#28 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第15話「藍川光男vsウイリー・べドナー」
肌寒いミシガン湖から流れる風が、ネオンに彩られたシカゴの都市を通り抜ける。都市の南側に位置するホテル『ローグ』と看板に書かれた建物の正面玄関の前で二人の男がそれぞれの武器を携えて向かい合っていた。
一人は身の丈程もある巨大なスピア型の鎚矛を右手に持つスーツ姿の大男ウイリー・べドナー。
そしてもう一人が緑髪に180cmの細身の長身でジャケット姿をした日本人だった。腰には漆塗りの鞘を差し、右手には鞘と同じ漆塗りの柄をした青い刀身をした日本刀を握っていた。その男の名は藍川光男。
二人の間に流れる息の詰まる様な闘気は辺り一面から音を掻き消す様だった。
都市の灯りを受け光男の握っていた刀『聖剣・藍風』の刃が妖しく光り輝いていた。
ウイリー「……フン……良いのか?」
光男「何がだ?」
ウイリー「無適能者が適能者と戦う際には重火器を所持する……常識の筈だぜ」
光男「……フッ……御忠告どうも……だが残念なことに俺は銃とか火炎放射器とかの類の重火器を触ったことさえないんでね」
ウイリー「……ほう?」
光男「息子にも良く言ってることさ……扱い馴れてない武器なんて危険だし無駄な争いの本になるから師匠が見つかるまで決して触るなってね…」
ウイリー「今まさにその争いを起こそうとしている最中の筈だがな」
光男「俺はこう言った真剣の取り扱いに関しては、剣道を教えてくれた師匠である義父さんのお陰で馴れてんだよ」
ウイリー「少し腕に自信がある程度で過信すると血を見ることになるぞ」
光男「その言葉お返しさせて貰おうか……偶然手に入れただけの借り物の能力を自力だと思い込んだら地面を這いずり回る羽目になるぞ?」
その瞬間ウイリーは巨大な鎚矛を光男の胸に向けて猛スピードで突撃してきた。光男はそれを見て刀を少し下ろし、身を屈めた。
ウイリー「もう遅いッ!!」
完全に鎚矛の先端が光男の顔を捉えた。ウイリーはそれを確信した。
そして次の瞬間光男はウイリーの視界から消えた。
………スッ……
突然のことに驚き、咄嗟に立ち止まってブレーキをかけるとウイリーは自分の首に刀の刃が静かに添えられていたことに気が付いた。
光男「後半歩…」
首に添えられていた刃を辿った先にいた刀の持ち主である藍川光男がウイリーの懐で静かに呟いた。
光男「踏み込みが深かったら……アンタの首は今頃地面に転がっていただろうぜ」
ウイリーは状況を理解すると身体全身から冷や汗がドッと吹き出てくるのを感じた。今一体この男はどうやって攻撃を躱して自分の懐に飛び込んで来られたんだと、ウイリーは理解ができない何かに恐怖した。
ウイリー「……どんな能力だ?」
光男「ん?」
ウイリー「高速移動系か?それとも瞬間移動系か?」
光男「……ふ……この程度のことも解らないとはね…今は伽霊能力じゃねぇよ…技術だよ」
ウイリー「何?」
光男「古武術式の内の一つ……“縮地”だよ…」
ウイリー「シュク…チ…?」
光男「ああ……子供でもできるし、年寄りでも、もちろんアンタでもできる簡単な技術さ……まぁ少しコツが要るけどな」
ウイリー「…ほう……」
光男「人間の体の移動ってのは即ち、人間の重心を移動させることだ…だから人間は自身の重心を速く移動させる為に脚力を鍛えようとする」
ウイリー「そりゃそうだろ……最も強い筋力が速いスピードを生み出すのが常識ってモンだ」
光男「だが実はそうじゃないんだよ…スピードってのは最高速の大きさだけじゃねぇんだよ…」
ウイリー「………」
光男「スピードには3Sってのがあるんだよ」
ウイリー「3Sだと?」
光男「ああ…まず最初のSが『START』…速度0からMAXスピードまで持っていく“加速力”…そしてその次のSが『SPEED』、MAXスピードを常に保ち続ける維持する力…そして最後のSが『STOP』、MAXスピードから速度0まで瞬時に落とすことができる“減速力”…これがスピードの3Sって言うんだよ」
ウイリー「…なるほど……」
光男「アンタの言ってんのはMAXスピードの大きさだけだ……まぁ今まで会って来た適能者のほとんどがそうだったがな…能力を解放して身体能力が上昇したことに胡座をかいて技術の向上を疎かにする奴ばっかだ」
ウイリー「それで?その縮地ってのがお前の言うスピードの3Sと何の関係があるってんだ?」
光男「…アンタ今俺が一瞬消えた様に見えたんじゃねぇか?」
ウイリー「……!」
光男「無適能者が消える訳ないだろ?……今のはスピードの3Sの中で最も重要な『START』…つまり加速力を高める技術さ…日本の古武術の身体の使い方の、一つで脚力を極力使わず重心を移動する力を大きくする特殊な歩法……それが“縮地”だ」
ウイリー「なるほど…トップスピードではなく加速力を上げる技術か…それが解れば同じ手は通じまい…二度とな……」
光男「二度とねぇ…」
ウイリー(要は動き出しがあまりにも速かった為消えた様に錯覚した…そう考えれば驚くことは何もない…)
ウイリーは鎚矛を再び構え、光男の返技を警戒した。
ウイリー(つまり鎚矛の攻撃範囲の内側に入り込ませなければ良い…武器の届く距離で攻撃し続ければコイツは消耗する…!!)
ウイリーは鎚矛を片手で振り回し始めた。そして辺りに大きな風が渦を生み出した。
ウイリー(…こんな奴に…霊力を無駄に消費して堪るか…!!霊段階2の『土貫鎚矛』だけで仕留めてやらぁ…)
ブオン!!ブオン!!ブオン!!ブオン!!
ウイリー「おりゃあ!!!」
そして巨大な鎚矛が縦に振り下ろされ光男の頭目掛けて落ちてきた。
光男「……あらよっと…」
ドン!!
光男は攻撃を紙一重で避けると鎚矛は地面に凄まじい轟音を立てて叩き込まれた。
ウイリー「…チィ!!」
しかし、ウイリーが次の瞬間次の攻撃に移る為に鎚矛を引き上げようとしと時、目線を何となく右に向けるとそこには光男がビリヤードの様な構えで刀を構えていた。
ウイリー「〜〜シット!!」
光男「遅い!!」
グサッ!!!
右手から放たれた強烈な刺突の刃がウイリー・べドナーの右肩を貫通した。
ウイリー「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」
光男は素早く刀を引きウイリーの肩から刃を抜くと、ウイリーの肩から一気に血が吹き出て来た。
ウイリー「ああアアアアア!!血がァ!!血がァ!!」
光男「出血の一つや二つでピーピー喚くな!!」
ドンッ!!
光男はウイリーの右肩の傷口を左手の拳で殴り、さらに血が溢れ出た。ウイリーは激痛に身を悶え、うつ伏せで地面に疼くまってしまった。
ウイリー「あああああああああ〜〜〜!!!」
光男「痛いか?…痛いよな!?…でもな!!お前に裏切られたお前の仲間の心の傷は……」
光男は思いっ切り右足を後に振りかぶって、まるでサッカーボールを蹴ろうとする構えを取ってウイリーに狙いを定めた。
光男「こんなモンじゃねぇぞ!!」
ドスン!!!
光男の右足が渾身の力でウイリーの脇腹に突き刺さった。ウイリーの身体が少し宙を浮く様に飛んで、地面をゴロゴロと転がっていった。
ウイリー「〜〜〜〜ッ!!!」
光男「……はぁ…もう歳だな……今ので筋肉攣ったかも…」
少し痛そうな素振りを見せながら刀に付いた血をそこに落ちていた布で拭き取り、鞘に刀を納めた。そして皆が向かった方向に歩き出そうとした。
光男「さて皆そろそろ支部に着いてるかな…?」
ウイリー「……待て…よ…」
光男「……タフだな…適能者ってのは…」
ウイリー「まだ…終わっちゃいねぇよ…戦いが…まだ終わってねぇのに……敵に背中を向けてんじゃねぇ…!!」
光男「……もう終わってるよ…無理すんな…右肩を貫通してんだぞ?下手に動くと出血多量で命落とすぞ?」
ウイリー「ウルセェ…!!…ここまでコケにされて黙ってられるか…!!」
光男「そんなに悔しいのかよ……無適能者に負けるってのは…人生生きてりゃ負けるのの連続だろ…」
ウイリー「黙れ!!無能の分際で!!俺様を見下したみてぇな口きいてんじゃねぇ!!俺様が!!テメェごときに!!!」
光男「…はぁ〜〜〜…めんどくせぇ自尊心だねぇ……いや…ここは誇り高いとでも言っておくべきか…?」
ウイリー「このまま終わって堪るか…!!このまま…!」
光男「最後に聞いて良いか?」
ウイリー「何だよ…!!」
光男「アンタは何故ブルガント団に協力してんだ?…そして何故アンタはマクシム連合インディアナ支部の違法な実験を隠してたんだ?」
ウイリー「……!!」
光男「答えられねぇか?…そんな生命の危機を迎えても隠し続ける必要のある秘密なのか?」
ウイリー「………」
光男「そこまでして……秘密を墓場まで持って行く価値のある仲間なのか?」
ウイリー「……ただの腐れ縁だ……」
光男「腐れ縁?」
ウイリー「ああ……アレックス・ブルガントと俺は昔…この都市に住んでいた幼馴染さ……この都市は多くの無適能者共で溢れ返っていた…奴らは俺達を恐れ、俺達を迫害していた」
光男「迫害?」
ウイリー「そうさ…奴らは俺達に能力で敵わねぇことを悟って…適能者に対して不利な法律や条例を次々に可決して俺達を飢死にする様にしてきた……俺はこんな糞みてぇな世の中を変える為に大きな組織に入って地位を手に入れ…ようとした…」
光男「それで良かったんじゃねぇのか?」
ウイリー「だがそうはいかなくなっちまった……その為に入った筈のマクシム連合でさえ金と利権の前に組織の上層部は太刀打ちできなかったんだ」
光男「…よくある話だな……」
ウイリー「このアメリカを支配しようにも圧倒的に数が上なのは無適能者側だった…しかも大半のマクシム連合の隊員は霊段階5以下の低適能ばっかりだ…これじゃあどんなに足掻いても軍事力や資金力でも政府に太刀打ちできない…だから俺達マクシム連合の上層部は組織の軍事力アップの為の計画に着手することになった」
光男「それが…」
ウイリー「適能者の霊段階を強制的に引き上げる研究だ……そうすりゃ適能者の質が上がり組織が大きな力を持ち、投資家達から莫大な資金を調達することができる」
光男「だったら適能者の個々の能力を訓練で伸ばしていけば…」
ウイリー「当然それはやったさ!しかし伽霊能力の成長自体にも限界があったのさ!!個々の能力の成長には肉体的な成長以上に精神的も大きく関係していた!どれだけ情報を集めてマニュアル通りの訓練カリキュラムを組んでも、どこか壁にぶつかり成長が止まる者が続出した……だから組織は倫理に反すると解った上で禁忌を犯した」
光男「それが人体実験ってことか?それも同志である筈の適能者の…!」
ウイリー「そうだ…」
光男「源太も…あの子も…その実験材料の一つだったってのか…!!」
ウイリー「そうだ……それが“より大きな善の為に”であれば必要な未来への犠牲として語り継がれるだろうってな…」
光男「残念ながらそれはないな…」
ウイリー「……」
光男「歴史に名を残すのはいつだって最初に常識に反逆を起こした者だけだ…犠牲者はいつもその偉人達の下に埋もれる踏み台としてしか扱われないってのは、これまでの歴史が証明してしまってるんでな」
ウイリー「……なるほど」
光男「それで?アンタはなぜアレックスと手を組んだんだ?」
ウイリー「……金さ…」
光男「…は?」
ウイリー「聞こえなかったか?金だよ……腐れ縁のダチかどうかなんてどうでも良かった…アイツは『俺に協力すれば金になるビジネスに力を貸してやる』って言ってきたんだよ」
光男「それに手を貸したってのか…!?」
ウイリー「ああ…お陰様で俺のマクシム連合での地位はかなり上がったよ…ポイントを稼げたからな……」
光男「ポイント?」
ウイリー「マクシム連合での信頼を得られる実績を表すポイントだよ……俺達がこのシカゴの都市で犯罪を犯しているブルガント団を捕まえて牢屋に入れていると言う実績を積める上に、守ってやっている愚民共から税金を多額に徴収することができる一石二鳥のビジネスさ…」
光男「それを分かった上でアンタ何ヶ月もそんな茶番みてぇなことに協力してやがったのか…!!」
ウイリー「随分稼げたさ……ただ最大の誤算は…お前らだったよ」
光男「?」
ウイリー「お前らが来なければ、この都市の秘密を暴かれることなく済んでいた……そして、インディアナポリスで行われていた…伽霊能力の実験もバレなくて済んでいた筈だった…」
ウイリーは横になった状態からゆっくり立ち上がって再び地面にあった鎚矛を左手で拾おうとした。
光男「……やめておけ……死ぬぞ…?」
ウイリー「よってその行為は死に値する…!!」
ウイリーは血塗れになった右手でポケットの中をゴソゴソと探し始めた。
光男「何を探してる?」
するとウイリーは金属性のケースをポケットから出し、その中からカプセルを取り出した。
ウイリー「……認めてやるよ藍川光男…貴様を殺すにはこれぐらいやらなきゃな…」
光男「何だそのカプセルは?…ただの薬や治療薬じゃねぇよな」
ウイリー「さっき話しただろ……マクシム連合が秘密裏に行っていた実験の……その素晴らしい成果の一つがこれなんだよ!!」
光男「!?待て!!止めろ!!」
ウイリーはカプセルを一気に口に2、3粒入れ、喉を鳴らし飲み込んだ。
ウイリー「…はぁ…はぁ…はぁ……これはまだ試作品だ…現段階で霊段階10に上り詰めている俺様がコイツを使えば一体どうなるか…」
するとウイリーは自分の胸を押さえ、呼吸困難であるかの様に息が荒くなり始めた。
ウイリー「はぁ…!はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
光男「お、おい!!大丈夫か!?」
ウイリー「はぁ…!は…ハハッ…ハハハハハハ…ハハハハハハハハハハハハ!!最高だ…!!身体の内側から能力が止めど無く溢れて来る様だ!!!」
ウイリーが鎚矛を拾い上げ、高らかに笑い声を上げ始めた。不気味な空気を感じ取った光男はウイリーから距離を取り、相手の出方を窺った。
ウイリー「さぁ…まずは…能力の大きさを試してみるか?」
ウイリーは伽鍵礼符を3枚取り出した。取り出した礼符は異様なまでに光を放って辺りを照らしていた。
ウイリー「Mr.藍川…この能力の増幅を計る為の実験…まずはお前をサンドバックにして試させてもらおう!!」
ウイリーは何も持っていない左手を上に挙げると辺りの風が徐々に渦を巻く様にウイリーの周りに集まり始めた。そしてその渦は巨大な塔の様に天にそびえた。
ウイリー「喰らえ!!!」
左手を光男に向けて振り下ろすと竜巻の中から三日月形の何かが猛スピードで飛んで来た。
ザン!!
光男は直感でやばいと悟り全力でそれを躱した。すると重苦しい引き裂く音と共に、地面に真っ直ぐなヒビ割れた切り口ができていた。
光男「マジかよ!ようやく本気になってきたってことか!」
ウイリー「いちいち攻撃にビビってる暇なんざねぇぞ!!」
巨大な竜巻はまるで生き物の様に蠢きながら、さらに周囲の砂を引き寄せているようだった。
ウイリー「俺の伽霊能力は砂や泥を操る能力だ!!この周囲にある建物全てを砂に変えて自身の武器に変える能力だ!!」
ドン!!ドン!!ザン!!ドン!!
光男は次々と襲い掛かってくる砂の斬撃、球体形の砂の塊をギリギリで躱しまくった。
光男「へ!…霊段階ごとの能力自体がてんでバラバラの筈なのに何でアンタは自分の能力をこれだって断定しきれるってんだ?」
ウイリー「フフフフフフフ…!!この伽霊能力はな…実は霊段階10の礼符の能力こそが…その適能者の能力の“本質”そのものなのだ!!」
光男「何だと?」
ウイリー「霊段階Aから霊段階9までは適能者の成長に環境が大きく関係してくる!!そしてそこまでの成長の集大成の能力が手に入る!!それが霊段階10なんだよ!!」
ウイリーの足元のコンクリートがサラサラした砂に変わっていき始めた。そしてその砂がどんどん渦を巻きながら光男に向かって近付いて来た。
ウイリー「この俺様にこの礼符を使わせたことに敬意を評して……本気を見せてやらぁぁ!!」
巨大な砂嵐は当たった建物を鋭い斬撃で粉々に斬りながら光男に接近してくるのを、光男は全力で走って逃げた。
光男「やべぇやべぇ!!当たり構わず容赦無しかい!!」
ウイリー「ハハッ!!ハハハハハハハ!!能力を普段は抑えて使ってたんだ!!人生で一回は“全力”って奴を試してみたかったんだよなぁ!!」
鎚矛を肩に背負って光男に近付きながら攻撃してくるウイリーは完全に正気を失っていた。光男はウイリーのその様子を物陰に隠れて窺った。
光男「ウイリー…完全に自分を見失ってやがる…普段なら隙だらけで格好の餌食なんだが……なまじこっちの戦闘力が、この藍風一本だけって乏しいモンだからな…」
光男は手に持っていた藍風に再び目を向け、自分の武器の頼りなさを感じていた。
ウイリー「おいおい!!もう終わりか!?まだまだこっちは暴れたりねぇんだよ!!折角俺の能力の実験台になるんだったら!!手足が全部もげる最後まで足掻けよ!!」
光男「あっちは周囲を全て武器にできて弾幕を張れる反則級の攻撃範囲の伽霊能力……それに控えこっちは刀一本…もう詰んだかな…」
光男は自分に助けは来ないことを考え、ここまでかと悟った。
光男「あんまし格好つけるモンじゃなかったな……でも…」
光男は自分の刀の強く握り締めた。死を目前にした男が最後に辿り着く境地、
光男「どうせ死ぬんだったら、侍らしく格好良く散ってやらぁ…!!」
漢が覚悟を決めた瞬間だった。
ウイリー「出て来いコラァ!!ずっとそうやって逃げんのかよ腰抜けの臆病者が!!」
光男「誰が臆病者だと?…」
するとウイリーの背後に刀を構えた光男が立っていた。
ウイリー「……テメェに言ってんだよ……」
光男「卑怯者に背を向けて逃げる程…俺は落ちぶれちゃいねぇんだよ…!!」
ウイリー「何だよ……それが侍スピリットってやつか…?」
光男「まぁ…そんなとこだ…」
ウイリー「戦いから逃げるくらいなら、戦いに散って死にたい……日本はそうやってアメリカに負けたんだ!!負けを認めて無様に降伏する方がずっと楽に生きられたんだ!!歴史はそれを証明している!!弱者が讃えられる歴史なんざどこにもねぇ!!評価されんのは常に勝者だ!!」
光男「だったら……俺だろ!!!」
光男は刀を鞘に納め、抜刀術の構えを取った。
ウイリーの鎚矛に砂の竜巻が蛇の様に渦巻きながら巻き付き、まるでウイリーが右手に巨大な竜巻の剣を握っている様だった。
ウイリー「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
竜巻の剣が何メートルも離れている光男を襲い掛かってきた。
光男は目にも止まらぬスピードで刀を鞘から抜き、高速で振り抜いた。
ザンッ!!!
To Be Continued