外資系コンサルとのコンペに勝てる効果的な提案書の作り方
効果的な資料の作り方。
目的があるから資料を作る。複数の利害関係者における意思決定や合意形成、情報伝達、ある特定の目標とする対象についての勧誘など、内容は多岐に渡れど到達する状態がある。その目標を達成することができるかどうかは資料そのものだけで決まることはないが、資料が重要な役割を果たしていることは間違いない。こうした前提の中で、効果的な資料、特に提案書を作るためのコツを書く。
(1) とりあえず仮説を考える
(2) インプットしてEvernoteに書き出す
(3) 仮説の本筋とそこに至る落とし穴を考える
(4) いきなりスライドに手を付けずEvernoteに台本を書く
(5) 台本通りにスライドの構成(枠組み)を書く
(6) スライドの枠組みの中身を入れる
今日は(1)〜(3)まで。
(1) とりあえず仮説を考える
自分がコンサルタントであったとして、“A社のアメリカにおける洗浄式便器での新規参入”というお題を与えられたとする。ダメなコンサルタントは、すぐに調べ物(2)にかかる。仮説が無い中で調べるので、切り口が無限にあるため、情報の海に溺れ、優れた仮説の本筋(3)にたどり着くまで時間がかかる。
僕がやるのは、まずその道に詳しい人に話を聞くこと。少なくとも2人以上。当該テーマに関するビジネスについてアメリカでの競争環境(生活者の状況も含む)に詳しい人、できればアメリカ人、アメリカでのビジネス経験者に話を聞く。この場合だと、アメリカでの洗浄式便器について、生活者の使い方、主力の商品の仕様・価格、供給するメーカー、このテーマについての主観的な意見、この辺り。
その上で、ざっくりと仮説を作る。「アメリカは法人市場がメインでまだ成長余地があり、個人市場は黎明期にもなっていないので、法人市場でブランドを築いた上で、その後ハイクラスな個人市場を開拓する」とか。
これをやることで、(2)の情報インプットを行う際のメインの切り口が決まる。今回の場合では、法人市場についての競争環境から調べることができる、という訳だ。
(2) インプットしてEvernoteに書き出す
僕のインプットのやり方は割とシンプル。Googleで(1)の仮説に関するキーワードを検索し、PCで開いたブラウザ3ページ分とする、というもの。
キーワードは”洗浄式便器 アメリカ 市場”あたりに設定して、市場規模や成長率、参入プレーヤーや主力商品の趨勢、その理由としての生活者のニーズ、その他外部環境について情報が得られればOK。
ポイントとしては、検索先のページのデータや文章が別のサイトの情報を引用している場合には、そのソースも確認すること。そうすることで、国家統計データなどの一次情報にたどり着くことができる。
インプットした情報はEvernoteに書き出していく。サイト名、タイトル、記事の内容でポイントになる部分、リンク先URLなどを見た目を気にせず箇条書きに書き連ねていく。そして、Google検索を3ページ分くらい見ると、だいたい同じような情報が出てくる。それがインプット終了のタイミング。
Evernoteを見返して、たまった箇条書きの中で、共通する部分、特徴的な(偏りの激しい)部分について赤い色などでアクセントをつける。
(3) 仮説の本筋とそこに至る落とし穴を考える
(1)の仮説について、(2)の結果、Evernoteの赤い部分から検証し、初期仮説を修正する。それが仮説の本筋となる。
「アメリカ市場は法人市場がメインで成長力も高いが強烈な寡占状態にあり新規参入は難しいため、個人市場の富裕層をターゲットとして参入することが望ましい」みたいなものが本筋になる。
落とし穴と言っているのは、仮説の本筋が論理的かつ合理的な論だとすれば、論理や合理を敢えて外した極めて感情的かつチャレンジングな仮説のことで、本筋とは別に用意しておく。
「アメリカ市場は法人市場がメインで成長力が高いが強烈な寡占状態にあるが故に主力企業2社の製品に大きな差はなく、差別化された対象会社の商品で十分に勝負ができる」といったもの。
ここでのポイントは、仮説を正確に当てることが重要ではなく、限られた情報の中でどれだけ考えたのかを相手に知らせることで、提案される側が提案する主体すなわち僕らと思考ゲームを行うことに楽しさや興奮を覚えることができるか、にある。経営者はだいたい極端な仮説を常に頭の中で戦わせている。それと似たようなことを相手もできる、しかも短時間で、と思わせれば嬉しく感じるものだ。知的ゲームができる相手であると思わせることができれば、ほぼ勝ちだ。
以上。しつこいようだが、(3)までできればほぼ勝てる。シンプルなことだが、コンサルティングファームも含めて、実はこの基本ができていないことが多い。(2)から入ってファクトを積み上げて、(3)で本筋しか準備してこないというパターンだと、提案される側の経営者からすれば、それくらいのことは既に考えているし、本当はもっと柔軟な知的ゲームとしての議論がしたかったのに、と不満が残る。
(3)で、「”本筋”はこうですけど、実は”落とし穴”じゃないですか?その方がワクワクしませんか」とやられることを経営者は望んでいる。例えそれが十分に検証されていないものだったとしても、筋道が通っていれば、前提を疑ってみたり、異なる論で展開してみたりと”ゲーム”を始めることができるからだ。
相手はダラダラとした説明を聞かされることを望んでいない。
議論して、知的ゲームを行い、興奮の中で楽しさを感じたいと思っている。提案段階では、正しさの結果を証明するのではなく、正しいと思うことについて”その場で議論をして相手とともに磨き上げていく”過程を望んでいる。
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