TENET テネット/クリストファー・ノーラン 監督
ひと月前に封切られたこの『テネット』、「難解な」ストーリー展開が評判になっていたのですが、こういう映画はツイッターとかでやれ「難解だ」、「2回見た」「3回見た」みたいに拡散されるようにできているのですが、落ち着いて見れば特に難解なところはなかったですけどね...。
時間が逆行して、それが現在の時間と交差しながら高速で映画が展開するので、最初は少し混乱しますが(それに多分字幕を読んでしまうと思考が画面に追いつかない)、映画の「時間」というのは、そもそもああいう構造なので、丁寧に布石されるひとつひとつのエピソードを、ひとつづつちゃんと回収していけば、全て繋がって理解できるようにできているわけです。
主人公(protagonist)の男(ジョン・デビッド・ワシントン)は、「地球の危機」を救うミッションを受け、ロシアの富豪で武器商人のセイター(ケネス・ブラナー)に接近します。主人公(これもキーワード)には名前が無い設定で、彼を助けるエージェントのニール(ロバート・パティンソン)、セイターの妻キャット(エリザベス・デビッキ)が主な登場人物です。ちなみにキャットの職業は美術品の鑑定士ですって。
何を書いても「ネタバレ」になりそうで滅多なことは言えないとして、主題は「過去を知る未来の人間」が「過去」を書き換える物語であって、結果的に現在を生きる人間はそのことを知る由もなく「時間」を生きるということですね。
アクション映画としての見せ場はよく抑えられていて、単にフィルムを逆回転させているだけではないスリル(カーチェイスとか)があります。それから現代的な「視点」としては、キャットが夫の抑圧(典型的なDVですね)に自らの手で始末をつけるところでしょうか。
ところで美術の人間からすると、冒頭に出てくるゴヤの贋作に「お金」とか「欲望(支配欲)」とかを被せるのはまあ良いとして、それが何故ゴヤの(贋作ですが)その一枚(一瞬写るのだけど素描?版画?)だったのかについては、映画の中で何か考慮されていたのだろうか...というあたりでしょうか。
監督:クリストファー・ノーラン 出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン | ロバート・パティンソン | エリザベス・デビッキ
2020年10月21日鑑賞