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行き止まりの世界に生まれて/ビン・リュー監督
ビン・リュー監督(1989年生まれ)のデビュー作「行き止まりの世界に生まれて」を見た。一見スケートボードに打ち込む「男の子」たちを撮った映画だが、実際は、ひとことでいえば「マスキュリニティ」を扱った優れたドキュメンタリーだと言える。
例えば「スタンド・バイ・ミー」のようなノスタルジーは、映画のテーマとしてはすでに過去のものだということに尽きる。ビン・リュー監督自身が、自らのステップ・ファーザー(継父)から受けた「暴力」と向き合うことがこのドキュメンタリーのひとつの軸になっていて、これがアメリカの、ひいては世界に通じる現実として私たちの時代に開かれている。
ビン・リュー監督はシカゴで映画の撮影助手として修行を積み、故郷のロックフォードで16歳のアフリカ系アメリカ人の少年キアーに出会い、またかつての「仲間」である23歳のザックの撮影を始める(ザックはリーダー的存在で「父親」になったばかりだ)。映画には少年時代のビン・リュー監督が撮りためたスケボー仲間の映像が挿入されるのだけれど、スケートボードに打ち込む彼らは、実は同様の問題を抱え、その「支配」から逃れるように、それ故にそ少年時代の「時間」を、スケートボードに打ち込むその時間を共有していたのだということに徐々に気づいていく。
原題の『Minding the Gap』は、道路の「段差」の状況を常に意識しながらはスケートボードに乗る彼らの行動を指している。スケボーをする時はそれ以外のことを忘れられる。非常に厳しい、見ていて苦しく辛い映画ではある。しかしビン・リュー監督自身はこの映画に「希望」を託していて、そしてそれが心に強く響く「美しい」映画でもある。
監督:ビン・リュー
2020年11月14日鑑賞
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