#35 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第22話「ブルガント団のリーダー」
数多くの偽造硬貨に囲まれ、シャンデリアの光に反射し黄金に輝く明かりが部屋全体を照らしていた。
その部屋の中心で倒れている少年、藍川竜賀。そしてその横で立っている二人の男、アレックス・ブルガントとソルマン・ノルスタイン。男に銃を向けているレスリー・コーナー。
レスリー「まずはお前達を逮捕する!ウイリー・べドナー元所長との関係を取調べ室でたっぷり聞かせてもらうからな!!」
アレックス「お前は状況がよく解っていないようだな…」
レスリー「何?」
アレックス「勇ましく一人で乗り込んで来たんだろうが、こっちは二人…そしてお前は一人…あとこっちには人質までいる」
レスリー「…ッ!!」
アレックスは竜賀の体を足で踏みつけグリグリと押さえつけてきた。
アレックス「こっちは作戦を実行する為ならどんな犠牲も厭わない覚悟で動いている…だがお前らはどうだ?こんな小僧を守らなきゃいけない。組織のイメージを守らなきゃいけない。都市を守らなきゃいけない。守る物が多過ぎるお前らマクシム連合にはしがらみって鎖が身体に巻き付いてんのが俺には見えるぜ?」
レスリー「ああ…そうだな…」
レスリーは銃を両手で構え直し、狙いを定める様にアレックスを見据えた。
レスリー「それがお前らと俺達の格の違いだ」
その言葉にアレックスとノルスタインは同時に眉をピクリと動かした。
レスリー「守る物が多過ぎる?結構なことじゃねぇか!俺達はマクシム連合の権限を市民から預かっている身なんだよ!お前らみたいに誰からも期待されていない奴らと一緒にされたくないな」
ノルスタイン「!!?…んだと!?」
レスリー「俺達マクシム連合の使命は市民の平和と安全を守ることにある!己の自尊心を示すことじゃない!!」
アレックス「だったら…その使命とやら…全うしてみろ…」
アレックスが手を上に上げた瞬間、周囲の棚の金具や硬貨がカタカタと音を立てて浮かび上がり始めた。
レスリー・竜賀「「!?」」
金具やネジが外れていくと同時に自分達の持っていた刀や銃がひとりでに動いたのにレスリーと竜賀が驚いていた。
アレックス「俺の前ではこんな金属の武器は一切使えねぇ」
竜賀「磁力か!?」
レスリー「これが噂に聞くブルガントの磁気能力か?」
アレックス「残念だったな?折角の霊具が全く使い物にならなくなってよ」
すると背後にいたノルスタインが手をレスリーに向けると波動の塊を打ち出した。
ドンッ!!!
レスリーは波動の塊をモロに喰らった。壁に打ち付けられたレスリーは地面に突っ伏した。
レスリー「ぐ……流石ブルガント団だ…汚ねぇ手段を使う小物っぷりは噂通りだな…!!」
ノルスタイン「小物結構…!!」
アレックス「汚く生きてきたから長生きしてるんでね!裏でどれだけ汚く生きていこうが表で 勝ってりゃ全部正義であり、正攻法として認められる…それがこの資本主義社会の本質だろ?」
ガシッ!!
竜賀「油断したな…!!」
アレックスは自分の足首を掴む感触を感じ足元を見ると、そこにはアレックスをニヤリと見上げながら足を掴んでいる竜賀の姿があった。
アレックス「クソ!!放せ!!」
竜賀「ホイ」
アレックスが掴まれた足を思い切り振ると竜賀はすぐに手を放し、今度はアレックスのもう一方の足の裾を掴んで一瞬で引っ張った。
アレックス「何!?」
バランスを完全に崩したアレックスは地面に倒れ込んだ。辛うじて頭を打つのは避けていたが、次の瞬間予想だにしていなかったことが起きた。
磁力で浮かしていた金属が一斉に地面に落ちてきた。
ガッシャアアアアアン!!!!
金属の瓦礫が宙から落ちて地面に叩き付けられ、鼓膜が破れたかと思える程の轟音が部屋全体を振るわせた。竜賀とレスリーは咄嗟の出来事ではあったものの何とかしてテーブルや椅子の下に体を潜り込ませたお陰で大事に至らずに済んだ。
金属音が暫くして漸く収まってくれたのを感じた竜賀は周囲に山積みになった金属片を手でゆっくり静かに押してみた。
竜賀(やけに外が静かだな…)
周りの静寂さを感じた竜賀はこれ以上動いて敵に生存を察知されることを恐れて手の力を弱めた。そしてそれが正解であったとすぐ思い知ることになった。
ガシャガシャン!!
金属の瓦礫から誰かが出て来たのを感じた竜賀は何とか息を顰めようと口を手で塞いだ。外の様子をもっと知りたくて耳を澄ました。
アレックス「はぁ…はぁ…クッソ餓鬼が!!舐めた真似してくれやがって!!オイ!!ソルマン!!いるんだろ!!さっさと起きろ!!」
するとその近くで金属が動く音が響いて人が立ち上がる気配がした。
ノルスタイン「く……!!」
アレックス「…お前その傷…」
ノルスタイン「さっきのドサクサの中であの小僧の剣が落ちてきて、左腕に刺さったんですよ…」
アレックス「刺さった?……斬ったんじゃなくてか?」
ノルスタイン「ええ…不運ですよ…しかも切れ味も鋭かったんで抜くのにかなり苦労しましたよ」
竜賀は二人の会話を聞いた時自分の頭の片隅にあった記憶が甦った。
竜賀(まさか…あの刀……)
この世界に最初に来て間も無く、ワイルズを殺してしまった時の出来事がフラッシュバックしてしまった。自分の身体が思い通りに動かなくなった時、ひとりでに勝手に刀が動いたように感じてしまったあの感覚を。
アレックス「…それより……アイツらはどうなった?」
ノルスタイン「…さっきので死にましたかね?」
アレックス「もしかしたら生きているかもしれんぞ……ん?」
アレックスが何かに気が付いた様だった。すると二人がこっちに近付いて来る気配がした。竜賀はアレックスとノルスタインの足音が自分の元に近付いて来る度に、心臓が忙しなく身体をドンドンと叩いてくるのを感じた。
竜賀(来る?)
竜賀は武器を持っていないこの状況でどうすれば2対1の絶体絶命を切り抜けられるかを必死に考えた。
しかし二つの足音は竜賀のすぐ傍まで来たと思ったらそのまま通り過ぎて行ってしまった。
竜賀(あれ?)
違和感を覚えながらも暫く息を顰めていると二人の足音がピタリと止まった。
アレックス「……コイツ…死んでんのか?」
ノルスタイン「確かめてみましょうか?」
竜賀は何か嫌な予感をバンバン感じ取っていたが、心のどこかでブレーキをかける音も同時に響いていた。しかし、竜賀の嫌な予感は的中してしまった。
グサッ!!
刃物が何か肉を勢いよく切り裂く音が聞こえた。
アレックス「何の反応も無い…」
ノルスタイン「急ぎましょうか…こんなところで油売っている訳にもいきませんし」
アレックス「そうだな…」
そのまま竜賀は息を顰めていると扉が開く音がして二人の足音が遠ざかって行くのが聞こえた。
竜賀は周囲に気配が無くなったのを確認した後、金属の山を押しやって外に出た。竜賀は急いで地面を見ると金属の山の中からナイフが手の甲に刺さった右手をダランしているのが見えた。
竜賀は息を飲み急いで、駆け寄って積み上がっていた金属を除けていった。
竜賀「はぁ…!はぁ…!はぁ…!!そんな…!死ぬな!!」
レスリー「……心配するな…ダミーだよ」
するとナイフが刺さっていた右手がまるで義手の様にダランとしながら、根元から右手と掴んでいる右手が出て来た。すると金属の山からニコッとレスリーが笑顔で出て来た。
レスリー「無事だったか?竜賀…その様子だと今のも何の問題も無かったようだな」
レスリーは良かった良かったと言うように頷きながら服の汚れを手でパンパンと払った。しかし、竜賀はその様子を見ても顔が曇ったままだった。
レスリー「…?どうした??」
竜賀「…俺……てっきり今ので…レスリーさんを巻き込んで…殺しちゃったんじゃないかって…思った…」
レスリー「…?……あっ…そうか!…悪い悪い!竜賀!すっかり忘れてたよ」
竜賀「え?」
すると竜賀の前に立っていたレスリー・コーナーが頭の上から黒い布が覆い被さったと思ったら、布がどこかに引っ張られるようにして消えた。すると竜賀の前にはルーカス・ブラゼルが立っていた。
竜賀「!!?」
ルーカス「フッフン♪言葉も失ったかい?」
竜賀「ルーカスさん!?どうして…」
ルーカス「どうしてって…これが俺の伽霊能力だからだよ」
竜賀「変身系の伽霊能力?」
ルーカス「ああ…それに今さっきのダミーの右手も伽霊能力で造ったもんだよ」
竜賀「……そうだったんか…」
ルーカス「何ホッとしてんだよ?もしかして俺が死んだと思ったのか?」
竜賀「そうですよ……俺…さっき貴方が襲われるかもしれなかったのに、ここから一歩も中から出ようとしなかったんですよ…自分は無事だったのに…全然助けようとしなかったんです」
ルーカス「…何言ってるんだ?…あの時もし下手に君が俺を助ける為にここに出て来てた方がずっと危険だったさ……君はここでも冷静に身を顰めていてくれたお陰でアイツらはココから出て行った」
竜賀「俺…そんな風に冷静になってた訳じゃないんです……恐かったんです」
ルーカス「恐くなかったら…逆に変だよ…君みたいな子供の年頃で戦いが恐くないだなんて…」
竜賀「自分にあの二人を同時に倒せる能力がないからとか…そんなのを言い訳にして…本当は貴方の命を守ろうとすることから逃げてる自分がいたんです」
ルーカス「………」
竜賀「…呆れちゃいましたよね…こんな臆病者が戦いの場にいるなんて…」
ルーカス「あの時…君は本当はどうしたかったんだい?」
竜賀「すぐ飛びかかって二人共自分一人で倒したかったです…誰も失わなくてすむように!」
ルーカス「……フッ…だったら強くなれば良い…」
ルーカスは竜賀を見ながらそう告げた。竜賀は顔を上げ、ルーカスを見つめた。
ルーカス「今みたいに悔しい想いをしなくてすむようにな…そうすればいつでもお前は自分の大切なモンを守ることができる」
竜賀「……ふふ」
ルーカス「何が可笑しんだ?」
竜賀「だって…ルーカスさん、俺のお父さんと同じこと言うんだもん…力ってのは持ち過ぎても困りもんだけど、全く無いよりは絶対あった方が良いってさ…」
ルーカス「ああ、その通りだよ…そして俺も力を持って生まれた以上、これを誰かを守ったり、誰かにとって大切な何かを守る為に使っていくべきなんだよ」
竜賀「『大いなる力には、大いなる責任が伴う』ってこと?」
ルーカス「…ああ……そうだ」
竜賀「……よし!いつまでもグズグズもしてられない!」
ルーカス「その意気だ少年!」
竜賀「今地上での状況ってどうなってます?」
ルーカス「今は地上ではブルガント団の幹部の男、スティーブンを本物のレスリー・コーナーが足止めしてくれている状況だ…しかも君が気を利かせてくれて解放されたシカゴの適能者達がブルガント団と戦ってくれているお陰でそれほど大きな被害になってはいないんだ」
竜賀「民間人なんですよ彼等は!?」
ルーカス「彼等が脱走するのは相当不意打ちだったのか、パニックになってて思ったよりシカゴ支部内を制圧できてなかったらしい」
竜賀「おお…俺ナイス判断だった訳だ」
ルーカス「そんな中このパニックを引き起こした原因を探る為にソルマン・ノルスタインを送り込んだんだが、そのノルスタインからの連絡がしばらく取れてなかったからリーダーご自身で地下のこの状況を見に来ようとしたらしい」
竜賀「そこで俺と立ち会っちゃったって訳か……でもよくそこまで状況を詳しく知れましたね?」
ルーカス「地下から出て来たブルガント団の連中と解放された囚人達から状況を聞いて整理したのさ」
竜賀「なるほど…でもルーカスさん?何でさっきブルガントとの戦いを死んだフリして避けたんですか?」
ルーカス「この部屋には奴の磁力に反応する物が多過ぎて勝負にならねぇと判断したからだよ」
竜賀「!…そっか周囲に金属が多いから必然的にあっちが有利になってしまうから」
ルーカス「この道を進んだ先に奴の磁気に影響しない所がある…そこで勝負を仕掛ける…竜賀、君にも一緒に戦ってもらうよ」
竜賀「はい!!」
___ブルガント団アジトの地下通路にて
アレックス「まさか鼠3匹の侵入を許しただけでここまで計画が狂っちまうとはな」
ノルスタイン「ここまでしてくるとも予想できなかったですしね!」
アレックス「ソルマン?お前いつもの鼻につく喋り方どうした?」
ノルスタイン「あの小僧共にやられてムカついてるんで、そんな気分じゃないんですよ!」
レスリー「だったらもっとムカつく気分にさせてやろうか?」
通路を速足で駆けて行く二人の背後から声を掛けてくるのが聞こえた。
アレックスとノルスタインが振り返るとそこには竜賀とレスリーが立っていた。
アレックス「呆気ない最期だと思っていたが、やっぱりそんな簡単に死ぬタマじゃあなかったか…」
竜賀「あんなんで死ぬような適能者がいる訳ないだろ?」
レスリー「それに…こんなダミーの死体の手にナイフ刺して死亡確認するあたり、ツメもワキも甘々な連中だな…」
アレックス「……」
レスリー「地下の牢獄から密かに捕まえ続けていた囚人が、作戦中に一斉に脱獄して、組織を内部から攻撃する…このぐらいの最悪のシナリオも想定できない危機管理能力の低さじゃあ…合衆国支配なんか夢のまた夢だな」
ノルスタイン「言ってくれるじゃねぇか…たかが一組織の使いっ走りが」
レスリー「だったらお前らは一体何なんだ?資本主義の既得権益に敗れて八つ当たりするしかできない無能なテロリスト気取りか?それとも口先だけはご立派な理想主義者か?どっちだ?」
アレックス「ノルスタイン…この雑魚共の相手をしておけ…俺は上に上がって…牢獄から出て来た囚人共を皆殺しにしてくる」
レスリー「待てよ…折角2対2なんだ…お互い一人一殺するぐらい良いだろうが?」
ノルスタイン「つまり私の相手は…?」
竜賀「俺に決まってんだろ」
竜賀はレスリーの邪魔をしようとするノルスタインの前に立ちはだかる様に割って入った。ノルスタインは感情を抑える表情をしながらゆっくりとした口調で話し始めた。
ノルスタイン「君もつくづくしつこ〜〜いでーーすね〜〜?♪」
竜賀「アンタに言われたくはねぇな…さっきも後頭部にきっつい一撃貰ったしな」
ノルスタイン「適能者同士の殺〜〜し合いに引き分けはあーーりませ〜〜ん♬そーーして〜〜♩」
竜賀「……」
ノルスタイン「勝ち負けもあ〜〜りませーーん♫折〜〜れた方が死ぬ♪だ・か・ら♫」
竜賀「だから?」
ノルスタイン「手足が千切れようが、どんだけ惨めだろうが意地を張り続けた奴が最後は笑うんだよッ!!!」
ノルスタインは両手からこれでもかという程の波動の塊を撃ち出した。竜賀は後に下がりながら飛んで来た波動を斬り捌いていった。
竜賀「それはもう喰らわんッ!!」
ノルスタイン「甘いんだよ!!」
無数の波動の塊を躱すのに気を取られていた竜賀はノルスタインが地中から手を伸ばして、自分の足首を掴んでいるのに気付くのに半歩遅れた。竜賀は足を引っ張られバランスを崩した。
竜賀「しまっ…」
ドガドガドガガガン!!!
竜賀は最後に飛んで来た波動をモロに腹に喰らった。攻撃がそのまま直撃した竜賀は壁に強烈な勢いで叩き付けられ地面に倒れ込んだ。
竜賀「〜〜〜ガハ!!」
ノルスタイン「さっきのリーダーのお返しだよ…」
悶える竜賀の腹をノルスタインは足で踏み付けた。
ノルスタイン「餓鬼がッ!!デカい面してッ!!この俺様にッ!!舐めた口ききやがってッ!!」
竜賀「〜〜〜!!!」
ノルスタイン「ムカつくんだよ!!テメェも!!アイツらも!!能力を持たねぇ癖に!!それに嫉妬して!!俺を見下した目で見やがって!!生まれながら神に見捨てられた分際で!!」
竜賀「!!?…そうか……漸く解ったよ…アンタ……両親に捨てられたのか…」
ノルスタイン「!!?違う!!!」
ドガドガドガ!!!
ノルスタインは明らかに痛いところを突かれた様子で竜賀の身体を蹴る手数が増えていた。しかし手数が増えた分、一発が効いていなかった。
竜賀「両親も…兄弟も…何の呪いもなかった無適能者だったのに…自分だけこの忌々しい伽霊能力に呪われたことで…ずっと家族にまで…煙たがられたのか…」
ノルスタイン「!!?黙れ!!黙らないと殺すぞ!!」
竜賀「だからなのか?…ブルガント団に入ったのは?…アンタのことを捨てた家族に…認めてもらう為か?」
ノルスタイン「黙れってんだよ!!お前に俺の何が分かる!?」
竜賀「分かんねぇよ…だけど…だからってこんなやり方を選んだのかってのがもっと分かんねぇよ…」
ノルスタイン「何!?」
竜賀「アンタ程の適能者だったら…もっと誰かの役に立つ能力の使い方があったはずだろ…?」
ノルスタイン「それはお前らの意見だ!勝者の正攻法が万人に当てはまると思い込んでいる奴らの傲慢なんだよ!!」
一通り蹴りを入れたノルスタインは竜賀に向かって手を翳した____
____ルーカス・ブラゼルが化けているレスリー・コーナーがアレックス・ブルガントの前に立ちはだかり行手を阻んでいた。
レスリー「お前をここから先に行かせる訳には行かないと言った筈だ!」
アレックス「また死んだフリでもしてみるか?」
レスリー「あの場所じゃあ窮屈だからな…戦うならこのぐらい広いエリアでやった方が良いだろ」
アレックス「フン…お前も分かっているんだろ?あの部屋じゃ磁気に反応する物が多過ぎる…だから部屋の外の方がまだマシと思ったんだろうが、そもそもお前の伽霊能力じゃあ俺の能力と相性が悪過ぎるだろ?」
レスリー「何故そう思うんだ?」
アレックス「ウイリーからここのマクシム連合隊員の情報はキッチリ聞かせて貰ったぜ…レスリー・コーナー…お前は霊段階8の適能者、一見すると高レベルだがな…使う能力の属性が水をきた」
レスリー「よくお調べなこった」
アレックス「知ってんだろ?俺が電気系の伽霊能力を使うってのは?水と電気じゃあ圧倒的にお前が不利だ…違うか?」
レスリー「…………」
アレックス「黙ってるってことは答えはイエスってことだ」
アレックスは手から伽鍵礼符を取り出した。
アレックス「そんな相性最悪な敵にも挑むのを“勇気”っとは言わねぇぞ?それは“無鉄砲”って言うんだよ」
レスリー「本当にそうかどうか、テメェの目で確かめてみるんだな!!」
レスリーが再び銃を構えてアレックスに向かって撃とうとした。しかしアレックスはそれを見て素早く手を上げた。
バンバンバン!!
レスリーの撃った弾丸がアレックスに向かって飛んで行ったが、アレックスの伸ばした手の前で弾丸がピタッと止まっていた。
アレックス「俺にメタルジャケットの弾丸が通用しないってのは分かってんだろ?」
そしてアレックスは上げていた手でまるで何かを押す様に腕を伸ばすと、宙を浮いていた弾丸が向きを変えてレスリーに向かって飛んで来た。
レスリー「!?」
アレックス「フン!」
ガガガガン!!!
レスリーはそれを素速い動きで躱した。その直後アレックスは片手で何かを手繰り寄せる様な動きをさせた。するとレスリーの持っていた拳銃がまるでアレックスのところに引き寄せられる様に引っ張られた。
レスリー「!?クソ!!」
アレックス「ほら…寄越せ!」
そして拳銃は磁石に引き寄せられる様にアレックスの元に飛んだ。アレックスはそれをキャッチして弄ぶ様に銃をクルクルと回していた。
アレックス「こんな玩具が通用するとでも思ってんのか?それとも…俺にテメェの伽霊能力が相性が悪いと諦めてんのか…」
レスリー「…」
アレックス「まぁ…どっちにしろテメェにとって状況は絶望的だがな…」
レスリー「だったらこっちか仕掛けさせてもらうぜ!!」
アレックスに向かって突進する様に飛び込んだレスリーは伽鍵礼符を取り出した。
アレックス「この状況で出すのは“水の城壁”か?」
アレックスはレスリーに向かって振り上げた手に電撃を溜め込み、電撃の光線を放った。
しかし、レスリーに光線は直撃せずにすり抜けた。
アレックス「!!?」
レスリー「どこ見てんだよ?」
アレックスが背後から聞こえる声に反応して、急いで距離を広げようと動こうとした。
レスリー「遅いッ!!!」
レスリーの手から黒い洋杖が現れた。そして洋杖を一振りし、大きな炎を生み出した。
アレックス「!!?」
予想外の攻撃を受けて体勢を崩してしまったアレックスは電撃を闇雲に撃ち出した。
レスリー「効かねぇよ!!」
今度は黒い布地のマントを取り出し、自分に向かって来る電気をマントで払うとアレックスの方に弾き返された。
アレックス「!!??」
アレックスはその電撃を辛うじて避けたが、余波によって右肩が火傷をしていた。
レスリー「こんな攻撃も全部予想通りってか?」
アレックス「馬鹿言ってんじゃねぇよ…ここまで全部予想外だ…お前一体誰だ?」
レスリーはアレックスの目の前で黒いマントを取り出し、自分の体全体に巻き付ける様に覆った。
アレックス「やけに霊具を多く持ってんだな」
レスリー「それが俺の売りでもあるからな」
マントがバサっと取り払われるとそこに立っていたのは全くの別人の白人の男だった。
アレックス「お前は…?」
ルーカス「マクシム連合インディアナ支部戦闘部隊隊長、ルーカス・ブラゼルだ」
アレックス「!…黒の奇術師か」
To Be Continued