読まれなかった小説/ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督
トルコの巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『読まれなかった小説』を見ました。英題は『the Wild Pear Tree』。その「読まれなかった」小説のタイトルです。ジェイラン監督は2014年に『雪の轍』でパルムドールを取っています(見逃してしまいました...)。
小説家志望のシナンが大学を卒業し故郷の町に戻ってくる。そこで父親と向き合い、自分自身と向き合う。簡単に言えばそういう話です。誰しもがそうか、それは分かりませんが、青年期にありがちな葛藤だと言えるかもしれません。
3時間を超える大作映画ですが、その間「シナンくん」はとにかく喋りまくるのです。自意識過剰とか傲慢とか、まあ必ずしもそうとも言えないのですが、誰彼問わず、自分の「思い」をぶちまけるわけです。
トルコという国はとても美しい国で、自分はロンドンにいる時、イギリス人と一緒の格安ツアー(バスで西海岸を走る)に参加したことがあります。どこまでも美しい国。ジェイラン監督の映画にはそんな映像が満載です。少しオレンジがかった陽光が差し込む、乾いた空気と。
ところで、なぜ定年間近な教師である父親イドリスは、競馬にのめり込んでいるのか、そのことについて実は語られていない。でも、その息子シナンが語る(喋る)内容を静かに追っていくと、イドリスの、あるいはトルコという国がかかえこんだ10年なり15年について、関係が描かれているようにも思えるのです。
井戸を掘ること。再び掘り始めること。
結構「男臭い」映画とも言えるのですが(父息子関係ですから)、でもジェイラン監督自身はそのことについて意識して撮っているように感じます。ハティジェという女の子が出てくるのですが、やはりそれはあるべきシーンです。
公式ページ
http://www.bitters.co.jp/shousetsu/intro.html
英語字幕トレーラー
https://www.youtube.com/watch?v=po0vls18Koc
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 出演:アイドゥン・ドウ・デミルコル | ムラト・ジェムジル | ベンヌ・ユルドゥルムラル
2020年1月27日鑑賞
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