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残像/アンジェイ・ワイダ監督

去年10月に亡くなったアンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』を見ました。第2次大戦後のソビエトの影響下におけるポーランドで、画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ(1893~1952)の、全体主義体制もとで芸術家としての尊厳が踏みにじられていく晩年の4年間を描いた映画です。
http://zanzou-movie.com/about.php

国内外で評価のある芸術家で、フォーマリズムの理論家でもあり大学で教鞭をとるストゥシェミンスキが、学生たちに囲まれ「残像」について話をする場面から始まります。おそらく意図的だと思うのですが、美しい草原の風景がわずかに傾いでいて、この先に起こるであろう国家との軋轢(弾圧か)とその不安を暗示させます。あるいは楽しげに丘の上から転がり落ちるシーン自体がその転落への幕開けだったのかと、後になって思い返してみたり。

映画の全てが美しいカットから構成されていて、それはストゥシェミンスキが最後の力を振り絞るショーウインドウの中でのシーンでは特に強調されていました。『灰とダイヤモンド』のラストシーンとも少し重なるところがあると思いました。また、別れた妻カタジナ・コブロの墓に(青く染めた)花を備えるシーンもとても印象的でした。

予告編で「表現の自由と戦った男」とありますが、それはちょっと映画予告にありがちな「薄っぺらい」感じがしましたが、ストゥシェミンスキの画家としての生き方が、アンジェイ・ワイダの映画監督としての信念、あるいは激動の20世紀の歴史の中で持ち続けた彼の希望とも重なる、そんな映画であったと思います。機会があればぜひ。


主人公については公式サイトの「ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキについて」に詳しいですが、英語で書かれた資料が以下にありました。http://culture.pl/en/artist/wladyslaw-strzeminski

監督:アンジェイ・ワイダ  出演:ボグスワフ・リンダ | ゾフィア・ヴィフワチュ
2017年7月13日鑑賞

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