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「きみの色」見てきた感想(ネタバレあり)

音楽映画としては、「リズと青い鳥」の方がわかりやすかったかな?自分にとって、そのくらい「リズと青い鳥」にはドラマチックな展開があって、みぞれの覚醒が音楽のクライマックスでも有ったので、自分のような音楽バカには山田尚子監督の描く人間関係の微妙な表現を全部すっ飛ばしても、音楽だけで感じてしまう映画だった。

今回は、そういうドラマチックな演出を極力排除したような作品で、主人公のトツ子は割に喜怒哀楽が分かりやすい描き方で、踊りだしてしまう時の楽しさの撥露は見ているこちらの心も踊る。それに対してバンドを組む二人、”きみ"とルイはそれがとても薄〜く描かれていた、というよりも、繊細すぎる二人なんだということが、言葉ではない描写から伝わってくる。そういった、微妙な3人の、言葉や説明ではない描写や演出を積み上げていった映画。

クライマックスがミッションスクールの「聖バレンタイン祭」にバンドが出る場面なのだけど、それでも当初の盛り上がりは控えめに作ってあった。もちろんこれは主観なので、自分にとっては「リズ」でのみぞれの覚醒があまりにもドラマチック過ぎたというだけのこと(苦笑)。

ある意味、人間描写のやるせなさは、どちらかと言うと「聲の形」に近かったかも?(9/3追記:映画『きみの色』は『聲の形』のアンサー。山田尚子監督のひとつの到達点、という記事を見つけたのでリンク貼っておきます:https://niewmedia.com/specials/kiminoiro/2/

演奏部分に関しては、3人で初めてやるステージにしては完璧すぎる!
初ライブなんて、大抵はいろんなトラブルに見舞われるのだけど、今回はそこはリアルを追求していないので、いきなり上級者レベルで、ほぼ完璧にアンサンブルできてしまう。レイのアレンジがプロ級、テルミン演奏もプロどころか超人級!

"きみ"のリッケンバッカー演奏もずっと落ち着いていて、歌も歌いながらギターも弾いてという意味では初心者を超えてるし、ラストにはフィードバック奏法カマすなんて、あんたの先生はピート・タウンゼントかぶれかい!(^o^)
でもまあこの娘、普段無口なのに案外心根はロッキン娘なんだって、最後の絶叫につながる伏線を、かつてのロックオヤジたちはこの時点で確信したのであった(^o^)

そういう意味では、この映画における音楽の扱われ方は、同じ山田尚子監督作品であっても「けいおん!」とも「リズと青い鳥」とも違うのだ。まあ、そんな事気にするのは自分のような音楽バカだけなので、一般の方はそんなに気にならないかも。しかし音楽チームは明確にそれを意識しているはずだ。

その演奏が聴衆に何をもたらし、それが自分たちに跳ね返ってきて、それから自分たちはどうなったか?と言うところがこの映画の本当に見せたかったところではないか?これはホントによく分かる。

控えめな聴衆が最後の曲であんなにもグルーヴで盛り上がっちゃったら、自分たちの成し遂げたもの、音楽の持つ力を信じないわけにはいかない。それを実現させたのは、案外基本をしっかりやることだったり、リズムを意識下でずっと「感じて」いることだったり、、、こういうことは仲間と一緒に実際にお客さんの前で演奏してだんだん身についていくものなのだけど、今回はそれはみんないきなりできていた(^o^)ま、それが見たい人は「ぼっち・ざ・ろっく!」を見よう!

忘れていけないのは美術の繊細さ!長崎で同じような教会訪れたことがあったので、内部の描写に既視感があった。人の「何か」が色で見えるというトツ子の才能はそんなに異能として描かれていない。まあ、自分の周りには色以外にもいろいろなものが見える人もいるので、異能として強調しないという演出上のバランス感覚は素晴らしいと思う。

なので、あらゆる繊細さを楽しみたい人にぜひお勧めの映画でした‼️


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