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港町/想田和弘監督

渋谷のシアター・イメージフォーラムが「オンラインチケット購入」になってました(びっくり)。もう整理券を求めて早めに出かける必要がなくなりました(ロビーが狭いし)。小さなシアターだけどたまに満席で入場できなかったりしたこともあったなぁ。今は昔。

想田和弘監督の『港町』を見ました。ドキュメンタリー映画です。前回は『牡蠣工場』を見ましたが舞台は同じ岡山県牛窓。
http://minatomachi-film.com

ところで、デジタルのカメラは素子がRGBだからそもそもカラーで撮影されます。フィルムカメラであれば白黒で撮るときは初めから白黒フィルムを使うわけで、デジタルでモノクロ映像(それは「写真」でも同じですが)ならRGB→モノクロ変換で結局フィルムの白黒を模したものですから「意味的」にせよ違和感はあります。ただ映画を最後まで見れば、少なくともその意味はわかるようになっています。

想田和弘監督によれば、「編集が仕上げの段階に至るまで、この映画は全編カラーで作られていて、カラーコレクションも済ませていた。しかし柏木の突然の思いつきをきっかけにモノクロームにすることを決め、カラコレを一からやり直した。」ということです。柏木さんは共同製作者で想田監督の映画の中にもしばしば出てきます。

作品についていうと、前作でも感じたように、カメラと被写体の距離が非常に近く、監督本人がおそらく機材を全て抱えての対話をする距離がそれに出ているのだと思われます。監督の言う「観察映画十戒」での「ナレーション・テロップ・音楽を使わない」という部分は、ドキュメンタリー「映画」(テレビ番組でないという意味で)としてはごく普通ですが、その他の項目を裏付けるというか、それが素直に出ているのが「対象との近さ」のようにも感じます。「オートフォーカス」が対象へ焦点を探していたり(「映画」ではあまり見かけません)、カットの途中でグイッとズームしたりもしますが、それも監督の「観察行動」と連動しているからなのかもしれません。

さて「ワイちゃん」という漁師さんを「近い」距離で撮り始め、魚屋の奥さんやら地元の人や猫たちを撮っているうちに、どうやら、しばしば画面に入り込んでくる「クミさん」という人が視点の中心に映されるという、いわば経過ごと示されている映画なのですが、監督被写体である「クミさん」との距離感を感受し始めるとともに、カメラとの距離が、おそらく無意識に後退し、「クミさん」と言う個人、と牛窓という土地とそれを抱え込む時間とが急速に動き出し...、という映画だったかなと思い返しています。

監督:想田和弘
2018年4月14日鑑賞

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