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万引き家族/是枝裕和監督
是枝裕和監督の『万引き家族』を見てきました。カンヌ国際映画祭で5月にパルムドールを受賞。
http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/about.html
「祝意」について、公開前から話題になっていますが、「映画」というのは基本的にそれほどに単純にはできていないのです。いずれの立場からにせよそれは政治利用でしかなく、「映画」はただただ「映画を見ることによってのみ」語られるべきですね。それぞれが作品を見て感じたことを自分の言葉で表現することが、是枝監督への「祝意」ではないかと。(監督本人からのコメントも出ていますね)。
確かにこの映画では、今、日本で起きている厳しい現実について(しかもほとんど可視化されていない現実について)描かれているのですが、一方でこれはとても「優しい」映画であった、というのが私の思うところです。ただ、その物語には想像以上に怖いものが織り込まれていて、ただそれに気づかない方が幸せであることもあり、「優しさ」についてはそれを吟味することが必要でありそうです。
通常映画は「見えること」の中で描くことが前提(「見えないことはわざと隠しているのでそれについて考えて」と言うのが定石)ですが、一方この映画では各々の人の人生の「見えない部分がある」現実を描いたと言っていいかもしれません。どの深さで見るのかは見る人に寄るだろうと思います。
「家族」について、その「正しい形」というのを私たちは刷り込まれがちであって、無意識のうちにそれ以外のものの形を排除するような、そんな社会に於いて、あえて「家族」について、あるいは「絆」について問いかけること。ひとつの家族の物語としてはもちろんフィクションなのですが、フィクションだからこそ描けるリアリティーに、強く心を揺り動かされます。
監督:是枝裕和 出演:リリー・フランキー | 安藤サクラ | 樹木希林
2018年6月9日鑑賞
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