#13 LOOP BLAKE 第1章 異世界 第12話「呪われた能力の宿命」
光男「………!………ふぁぁ……」
朝目を覚ました藍川光男が身体をゆっくり起こし、しばらく目を開かず大きく欠伸をした。
光男「……さてと」
光男は目を開いて横を見ると、モーテルの同室で一緒に寝ていたはずの自分の息子の姿がどこにもないことに気付いた。息子が寝ていたベッドはすでに布団が畳まれており、その上には小さなメモが置いてあった。
ーーー先に起きて、庭で素振りしてるーー
光男は嬉しい思いがじわじわ胸の奥から湧いて来たのを感じた。
光男は服を着替えて、木刀を握るとウキウキしながらモーテルのプール付きの庭に出た。
そこには真剣で素振りをしている藍川竜賀の姿があった。
光男「おー!!相変わらずやってんなぁ?」
竜賀「!あっ!父さん!おはよ!」
光男「おはよう!身体の調子はどうだ?」
竜賀「うん!昨日たくさん食べたから身体は元気だよ!」
光男「そっか?なら俺も腕が鈍らねぇ様に稽古といくか!」
竜賀は光男から木刀を受け取ると真剣を鞘に納め、木刀で再び素振りを始めた。
光男もルーティーンの素振りをして身体の普段の調子を取り戻していった。
汗を流した2人はシャワーを浴びてから、ベイカー夫妻の家に向かった。トニーに案内されダイニングキッチンに入ると、そこには朝食が用意されていた。
シャーリー「あら2人ともおはよう」
竜賀・光男「「おはようございます!」」
シャーリー「まぁ元気だこと!」
光男「ええ…昨日いただいた御馳走のおかげですっかり元気になれましたので」
シャーリー「そう?なら今日もしっかり食べて、もっと元気になってね」
光男「ありがとうございます!」
竜賀「それじゃいただきます!!」
そして2人は食事をすすめていくのであった。
黙々と食事をする中、トニーは2人に聞いてきた。
トニー「それでこれから2人はこれからどうするんだ?日本に行くのか?」
光男「…今のところ何のアテもないので、この世界の日本に向かう為の算段を立てようかなと思ってます…」
トニー「……そうか……」
光男は、トニーが暗い表情をしながら相槌を打っているのを見て、何かを察した様に言葉を選びながら質問をしてみた。
光男「Mr.ベイカー?」
トニー「ン?…どうかしたのかい?光男」
光男「昨日聞きそびれてしまったんですが、昨日のお昼…本当は誰と食事する予定だったんですか?」
するとベイカー夫妻は突然ビクッ‼︎とした様に固まった。
トニー「……どうしてそう思うんだい?……」
光男「あの料理のは明らかに2人で食べれる量ではないし、我々の為に準備したにしては早過ぎる……本当は別のお客様に出す予定のモノだったんじゃないですか?」
シャーリー「…ふふふ」
トニー「中々賢い男だな?」
竜賀「父さん……」
トニー「光男……君の言った通りだよ……」
光男「ではやっぱり……」
シャーリー「ええ、昨日本当は息子と娘が帰えって来て、4人一緒に久しぶりに食事する予定だったのよ」
光男「息子さんと娘さんが来るはずだったんですか?」
シャーリー「そのはずだったんだけど……」
トニー「また別の仕事が入ったのさ」
竜賀は3人が英語で会話しているのをテーブルの隅で聞きながら必死に理解しようとした。
光男「よろしければ聞きたいんですが、息子さん達のご年齢は…?」
シャーリー「息子のウィルソンが38歳で、娘のメリアンが35歳なのよ」
光男「息子さんは僕の1つ年下ですね」
トニー「2人共独身で子供もいないから心配でね……まぁ仕事ばっかりに打ち込んでいるから、2人共充実しているらしいけど」
光男「そうなんですね…」
シャーリー「2人共、仕事先がマクシム連合の軍事関係でね」
光男「軍事関係?」
シャーリー「ええ」
トニー「何やら軍に必要な研究をしているらしい……俺達にも何も言ってくれないんだ…」
シャーリー「トニー…2人共組織の機密事項だから家族にも話せないって以前から言ってたじゃないですか?」
トニー「だからって親に元気かどうかも連絡すらしてくれないじゃ……」
光男「それは寂しいですね…」
シャーリー「だから昨日は2人に連絡して、一緒に食事しましょって誘ったんだけど……」
光男「それを直前になって断られた……?」
トニー「………」
シャーリー「せっかく作った料理が台無しになりかけていて、トニーと私は困ってたところに光男…貴方が来てくれたのよ」
トニー「あの時は助けてくれと突然言われて戸惑ってしまったが、竜賀が倒れているところを見たら、ほっとけなかったよ…」
光男「その節はありがとうございました」
光男は再び2人に頭を下げた。
光男「僕も助けて下さった2人の力になりたいんですが……僕に何か2人に手伝えることなどありませんか?」
トニー「そんなこと君が気にする必要はないんだよ…我々が勝手な善意でやったことだ」
光男「しかし……」
ベイカー夫妻は一瞬目を合わせると、竜賀を見て、そして視線を再び光男に戻した。
シャーリー「それじゃあ、ここのモーテルの清掃とか、管理のお手伝いをお願いしても良いかしら?」
光男「はい!!よろしくお願いします!!」
トニー「ここらへんのモーテル全体がウチも所有物だから掃除だけでも骨だぞ?」
光男「いいえ!!体力には自信がありますので!!」
トニー「それじゃあ、俺とこの後よろしくな?もちろん働いてくれた分のお金は出す」
光男「…!!ありがとうございます!!」
光男は嬉しそうな顔をしながら食事を続けていった。竜賀はベイカー夫妻のアイコンタクトが何を意味しているのか、心に引っかかっていたーーーー
ーーーー食事が終わった後、台所で食器を洗おうとしていたシャーリーの横に竜賀は近寄っていった。
シャーリー「あら?どうしたの?竜賀?」
シャーリーは食器を洗っていた手を止めて竜賀に向き合った。竜賀はマルチセルラーの翻訳機能無しで辿々しい英語を使いながらシャーリーに話しかけた。
竜賀「あの……」
シャーリー「?」
竜賀「僕に……英語を…教えて下さい……」
シャーリー「!……」
竜賀「……駄目ですか?」
シャーリー「いいえ、私で良ければ」
竜賀「…!!ありがとうございます!!」
嬉しそうな顔をしながら、シャーリーの食器洗いを手伝おうとした。
竜賀「それじゃあ…これ…洗いますね?」
シャーリー「まぁ!ありがとう!ならこれが終わったら英語の勉強をしましょうね?」
竜賀「はい!」
竜賀は洗剤をスポンジにかけ、食器を洗い始めたーーーー
ーーーー朝モーテルからチェックアウトしたお客の使っていた各部屋の掃除を終わらせ、備品のチェックをトニーと光男が一緒にやっていると、トニーが光男に世間話を持ちかけて来た。
トニー「ところで光男?」
光男「?何ですか?」
トニー「竜賀が伽霊能力を手に入れてから何か変わったこととかないか?」
光男「変わったことですか……?」
トニー「ああ……例えば…その……攻撃的な性格になったり…とか、凶暴になったり…とか」
光男「え?いやいや!そういうタイプの変化は何も無いですよ?」
トニー「そ…そうか……」
光男「あの子はあの子のまんま…優しい子のまんまですよ」
トニー「…………」
光男「………もしかして……息子さんと娘さんに関係してますか?」
トニー「!………ホンットに勘の鋭い人だね?君って男は」
光男「トニーさんの顔に書いてましたよ」
トニー「……ハハッ…シャーリーにも良く顔に出ると言われているからね…」
光男「それで?ウィルソンさんとメリアンさんは伽霊能力を手に入れてから、どうなったというんですか?……やっぱり変わってしまったんですか?」
トニー「………ああ………すっかり変わっちまったよ……」
光男「………」
トニー「昔は優しい子達だったんだ……」
トニーは作業する手を止め、近くの腰掛けに座ると首にかけていたタオルで汗を拭いながら、ゆっくり語り始めた。
トニー「丁度、ウィルソンが竜賀と同い年ぐらいだったか……妹想いの…純粋な子だった……無適能者の時は弱い立場の者の気持ちを考え、決して能力を持たない事に関して悲観する様な子じゃなかった」
光男「それが……能力を持った時に変わっってしまったと……?」
トニー「………きっと能力を手にしたことを俺に自慢したかったのかもしれない……それで学校にいた同級生に大怪我させてしまった…」
光男「その大怪我した生徒は…?」
トニー「幸い生命に別状ないし、後遺症も残らなかった………だがもしものことがあったらと俺はウィルソンを怒鳴りつけた」
光男「自分の子供にそんなことをして欲しくなかったんですね?」
トニー「ああ……それ以来息子とは関係に溝ができてしまった………あんな能力を手に入れてしまったばっかりに……」
光男「……それから息子さんとはお話はされたんですか?」
トニー「何度も持ちかけようとしたが、断られ続けてな……娘のメリアンはたまに俺達親の心配をしている電話はしてくれるんだが、息子は仕事に没頭しているよ」
光男はトニーの話を聞いて、竜賀のことを思い浮かべた。竜賀はあの時伽霊能力が覚醒しても人格が突然変異してはいなかった。
光男「Mr.トニー?聞きたいことがあるんですが?」
トニー「何だい?」
光男「この世界では伽霊能力を持つことがやはり“特別”なことなんですか?」
トニー「そりゃそうだ……この世界じゃ能力を持っていれば暴力、経済力、求心力で能力を持たざる者を支配することもできる…」
光男「………適能者達が世界を能力で支配し、弱き者達を虐げる世の中に変わってしまったんですね」
トニー「どんな力も手に入れたなら、それを世の為、人の為に使って欲しいもんだ……」
光男「竜賀は……もしかしたら…そうなってしまうかもしれません」
トニーは光男の顔を驚いた様に見つめた。
トニー「………あんたは息子を信じていないのかい…?」
光男「いや……これから竜賀の周りを取り巻く環境そのものが、竜賀を変えてしまうと僕は思います」
光男はトニーの目を真っ直ぐ見ながら言った。
光男「人間は良くも悪くも環境に左右されやすい生き物です……でも…」
トニー「?……でも?」
光男「間違いを犯してしまったら、その過ちから学び乗り越えるのも人間だと思います」
トニー「…………」
光男「僕は息子の絶望から立ち上がる力を信じています」
トニー「……なるほど……」
トニーは光男の言葉にある竜賀への信頼を感じて少しだけ安心している様子だったーーーー
ーーーー英語の勉強を2時間くらいしていた竜賀は集中力が完全に落ちていた。
竜賀「………つ…疲れた……」
頭からプシュ〜と音が出てきそうなくらい知恵熱を噴き出していた。
シャーリー「あらあら、お疲れ様」
シャーリーは勉強疲れでグッタリしている竜賀に労いの言葉をかけながらニッコリ微笑んでいた。
竜賀「は…早く…僕だけでも英語の読み・書き・翻訳できるようにならないと……」
シャーリー「本当に竜賀は頑張り屋さんね?でもあんまり根を詰め過ぎても良いことは無いわよ?」
竜賀「あんまり元の世界にいた時ちゃんと勉強してこなかったから、全然英語とかなんとなくしか分からなくて……」
シャーリー「そう?…言葉はあくまで気持ちを表現する為の道具でしかないわ。本当に大切なことは自分の気持ちや考えを相手に伝えることよ。英語を完璧に話すことじゃないわ」
竜賀「自分の気持ち……」
シャーリー「その点竜賀は全然問題無いわ。間違ってもいいから必死に自分の気持ちを私に伝えようとしてくれたでしょ?」
竜賀「ただ無鉄砲なだけですよ……父親にも言われているんですけどね」
シャーリー「竜賀はちゃんとコミュニケーション才覚はあるわ」
竜賀「そりゃ良かったです……」
シャーリー「それより……気分転換に買い物に一緒に行きましょ?」
竜賀「行きます……アメリカのスーパーマーケット気になっていたので是非…」
シャーリー「食材もそうだけど…竜賀や貴方のお父さんの服も買いに行かないとずっとその格好だとねぇ…」
竜賀は自分の服装を見て、確かに…と絶句した。青いTシャツに黒い染みになった血の付いた今の状態は御洒落で通すには限界があった。
竜賀「確かにこの服装で何日もいるなんてキツイか……」
シャーリー「貴方の服もだけど光男の服も買いに行かないとね」
竜賀「あ!…そっか父さんの服も買わなきゃいけないんだった」
シャーリー「後で光男さんに服のサイズ聞きいかなきゃね」
竜賀「いや!どっちかと言うと体型測った方が良いかも?もしかしたらサイズの規格がココと僕の元いた世界で違うかもしれませんから」
シャーリー「!…それもそうね……それじゃあ向こうからカバンとメジャー取って来るから待っててね?」
竜賀「はい!」
竜賀はシャーリーの支度が整うのをリビングで待っていたーーーー
ーーーー竜賀「流石に多過ぎじゃないですか?……これは……」
大量の買い物袋を両手に下げて、竜賀とシャーリーは街を歩いていた。
シャーリー「良いのよ。久しぶりの買い物なんだし貯金も沢山あったから奮発しちゃった!」
手下げ袋を3つぐらい抱えてウキウキしながら歩いているシャーリーの後で必死になって竜賀はついていった。
シャーリー「それにしても竜賀の言った通り、行く前に光男と貴方の体のサイズ測っておいて良かったわ」
竜賀「案の定、僕の住んでる世界の服の規格全然違ってましたもんね……」
シャーリー「光男さんは旦那と一緒に仕事をしなきゃいけないから連れて来る訳にもいかないし、サイズだけメモしておいたけど」
竜賀「おかげてスムーズに買い物が終わりましたけど、下着から靴下、靴まで取り揃えるなんて気合入り過ぎじゃないですか?」
シャーリー「良いの良いの!………あら?」
竜賀「??……どうしました?」
シャーリーの視線の先に何があるのかを見ると、路地の陰に妙な人集りができているのを見つけた。
シャーリー「………あそこで何やってるのかしら?」
竜賀「何か珍しいものとか……もしかして動物でもいるのかも?」
2人は興味本意でそこに近付いていってみると、そこには1人の人間が傷だらけで壁にもたれかかる様に倒れている少年がいた。
竜賀「!!?」
竜賀は頭で考えるより先に、そこに急いで駆け付けると人混みをかき分け少年のそばに駆け寄った。
竜賀「おい!!大丈夫か!?」
チンピラ「オイ!何ソイツ庇ってんだよ?」
いかにも不良ですと言いたげな刺青を入れた白人の長身の少年が竜賀を見下ろしながら怒鳴ってきた。
少年「………………?」
チンピラ「お前コイツの仲間か?」
竜賀「もしそうだって言ったら何だってんだよ」
チンピラ「だったらコイツ同様ボコボコにしてやるよ!」
チンピラの周りにいた取り巻きの連中もそうだそうだと同調する様に野次を飛ばした。竜賀は取り囲んでいる連中の服や顔を見渡し、
竜賀「それじゃあコイツがお前らに何かしたのかよ!?あぁ!!?」
竜賀が立ち上がりながら、チンピラに向かって怒りをぶつけた。チンピラは竜賀の顔に自分の顔を近付け怒鳴りつけた。
チンピラ「そいつは適能者なんだよ!!」
竜賀「だから何だってんだよ!!それがこいつを傷付けても良い理由になるってのか!?こいつが適能者ならこいつをこんな血塗れにしたって良いって法律でもあるってのか!?あぁ!!?」
チンピラ「適能者は穢れた能力で平気で人を襲う狂れた存在なんだよ」
竜賀「誰がそんなこと決めたんだよ?誰がそんなことお前に言ったんだよ!!答えろ!!どうせお前は適能者に攻撃されたことねぇんだろ!?」
チンピラ「オレの父親が言ってたんだよ!それに大抵ニュースで流れる事件の犯人は適能者ばっかりだしな!生きてても碌な事ねぇ呪われた連中なんだよ」
竜賀「だからってお前や、お前の取り巻きにも危害を加えてないコイツに石を投げて良い道理なんてどこにもないだろ!!」
チンピラ「テメェさっきから何コイツ庇う様な事言ってんだよ…!もしかしてテメェも適能者かよ!?」
チンピラの言葉に周りの取り巻きがゾッとした様に後退りした。
竜賀「………」
竜賀はただチンピラを睨み付けていた。チンピラの取り巻きは沈黙を是と受け取ったのか、さっきとは打って変わって竜賀に怯える様な表情をした。
チンピラ「……ハッ!……やっぱりお前コイツのお仲間だったのかよ!!上等だ……かかってこいよ!!」
竜賀「いいぞ……やってやる……!」
シャーリー「やめなさい!!今警察を呼んだわ!!」
突然そこに割って入る様にシャーリーの声が響いた。
チンピラ「やべ!!お前ら!!今すぐトンズラするぞ!!」
チンピラが大声で取り巻きに呼びかけると、蜘蛛の子を散らす様に散り散りにその場から消えていった。
竜賀「シャーリーさんありがとう…警察呼んでくれて……」
シャーリー「はぁ…はぁ…嘘よ」
竜賀「………へ?」
シャーリーはそこに座り込み、ホッとした様に深呼吸した。
シャーリー「警察が来るとでも言わなかったら、貴方喧嘩するところだったじゃない」
竜賀はシャーリーのそばに駆け寄り、目線を合わせる様にしゃがみ込んだ。
竜賀「………ごめんね……心配かけて……」
シャーリー「…竜賀……もう二度とあんな危険な事に自分から巻き込まれに行く様なマネはやめなさい」
竜賀「……なるべく気を付けるよ……それより……あの子…」
竜賀は視線を倒れている男の子に向けた。竜賀とシャーリーは男の子に駆け寄って怪我の状態を診た。
竜賀「シャーリーさん…この子は?」
シャーリー「顔の傷もそうだけど、それよりこの子相当な栄養失調を起こしてるわ」
竜賀「この子も俺みたいに御飯食べたら治る?」
シャーリー「いいえ!ここまでくるとまず点滴で直接身体に栄養を送らないといけないわ」
竜賀「シャーリーさん!この子助けてくれない!?」
シャーリー「!?」
シャーリーは竜賀の言葉に驚いた。
シャーリー「今私の家は貴方と貴方のお父さんを匿ってるのに、その上この子も匿って欲しいって言うの?」
竜賀「お願い!!」
シャーリーは男の子を見て竜賀の顔を見て、腹を括った様な表情をした。
シャーリー「分かったわ!とりあえずこの子を家まで運びましょう!」
竜賀「はい!」
竜賀は声を張り上げて返事をすると、男の子を担ぎ上げ、買い物袋を拾い家に向かった。
シャーリー「竜賀…大丈夫?…大分重そうだけど……」
竜賀「大丈夫大丈夫…これぐらい稽古と思えば軽いもんだよ!」
竜賀は額に汗を浮かべながら、歩いた。
竜賀「シャーリーさん……さっきのことなんだけど……」
シャーリー「何かしら……」
竜賀「適能者って本当に“呪われた存在”なの?」
シャーリー「!」
竜賀「生まれた時から……物心つかない内から……呪われてるなんて…そんなの俺は認めたくなんかない」
シャーリー「………竜賀……気持ちは分かるわ…でも世の中には色んな人がいるわ……どうしても理解しあえない人達も…」
竜賀「……うん……」
シャーリー「でも……本当に大切な事は、人はそれぞれ違うって事を受け入れ合い、理解し合うことだと思うのよ」
竜賀「……そういうモンか……」
シャーリー「私は少なくとも貴方の事を“呪われた存在”だなんて全く|思《おもってないわ」
竜賀「……ありがとう……」
シャーリー「だからそんなに落ち込まないで、伽霊能力なんて能力に心を支配されない強い子になりなさい」
竜賀「…なんとなく分かった……」
竜賀はシャーリーの言葉は“理解”はできたが“納得”はできていなかった。
あの時クリフ・ポーランドの言葉がさっきのチンピラの言葉と重なっていたからだ。
伽霊能力と言う呪われた能力を背負った人間の宿命。それが自分とこの男の子の生涯を呪い続けるんだろうか?竜賀は今その答えが導き出せなかった。
To Be Continued
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