#25 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第12話「マーカス・ジャッジ」
シカゴシティから自動車で1時間以上かけて北西に向かうとジェノバ湖と言う湖に辿り着く。その湖にあるレイク・ジェニーバ・パブリック・ビーチはアメリカでも有数の観光地でもある。
当然ジェノバ湖の自然豊かなビーチを訪れる客も多くホテル・宿も沢山並んでいた。
その宿泊施設の中で焦茶色の木造建築の宿は中々珍しく、コンクリートの建造物が立ち並ぶ中かなり目を引いた。
そして、その宿の裏側にある湖を一望できるウッドデッキに二人の男が立っていた。
マーカス「頼む……Mr.ドミニク」
ドミニク「…はぁ……Mr.ジャッジ?貴方もしつこいですねぇ…この宿は20年以上も前に貴方方自ら権利を手放したじゃありませんか?それを今さら返せだなんて…」
マーカス「このホテルは昔、君のお父さんが代わりに運営してくれ且つ、いつでも経営権を俺に返してくれることを条件にこの宿を貸していただけに過ぎなかったはずだ…!!」
ドミニク「…Mr.?…貴方と父の間でどんな取引があったにせよ、それは貴方と父の契約であって私と貴方の契約ではないんですよ!」
マーカス「このホテルを父親から相続する時に君にも同様の契約が引き継がれているはずだ!」
ドミニク「そんな契約知りませんね…その様な契約があったことも私は父親から聞かされていませんし、その様な契約書の存在もありません」
マーカス「…ッ!!」
ドミニク「この宿を20年以上も私達親子にずっと預けておいて今さら返してくれだなんて……そんなムシのいい話があって良いと思うんですか!?」
マーカス「……何だと!?この若造…!!」
ガシッ!!
マーカスはドミニクに飛び掛かろうとした時、肩を何者かに掴まれグイッと引き寄せられた。
光男「ヘイ!おっさん!俺のこと覚えてるかい?」
マーカス「!!…お前は!!?」
マーカスは予想すらしていなかった邪魔者の登場に言葉を失っていた。その男は自分が前まで親友と営んでいたホテルを紹介して紹介状まで書いてやった男だったのだ。
マーカス「な…何…で…ここに?」
光男「何で??よくアンタ俺達にそんな口きけるな?…心当たりあんだろ?」
ドミニク「…ほう?…マーカス・ジャッジさんの横におられるそちらの方はMr.ジャッジと、どのようなご関係で?」
光男「これは丁寧にありがとうございます」
藍川光男はスーツを着た紳士の男に向かうと姿勢を正し、ゆっくりとお辞儀をした。
光男「私、藍川光男と申します。こちらのマーカス・ジャッジの紹介でホテル『ローグ』で昨晩宿泊していた客でございます」
光男のその丁寧な物腰を気に入ったのか、ドミニクはかなり光男に対して好印象を抱いた。
ドミニク「Mr.アイカワ…今我々が話しているところに割って入ってくるほどとは、何かこの男から相当な損害でも被っていると言うことでしょうか?」
光男「どこのどなたか存じ上げませんが、貴方様の仰る通り私はこのマーカス・ジャッジにとんでもなく酷いホテルを紹介されまして、大損害を受けました」
ドミニク「私はフリオ・ドミニクと申します。宜しければ私がお伺いしますが?」
ドミニクはマーカスの弱みを握れる機会が来たと言わんばかりに光男の話に食い付いてきた。
光男「Mr.ドミニク。貴方は話が分かる相手だ!この男が紹介してくれたホテル『ローグ』のあるシカゴの都市は今ブルガント団が支配していて奴らの配下の適能者に攻撃されて危うく殺されるところだったんですよ!」
光男が多少芝居臭く怒っている表情を見せるとドミニクは鬼の首を取ったと言わんばかりに強気になってきた。
ドミニク「ほうほうほう……つまりあれですか?…経営が好調だったはずが、ブルガント団に都市の治安を悪化させられたから20年以上も権利を預けて放置していた宿に戻って来たいと?そういう訳ですか?」
マーカス「そ…それは…!!」
光男「Mr.ドミニク?こちらがどんな契約の下お話し合いされているのかは分かりませんが、先にこちらから話し合いさせていただいてもよろしいですかね?」
マーカス「ちょっと待て!俺は今ドミニクと…」
ドミニク「Mr.アイカワ!是非是非その失礼な男を連れて行って下さい!契約書もなくこの宿を返せだなんて言う無礼者はここから追い出してどうぞ!」
マーカス「ちょ…!!」
光男「ではお言葉に甘えまして〜〜!!」
そういうと光男はマーカスの首根っこを引っ張っていった。マーカスの抵抗虚しく身体を引きづられていった___
____ホテル『アーチ』から離れた場所にある人陰の無い林の茂みに連れて来られたマーカスを木に叩き付ける様に押し付けた光男は険しい表情でマーカスを睨みつけた。マーカスの胸ぐらを掴んで話し始めた。
光男「さ〜〜てようやくゆっくり話し合えるな?」
マーカス「うぐ……ローグでブルガント団に襲撃でもされたか?」
光男「オウ…随分派手に襲われたぜ?アンタがあの襲撃に関わってたのか?」
マーカス「いや!んなことをする訳がないだろ!……ただ」
光男「ただ?」
マーカス「知っちまったんだ……シカゴの都市が…」
竜賀「ブルガント団とマクシム連合が裏で組んでいた…ってこと?」
光男の後からゆっくり歩いて出てきた藍川竜賀と猿渡源太を見てマーカスはギョッとした。
マーカス「お前ら……あの都市に行ってて、全員無事だったのか…!?」
源太「あんな連中ごときに殺される程ヤワな鍛え方してないモンで」
竜賀「ローグも俺と源太の手で無事ブルガント団から守れましたよ」
マーカス「まさか…そんな馬鹿な…」
光男「この二人は適能者でもあるけど…それと同時に俺の弟子でもある…霊段階の多少の違いくらいものともしないくらい強く鍛えてあんだよ」
マーカス「そうか…だったら無事シカゴから出られておめでたいから、俺に会いに来る理由は無いはずだよな?」
源太「それがあるんだよ…」
マーカス「……俺に会いに来るってことはエリックの奴に俺を連れ戻すように言われたのか?」
光男「惜しいね……エリックが我々に貴方をローグに連れてくるように命じた訳じゃないんですよ」
源太「ここに来たのは俺の意志だよ」
マーカス「…はっ……坊主、どんな目的でここに来て俺に何をさせたいんだ?」
源太「こんなところに戻ってきてもアンタの居場所なんてここにはどこにも無いよ、って伝えに来たんだ」
マーカス「何……!?」
源太「今のアンタの本当の居場所はシカゴの中にしかないよ」
マーカス「あんな都市の中に?バカバカしい…!!もうあの都市は終わったんだよ!」
竜賀「適能者に能力で支配されちまったから?それとも金で?」
マーカス「両方だよ!あの都市はもう俺達の思ってる様な憧れの場所じゃなくなってる…だから俺は…」
光男「ここに戻って来てもう一度ゼロからエリックとやり直したいってことか?だけどエリックはあの都市でローグに残って最後まで足掻きたいって言ったのか?」
マーカス「……そうだ…!!俺は言ったんだ!俺達ならできるって!シカゴじゃなくたって…どこでもまたやり直せるって!なのにエリックはまだここからは離れたくないってほざきやがった!まだ俺は何も成し遂げちゃいないって…」
竜賀「そりゃそうでしょ?」
マーカスが熱くなって話そうとしていたところを、出鼻を挫く様に割って話しかけてきた。
竜賀「あの人はまだ夢を追いかけてる途中なんだよ。貴方みたいにあのホテルをあのまま続けることがゴールなんじゃない」
マーカスは目を丸くして竜賀を見つめた。
竜賀「貴方達にとってアーチにどんな思い出があるかなんて僕には計り知れないものですけど、でもシカゴのローグに行った時から二人はアーチの経営者じゃなくてローグの経営者に生まれ変わったはずだ…過去を踏み越え前に進むと覚悟を決めたはずです」
竜賀「前に進む道が地獄だと分かってシカゴから出て行こうとするのは理解できます。でもだからって過去の思い出の中にまた自分の居場所を取り戻そうなんてムシの良い話あってたまるか」
マーカス「坊主、テメェも結局はあのドミニクの餓鬼と同じ考えって訳か?父親も良い育て方をしたもんだな?」
光男「まぁでも俺も息子と同じ意見だがな…」
マーカス「なにぃ…!?」
光男「アンタとエリックにとってアーチは昔の思い出のスタート地点だったかもしれないけどな…あそこはもうアンタの言う様な場所じゃねぇんだよ…!!もうあそこはアンタらにとって夢に向かって行く為の通過点なんだよ…!!」
マーカス「!!?」
光男「アンタもう一回ゼロからやり直したいってほざいてたよな?だったらシカゴでもここでもないもっと別の場所でホテルをやろうって言うべきじゃねぇのか?」
マーカス「そ…それは……」
光男「本当のゼロからやり直す勇気もないんだったらな…アンタのいるべき場所は今シカゴで必死にローグを守ろうとして頑張ってるエリック・ブラックの隣じゃねぇのか?」
源太「つーー訳で!!」
源太と竜賀はマーカスの身体を掴み上げ、マーカスを縄で手足を縛りあげた。
マーカス「おっ!おい!!何しやがる!!」
竜賀「このまま引っ張っていっても抵抗されるの分かってるから、拘束しまーーす!」
源太「抵抗は無意味なので大人しくしといて下さーーい!」
縛りあげたマーカスをそのまま赤いジープの後部座席に乗せ竜賀と源太がそれを抑え込む形で乗り込んだ。光男が運転席に乗り込み車のエンジンをかけた。
光男「さぁ!ホテル『ローグ』へ行き夢の続きを見せて貰おうじゃないか!シカゴに向かって出発だ!!」
赤いジープはいきなりトップスピードで南にあるシカゴに向かって突っ走り始めた___
___シカゴシティの南西に位置する街マクヘンリー。ここで休憩している二人のマクシム連合の隊員がいた。
メリアン「……シット!!完全に出し抜かれたわ!!」
ルーカス「ああ……追尾装置が物凄い動きで北に向かっているからと思って追跡してみたら完全にやられた…見事に追尾装置を外されて鹿の角に掛けられていた…」
メリアン「それを追っかけてたら本当の目標を見失ってミシガン湖の北側を回る形でシカゴまで来た訳だけど、シカゴに何かアテでもあるの!?」
ルーカス「いや…確信してコレだって言えるもんは無いんだが……何となく勘でな…」
メリアン「勘!?そんなもので私をここまで引っ張り回さないでくれます!?」
ルーカス「大体どう説明しても後付けの言い訳みたいになるだけだから、ここは潔く素直に勘に従ったんだとね…」
メリアン「もうリーダーったら……こんなことで……ん?」
メリアンはふと顔を上げ道路を見た時、見たことのある赤いジープが横切っていくのを見て車のナンバーを凝視すると藍川光男が乗っていたのと同じだった。
メリアン「リーダー!!」
ルーカス「ん?どうした?」
メリアン「見つけました!!例のジープです!!今シカゴ方面に向かいました!!」
ルーカス「マジか!?よし!!追いかけるぞ!!」
二人は急いで白い車に乗り込み猛スピードでジープを追いかけた___
___光男は赤いジープに乗ってシカゴに戻る道を進んでいたら何やら後から何やら猛スピードで追いかけてる白い車に気が付いた。
光男「何か凄いスピードで俺達を追いかけてくる奴がいるんですけど…!?」
竜賀・源太「「え!?」」
もしやと思い後部座席から後の車を見るとマクシム連合インディアナ支部のルーカス・ブラゼルとメリアン・ベイカーが乗っていた。
源太「何でこんなクソ忙しい時に!!」
竜賀「ミシガン湖の北側を回ってここまで来てたんだ!!」
光男「誰!?誰!?誰!?何の話!?」
竜賀「マクシム連合インディアナ支部のルーカスとメリアンだよ!シカゴに来る前振り切ったはずの二人だよ!」
光男「アイツらが!?そのまま鹿と追いかけっこしてれば良いものを!ここでバッタリ会うハメになるなんてよ!!」
そう言っている間にジープの横に白い車が追い付き、運転席にいた光男と、助手席にいたメリアンの目が合った。
光男「………どうも…」
メリアン「また会ったわね……この薄汚いペテン師め…」
硝子窓越しに何を言っているのかは全く解らなかったが、何となく罵倒されてるんだろうなっと感じた光男はよりアクセルを踏み込みジープのスピードを上げた。それを追いかける様に白い車はジープの背後にベタ付きで追跡してきた。
マーカス「おいお前ら!!アイツらはマクシム連合の連中なのか!?」
竜賀「そう!!でも貴方が前いたシカゴの都市を統括してるシカゴ支部の方じゃない…インディアナ支部の連中さ」
マーカス「何でそんな奴らが追いかけてくるんだ」
源太「追いかけてんのはアンタじゃなくて俺の方なの……俺が知ってはいけない秘密を握っているってんで血眼になって探してんのさ」
マーカス「それなら俺は関係ねぇってことじゃねぇか!!俺はさっさと降ろさせてもらう!!」
マーカスが必死に身動きを取ろうとしたのを源太が抑えつけた。
源太「おやっさん!!後一体どのくらいでシカゴに着くの!?このおっさん全然大人しくしようとしないんだけど!!」
光男「後どんだけ短くても30分はかかる!!」
源太「そんなに時間かかってたらアイツらこっちに攻撃しまくり放題だぞ!!」
竜賀「……ったくしょうがねぇな!源太!このおっさんが怪我しねぇ様にしっかり抑えといてくれよ!!」
源太「お前はどうすんだよ!?」
竜賀「ちょっくらアイツらの攻撃防いでくる!!」
竜賀はシートベルトを急いで外し、車のドアを走行中にも関わらず明けた。
光男「竜賀!!危ないぞ!!」
竜賀「大丈夫!!『天狩鉤爪』はとっくに発動してるよ!!」
竜賀はそれだけ言い残すと車のプレートに青く光る手の平をカエルの様に貼り付けてペタペタとジープの後の荷台までスルスルと移動していった。荷台まで来ると荷物をある程度前側に寄せて車を守る様に、荷台で立ち上がり追跡してくる白い車に向かい合った。
竜賀「今アンタらの相手をしてる暇はないんだッ!!今度相手してやるから!!」
竜賀が大きな声で必死に叫んでメリアンに訴えかけた。しかし、メリアンとルーカスにはその声は届いていなかった。
するとメリアン・ベイカーが白い車の助手席の窓からまるで蛇の様にスルスルと抜け出てきて、車のボンネットの上に乗った。
メリアン「さっき何て言ったの!?」
メリアンが大声で叫んだ言葉をギリギリ聞き取れた竜賀はそれに答える大声で必死に伝えた。
竜賀「今ここで戦っている場合じゃない!!俺達にはシカゴシティで本当に戦わなければいけない敵がいるんだ!!その協力をするつもりがないならこれ以上邪魔しないでくれ!!」
メリアン「アンタ達が目的があるのと同じく私達にも任務があるのよ!!さぁ!!ダミアン・シーベルト君をこちら側に返しなさい!!」
竜賀「断る!!」
メリアン「何ですって!!?」
竜賀「ダミアン・シーベルトなんて奴は知らないし、そんな奴いないんだよ!!この世に!!」
メリアン「そんなことないわ!!あんた達が今乗ってる車の中にシーベルト君がいるわ!!返しなさい!!」
竜賀「ここにいる子供って言えば!!俺と源太だけだ!!」
メリアン「その源太って呼ばれている子がダミアン・シーベルト君なのよ!!アンタ達がやってることは誘拐行為よ!!」
竜賀「誘拐じゃなくて!!路頭に迷ってるところを保護したんだよ!!彼はアンタ達マクシム連合に助けを求めてるんじゃない!!アンタ達から必死に逃げてるんだ!!」
メリアン「嘘と吐くな!!我々に下された命令は『行方不明になったダミアン・シーベルトを保護し、誘拐に関わった人間を抹殺せよ』とのことだ!!」
竜賀「組織がアンタ達下っ端に素直に全ての情報を包み隠さず話すと思ってんのか!!アンタら皆マクシム連合インディアナ支部のトップに騙されてんだよ!!」
メリアン「ウルサイッ!!!」
メリアンはブチ切れると伽鍵礼符を取り出し、黄色の鞭の様な光を出すそれを竜賀目掛けて振り下ろしてきた。
バチィィィ!!!
竜賀は咄嗟にそれに対抗する様に伽鍵礼符を取り出し、刀を召喚し光の鞭を防いだ。
竜賀「〜〜っっっぶねぇぇなぁ!!!何なんだこの霊具は!!」
メリアン「これは2枚の礼符を組み合わせて作った天使の刃!!触れたものを焼き切る裁きの鞭よ!!!」
バチィィ!!バチィィ!!
目にも止まらぬ速さで襲いかかってくる天使の刃から車を必死に守ろうと竜賀は刀を振るった。天使の刃が刀に当たる度に物凄い量の火花が散っていた。
バチィィ!!バチィィ!!
竜賀「〜〜〜っクソ!!こんなに攻撃喰らってたら刀が保たねぇぞ!!」
メリアン「だったらさっさと!!降参しろ!!」
バチィィ!!バチィィ!!
竜賀「やだね!!必ずやり遂げたいことがあるからな!!」
そんな竜賀とメリアンの戦闘を運転席で見ながら運転していたルーカスの元に通信が入った。
???「ブラゼル隊長!こちらコンウェイ少尉です、今どこにいるんですか?」
ルーカス「どこって…今はミルウォーキーからシカゴに向かう間の道路を走行中だ。今は目の前に目標を捕捉して追跡中だ」
コンウェイ「忙しいところ申し訳ないのですが、今ジョージ・マッカートニー所長が隊長と連絡を取りたいとおっしゃっています」
ルーカス「今良いところなんだぞ!!後少しシカゴに入ったところでターゲットを捕まえられるかもしれないんだぞ!!」
コンウェイ「それでも連絡を取りたがっていますので!文句はそちらにどうぞ!」
通信がブチっと切れたかと思うと、別の男の声が通信機器から聞こえてきた。
ジョージ「こちらジョージ・マッカートニーだ。そちらルーカス・ブラゼル隊長で合っているな?」
ルーカス「……はい…こちらルーカス・ブラゼルです!…今ターゲットを目前に確認しました!これから確保していきます!」
ジョージ「その必要は無い」
ルーカス「え?……何ですって!?」
ジョージ「聞こえなかったのならもう一度言うぞ?…今すぐ追跡を中止し、次の指示があるまでその付近で待機しろ」
ルーカス「何故ですか所長!?ダミアン・シーベルト君を何が何でも早急に保護しろと!あれほど強く命令しておいて!!何故今目の前に目標を捕捉していながら、みすみす逃すんですか!!?」
ジョージ「こちらからシカゴ支部に状況を通達し、シカゴ支部の隊員達に人海戦術でターゲットを確保してもらう様にさっき指示をしておいた」
ルーカス「ならば!我々もそこに加わって協力した方がよりスムーズにミッションを行えるはずですが!?」
ジョージ「シカゴシティの地形に疎い君達が行ってもかえって現地の足手纏いになるだけだ」
ルーカス「しかし!!」
ジョージ「知る必要のない事……これを言ったら解るよな?」
ルーカス「!!?」
ジョージ「…君達が考える必要は無い…君達はもしも私の命令を無視して勝手な行動を起こした時の責任を全部取れるのかね?」
ルーカス「…………」
ジョージ「君達の責任を背負うのはあくまで私だ……そして組織である以上優先されるのは集団行動だ。スタンドプレーじゃない。以上だ…」
ブツッ!
通信を切られしばらく呆然としていたルーカスは車のハンドルを握りながら、メリアンが目の前で懸命に戦って藍川竜賀から源太を取り返そうとする姿を見て腹を括った。
ルーカス「メリアン!!」
メリアン「リーダー!?」
ルーカス「これはインディアナ支部ジョージ・マッカートニーからの命令だ!!今ここで撤退しろとのことだ!!」
メリアン「そんな!?ターゲットを目前になぜ…」
ルーカス「いいから聞け!!こっからが続きだ!!現場指揮官ルーカス・ブラゼルはこの命令を拒否し引き続きダミアン・シーベルトをシカゴまで追跡し必ずこの事件の真相を突き止める!!以上!!」
メリアン「!!…了解!!」
バチィィ!!バチィィ!!バチィィン!!
一旦、攻撃の手が止まったかと思われたが再び攻撃が再開したことで竜賀もストレスがかかってきていた。
竜賀「〜〜〜っ!!父さん!!後どのくらいだ!?」
光男「後10分くらいでシカゴに到着する!!ホテルまでは30分掛かる!!」
竜賀「これ以上攻撃をただ耐えるだけとか無理があり過ぎる!!こっちからも攻撃させてよ!!」
光男「駄目だ!!こっちから絶対攻撃を仕掛けるのはナシだ!!」
源太「おやっさん!!竜賀はもう限界だよ!!今の竜賀には防御系の能力が無いんだよ!!どれだけ剣術で防御する技術があっても限界がすぐ来るよ!!」
光男「……これを超えられないんなら……竜賀は死ぬだけだ」
源太「そんな!!?」
光男「心配するな!!俺の息子はこれしきで死ぬヤワな男じゃない!!信じろ!!」
竜賀を心配する源太が必死に抗議しても、それを信じろと光男は一蹴した。
そしてメリアンの天使の刃を後に大きく振りかぶり竜賀に狙いを定めた。
竜賀(今度も“上”から…)
竜賀がそう思い刀を頭の上に持ち上げようとした瞬間、
メリアン「そこだぁ!!!」
天使の刃が鞭ではなく、今度は槍の様に真っ直ぐメリアンの手から放たれた。放たれた光の槍が竜賀の心臓目掛けて伸びてきたのを、竜賀はまるで世界が全てスローモーションになったかの様に見ていた。
竜賀(あっ……死んだ…)
光の槍の先端が胸まで十数センチと言うところまで近付いてきた刹那、そんなことを思い浮かべた一瞬、
竜賀の右手がまた青く光り輝いた。
ドカン!!!
竜賀「ぐっ!?」
キキイイイイイイィィィィィィッ!!!
光男・源太・マーカス「「「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???」」」
竜賀は光の槍に突き飛ばされジープの後部座席のリアガラスに身体を物凄い勢いで叩きつけられた。ジープはその衝撃で大きく揺れ、車線を大幅にはみ出してしまった。
光男「くっっっそオオオオオ!!!」
車がスピンしているのを見てルーカスは大きくガッツポーズをしてメリアンに呼びかけた。
ルーカス「よし!!これで相手の体勢を崩せたぞ!メリアンよくやった!!」
メリアン「………」
ルーカス「どうしたメリアン?」
メリアンは呆然とした顔で前にある車の荷台を見つめていた。
メリアン「……どうして今の一撃で胸を貫通しなかったの?」
光男は全力でハンドルを切り、何とかギリギリ横の建物に衝突せず元の車線に車体が乗った。
光男「はぁ…!はぁ…!はぁ…!おい!皆無事か!?」
源太「ん〜〜〜何とか…生きてる」
マーカス「イテテテ…」
源太「マーカスさん大丈夫!?」
マーカス「ああ…俺は大丈夫だ…それより……君の息子は…?」
光男「!!?竜賀!!?竜賀!!!」
竜賀「…いっっってぇ〜〜〜なぁ!危うく死ぬトコだ!」
マーカス「いや普通死ぬだろ!!?」
源太「生きてた…」
光男「竜賀!!無事なのか!?身体はどこか怪我してないのか!?」
竜賀「ん!?ああ!どこも怪我してないぞ!!」
源太「でも一体どうやってあの攻撃を受け止めたんだ??」
竜賀「俺も本当信じられないんだけどさ…今さっきギリギリのところで俺の伽霊能力が新しく発動したんだと思う…」
竜賀は右手にある新たな伽鍵礼符を後にいる源太に見せる様に自分の顔の横に持ってきた。
源太「………ハァーーー!!??」
To Be Continued
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