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#18 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第5話「追跡者との対峙」
ある春の早朝モートレートタウンにあるモーテル街から黄色いジープが土煙を巻き上げながら道路を走っていた。まるでそこから急いで離れようとするかのように。
車を運転していたのは多民族国家アメリカ合衆国とはいえモートレートタウンでは珍しい日本人である緑色の髪の男、藍川光男であった。
その後部座席には青色の長い髪の日本人の少年藍川竜賀と褐色の肌色をしたクシャクシャの黒髪をしている猿渡源太が身を乗り出す様に運転を見守っていた。
竜賀「父さん?」
光男「ん?何だ?」
竜賀「父さんこういう左座席のしかもアメリカの右側通行の道の運転の免許とか…練習したことないでしょ?大丈夫なん?」
光男「実は昨晩トニーとガソリン買いに行く時に試し乗りしておいたんだよ」
竜賀「……無免許運転…罰金じゃすまねぇなこりゃ」
光男「竜賀よ残念ながらここにいる3人は本来なら居てはいけないはずの場所にいると言うことでとっくに手遅れだ…」
源太「俺に至ってはマクシム連合が血眼になって探してるだろうよ…世間様に絶対バラされたくない秘密の為に…な」
竜賀「それでさ…もうそろそろ良くない?」
源太「何が?」
竜賀「マクシム連合の秘密って奴さそろそろ教えてくれよ」
源太「あーもうしつこいなぁ…知らない方が身の為だから詳しくは教えられないって言ったじゃん」
光男「俺にも言えないことなのか?」
源太「言ったら2人共殺されるんだぞ」
竜賀「残念なことに源太…俺はこの世界に来た一発目から1番最初にあった人間に銃向けられて殺されそうになってたんだよ」
光男「あーアレね」
竜賀「しかもその人間は適能者じゃなくて無適能者だったんだ……伽霊能力を持っていようが持っていなかろうが、この世界に入った時点で襲われるの確定してんだよ」
光男「そういえばさ……」
光男が話の方向を大きく逸らしてくれたと思い、ホッとした様子を見せた源太であった。しかしここで思いもよらぬ質問が飛んできた。
光男「俺と竜賀はこことは別の世界から来た時、黒い手みたいなのに捕まってこの世界に引き摺り込まれたんだけどさ……源太そんな伽霊能力を持った適能者の噂とか聞いたことないか?」
源太「え?………う〜〜〜ん………」
竜賀「黒い手の掌に紫色の眼球で!尚且つ黄色い瞳をしてる不気味な手なんだ!」
源太「う〜〜〜ん……多分あるんだろうけど…」
竜賀「あるんだろうけど?」
源太「俺自身はそんな噂聞いたのは今ここで初めてなんだよな」
光男「つまりそんな噂…立ったこともないってことか」
竜賀と光男はどこか落胆したような声を出していたが、源太はそれを見て励ます様に声をかけた。
源太「ま、まぁ!今ここで聞いたことを俺がどんどん口コミで広めていけば、そのうち真実の尻尾を掴めるよ!この世界適能者は沢山いるから!そんな奴いてもおかしくはねぇから!」
光男「…そうか…」
竜賀「それじゃあ別の世界からやってきた世界初の異世界適能者って訳だ俺は!」
源太「!…ああ!確かに!」
光男「源太ってさマクシム連合の実験施設にいたんだろ?」
源太「!…あ、ああ…」
光男「そこでどんな生活してたんだ?どんな食事だったんだ?」
竜賀「どんな生活リズムだったの?」
源太「どこに注目してんだよ…」
今度はお前の番だと言わんばかりにガンガン質問責めをしようとする2人に、源太は引きつった様な表情を見せていた。
光男「だって気になっちゃったんだもんよ」
竜賀「で?どんなだったんだよ」
源太「ん〜〜〜…大体檻の中にいたんだけど…」
光男「ほぼほぼ外の世界を見たことないってことか…」
竜賀「メシは?シャワーとかは?」
源太「メシはベイカー家の食事と比べたら、死刑囚用のメシなんじゃねぇのかって言うくらい酷かったぜ……バケツの中に入ってたキャベツの芯とか、火の通ってない生肉とか、かじりかけパンくずが当たり前だったんだ」
竜賀「それって会社の食堂の残飯じゃねぇのか?」
光男「多分そうだろうな……」
源太「シャワーなんて浴びたこと全然ないな……マクシム連合で水が渡された時は全員飲み水にするのに必死で身体を洗う為に水を使う余裕もなかったんだ」
竜賀「めっちゃ不衛生じゃん…そんでもって食事も碌なの無くて病気になる人もいたんでしょ?」
源太「ああ…何人もそれで亡くなった同胞も見てきた…でも…」
竜賀「?…でも??」
源太「あんな実験動物になるくらいなら……餓死したり早死にした方がずっとマシかもな…」
光男「……そこまで非人道的な実験がやられてたって訳か…」
竜賀「でも俺は実験体にもならずに、死んだりもせず逃げる道を選んだ源太は絶対間違ってないと思うよ」
源太「え?」
竜賀「だって俺が今こうやってこの世界で初めての友達になってくれたのは源太じゃん!」
光男「…フフフ…そうだな…」
竜賀「だから巻き込んで申し訳ないなんて言うなよ……スッゲェ寂しんだからな!そういう気持ちでいられるの」
源太「………へッ…ありがとよ」
光男「2人共!とりあえずこの先にあるパーキングエリアがあるっぽいからそこで休憩するからな」
竜賀「お!ようやくか!」
源太「3時間以上も運転しっぱなしだったからションベンしたくなってきた」
光男「はいはいどうぞごゆっくり休憩してきてくださいな〜っと」
光男はジープを休憩所のパーキングに停めると、竜賀と源太はトイレにかけっこ直行していた。それを見ながら光男はまだまだお子ちゃまだなといった表情で車の中でコーヒーを飲んでいた。
光男「……はぁぁ……」
大きな溜息をつきながらぼんやり車の天井を見ながら考えていた。
光男(さ〜〜て…これからどうしたもんか……)
???「Excuse me.」
すると車のガラス窓をコンコンと軽く叩く音がして光男が首を動かした。するとそこにはブロンド髪の若い女性が立っていた。その女性は光男に話しかけようとしているので、光男はマルチセルラーの電源を入れ直して、その女性に窓越しに話し返した。
光男「…あの…私に何か?」
女性「私の車の調子が何だか悪いみたいで……見てもらっても良いかしら?」
ブロンド髪の女性が困った表情で尋ねてきた。光男はしばらくその女性の顔をじっと見つめていたが、1つ息を吐くと車から出てきてしょうがないと言わんばかりに女性に聞き返した。
光男「……君の壊れた車って言うのは?どこに置いてあるの?」
女性「あそこよ」
女性の指差したところは駐車場から離れた道の傍に停まっている白い乗用車であった。
光男「あれね?…ん〜〜…そんじゃまず車の状態から見とこっか?」
女性「ありがとう」
そう言って2人は停めてある車に向かって歩いて行った。
光男「君はあの車でどこか向かう用事でもあったの?」
女性「ええ、人を探しているんです」
光男「へぇ?大事な人なんですか?その人…」
女性「とっても大事な人なんです…その人を探さないととっても大変なことが起きるんです…なのでかなり先を急いでいまして」
光男「そうなんですね…見つかることを願ってますね」
女性「貴方は…」
光男「光男だ」
女性「なんですって?」
光男「名前だよ、俺の…光男」
女性「ミツオ…じゃあ貴方は何をしているんですか?」
光男「自分の生まれた故郷に帰ろうとしてんのさ」
女性「故郷?」
光男「ああ…そこで今は帰る方法を模索中って訳」
女性「そうなんですね…ところで貴方のジープ結構カッコいいですね」
光男「そう?それは嬉しいね!ありがとう!」
女性「いいえ、それにあの車私の実家にある私の兄が父親にプレゼントしたジープに形や色がすっごく似ているんです」
光男「そうなの?いや〜不思議なところで不思議な縁に巡り合うモンだねぇ〜はっはっはっは!」
光男は女性の前を歩きながら、頭をポリポリとかき豪快に笑っていた。女性は光男の背後を追いかける様に着いて行った。そしてその女性は左手から伽鍵礼符を取り出していたーーー
女性「それとあのジープの車両番号は“偶然”にも私の父親のジープと全く同じなのよ」
光男「やっぱりそうか…君なんだね?Miss.メリアン・ベイカー…」
背後から何かが自分の背中を狙い定めいる気配を感じて光男は足を止めた。
メリアン「手を上げなさい…但しゆっくりよ……」
光男は言われた通りに両手をゆっくり上に上げた。すると目の先にあった白い車からドアを開けて男性2人と、女性1人が出て来て光男に近付いてきた。
光男「ご丁寧にお仲間も一緒に連れて来てお迎えして下さるとはね〜……わざわざご苦労だね?」
メリアン「無駄な受け答えをして時間を浪費するつもりはないわ」
光男「君が一体どんな伽霊能力を持っているかは知らないけどさ……そんな拳銃で脅すみたいな物騒な真似は止めた方が良いと思うけどな〜」
メリアン「拳銃で脅すですって?…ぷっ…はははははははははははっ!!」
メリアンが光男の言葉で笑い出したのに釣られる様に周りの3人も笑い出した。
メリアン「貴方って随分冗談が面白いのね?私達適能者が拳銃なんてしょぼい玩具を使って脅すと思ってるの?」
???「まぁそう言ってやるな…4対1でブルってるんだろうよ」
光男は目の前で嘲る様に笑う白人の男を見て、余裕そうな表情を崩さないように話しかけた。
光男「本当にブルってるのは一体どっちなんだろうね?」
???「何?」
光男「たった1人に4人がかりで詰め寄らないと話しかける勇気もない人のこと……それを世間じゃ臆病者とは言わないのかな?」
???「何だと?……テメェこの状況がよく解っていねぇ様だな!」
???「待って!!…この男…もしかして……」
1人の黒人女性が他のメンバーを止めた。すると他の3人が笑うのを止め光男に警戒し始めた。
光男「へぇ…相手の力量もはかれない馬鹿ばかりだと思っていたら、随分賢い子もいるもんだ」
光男は余裕の表情を全く崩さないまま4人に話しかけた。
光男「それで?僕に何の用かな?……マクシム連合の適能者の皆さんこんなに揃いも揃って…」
???「そこまで知られているなら大方の予想がついているのではないか?」
光男「貴方名前は?まず名乗るのが礼儀ってもんでしょう?」
4人に囲まれていながら、全く物怖じしない態度に多少警戒しながらも白人の男はそれに答えた。
???「……良いだろう!俺はマクシム連合インディアナ支部の軍事隊の第1番隊副隊長、ルーカス・ブラゼルだ!そしてこっちの男が1番隊のアダム・タッカーで、こっちの女性も1番隊スーザン・ディアスだ」
アダム・スーザン「「よろしく」」
2人が声を合わせて自分に名乗ってきたのに対し光男はそれぞれに会釈した。
光男「俺は光男、藍川光男だ…以後お見知りおきを」
ルーカス「そして君の後に今いるのが1番隊の第5席であるメリアン・ベイカーだよ」
光男「改めまして、よろしくね」
メリアン「よろしく…!!」
光男「で?…4人で一緒にモートレートタウンからここまで俺を追跡して来たんだから余程の理由があるんだろうね?」
相変わらず全く余裕の表情を崩さない光男はすっとぼけた様な質問をルーカスに投げかけた。
ルーカス「当然…貴方が言ったような“余程の理由”が無ければ我々マクシム連合の軍部が動くはずがない」
アダム「俺達が今ここにいるのはある子供を探しているからだ」
光男「ふ〜〜ん?」
ルーカス「その子がマクシム連合の幹部の親戚であり、秘密裏にこのアメリカに入国されていたんだ」
スーザン「しかしその子が行方不明になったのよ…」
アダム「もしその子がマクシム連合以外の手に渡り人質に取られてしまったりでもしたら、組織は大きな弱みを握られることになる」
光男「だからその子を大騒ぎになる前に君達が見つけて、何事も無かった様にしようってこと…か?」
光男がそういうと目の前の3人が小さく頷いた。
ルーカス「そういうことです。しかし四日前モートレートタウンで奇妙な噂が立っていたんです。ある路地裏で倒れていた適能者の子供を、東洋人の少年が庇ったと……」
光男「………」
ルーカス「そのイザコザの渦中にいた適能者の少年の容姿が、問題の行方不明になっていた組織の幹部の親戚であるダミアン・シーベルト君だったんですよ」
光男「……ダミアン・シーベルト…ねぇ……」
光男はこの時彼らの顔を見て、嘘をついているつもりはないのだろうと思った。しかし組織に違う情報を渡されている自覚の無さには苛立ちを少し感じた。それを一切疑おうともしないことにも。
光男は、あの子が初めて“自分の名前”を受け取った時の本当の笑顔が頭から離れなかった。あの子からその笑顔と竜賀を取り上げるつもりかと。
メリアン「そのイザコザを警察に通報しようとしたのが私の母親だったっていう証言も出ていたのよ」
光男「……それで?」
スーザン「私達マクシム連合はすぐダミアン君を保護する為にベイカー家に捜索するようにしようとしたんだけど、メリアンがそれに反対したのよ」
メリアン「兄のウィルソンも強制家宅捜索を望んでいたんだけど、私はもしも何か事件に巻き込まれているなら私に連絡してくれるはずだと思って家宅捜索をやめてもらったのよ」
スーザン「その代わりメリアン自身で自分の家を捜索してもらうようにしたのさ」
メリアン「そして念の為家に入る前に車庫にあったジープに発信機を付けていたのよ」
ルーカス「自宅にも盗聴器と監視カメラの設置意見も出たがそれもメリアンが断固反対していた…家族のプライバシーを侵害して欲しくなかったという彼女の個人的な意見でね」
光男「やれやれ…一隊員の感情論がここまで押し通される組織ってどうなんだろうね?」
アダム「だからこっちも少ない情報で動くしかなかった。だが彼女が支部に戻ったと思わせた後発信機を付けたジープがすぐガソリンスタンドへ行って、そして次の日の朝モートレートタウンから出て行った……3時間もかけてな」
光男「そしてそれを追跡してきて今に至るという訳か…」
メリアン「もう1度聞くわ、あのジープで貴方はここまで来て何をしているの?貴方はあの家に何でいたの?ダミアン・シーベルト君と何の関係があるの?私の家族に何をしたの!?」
メリアンは光男の背後から凄まじい剣幕で捲し立てた。光男はそれをフッと微笑みながらメリアンに優しく語りかけた。
光男「メリアン…そんなに家族が心配になったんだったらさ…」
光男はゆっくり両手を下ろした。それを見た目の前の3人は警戒したように距離を取った。メリアンはさらに声を張り上げて光男の背中に向かって手を上げた。
メリアン「動くな!!!もしも動いたら!!貴様を切り刻んでやる!!!」
光男「何でもっと家族のそばにいてやらなかったんだ?あの2人がどんだけ寂しかったか…こんなことになるまで何故もっと真剣に話そうとしなかったんだ?」
メリアン「!!?」
光男「悪いけど今の君と話すことなんて何もないよ」
アダム「動くなって言ってんだろ!!動いたら殺すぞ!!」
光男「できやしねぇだろ?今ダミアン君の情報の手掛かりは俺しかいないんだ…俺をもしここで殺してしまったら折角の情報源を失うことになる…違うか?」
アダム「テメェ…!!舐めてんじゃねぇぞ!!」
ルーカス「止めろ!!アダム!!」
光男の挑発を受けたアダムは左手から伽鍵礼符を取り出し、光男に向かって光の球体の様なものを作り出していた。そしてーーーー
ダンッッッ!!!!!
突如光男の目の前に青い剣を持った青髪の少年が飛び降りて来た。
光男「ナイスタイミングだ!!竜賀!!」
竜賀は刀を頭の上に振り上げて、アダムの手首に目掛けて素速く袈裟斬りをかました。
竜賀「ハッ!!!」
ガン!!
アダム「アアアアア!!」
光男「竜賀!!?」
アダムの手は光弾と共に地面に叩き伏せられた。その瞬間地面から大爆発に近い衝撃波が発生し辺り一面を吹っ飛ばした。
竜賀「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
光男「おおおおおおおおおおおおお!!?」
竜賀と光男は後しゴロゴロと転がりながらも最後は受身を取り体勢を立て直して爆破した跡を見た。
竜賀「………こういうのってデジャブって言うんだよね…?」
光男「そんな呑気なこと言ってられねぇぞ?」
その爆破点の周りにいた3人の適能者が爆破にゼロ距離で巻き込まれたのを心配して叫んでいた。
スーザン「アダーーム!!!」
ルーカス「アダム!!アダム!!」
メリアン「アダム!!っ!!アイツら…!!よくもアダムを!!」
メリアンは爆発した場所から近くを見回すと竜賀と光男が消えていた。必死にキョロキョロと見渡すと光男が乗ってきた赤いジープが元の場所から猛スピードで道路を走って行った。
メリアン「ルーカスッ!!アイツらが逃げていくわ!!」
ルーカス「何!?……!!…スーザン!!アダムを助け出して近くの病院に連れて行けるか!?」
スーザン「私なら大丈夫!!アダムのことは私に任せて!!だから!!2人はあの男を追って!!早く!!」
ルーカス「サンキュー!!頼んだぞ!!メリアン!車を出すぞ!!」
メリアン「ええ!!」
ルーカスとメリアンは乗ってきた白い車に急いで乗り込み、すぐさまアクセル全開でジープを追跡したーーーーー
竜賀「ーーーーあのさ…さっきはあんなことしちまったけど……父さん…あれ…あんなことしても良かったのかな…?」
ジープを飛ばしてさっきの現場から離れようとする光男に不安そうな声を出しながら竜賀は尋ねた。源太は2人の間に流れる異様な雰囲気にオドオドしていた。
光男「何今さらビビってんの?お前この世界に来て一番最初に何やったか覚えてねぇの?」
竜賀「!!」
源太「あーーー…さっきの爆発といい…何が起きてたの?あそこで…」
光男「あそこには4人の適能者がいたんだ…その内の1人がベイカー夫妻の娘さんのメリアンだったんだ」
源太「マジで!?あそこにいたんだ……もしかして!?」
光男「源太を追ってきたマクシム連合の奴らだよ」
源太「でもだからって何でこんなに早く俺達を見つけられてんだ」
光男「今朝乗る前に車の下に発信機が付いてるのを見つけたんだ」
源太「発信機?何それ??」
光男は運転しながらポケットの中にあったサイコロサイズの、ピッピッと音を発している装置を取り出した。
光男「これが車に付いていた発信器だ。これが特殊な電波を飛ばしていて、マクシム連合の奴らはこれを追いかけて俺達を追いかけてこれたんだ」
源太「こんなちっさい機械で??」
光男「ああ…コイツがここにある限り奴らは地球の裏側まで俺達を追ってこれるって訳だ」
源太「何やってんだよ!!?だったらそれさっさと捨てろよ!!」
光男「馬鹿!今ここでこの発信機を捨てても、俺達がコレを捨てた場所から進行方向から位置を特定されて一発で見つかるに決まってんだろうが」
源太「それじゃぁどうするんだよ?」
光男「それを今考えてる……何か…ずっと動き続けてくれている物に…コイツを取り付けておきたい……なるべく人間じゃない…何かに」
源太「…人間じゃない何か……」
竜賀「お2人とも盛り上がっているところ申し訳ないんだけど……」
2人がアセアセしているところに何か嫌なイベントの責任を押し付けられたみたいな、暗いテンションで竜賀が話に交わりにきた。
光男「おっ……復活したか?」
竜賀「実の息子のメンタル抉る発言しといてケロっとしてんなよ!」
光男「元気になってんじゃねぇか?大分切り換えれるようになってるな」
竜賀「…!!……はぁ…もういい…とりあえずさ……あそこ見て」
光男・源太「何?」
竜賀「あそこに鹿がいるでしょ」
竜賀が指差したところには道路に飛び出してきている鹿がいた。
竜賀「あの子に発信機取り付けとけばいいんじゃないの?」
光男「……なるほどね…」
源太「んじゃ捕まえんのは俺に任せとけ!」
光男はジープを停めると、源太が車から飛び出し左手から伽鍵礼符を取り出した。
源太「これが俺の霊段階2『伸縮』だ!!ん〜〜〜」
源太の礼符が光って消えた後源太は右腕をぐるぐるを回し始めた。
源太「おりゃ!!」
グニョーーーーン!!
源太の掛け声と共に右腕がゴムの様に伸び遠くにいた鹿の胴体を鷲掴みにした。
竜賀「おーーーー」
光男「なーーーるほどねぇ〜〜〜」
すると源太は腕を引っ張り、元の長さに戻し鹿を引き寄せ抱き捕まえた。
源太「どべぇ!!?ぐ…捕まえたぞ〜〜〜!!」
光男「ヨシ!!でかした源太!!そのまま押さえとけ」
光男は源太の捕まえた鹿の角に小さい巾着袋を縛り付け、袋の中に発信機を入れた。
光男「……ヨシ!これでしばらく時間稼ぎはできるはずだ…ごめんな…もう行っていいよ」
源太は鹿を放し、光男は鹿の体を撫でながら言葉をかけていた。
源太「びっくりさせてごめんな〜〜!!もう捕まっちゃダメだぞ〜〜!!」
光男「ほら!!家族のところにおかえり!!元気でね〜〜!!」
発信機を角にぶら下げた鹿は緑の森の中に走っていってしまった。
竜賀「ほら!2人共急がないとアイツらが追い付いてくるぞ!!」
光男「よっしゃ!源太車に乗れ!とっととここから離れるぞ!」
源太「うん!」
3人を乗せたジープは再び全速力で道路を走っていった。
ーーーー一方その頃ルーカスとメリアンは車で追跡していた。
メリアン「ルーカス!奴らここで進行方向を変えたわ」
ルーカス「さっき止まってたのは発信機を探してのことか?」
メリアン「でも…あのサイズならそうそうすぐ見つかるはずがないわ!しかもあの短い時間で」
ルーカス「だとしたらどの道に進か悩んでいたってことか?どこに進もうが追尾装置でどこまで行こうが追えるんだよ!」
そしてメリアン達の車は、竜賀達の乗ったジープとは違う方向へ曲がって走って行った。発信機はすでに光男に朝から取り外されており、道端にいた鹿に取り付けているとも知らずにーーーー
To Be Continued