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富岡駅と
2023年3月30日(木) Day 2 その3
一度ホテルに戻り荷物を整理する。ここも2階建の単身者用アパートのような外観の労働者向けビジネスホテルである。
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富岡駅は海岸線から500メートルとほど近く、津波に流された駅舎の写真で知られている。自分はその壊れた駅舎を見ていない。
震災から常磐線全線運行再開までの道のりをまとめる。2014年6月に避難指示解除準備区域にあった広野〜竜田間の運行が再開、2015年1月末には第一原発周辺の帰還困難区域を通過して竜田駅から原ノ町駅までを繋ぐ代行バスの運行が開始した。同年9月に楢葉町全域で避難指示が解除。2017年10月に富岡駅まで運行区間が延長され、代行バスの起点も富岡駅となった。
自分が富岡を訪れたのが2018年3月。駅舎が新設され西口にバスロータリーが整備された。その後幾度か帰還困難区域を走るバスに乗るため富岡へ立ち寄ったのだが、2020年3月についに悲願の常磐線全線開通へと至る。
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ここ富岡駅から第一原発までは9.7キロ。2017年の時点では富岡駅以北、夜ノ森周辺を含む北部地域は帰還困難区域にあった。富岡町は原発事故で町民を分断された町である。駅から海側の広大な空き地からもわかるように、避難指示が解除され5年半が過ぎた富岡駅周辺と、一足早く全町で避難指示が解除された隣町楢葉の竜田駅周辺と比べれば復興も道半ばだといわざるを得ない。
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富岡駅をまたぎ浜街道呼ばれる県道391号線を国道6号線とを結ぶ巨大な「橋」汐橋が去年2021年5月完成し、駅周辺の風景もすっかり変わって見えた。まだGoogleマップにさえ反映されていないが、浜街道の富岡町毛萱工区が開通したのでさえ、つい先日の2023年2月26日のことなのだ。
ところで、ここ富岡町と楢葉町の境界に福島第二原発がある。皆ほとんど忘れてはいるだろうが(いや地元民でなければまずは知らないだろう)、あの大津波ではここ第二原発の1号機もかなり危うい状況だったのだ。2019年に廃炉が決定し、2021年からは廃炉作業が始まっている。昨年2022年夏に自分も訪れたが富岡には東京電力廃炉資料館があり、第二原発の存在意義は、ある意味で第一原発の未曾有の廃炉作業をも見据えた実験場となることなのだ。富岡駅から第二原発まではわずか2.2キロ。
汐橋から完成したばかりの浜街道に入ると、巨大堤防の上から海を眺めている人が見えるのだが、この付近の堤防の入口はロープで仕切られ立ち入りができない。ただしこういう状況は今までにもあり、大抵の場合は問題ないことになっている。すぐに第二原発の姿が見えそのまま歩みを進めると、案の定、堤防は浜街道に交わる最後の5メートルの工事が終わっていないだけである。第二原発の建物には特に感慨はない。静かで穏やかな建物がそこに見えるだけだ。しかし実際は、ここ福島第二原発からも、東京にそして首都圏に、電気を送り続けていたのであるが。
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その場を折り返し、浜街道をまっすぐ富岡漁港に向かって歩く。日本一小さな漁港といわれ、震災で壊滅的な被害があった…。というか「ろうそく岩」と呼ばれるかつての名勝自体が、津波で根こそぎ流されてしまったのだという。2018年に富岡に訪れた時には、錆びついた漁船がそのままの姿で岸に繋がれていたのだが、今は潮流が安定したのか、船は砂に埋もれ静かに眠っているように見えた。
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新しい漁港には数隻の船がつながれている。ここからは第二原発がよく見え、超望遠レンズを手持ちにして撮影した。
18時13分富岡駅発。18時23分竜田駅着。前日のうちに竜田の「きむらや」という店に予約を入れた。竜田駅前に古くからある海鮮料理の店で、震災後はいわきへ店を移し、2020年にこの地に戻ってきたという。ガラス窓越しにスーツ姿のサラリーマンの宴会が見えた。年度末の送別会かもしれない。「福島イノベーション・コースト構想」という国のプロジェクトで、復興関連の企業を誘致している。
「カメラマンさんですか?桜撮りにきたんですか?」
20時53 分竜田駅発下り終電。21時00分富岡駅着。
続く
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