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浪江駅から請土漁港まで

その2 2024年6月28日 金曜日

浪江駅から請土漁港へ

承前 夜ノ森駅10時20分発下り原ノ町行き乗車。浪江駅10時34分着。

古いブログを確認すると、6年前の2018年2月23日に浪江を訪ねている。2017年10月常磐線の竜田〜富岡駅間が復旧し、新しく整備された富岡駅前のターミナルから代替バスに乗り、帰還困難区域(夜ノ森、大野、双葉駅は閉鎖中)を通過して浪江駅で下車した。震災前には2万人が暮らしていた浪江町は、この時点で306世帯440人が帰還していた。現在は1384世帯2226人(2024年5月末)がこの町に居住するが、今なお町の西側半分を超える帰還困難区域を抱えている。

一昨年2022年7月10日に、双葉駅から伝承館・産業交流センターを経由して震災遺構となった波江町立請戸小学校を訪れた。今回は浪江町側から、請土漁港を経由して浪江町から双葉町間に築かれた巨大堤防の上を歩いてみようと思った。海沿いのこの地区も地震直後の大津波によって壊滅的な被害を受たが、その傷ましさは、翌日の3月12日に福島第一原子力発電所の10キロ圏内の警戒区域となり、行方不明者の捜索もままならぬまま土地を離れねばならなかったことにある。

浪江町役場の入口。奥は仮設商業施設があったところ。

さて浪江駅の駅舎および周辺地区は、6年前の前回の訪問時とほぼ同じ姿で残っていた。もちろん崩れた家屋は取り壊されてはいるが、海から5キロ離れたこの地区では津波の被害が及ばなかったことに加え、風向きの関係で飛散した放射性物質の量が比較的少ない地域となった。だから2017年には避難指示が解除されたわけだが、後から「特定復興再生拠点区域」となった夜ノ森や大野駅前のように、地区が丸ごと造成されるようなことはなかった。夜は「ネオン」が灯る第一原発の労働者の街でもあったわけだが、街の再開発についてはまだ先の課題なのだろう。

駅から東へ15分程で浪江町役場があり、その隣は新たにオープンした「道の駅なみえ」がある。以前はその場所に飲食店などの仮設商業施設があった。向かいには大手スーパーが入っている。

国道6号線を渡り、しばらく進むと請土川だ。橋を渡り長閑な風景を眺めながら川沿いを歩いてゆく。河口近く、左手に大きな工場のような施設が見える。googleマップを確認すると浪江町減容化施設(浪江町仮設焼却施設)とある。津波の瓦礫や家屋の解体後の災害廃棄物、除染廃棄物を焼却し減容化する施設だ。橋を右手に折れると請土港の漁船が見える。さらに視界の先には真新しい社、津波に流された苕野 くさの神社が見えてくる。

緑豊かな
河口付近。巨大堤防が見える。
浪江町減容化施設
真新しい船
苕野神社

請土漁港から産業交流センターへ

雨が少し強くなってきた。これから海岸線に沿って約4キロ、巨大堤防の上を歩く。これだけの距離が続く防潮堤は珍しいのではないか。白く美しい浜が続く。

ここで人とすれ違わないのは、この地区に今は誰も住んでいないからだ。

浪江小学校が見えてくる

300メートル程内陸を走る道路沿いに震災遺構浪江町立請土小学校がある。繰り返すが、その傷ましさは第一原発の10キロ圏内の地が津波の翌日に警戒区域となり、行方不明者の捜索が早々に打ち切られ、土地を離れねばならなかったことにある。防潮堤の内側では防風林の育成が行われているが、同時にそこは住民が津波に巻き込まれ、命を落とした場所でもあるのだ。

堤防を降りずにそのまま歩き続ける。じきに砂浜が見えなくなりテトラポッドの岸壁となる。視線の高さのせいで海水が消波壁を超え溢れそうに見える。

巨大防潮堤は一旦途切れ県道391号線に戻る。橋を渡ると右手に雨に煙る復興祈念公園が見え、東日本大震災・原子力災害伝承館と双葉町産業交流センターが確認できる。浪江駅から2時間半休みなく歩き続けた。この場所は3度目の訪問となる。現在13時前。昼食を取ることにした。

伝承館入口

双葉町産業交流センターには、東京電力、除染解体業者、ゼネコン、高速バスの会社の他、地元の事務機器販売のオフィスの他、1階には会議室と浪江の仮設商店街にあった「浪江焼きそば」の店や双葉駅前にあった飲食店等のフードコート、2階には眺めの良いレストランが入っている。今回初めて気づいたが、壁に「レストランエフ」と書かれている。「エフ」は福島第一原発(F1)を想像させるが、東電の子会社が運営している(恥ずかしくはないのだろうか…)。ランチメニューはいくつかあり、少し迷ったが、地元の請土港で水揚げされたヒラメの天丼(1500円)を注文する。ヒラメは肉厚で柔らかい。

今回は伝承館には寄らないが、内容についての云々(責任について言及されていない)のせいではなく、うかがった「語り部」の方のお話が、ただただ居たたまれなかったからだ。大熊町出身で、元東電の関連会社で働いていたという方だった。

手前が芝刈りロボット
エネルギー?
双葉の海と堤防

施設の屋上が解放されている。伝承館の屋根と稼働する2台の芝刈りロボットが見える。公園内に津波で1階部分が流出した家屋が残されているのは所有者の抵抗だろうか。あるいは震災遺構としてそれを町に差し出したのだろうか。だが、この家屋の手前にはまた土台だけが残された墓地があり、花台には仏花が備えられていた。第一原発の方角は霞んでいてよく見えなかった。

伝承館・産業交流センター14時10発のコミュニティバスに乗る。ご婦人方のグループ10人程と乗り合わせる。14時16分双葉駅着。14時31分発常磐線上り列車に乗車、16時46分富岡駅着。明日仕事なので一度都内に戻る。15時46分富岡駅発特急ひたち22号に乗車する。 つづく


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