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私の大嫌いな弟へ/アルノー・デプレシャン監督

アルノー・デプレシャン監督の「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」を見る。

デプレシャン監督の作品は、自分は「キングス&クイーン」(2004)「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」(2013)「あの頃エッフェル塔の下で」(2015)と見てきている。

コロナ禍で映画館のキャパが制限されたせいなのか、ここしばらくは日本での劇場公開がなかったが、今回久しぶりにデプレシャン作品を堪能した。

さて、姉弟に限らず「家族」という枠組み中での子どもどうしの立ち位置は微妙である。優秀な姉とどちらかといえば鈍臭い弟と、両親が子どもへ傾ける「期待」をそれぞれが「役割」として演じつつ、両親への承認欲求はまた、双方の間に複雑に絡み合うだろう。大人になってその構造が顕在化するあたりは、確かにあり得る設定であろう。

姉アリス(マリオン・コティヤール)は、高名な舞台女優として活躍してきた。それに対し弟ルイ(メルヴィル・プポー)は売れない詩人だったのだけれど、彼の「受賞」を期に二人の姉弟の「関係」が崩れ、抑えていた互いの(初めは姉の方からだったが)「憎しみ」の感情が、堰を切ったように流れ出す。二人の関係は当然硬直化し、もはや修復不可能な絶縁状態であったのだが、両親の突然の事故によってあらためて二人が相対するところとなり、各々の感情に向き合わざるを得なくなるという話である。

物語の構造はいたってシンプルだが、起こるべくして起こるその微妙な感情の揺れを描出するために、登場人物の数を増やし、ささいな点と点を積み重ね結びつける演出がデプレシャン流だ。ルイの妻で外国籍と思われるフォニア(ゴルシフテ・ファラハニ)の存在は、姉弟間の「距離」を顕にする。逆に役者アリスのファンとして慕うルーマニア人のルチアとの交流は、虚実のあわいにこそ存在する感情の深い裂け目を、緩やかに繋ぎ留める役割を持つだろう。

複雑な時代に於いて-もっとも複雑さの内実は実は簡素な構造の中にあるわけだが-いかにして「赦し」の糸口を見つけ、それを解きほぐし和解に至るのか。デプレシャン監督の映画は人間の「弱さ」と「優しさ」の関係について、実はフランス映画ではあまり描かれてこなかったような気もするが、問い直しているようにもみえるのだが。

監督:アルノー・デプレシャン  
出演:マリオン・コティヤール | メルヴィル・プポー | ゴルシフテ・ファラハニ


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hideonakane
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