第1話 事故【死生の天秤】小説
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箕嶋一稀(みのしま かずき)は、家に着いて鍵を開けると、手も顔も洗わずに、フラフラと寝室に向かった。オンライン、オフライン含め、一日に5件の取材をこなし、隙間時間で記事を書き、食事は新幹線で食べたおにぎり二つだけ。もっとも、食事に関しては、新幹線の中で弁当を食べることもできたが、食事か睡眠か記事を書くかで悩み、記事を書いて20分の睡眠を取る、食事はその隙間の休憩時間に取る、という表決に達した結果なのだが。
(さすがに限界か……)
疲労と眠気で、その場に座り込んで