#38 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第25話「主を見捨てた怪物」
明朝の朝陽が薄っすら空を蒼くなっていくシカゴの大都市が瓦礫の山に溢れ返っている中、都市の中で戦っている二人の姿があった。
竜賀「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
瓦礫だらけの都市に響き渡る大声で飛びかかる少年・藍川竜賀は両手に握った日本刀でアレックス・ブルガントに斬りかかっていった。
アレックス「チッ!!調子に乗るなよ小僧!!!」
ピシャアアア!!!
アレックスは手に握っていた小槌を振るって稲妻を発生させていた。電撃は直角に曲がりながらも、獲物を狙う蛇の様に竜賀目掛けて飛んでいった。
竜賀「っらああ!!!」
しかし、竜賀の身体に電撃が直撃しても攻撃の勢いは全く衰えることはなかった。
竜賀の深い踏み込みから放たれる斬撃はアレックスの身体に纏う磁力の鎧に後数ミリと言うところまで切り込んでいた。竜賀の怪力に押されアレックスは知らず知らずの内に数歩後に下がっていた。
アレックス「コイツ…大した怪力してんじゃねぇか…その歳にしてはなぁ!!」
ドゴォ!!!
アレックスも決してやられっぱなしではいなかった。竜賀がここぞの大振りの一撃を入れるタイミングを見計らって小槌に電気を纏わせ、竜賀の顔面目掛けて小槌を叩き込んだ。
竜賀「グアァ!!?」
アレックス「舐めるなよ小僧…多少腕に自信があるかもしれねぇが、お前とは潜り抜けて来た死線が違うんだよ!!これが経験の差だ!!」
アレックスは怯んだ竜賀に立て続けに連続攻撃を加えた。竜賀は竜ノ鱗の効果をまだ持続していたとはいえ、連続攻撃の手数の多さに戸惑っていた。
竜賀(これじゃ反撃できねぇ…けど!一発一発はそんなに効いてる訳じゃねぇ!力で強引に押し切る!!)
何とかアレックスの連続攻撃を振り切って、斬撃を叩き込もうとした。しかし、その瞬間すらも狙われていた。無理矢理踏み込んできた時アレックスは引き技を見せた。すると竜賀は完全にバランスを崩してしまった。
竜賀「な!!?」
アレックス「これが正しい引き技って奴だ小僧」
ドゴォォン!!!
小槌を大きく振りかぶって、隙だらけの竜賀の背中に特大の電撃を纏った小槌を叩き込んだ。
竜賀「ガアアア!!??」
アレックス「よく分かったか小僧?…アメリカでも屈指の犯罪組織のトップに立つ適能者と…経験値の浅い適能者の小僧の埋め難い絶対的力の差って奴をな!!」
アレックスの一撃を喰らった竜賀は痛みで怯みはしたものの、両足でしっかり立ち刀をしっかり握り締めた。
竜賀「はぁ…はぁ…はぁ…埋め難い力の差がなんだ…!!そんなもんが強敵から逃げる理由にしてたら、いつまで経っても弱いままなんだよ!!」
アレックス「…ハッ!…つくづく良い根性してる小僧だな?いや…それ以上に勇気もある…つくづく失うには惜しい男だったぜ」
竜賀「ま…だまだ終わっちゃいねぇ!!」
竜賀は刀を振り上げ、またアレックスに飛び掛かった。しかし、刀はアレックスに届かなかった、どころか1m手前で地面の重力に引き寄せられる様に竜賀は地面に倒れ込んでしまった。
竜賀「ぶお!!?」
グシャ!!
竜賀はさっきまでの身体の身軽さが全て消え、鉛の様な身体の重さがのしかかっているのを感じた。
竜賀「ぐ……な…何で…!!?」
アレックス「小僧…まさかお前…何も解っていないまま伽霊能力を使っていたのか?道理でペース配分がおかしかった訳だ!」
アレックスは地面に倒れ込んで全く動かなくなった竜賀を蹴り上げた。竜賀はノルスタインの時とは、全く違う重たい蹴りを喰らって窒息死するかと思った。
竜賀「〜〜〜〜ッ!!?」
アレックス「苦しいか?苦しいだろうな?そりゃそうだ!なんせ霊段階Aの効力も完全に切れた状態で適能者の蹴りを喰らったんだ。内臓のどっかが破裂してるか、骨が折れてるだろうからなぁ」
竜賀「な……に…」
アレックス「ここまで俺様を楽しませて貰った礼に教えてやるよ…伽霊能力を使う為の源力は“無限”や“無尽蔵”じゃねぇんだよ。それが例え…心でもな」
竜賀「……!!?」
アレックス「お前…今、俺様の事が憎いか?俺様の事を殺したいほど恨んでいるか?」
竜賀「あ…ったり前…だ…テメェ…だけは絶対…赦す…訳には…いけねぇんだ…」
アレックス「そうだ…分かってんだ…“頭”ではな?」
竜賀「!!?」
アレックス「だが“心の底”から湧き上がってくる様な“憎しみの感情”はとっくに消え失せてるだろ?そうだ…俺達適能者最大の弱点はこれなんだよ」
竜賀「まさか…霊力の正体ってのは…」
アレックス「ああ、お察しの通りだ…最近のマクシム連合の研究で解ったことでもある適能者の源力である“霊力”の正体は“人間の心の力”なんだよ!!」
竜賀「それ…じゃぁ…俺は…」
アレックス「ああ、その通りだ…心の力…霊力切れで能力どころか身体も満足に動かせなくなっちまったんだよ…つーかこんな様になるまで伽霊能力を起動させ続けるなんざ、よっぽど俺達の事を憎んでたんだろーよ…だが」
アレックスは小槌を振り上げて、伽霊能力が使えなくなった竜賀目掛けて雷を落とそうとした。
アレックス「これで終わりだ」
ルーカス「まだ終わっちゃいねぇよ!!」
竜賀の頭の上に落ちて来た電撃を大きな筒は吸い込んだ。
アレックス「!!?魔法の筒か!!?」
アレックスはそれに気付いた瞬間急いでその場を離れようとした。
ルーカス「もう遅い!!」
ドン!!!
魔法の筒が電撃を吸収したのとほぼ同時に別の位置にあったもう一つ魔法の筒から電撃が放たれアレックスに向かって飛んで来た。
アレックス「シット!!」
バリバリィィッ!!!
電撃が直撃する寸でのところで電磁バリアを発動し、受け流した。しかし、追撃はそれだけでは終わらなかった。遠距離から水の弾丸が飛んで来た。
ドキュンッ!!
アレックス「ぐあ!!?」
アレックスは背後から水の弾丸を撃たれ、膝を着いていると今度は光の鞭がアレックスに向かって襲い掛かった。
バチィィィッ!!!
光の鞭を小槌で弾き返そうとしたが急に予想と違う動きをしてきたのに対応出来ず小槌を叩き落とされた。
アレックス「〜〜!!クソッタレ!!」
レスリー「ここまでのようだな…」
メリアン「もうこれで貴方に勝ち目は無くなったわよ」
アレックスは周囲を見渡してみるとマクシム連合の隊員達がぞろぞろと集結していた。
アレックス「さっきの磁限爆でくたばってなかったってのか…!!」
レスリー「あの時に俺達は自分達と一般人の安全な避難、そして爆発の影響を受けたブルガント団員を確保するのを優先していたんだよ」
シャンサ「この都市にブルガント団がいるって可能性があった時から、アレックス・ブルガントの情報は掻き集められるだけ集めてたのさ…お前が都市を吹き飛ばした伽霊能力の情報があった時から、どんな対応をすれば良いのかも全員予習済みだ」
レスリー「残念なことは、そこにいるインディアナ支部の二人にはその情報が行き渡っていなかった為、対応が出来ていなかったことだ」
ルーカス「我々は辛うじて藍川光男氏しか守れなかった…しかし竜賀君は伽霊能力を発動させて自分の身を守ってくれていたお陰で助かっていたんだ」
アレックス「クソ!!…貴様ら全員アレを喰らったフリしてやがったのか!!」
ザンザンッ!!!
アレックスが立ち上がって武器を取ろうとすると、突然鎌鼬が小槌を吹っ飛ばし、アレックスの背中に大きな斬り傷を付けた。
アレックス「グアアアアアアアアア!!!」
背中に付いた傷から血が大量に流れているアレックスは首を斬撃が飛んで来た方向に回すと、そこには藍川光男が立っていた。
アレックス「たかが…無適能者風情にこんな傷を付けられるとはな…!!」
光男「屑の分際で…俺の大切な息子に何をする」
藍川竜賀の父親である光男が右手に日本刀「藍風」を握り締めていた。光男の目には今迄見たことのない様な怒りの感情が浮かび上がっていた。
ルーカス「Mr.藍川、良いタイミングです!このままあの男をノックアウトしてしまいましょう!」
光男「…一応言っとくが、アンタ達にもこっちは怒っているんだ…時間稼ぎの為に息子を囮にしていたんだからな…!!」
メリアン「そこは申し訳なく思っているわ!だからこそ必ずブルガント団を一人残らず逮捕しましょう!」
レスリー「この少年が稼いでくれた数分を我々は絶対無駄にしてはならない!!ここまで追い込んでコイツに逃げられたとあってはマクシム連合の名折れ!!死んでも確保せよ!!」
隊員達「「「了解!!!」」」
源太「竜賀!!大丈夫!?」
マクシム連合の隊員達の人混みの隙間から猿渡源太が出て来た。そして倒れている竜賀の元に駆け寄った。
源太「竜ちゃん!!意識ある!?俺の声聞こえる!?」
竜賀「聞こえてるよ…聞こえてるけど…身体が…全然動かねぇ…」
ルーカス「源太…今すぐ竜賀を連れてここから離れろ!こっからは大人達の手加減の出来ない生々しい殺し合いになっちまう…」
レスリー「まだ子供に見せられないモンなんでな!」
メリアン「光男!!貴方もここから離れて下さい!!あの子達と一緒に!!」
光男「……悪いがここは一緒に戦わせてもらう…!!息子をあそこまで痛め付けられて黙っていられる程、理解ある父親じゃあないからな…!!」
光男はメリアンの言葉に逆らう様に怒りのこもった声で反抗した。
光男「アレックス・ブルガントの野郎に生きたまま地獄の業火に焼き続けるくらいのことをしなけりゃ、こっちは怒りが収まらねぇんだよ!!」
レスリー「それはこっちも同じですよ…俺達の愛するこの大都市シカゴシティをここまで滅茶苦茶にしてくれやがって…!!絶対に後悔させてやる!!」
ルーカス「さぁどうするブルガント!!ここで戦うか!!それとも大人しく罪を償う為に自首するか!!答えろ!!」
アレックス「自首だと?そんな真似出来るか!ここでお前等全員皆殺しにするっつったよな!」
メリアン「さっきの言葉を聞き逃しているようね…竜賀は時間稼ぎだったって…」
アレックス「何?」
メリアン「この子が思っていた以上に踏ん張ってくれていたお陰もあって、こっちはアンタが思っている以上に対策を練ることができたし、アンタのお仲間も確保することができたのよ」
アレックス「何…だと…」
ルーカス「随分と間抜けだな…あの爆発で損傷したブルガント団員は急いで俺達が確保したが…どいつもこいつも怪我してて使いモンにならなくなってたぜ」
レスリー「一時の下らない感情で折角の仲間に大怪我を負わせて自分の首を締めるとはな…貴様はリーダーの器じゃなかったってことだ」
アレックス「ケッ…権力の狗ってのはマウントが取れた途端に饒舌になる小物共の集まりってのは相変わらずだな」
アレックスの捨て台詞にカチンときたマクシム連合のメンバーは怒りに表情を歪めたが、レスリーがそれをすぐに制した。
レスリー「耳を貸すな…あんなモノは安い挑発だ…この状況で何もできないから言葉で口撃してきているだけだ」
アレックス「何もできないだと…舐められたモンだな!!」
アレックスは地面に手と叩き付け、地面から黒い砂粒の塊を宙に浮かべていた。
メリアン「これは…」
光男「砂鉄か?」
シャンサ「ご自慢の磁力操作で地中にある砂鉄を制御しているんです!!」
アレックス「これは俺様の得意技だ!!躱せるモンなら躱してみやがれ!!」
アレックスの操る砂鉄が巨大な塔の様に渦巻きながら、徐々に電気を帯びていった。バリバリと音を立てながら生き物の様に畝り上がる砂鉄の大蛇が天に昇っている様子はこの世のモノとは思えなかった。
アレックス「テメェら全員死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
黒い砂鉄の塔から無数の蛇が飛び出る様に、砂鉄の細い塊が一斉にマクシム連合の隊員達に目掛けて襲い掛かってきた。
レスリー「防御武隊!!前へ!!」
レスリーの声を合図に数人の適能者達が光の盾を発動させ砂鉄の塊を一気に防ぎ切った。
レスリー「続いて能力無効化武隊!!やれ!!」
そして、その盾の背後で地面に一斉に手を付いて、地面に電気を流し込んだ。するとアレックスの頭上にあった砂鉄の塊が消えた。
アレックス「な…んだと…!」
ルーカス「さっき聞いてなかったのか?お前の対策は出来てるってよ」
シャンサ「ブルガント団に対する伽霊能力の対応はこの5ヶ月間やってきたつもりよ」
ケネスター「当然お前に対しても例外じゃなくな!」
砂鉄を消したであろう隊員が前に出て来てアレックスに向かって不敵に言い放った。
ケネスター「俺の絶縁膜は電気や熱だけじゃない…磁気も遮断できるシールドだ!ご自慢の磁力や電撃も防ぐことができるんだよ」
レスリー「まぁ…限定条件が面倒臭いけどな」
ルーカス「とにかく…もうこれでテメェの負けだ…大人しく降参しとけ」
アレックス「ウルセェ!!このままテメェらに舐められたまま…」
その時アレックスの左手から光が溢れ出し始めた。
アレックス「な…何だ!?」
ルーカス「一体何が起こってるんだ!?」
アレックスの左手から出て来た光が徐々に大きくなり周囲を明るく照らししていった。その様子を何事だと言わんばかりに目を凝らして見ている中、光男一人だけがドッと冷汗をかいていた。
光男「これはマズい…!!全員ここから急いで離れるんだ!!!とにかく急いで!!!」
メリアン「え!?何何!!?」
光男「さっきウイリー・べドナーはこのせいで死んだんだ!!!」
しかし、その言葉が全員に届いたか、否か、アレックスの掌の霊媒印から巨大な光の塊が飛び出し空に昇っていった。
その光の塊は宙にピタッと静止した。そして黄金の光はまるで巨大な大蛇の形に成っていった。
その様子を全員がポカンと見上げていた。光男はなんとか我に返って大蛇を産み出してしまったアレックスの元に駆け寄ってその胸ぐらを掴み上げた。
光男「おい!!あの怪物を産み出したのはお前だろ!!さっさとアレを引っ込めろ!!取り返しがつかなくなるぞ!!!」
アレックス「な…!?何しやがる!!アレは俺の能力が産み出したモンだ!!お前等を襲うことはあっても、俺に害を成すことなんざありはしねぇんだよ!!」
アレックスは胸ぐらを掴んでいた光男の手を無理矢理引き剥がし、空に浮かんでいた大蛇に向かって大声で言い放った。
アレックス「ヘイ!!俺様の伽霊獣よ!!俺様の声を聞け!!お前の主であるアレックス・ブルガントの声を!!」
そして光り輝いていた大蛇の光が薄くなり全貌が見える様になった。一目見た感想は全員ほぼ一緒だった。蛇と百足を合体させた何かだった。銀色に輝く鱗に覆われた長い胴体の横から百足を思わせる細長く鋭い爪のある足が何本も生えていた。そして頭は蛇をしており先が二股に裂けた舌をチロチロと出しながら、瞳が縦に割れている眼球は獲物を探る様にキョロキョロと動いている。そして頭からは百足の触角の様なモノが生えておりニョロニョロと蠢いていた。
光男「こんなモノが………」
メリアン「?」
光男「こんな化物を創り出すことが…アンタ達適能者達の言う…進化だってのか…?こんな…」
アレックス「そうだ!!」
光男「…!!」
アレックス「これが!!お前等無適能者や未適能者には決して辿り着けない人間の限界だ!!!これで俺達選ばれし適能者は未来への大いなる進歩を可能にするのだ!!!ハーーーーッハッハッハッハッハッハ!!!」
空に向かってデカい笑い声を上げているアレックスは手を大きく広げ、大蛇に呼び掛けた。
アレックス「さぁ!!伽霊獣よ!!我が声を聞け!!ここにいる連中を皆殺しにせよ!!!」
???「誰に向かって指図してやがんだクソ人間が」
明らかに怪物のいる位置から唸る様な声色で喋るのが、ハッキリ全員に聞こえた。
レスリー「え…???」
ルーカス「喋った???」
???「グルルルル……ギャオオオオオオオオオォォォ!!!!」
怪物は巨大な口を大きく広げて咆えると、周囲の建物がガタガタ震える程の振動を感じ光男達は一斉に耳を塞いだ。ビリビリを周囲が震えているのを感じながらも上を見上げると怪物は空から一直線に地上に向かって飛んで来た。
ルーカスはマントを振るって光男とアレックスの前に出て来て、飛んで来た大蛇の怪物をマントで振り払おうとした。それを見ていた光男はルーカスに必死に叫んだ。
光男「ルーカス!!危ない!!」
ルーカス「問題無いッ!!!!」
ルーカスの持っていたマントをはためかせると、さっきまでローブくらいの広さくらいだったマントが一瞬で10mくらいの大きさに変わった。
光男「でかッ!!?」
飛んで来た怪物が大きな牙を曝け出して来たところに、ルーカスの巨大なマントのど真ん中に来る様に振り回した。
ボフッ!!!
猛スピードで突っ込んで来た怪物がまるで分厚い体操マットに着地した様な音を立てて、マントに当たった。
ルーカス「うおらああぁ!!!」
ルーカスがもう一度マントを振ると、怪物は近くのビルに巻き付く様に飛び移り、こっちをまた狙う様な目つきで睨んでいた。光男はその様子を見て再びアレックスに掴み掛かり問い詰めた。
光男「おい!!いい加減にしろよ!!あの蛇の怪物はお前の言うことなんざ聞きやしねぇんだよ!!さっさとあの怪物を消せ!!じゃないとあの怪物は皆を襲う前にお前をまず最初に喰い殺しに掛かるんだぞ!!俺はこの目でハッキリ見たんだ!!」
アレックス「馬鹿な!!俺様の能力で産み出した伽霊獣が主である俺様から殺すだと?そんな話信じられるか!!」
デイビッド「また来るぞ!!」
その声にハッと振り返ると怪物が再びアレックスに向かって飛び掛かろうと構えていた。アレックスはその様子をお構い無しに前に出て来て怪物に必死に訴えかけた。
アレックス「おい!!我が伽霊獣よ!!お前の主である俺様の声を聞け!!」
怪物「俺が一体…何時…貴様を…主などと認めた?」
アレックス「へ??」
怪物「貴様は俺の能力を勝手に借りて使っていただけの無能だ…俺は貴様自身の力など…一度も認めてはいない…」
アレックス「何を…」
怪物「まだ気付いていないのか?無能め…貴様の左手を見てみろ…」
怪物の言葉通りにアレックスは左手の平を急いで見てみた。するとアレックスの顔が途端に真っ青になった。手は震え始め顔中から汗がドッと吹き出していた。
アレックス「…………無い……」
ルーカス「は?」
アレックス「………俺様の…霊媒印が…消えてる…」
ルーカス「何?」
アレックス「伽霊能力が……使えなくなってる…」
その言葉に周囲にいたマクシム連合の隊員達も愕然となっていた。適能者にとって伽霊能力が使えなくなることそれが一体何を意味するのか。
怪物「だから言ってんだろ…お前の能力じゃない…元々俺の能力をお前が我が物顔で使ってただけだ…お前はさっき自分から能力を使いこなすことを放棄したんだよ」
怪物は唸り声の中に少しだけ冷たく突き放す様な口調を交えてアレックスに言い放った。
To Be Continued