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【MMPI研究3】MMPI-2に学ぶ妥当性尺度③ ~VRINとTRIN 

 「MMPIでMMPI-2を使う」ことを目指して学んでいます。「MMPI2(by1)」計画と呼んでます。その学びの一端をシェアしたいと思います。本ノートはMMPIヘビーユーザー向けです。
 いままでMMPI-2トレーニングスライドをしめしてきました。そのなかでもVRINとTRINがちょっとわかりにくい。より開設を新たにするのが、このノートです

1、VRIN~矛盾した答えのバラエティボックス

 再びトレーニングスライドより

7,変更反応非一貫性尺度VRIN (Variable Response Inconsistency)
• ランダム回答を探すために設計された。
• 項目内容が、似ているもしくは反対の内容のどちらか。
• 47と12の対の項目が、二つの方法でスコアされる。
•T値レンジ30~120 
• 適用 
 – ランダム回答の探索 
   VRIN > 80 プロフィール解釈不能 
 – “過剰警戒”の探索
   VRIN < 40
 – F(低頻度)尺度の解釈の補助

https://www.upress.umn.edu/test-division/mtdda/webdocs/mmpi-2-training-slides/interpretation-of-mmpi-2-validity-scales
より
拙訳

 (おそらく)唯一、MMPI-2について解説している井手論文 から、その解説をみてみましょう。

VRIN(Variable Response Inconsistency)は,矛盾した回答となる67対項目の回答の一覧 があり,それに被検者の回答がいくつあてはまるか(該当数)が,粗点となる。それをTスコア に変換する。(MMPIの項目では,45対の項目が使える)。基本的な目的としては,CLS (不注意 尺度)やTS(再検査指標)と同じように,矛盾した回答により,いいかげんな回答傾向をとら えようとするものである

MMPI日本語版使用者のための MMPI-2 井出省吾
札幌学院大学心理学紀要(2020)第2巻 第2号 31 − 40
(黒字強調筆者)

・「同じ内容」と「反対の内容」ペアがあり、そのペアに対して、そんなふうにこたえると矛盾してしまう、一貫性がない(inconsistent=非一貫性)回答だぞ、となった場合に得点になる、ということです。
・例えば(Freedman、1990)
 項目3,朝はほとんど、さわやかにおきて休めている
 項目39、私の眠りは断続的で乱れている
 3「はい」―39「はい」のとき得点
 項目9,日々の暮らしは、おもしろいことにみちている 
 項目56、ほかの人がそうであるように、わたしもしあわせだったらとねがっている
 9「いいえ」―56「いいえ」のとき得点
 項目349,孤独でいるときは決してしあわせではない
 項目515,一人でいるのは決してしあわせではない
 349「はい」-515「いいえ」 もしくは 349「いいえ」-515「はい」 のとき得点

2、TRIN~矛盾した答えの、「はいーはい」「いいえーいいえ」専門

まずは、トレーニングスライド再掲

8,是認反応非一貫性尺度TRIN (True Response Inconsistency)
• とらわれ回答(黙認および反・黙認)を探索するために作られている。
•20対の内容が反対な組み合わせ、3対の対称的にスコアされる項目(両方「はい」もしくは両方「いいえ」)
• 粗点は、T値に変換され、つねに50に等しいかもしくはそれ以上になる。
•T値50以上は、「T」もしくは「F」がつく。
•以下は、とらわれ回答
 – TRIN > 80T OR TRIN > 80F
 [参考]13点以上は黙認(yea-saying)傾向、5点以下は反黙認(nay-saying)傾(RobertGordon)
 高いスコアは黙認(yea-saying)、低いスコアはは反黙認(nay-saying)傾向(Green,1990)
• 適用  
 – とらわれ回答の探索 
  • 読みや理解の困難 
  • 反抗性 
 – L,K,Sの解釈 

https://www.upress.umn.edu/test-division/mtdda/webdocs/mmpi-2-training-slides/interpretation-of-mmpi-2-validity-scalesより
拙訳

 そして、再びいでよ、井手論文。

両者とも「あてはまる・true」と回答すると矛盾する14対 の項目の該当数①と,逆に両方に「あてはまらない・false 」と回答すると矛盾する9対の項 目への該当数②をもとめる。①から②を減算し,それに9を加算して粗点を算出する。粗点は 0から23の値をとることになるが,それをTスコアへと変換する。

MMPI日本語版使用者のための MMPI-2 井出省吾
札幌学院大学心理学紀要(2020)第2巻 第2号 31 − 40

TRINは、「はいーはい」ペアと「いいえーいいえ」ペアが得点されます。「はいーはい」ペアは14対(➀)、「いいえ-いいえ」ペアは9対(②)。

 粗点=➀-②+9

 ということです。なぜ9を足すかというと「いいえーいいえ」ペアが9あって、粗点をマイナスにしないためです。
   そして粗点0~8のときにT得点の後ろに“F”をつける。粗点が9~19ならT得点の後ろに“T”をつける。(例:女性でTRIN粗点が15、得点は95T。男性でTRIN粗点が3、得点は92F) 
 高いスコアは黙認(yea-saying)、低いスコアは反黙認(nay-saying)傾向を表します。
(※13点以上は黙認(yea-saying)傾向、5点以下は反黙認(nay-saying)、RoberGordonサイトより補足参考)

 
[補足]
・VRIN,TRINの訳語はスティーブン・フィン「治療的アセスメントの理論と実践―クライアントの靴を履いて」からとりました。MMPI-2は公式日本版はないけれど知る限り唯一翻訳があるものです。
 ただ訳語がわかりにくさをましているようにおもいます。
 Variableは「変更」だと、何か変数の操作をするような印象をもちます。「可変」とか「変動」とかのほうがまだ内容にフィットしてるのではないでしょうか。
 Trueは、項目を「あてはまる=True」としたことがもともとなのかな、と推測します。True-Trueな答えが不一致な場合、ってことなのかな、と。是認と使うと、Greeneの本にはよくendorsementが当てはまると思うんです。項目をendorseする、というと「あてまはるとかあてはまないとかのどっちかをこたえる」といった意味に使われてるようです。まあだからずれてもないけれど、いっそ「はいはい反応非一貫性」なんて法がわかりやすい気もします。ださいネーミングだけれど。

[文献]
Roger L.Greene. An Interpretative manual of MMPI/MMPI-2 1990
Alan F. Friedman.Psychological Assessment With the MMPI-2

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