双葉駅にて
その1 2023年12月9日 土曜日
東日本大震災以降「当面の間運休」とされていた、いわき駅 - 仙台駅間の特急(当時はスーパーひたち)は、2020年3月末に常磐線の不通区間であった富岡駅 -浪江駅間の復旧に合わせ特急「ひたち」として復活した。都内からいわき駅までは、相応の本数の「ひたち」が運行するが、いわきより先、仙台に至る「ひたち」は1日3往復のみである。仙台駅16時06分発特急ひたち26号に乗車。
今晩は富岡泊だが、ふと思いついて双葉駅で下車することにした。自分は常磐線の全線開通後、2021年2月に初めてここを訪れたのだが、それは駅から2キロほど先にオープンした東日本大震災・原子力災害伝承館に行くためだった。町内全域が帰還困難区域の双葉郡双葉町に復興祈念の公園と企業誘致のエリアを建設し、特定復興再生区域と制定したのだ。去年2022年8月の下旬に駅前エリアの避難指示解除に合わせて、駅前の一角に双葉町町役場がオープンした。自分は7月に再訪し、その時は伝承館から震災遺構となった「浪江町立請戸小学校」を訪ねた。
17時29分双葉駅着。常磐線の被災地一帯で、駅前に町役場があるのはおそらくここ双葉町だけだろう。そして予想通りというか、ここ双葉駅前にはおそらくエリアで唯一のクリスマスイルミネーションがある。
次の各駅停車の発車が約30分後。電飾の華やかさと静けさ。駅周辺の復興は程遠い。カメラを手に駅前を周辺を歩いていると、伝承館・産業交流センターから、おそらく日曜日は最終便となるシャトルバスが入って来た。
仕事から解放された運転手は私の姿を見留めると、大きな声で「アーユー・オーライ?」「ユーゴー、ジャパン・レイルウェイ?」と呼びかけた。
「ムムム…」かれこれ60年近く日本に生きていて、外国人観光客に間違われたのは、生まれて初めての経験だ。うむ。ここはしっかりと「言葉」を返さねばと意気込んだが「…アリガトウ、ジェイ・アールデ、カエリマス」と、なんだかぎこちない日本語となってしまった。運転手は満足そうに「「ユーゴー、ジャパン・レイルウェイ、オーライ!!」という。
ここ福島にもインバウンドの波が…。確かに東京で買い物をしたり京都で観光をしたりする、他の多くの外国人とは違う考えで旅をする者もいるわけだろうが、あらためて驚いた、という話。つづく