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#7 LOOP BLAKE 第1章 異世界 第6話「さらなる敵の追撃」
竜賀は襲い掛かって来るローグとゲイツの攻撃をことごとく躱していた。
竜賀(まずローグの能力はあの『メリケンサック』みたいなのを出すのと『炎の塊』みたいなものを操るのだな、そんでゲイドはあの『大砲』みたいなのを出すと『爆発』を起こす能力…他にも何か隠している可能性があるけど今はそれだけ)
竜賀がローグのボクシングの構えで竜賀の顔や腹を目掛けて拳をかまそうとするが、間合いを取ってわずかな距離で躱し、竹刀の鍔元で咄嗟に手首を押しながら拳を逸らしていた。
ゲイドもただ見ているだけでなく接近戦に切り替え竜賀を捕まえようとした。
ゲイド「こんの……!!」
ローグ「クソチビ!!ウロチョロしやがって!!」
竜賀は何とか反撃できるタイミングが来るまで2人の攻撃を凌いでいたがここだと言うタイミングが掴めずにいた。
しかしその時ーーー
光男「お待たせ!竜賀!!」
パアアアァァン!!!
攻撃を躱され続けるローグに竹刀で強烈な右薙をかます、打突音が響いた。光男がヒューズとの戦いを終わらせ戻って来た。
ローグ「ぐおあ……!!!」
光男「竜賀!!無事か!?」
竜賀「今のところ何とか!父さんの方は?」
光男「ああ!ちゃんと勝ってきたよ!ただトドメは差してないから後で増援部隊を呼ばれたりしたら手が付けられなくなっちまう!」
竜賀「それはそうと…さっき倒したローグって奴延髄にモロに喰らったけど大丈夫なの?」
竜賀は光男が不意打ちで倒れて一向に動く気配の無いローグを見て父親の容赦の無さに引いた。
光男「ああ!ヒューズと戦った時も俺の手加減した攻撃はほとんど喰らっても平気な顔してやがった。むしろこれぐらいしないとまた襲いかかって来やがる」
ゲイド「ヘッ!!そんな棒切れじゃ猫一匹殺せやしねぇってさっき親切に忠告してやったのにな!!腕に多少自信があるからって過信してやがると血を見るハメになるぜ…!」
ゲイドは光男がヒューズとローグを倒す光景を見て完全に余裕が消えた顔をしていた。
光男「ふん…ようやく本気になってくれたってか?口では偉そうなこと言ってるが、もう余裕がなさそうな顔してるな?さっさとアンタも降参したらどうだ?」
ゲイド「うるせぇ!!テメェら!!そんな眼で俺を見下してんじゃねぇぞ!!!こんの未適能者の人間風情が!!」
竜賀「…!!」
光男「やれやれ…追い込まれて何を言い出すかと思えば、下らない差別ばっかりとは呆れを通り越して哀れだな」
ゲイド「何だと!!」
光男「もういい…さっきまで3対2で敵わなかった奴らがどうやって今の2対1の状況で勝てるって言うんだ?さっさとヒューズとローグを連れてここから離れろ。お前達の攻撃で火の着いた森の火事に誰か気づいてやって来るからな」
光男に冷たい視線を向けられたゲイドは激怒し、また左掌からカードの様な物を再び出した。
光男「またさっきの大砲撃ってくんのか?」
竜賀「いや。多分さっきから俺が躱しまくったからもう使ってこないよ」
光男「だとしたらもう一つの能力を使って来るんだろう」
ゲイド「クッ…そうやって余裕ぶっていられんのも今の内だぜ…!」
光男「良く言うよ。ついさっきまで俺達2人の竹刀に対して棒切れがどうのこうのほざいてたのはアンタ達じゃないか?」
ゲイド「そんな口きけなくしてやらぁ!!」
ゲイドの左手に持っていたカードが光を放ったかと思うと消え、ゲイドの右掌の上に球体の様なものがフワフワと浮いていた。
竜賀「あれがさっき3mのクレーターを作った爆弾の正体ね」
ゲイド「この能力は近くにいる奴を敵味方関係無く吹き飛ばすからな…ローグの野郎がくたばっている今存分に使えるってわけだ」
ゲイドはそう言うと球体を光男目掛けて投げ付けてきた。光男はそれを横に飛びながら避けると背後にあった木に直撃し、
バッカアアアアン!!!!
と耳を劈く爆音が響いたかと思えば、球体の当たった木の幹が円の形に丸く抉れていらていた。
ゲイド「ハーハッハッハ!!!これが俺の伽霊能力だ!!これが空圧膨張の能力だ!!圧縮した空気を高速で膨張させて擬似爆弾を生み出す能力だ!!」
ゲイドは今度は両手からどんどん球体を生み出し、竜賀と光男に次々と投げてきた。
ゲイド「これがお前にできるか!?できねぇよな!?生まれ持った力の差だ!!お前みたいな無適能者は神に見放された負け犬なのさ!!選ばれなかった奴らが選ばれし俺達に逆らうのは自然の摂理に逆らうのと同じだ!!」
光男「そっか…適能者って差別され続けてたのか…」
ゲイド「……!!!違う!!!お前ら無適能者が俺達に嫉妬し続けていたのさ!!能力を恐れ数に物を言わせて迫害するしか俺達選ばれし者達に対抗する術を持てなかった連中さ!!」
ゲイドは光男の言葉に激昂し、光男の向けて今度は燃焼弾大砲を再び取り出し光男に狙いを定めた。
ゲイド「この俺を侮辱したことをあの世で存分に後悔しやがれ!!」
光男「敵の簡単な挑発に乗って、敵の隙もまだ作ってない内からそんな大技とは…ゲイド…アンタ見た目の図体よりも全然大したことないな」
ゲイド「そんな口二度と叩けなくしてやらぁぁ!!」
光男「お前がな」
パアアアン!!!
ゲイド「ぐお!!?」
空高く舞い上がった竜賀の全力で振り下ろした竹刀がゲイドの頭に直撃し、ゲイドは一瞬で気絶した。ゲイドはうつ伏せに倒れ動かなくなったーーーーーーーー
光男と竜賀はゲイドが気絶したのを確認するとその場に緊張が解けたように腰をついた。
光男「……ぷはぁ!!…はあ…はあ…はあ…」
竜賀「はあああ!!…はあ…はあ…はあ…」
光男「はあ…はあ…竜賀…怪我してねえか?…」
竜賀「はあ…はあ…はあ…大丈夫…父さんは?」
光男「おう…大丈夫…って言いたいところだが…はあ…流石に…今は疲れた…」
竜賀「俺も何かどっと疲れちゃった…さっきの戦いの途中から…身体が普段と全然違うくって」
光男「見てたよ…竜賀お前右手見せてみろ…」
竜賀「え?…右手…って何コレ!?」
竜賀は自分の右掌に浮かぶ霊媒印の円の中にAの文字が描かれているのを見て驚いていた。
光男「どれどれ…見してみな」
光男は身体を乗り出し、竜賀の掌を覗いた。
光男「なるほど…これが霊段階Aってヤツなのか…適能者が初期段階の覚醒の時に発動する能力か」
竜賀「でも一体何時覚醒したんだろ?戦いの真っ最中かな?戦っている時信じられないくらいジャンプ力とかスピードが出てたから」
光男「いや、多分グラデーションじゃねぇか?森の中で歩いてて竜賀が全然汗もかかずに平気な顔してた時から何かしら変化は起きてたと思うぞ」
竜賀「マジか…」
光男「それより竜賀お前ヒューズ達みたいに掌からカードみたいなの取り出せないのか?」
竜賀「え?」
光男「だってアイツら能力を使う時いっつも霊媒印のある左手からカード出してたからさ」
竜賀「何で俺は右手に霊媒印があるのにアイツらは左手にあったんだろ?」
光男「それは考え方が逆じゃないのか?お前生まれつき左利きじゃん。だから利き手と反対の手に付いてるんじゃないか?詳しくは分からないけどな」
竜賀「そっか…」
光男「それより早くカード出してみてくれよ」
竜賀「…分かった…やってみる」
竜賀は右手の霊媒印を見つめながら、何となく「カード出てこい」と念じてみた。するといきなり霊媒印がいきなり青く輝き出した。
竜賀「嘘でしょ…ただ念じただけなのに」
青い光が収束し、スマートフォンサイズ大きさで、キャッシュカードほどの厚みのあるカードが手元に出現した。青いカードを見ると左上にAのマークとそのとなりに何やら見たことのない文字が浮かび上がっていた。
カードの中央には何も描かれていない枠があり、その下にはまた見たことのない文字で文章が書かれていた。
光男「この枠の中…絵も文字も何も書かれてないな…しかも見たことのない文字だぞ…何て読むんだ?」
竜賀「ちょっと待ってて、えーっと…伽霊…覚醒…『伽霊覚醒』!?」
光男「え!?竜賀お前これが読めんのか!?見たことあんのか?この文字が!」
竜賀「ううん…俺も見たことない文字なのに…」
光男「それじゃあ、下の方に書いてある文章みたいなのには何て書かれているか読めるのか?」
竜賀「文章のところね…ここには『この伽鍵礼符が発動すると適能者の身体能力が上昇し感覚が研ぎ澄まされ優れた動体視力を発揮するようになる』って読めるよ」
光男「嘘だろ?俺が見る限り全然見たこともない文字の羅列だし意味を読み取るどころか読めない意味不明なモノなのに、それが何でお前には読めたんだ?こんな文字学校の先生や友達から習ったのか?」
竜賀「そんなワケないじゃん、こんな文字人生で初めてに決まってるじゃん…でも…」
光男「…?でも何だ?…何か気になることがあるのか?」
竜賀「今ここに書かれてる意味不明な文字の文章の中で青く光ってるところあるでしょ?」
光男「そうだな…」
竜賀「ここの部分だけが『この伽鍵礼符が発動すると適能者の身体能力が上昇し感覚が研ぎ澄まされ優れた動体視力を発揮するようになる』って読めるんだけど…その続きにある黒文字で書かれてる部分が全然読めないんだ」
光男「何で?おんなじ文字だろ?おんなじ文字なのに青く光っているところは読めて黒いところは読めないのか?」
竜賀「…うん…」
光男「…この伽霊能力ってのには謎が多過ぎるな……そうだ!…竜賀!他にはその伽鍵礼符ってヤツは無いのか?」
竜賀「え?…ッ!そうか!!」
竜賀は右手を上に向け再び念じると掌から同じ様な伽鍵礼符が3枚出てきた。
光男「やっぱり竜賀の持ってる礼符って1枚だけじゃなかったんだな」
竜賀「でもこの礼符全然青くないし、文字も全然読めないよ」
3枚の礼符は霊段階Aの伽鍵礼符と違い、白黒で文章や枠が書かれており左上には何もアルファベットや数字が書かれていなかった。
4枚の礼符を裏返すと、そこには4枚とも同じ模様が描かれていた。
光男「裏側は同じか…つまり違うのは表側の絵や文章だけだと…」
竜賀「この読めない文章が気掛かりだなぁ…」
2人が伽鍵礼符を眺めていると近くで物音がして、そっちに振り返って見ると倒れていたヒューズが茂みからこちらに近づいて来た。
ヒューズ「く…ようやく身体が動くようになったぜ…Mr.ミツオ…やってくれたな…」
光男「さっきまで全然動かなそうな状態だったのにもう回復したのかよ。タフなモンだな適能者ってのも」
ヒューズはよろけながらゲイドに近づくと
ヒューズ「おいコラゲイド!!いつまで寝てやがるさっさと起きやがれ!!ローグ!!お前もだ!!この間抜け共!!」
ゲイド「ぐ…」
ローグ「う…」
光男「やれやれ…病み上がりの仲間に対して容赦ないね。そっと寝かしといてやれよ」
ヒューズ「舐めるなよ…次はこうはいかねぇぞ」
ゲイド「さぁ第2ラウンドだ…!!」
???「今のお前らに『次』は無いんだよ」
突然この場にいる5人の誰でもない男の声が聞こえるとーーー
グサッ!!
と刃物が肉を切り裂く鈍い音が響きわたり、竜賀と光男があたりを見渡すと、そこには首の2/3ほど銀色の斧が切り込み目から生気を失ったローグの姿があった。
その背後にある薄暗い暗闇の中に1人銀髪の白人の男が立っていた。
竜賀「ヒ!?…」
光男「竜賀!!見るな!!お前は今見ちゃいけない…!!」
光男は悲鳴を上げそうになった息子の視界に血を噴き出すローグの死体が入らない様に手で目を覆った。
ゲイド「ワ…ワイルズさん…?いっ…一体何やってるんですか?今アンタが殺したのは…ローグなんですよ!!」
ヒューズ「ワイルズさん!俺達が無適能者風情に苦戦してしまったことは謝ります!でも今はこの2人を殺すのが優先でしょう!!」
ゲイドとヒューズは突如現れたワイルズと呼ばれてるこの男の予想だにしていなかった行動に驚きと困惑を隠せないでいた。
ワイルズ「ああ…ヒューズお前の言った通りこの2人は俺の手で殺してやるよ」
ヒューズ「だったら!!ーーー」
ワイルズ「マズいのはこの状況だよヒューズ」
と言うといきなりワイルズの右手から銀色の液状の物体が現れ、液体は形を変えて剣になった。そしてワイルズは剣になった右手をヒューズの腹の真ん中に突き刺した!
グサッ!!
ヒューズ「ガハッ!!?」
ゲイド「ヒイィィィ!!」
光男「ッ!!?」
ワイルズ「俺達のアジトの一つだったガートシティがハドノア連合のマードック部隊の連中の一斉摘発を喰らった。それは分かってるよな?」
ヒューズ「ゴホッ!…それが…何で…?」
ワイルズ「そこからそんなに遠くないこの森の中で山火事なんか起きてたらマードック部隊の連中がどう思うか分かるか?もしかしたら?って思うだろ?ミーモスト一味全員の死亡を確認する前に逃げられたかもしれねぇって思ってこの場所を探りに来る」
ヒューズ「だっ…たら…早く…ここから…」
ワイルズ「まだ分かんねぇのか?俺達が生きていることはハドノア連合に悟られたくねぇんだよ。この森で明らかにお前らが戦った形跡があんのにお前らの死体が無かったら連中が俺達の生存に気付いちまうだろ?」
ワイルズはヒューズの身体から剣を引き抜くと、ヒューズは血を腹から流しながら動かなくなってしまった。ワイルズはヒューズの死亡を確認すると今度はゲイドに振り向いて近づいて行った。
ワイルズの右手の剣に血は滴るのを見たゲイドは腰を抜かしてしまった。
ゲイド「ああああ!!待ってくれワイルズさん!!戦いの場に死体がいるなら俺まで殺す必要は無いだろ!!」
ワイルズ「ゲイド…たかが無適能者2人を殺すだけに森の中をここまでしなきゃできねぇテメェら3人の無能さにこっちは腹が立ってんだよ。今はなるべくハドノア連合に見つからねぇ様に逃げてぇってチームのトップの思いが汲めねぇお前らみたいな三流は!!」
徐々にゲイドに近付き完全に刃がその心臓に届く距離まで詰め寄りーーー
ワイルズ「もうチームに必要ねぇんだよ…!!」
そしてゲイドの心臓目掛けて剣を突き刺そうとしたーーーーその時
ガン!!
ワイルズの剣を右横から竹刀の刺突で、光男が逸らした。剣はゲイドに当たら近くの木に刺さった。
光男「おい…いい加減にしろよ?子供の前でいい年した大人が無益な殺人なんてするモンじゃねぇだろ…!!」
ワイルズ「へぇ?…こんなカスを守るってのかい?」
光男「アンタ…コイツらの仲間だろ?仲間だったら最後まで味方でいてやるモンだろ!!」
ワイルズ「ククク…俺達のリーダーであるボイド・ミーモストの力にホイホイ引き寄せられて集まった使いっ走りのゴミ適能者にそんな御言葉をいただけるとはねぇ」
ワイルズは光男を突き飛ばすと、7〜8m程光男の身体は後に宙を舞いながら飛んでいった。地面に身体が叩きつけられる直前に光男は受身を取り衝撃を和げた。
ワイルズ「ほう大した身のこなしだな…ゲイド!情けないなぁ!敵にボコボコにされてなお同情までされるなんてなぁ!!」
ゲイド「…ク!」
光男「ゲイド!!お前は逃げろ!!とにかく遠くへ!!コイツは俺が倒す…!!」
ゲイド「!!無理だ!!ワイルズは霊段階6の化物だ!!能力を全く持たないアンタの敵う相手じゃない!!」
光男「いいから!!行け!!!」
ゲイドは光男に怒鳴られ戸惑いながらも森の奥に駆けていった。
ワイルズ「…俺を倒すねぇ…この状況でどっからそんな自信が出てくんのか…」
ワイルズは森の奥に入っていったゲイドを尻目に光男に向かい合った。
ワイルズ「一応名前は名乗っといてやるか?ミーモスト一味幹部ワイルズ・ダーヴィッチだ」
光男「ご丁寧にありがとよ…俺は藍川光男!お前を倒す男の名だ!よろしく!」
To Be Continued