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すべての不安・不満は二元論から生じる

”越境者”による”越境思考”、今回は「誰でも陥る二元論の罠」について。
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”越境者”は”二元論”を持たない。なぜなら、彼・彼女たちは”境界”を越えた結果として、ある地点で線を引いて、物事を完全に切り分けて解釈、判断することの無意味さを感じて生き抜いてきたからだ。国境、政府、団体、文化、価値観、思想、年齢、性別など。
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香港で民主主義活動家が逮捕されたことについて憤るのは良い。香港に少しは関係がある人だろうし、友人・知人のような人も思い出されて、感情的に揺さぶられる気持ちになるのは理解できる。しかし、その原因と責任を全て中国政府、ましてやその背景に薄っすらと中国人を重ねている人が多い。これも二元論に陥っている人の状態。
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世の中には絶対的な善と悪が存在する。
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はずがない。
個々にとっての相対的な善と悪が無数に存在するだけだ。
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いや、反論もできる。
コンピューターの世界では絶対的な善と悪がある。
なぜなら、彼らは同じ設計図で同じ製造工程を経て、同じアルゴリズムで動くからだ。
そのアルゴリズムには善と悪の定義がプログラミングされている。
そう。コンピューターは0と1のみで動く。まさに二元論の中心的存在だ。
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人間にとって絶対的なユートピア(善の世界)があるとすれば、そこにいるのはもはや人間ではなく、コンピューターやロボット、すなわち0/1のビットで動く、同一仕様の無機物となる。
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世界平和を実現しよう。
人はみな分かりあえる。
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と言っている人自信が、人間、人間性そのものを否定しているという矛盾。
そして、本人がその矛盾に気づいていないという悲劇。
彼・彼女たちの夢を叶えたければ人間をロボット化すれば良い。
個人の”差”を取り払うことを掲げる究極の差別主義者たちは、いつでも平坦な笑顔でやってくる。
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逆説的に言えば、彼・彼女たちの夢は叶わない。
なぜなら、わたしたちは人間だから。
ということで、二元論に固執し、絶対的な悪という存在が頭に浮かんだら危険信号だ。
それは、叶わない夢を持ってしまったことの証明だからだ。
叶わない夢や希望を持つと、人間はそのギャップを埋められないことに苦しむ。
上述した見せかけの「平和主義者」や「民主主義者」が皆不満そうに見えるのはここに理由がある。
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(1) 二元論は人間の論理ではなく、機械の論理だという認識を持つ
(2) 二元論がもたげた時にはコーヒーミルクを思い描く
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(1) 二元論は人間の論理ではなく、機械の論理だという認識を持つ

アダムとイヴは禁じられていたにも関わらず”知の果実”を食べて、お互いが違う性別であることを知り、恥ずかしさを感じ、陰部を隠した。それを見た神は2人を楽園から追放した。これが失楽園の物語だ。似たような物語は宗教の源をたどれば出てくるだろう。
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それまでは、男と女という区別がなかった人類に、性別という概念で線を引き、2つに区切ってしまったことこそが人間の原罪なのだ。禁を破ったことは二次的なことでしかなく、破った内容が神の逆鱗に触れたのだ。そう。楽園が善の集合体で、悪は別のところに存在するのではなく、そもそも善と悪という定義すら存在しないのだ。
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二元論で物事に線を引いた結果として、「あちら側」と「こちら側」とを0/1で判断することがどれほど愚かしいことであるのか、それは歴史が証明しているし、何よりもその戒めとして各地の宗教の極めて根源的な部分に強く残っている。
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わたしたちの先輩が身を挺して証明してきたこと。
それは、二元論に陥ると人は人でありながら機械となり、それが不幸の始まりとなる。
まず、このことを肝に命じておく。ことあるごとに思い出すようにする。
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(2) 二元論がもたげた時にはコーヒーミルクを思い描く

太極図を見たことがあるだろうか。陰陽道に興味がある人なら分かるだろう。韓国国旗の中心に描かれている勾玉が2つ組み合わさったような形のことだ。中国に代表される東洋哲学の中ではこの考え方がベースとなっている。城も黒も明確には別れない。それは微妙に混ざり合っている。そして、それは回転しながら上昇していく。そういうイメージだ。DNAのらせん構造をイメージしてもらっても良い。恐らくそのメタファーにもなっているはずだ。
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自分が何らかの不安や不満を抱えた時にはこの図を思い出す癖を付けて欲しい。太極図でピンと来ないのであれば、カップに入ったホットコーヒーにミルクを入れてかき混ぜるイメージを思い出して欲しい。
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かき混ぜるとミルクは規則性のない形状と動きを見せつつコーヒーに混ざり込んでいく。そこに明確な線を引くことはできない。コーヒーとミルクを明確に分けることはできない。どこがミルクの白でコーヒーの黒であるのか、見た目では判断できないし、すでに元々の絶対的な白、黒とは異なる色になっている。
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世の中の事象も同じ。
全ては複雑に混ざり合っていて、動的である。
元々の絶対的な要素は概念としてはあれど、実体としては存在し得ない。
それが人間が引き起こす現象であり、人間の象徴だからだ。
(もっと言えば無機物も同様だが混乱を生じるのでここでは説明しない)
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実体として存在しない絶対的な正義について不安・不満を感じる必要はない。
それがどう混ざり合っているか、どのような動きの様相を呈しているのか。
その点について自分なりに解釈すれば良い。
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結局は、コーヒーと同じように、出されたものを飲むのだから。
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#越境者 #越境ニュータイプ #越境思考 #越境思考ハック

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