東京・白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ、柴田が日々、何を考えているかを綴ります。

第二章 プロの世界へ

“はじめまして”の方で、vol.1から読みたいと思ってくださった方はコチラからどうぞ
 → 第一章 レストランのシェフになる

5.二転三転の進路

フランス留学に向けバイトの毎日

エコール 辻 東京で1年間学んだ後は、フランス校に留学する予定でした。フランス校は辻調グループ卒業生が行ける上級校で、5か月間リヨンにある学校でフランス人シェフなどの授業を受けた後、さらに5カ月、実地研修ができるというものです。4月スタートの春コースと10月スタートの秋コースがあって、僕は渡仏までに少しでもお金を貯めておきたかったので秋コースを選択し、バイトに励みました。
朝は築地の倉庫番です。乾物や鮮魚などを扱っている会社の大きな倉庫で商品の搬入出対応や管理をしていました。朝5時半に入って、13時か14時に終わると、夕方からは銀座の「串の坊」へ。そんな生活を2~3カ月続けたある日、ふと、卒業してから包丁に全く触らない毎日を送っている自分に気づきました。
急に不安になった僕は、「串の坊」のバイトを次の新入生に引き継いだタイミングで、二つのバイトを辞めました。

新しいバイト先で見えたフランス修業の道

新しいバイト先は、池袋のフランス居酒屋でした。卒業して寮を出ることになって、上板橋で一人暮らしを始めていました。兄の仕事場が池袋だったのでその近くで探し、6畳ワンルームで家賃は7~8万円くらいだったかな。
池袋のお店は、閉店してしまって今はもう無いのですが、厨房には当時は元ホテルの料理長というシェフのほかフランス修業経験者が何人かいて、スーシェフは河野シェフと「レストランひらまつ」で一緒に働いていた方でした。メニューはカジュアルな居酒屋風でもしっかりした料理が作られていました。夢中で働いていたら、シェフから「フランスで修業したいのなら、1年くらい働いたら紹介してあげる」と言っていただいたんです。

決意の後のまさかの急転

数か月後のフランス校留学か、1年後のフランス修業か。自分の中では学校の延長の「研修」より仕事として「実際に働く」方に魅力を感じていましたが、大事なことですし、いろいろな方に相談もしました。もちろん「モナリザ」の河野シェフにも。そして河野シェフの「(数か月後に行くよりも)1年間働いて自分に技術をつけてから行った方が良いんじゃない?」という言葉が決め手のひとつとなり、フランス修業を選ぶことに決め、フランス校留学をキャンセルしました。

ところが、そのフランス修業の話がなくなってしまったのです。
「1年後に」という話でがんばって働いていたのですが、1年を待たずに店の様子が変わっていきました。厨房のスタッフが次々と辞め、残ったのはシェフひとり。そしてフランス料理をベースにしっかり作った料理を出していたはずが、いつのまにか既製品のハンバーグまで出すようになりました。当然のようにシェフの口から修業の話も出なくなりました。
「ここで働いていても仕方がない。」
ほどなく僕はバイトを辞めました。

思いがけない展開

フランス修業どころか無職になった僕は、次の仕事先を見つけなくてはなりません。とはいえ、料理人として自分が働きたいと思える店でないと働く意味はないと考えていました。
そんなとき、僕のことをよく知る先輩が「自分の先輩の店で働かないか?」と神楽坂のビストロを紹介してくださり、面接の結果、無事合格することができたんです。ほっと一安心、と思っていたら、なんと、その翌日に河野シェフから「モナリザに欠員が出たので働かないか?」と連絡をいただいたのです。
神楽坂のビストロを紹介してくださった先輩は、河野シェフに出会う前の自分を作ってくれたと言っても過言ではない憧れの人。その人が紹介してくれた店を断ったら、迷惑をかける上にその人の顔を潰すことになる。
でも「モナリザ」は、僕が「作りたい」「作れるようになりたい」と思っている料理を作っているレストランで、河野シェフは自分にとっての憧れの料理人像そのもの。
めちゃくちゃ悩みました。
そして、思い切って先輩に正直に本心を打ち明けたところ、「こんな人になりたい」と憧れた先輩は以前と変わらぬ竹を割ったような性格で僕の背中を押してくれました。
神楽坂のビストロにお詫びと共に辞退の連絡を入れ、河野シェフに「モナリザ」で働く意思を伝えました。

こうして、僕のプロとしての「モナリザ」での日々が始まることとなったのです。

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このnoteを初めて読んでくださった方へ
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はじめに初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。

お店の公式youtubeチャンネル、Facebookページもご覧ください。

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