見出し画像

作兵衛さんと日本を掘る/熊谷博子監督

熊谷博子監督のドキュメンタリー『作兵衛さんと日本を掘る』を見ました。
https://www.sakubeisan.com/intro

元々は「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(こちらは若干の問題を含んだと記憶している)の補完資料として提出されていた、炭鉱夫山本作兵衛さんの炭坑記録画と記録文書が、独立した「世界記憶遺産」として2011年5月に登録されました。絵画、日記、雑記帳や原稿など計697点。膨大ですね。

資料を見ると「少年期には一時期坑夫をやめて絵描きを志し、福岡市のペンキ屋に弟子入りしたこともあったが」とありますが、炭鉱夫の仕事を退いた60歳半ば頃から(1957年)「自らの経験や伝聞を基に、明治末期から戦後にいたる炭鉱の様子を墨や水彩で描いた」ということです。

作品に興味がある方は
http://www.y-sakubei.com/world_appl/gallery.html

絵は素朴ですが、映画の中で菊畑茂久馬も語るように、愛情に溢れた「まなざし」がすごくいいんですよ。

ただ、それが素朴で美しい記憶ということではなく、映画の中で引用される作兵衛さんの言葉「けっきょく、変わったのはほんの表面だけであって、底のほうは少しも変わらなかったのではないでしょうか。炭鉱はそのまま日本という国の縮図に思われて、胸がいっぱいになります。」が心に響きます。

日本が抱えている問題は戦前から一貫して変わっていない。それが「作兵衛さんと日本を掘る」という言葉に現れていると思います。想像以上に多くのことが学べる映画です。機会があれば是非。

監督:熊谷博子
2019年8月17日鑑賞

ありがとうございます。サポート頂いたお金は今後の活動に役立てようと思います。