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山河ノスタルジア/ジャ・ジャンクー監督

自分はシネフィルではないのですが、映画に対する「愛」は強い方なので、一度作品が気にいるとその監督の作品を継続して見続けたりします。賈 樟柯 (ジャ・ジャンクー)監督もその中の一人で、『長江哀歌』、『四川のうた』、『罪の手ざわり』と続き、今日は最新作の『山河ノスタルジア』を見に行きました。
http://www.bitters.co.jp/sanga/introduction.html

1970年生まれのジャ・ジャンクーは、一貫して移りゆく中国とそこに生きる人々を撮り続けている監督なのですが、スタイルはそのたびごとに変化する方だと思います。今回はいきなりペット・ショップ・ボーイズの「Go West」から始まりますが、ツボにはまるというよりは、何かこう「若さ」に対する気恥ずかしさを喚起するような...。ジャ・ジャンクー監督は45歳だそうなので、中国という別の枠組みの世界を見ながらも、微妙に同じ匂いを感じ取っているのでしょうか。

前作の『罪の手ざわり』のハードさから比べれば、いかにも通俗的な、そしてストーリーもどこか見たことのあるドラマのような設定であったりします。でも考えてみれば、私たちの思考は、それが中国であれ日本であれ、多くがメディアに乗った同じようなイメージをなぞりがちであり、それが現代を生きるということなのかもしれません。

タオという一人の女性を軸に、1999年→2014年→2025年という過去から現在を経て近未来という時間の流れで映画が撮られるのですが、それが単に涙を誘うクリシェとして収まってしまわないのは、この映画が一分の隙もないカットの集まりでできているからなのだ見ています。ちょっとした感情の襞をすくう俳優陣の実力も凄いのですが、この映像の美しさこそが映画の持つ力だと思うわけです。

2時間を超える、この手の映画では多少長めの上映時間ですが、3つの時代/時間の流れに沿って、画面の縦横比をスタンダード→ビスタ→シネスコと横長に変えています。細心の注意を払って構成された美しい映像を是非。

監督:ジャ・ジャンクー  出演:チャオ・タオ | チャン・イー
2016年4月27日鑑賞

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hideonakane
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