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#21 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第8話「思い出の場所と宝物」

 21:00の夜空よぞらかぶうつくしいつきひかりとしている神秘的しんぴてき自然しぜん姿すがたとは裏腹うらはらに、ネオンのひかり都市まちかがやかせていた。

 このシカゴシティのいくつかあるホテルのひとつである『ホテル・ローグ』ではついさっきまでこっていた爆発ばくはつによって正面しょうめん玄関げんかんのガラスが粉々こなごなくだっていた。

 そのガラスへんほうき黙々もくもくっていたみどりいろかみをしたおとこと、その子供こどもとおぼしき13さいかそこらくらいの少年しょうねん二人ふたりいた。

 その3にん様子ようすながらうれしそうなかおをしている銀髪ぎんぱつおとこ、エリック・ブラウンがくちを開いた。

エリック「いや〜〜!!おれきみたちのことをすっごいかんちがいしていたよ!!さっきはトンプソン兄弟きょうだいたたかってくれて、このホテルまもってくれたとおもったら!!そのあとは『せっかくご厄介やっかいになるので掃除そうじくらいさせてください』なんてな〜!!」

 すると褐色かっしょくはだをした黒髪くろかみ少年しょうねんくちひらいた。

源太げんたこえおおきいひとごとだこった……」

光男みつお「こら源太げんた!」

 みどりかみおとこ藍川あいかわ光男みつお黒髪くろかみ少年しょうねん猿渡さわたり源太げんた注意ちゅういしていた。

光男みつお「すいません!生意気なまいきなことをでして!」

エリック「いやいやかまわないよ全然ぜんぜん!!……それにしても…竜賀りゅうがくんはずっとしずかだね?」

 エリックが視線しせんけたさきには、黙々もくもくらばったガラスを慎重しんちょうあつめる青髪あおがみのセミロングの少年しょうねん藍川あいかわ竜賀りゅうががいた。

エリック「あんなすごたたかいぶりをせていたのに全然ぜんぜんはしゃぐこともなく、礼儀れいぎただしくって……いいそだちしてるじゃないか?」

光男みつお「いやエリックさん…あれはただ掃除そうじしながらさっきのたたかいのかえりをしてるだけですよ」

エリック「え?そうなの?」

光男みつお「だからいまはそっとしておいてあげてくださいね」

 二人ふたりがヒソヒソばなしをしているのを無視むしして黙々もくもく作業さぎょうをしていた竜賀りゅうがは、

竜賀りゅうが今日きょうはじめて実戦じっせん天狩鉤爪あまがりのつめ使つかったけど上手うまくいってラッキーだったな…まだまだ使つかかた色々いろいろありそうだし、そこは練度れんどげていくとして防御ぼうぎょもパワーアップさせていかなきゃな…)

 そんなかえりをしていたのであった。


 そして掃除そうじわったあと三人さんにんはホテルの食堂しょくどう案内あんないされた。そこは玄関げんかんホールにけずおとらずの豪華ごうか食堂しょくどうホールであった。三人さんにんおもわずこえらした。

竜賀りゅうが「ふぁぁぁぁ〜〜〜」

源太げんた「すっっげ〜〜〜!!まるでおしろみたい」

エリック「はっはっはっは!!すげーーだろ!?ウチの自慢じまん食堂しょくどうなのさ!!まえまではここにたいってきゃく大賑おおにぎわいしてたもんさ!!」

光男みつお「こんな豪華ごうか食堂しょくどうにホテルのおきゃくさんみんな食事しょくじするんですか?」

エリック「いやまさか!エコノミーなお客様きゃくさまべつ部屋へや素朴そぼく食堂しょくどう用意よういしてあって、そこで大半たいはんきゃく食事しょくじをするのさ!ここはとうホテル自慢じまんのV.I.Pルームのひとつさ」

光男みつお「そんなところに我々われわれ食事しょくじしても本当ほんとういんですか?」

エリック「もちろんだ!!おれにとってここは宝物たからものだ!そんな場所ばしょまもってくれたんだ!!食事しょくじ寝床ねどこ無料タダだ!!サービスさせてくれや!」

光男みつお「……それじゃあお言葉ことばあまえさせていただきます」

エリック「それよりもアンタらもかったのか?」

光男みつお「え?」

エリック「トンプソン兄弟きょうだいとどめをささずにアジトにおくかえしちまってーーーーーー」


 ーーーーーすうふんまえ ーーーー

グレイブ「オイ…!ジェイコブ…!コイツらヤベェぞ…!!」

ジェイコブ「あ…ああ…!!」

 トンプソン兄弟きょうだい二人ふたりともフラフラの状態じょうたい必死ひっしになってはしっているつもりなのだろうが、足取あしどりがあまりにもおぼつかない。

 光男みつおはその二人ふたり速足はやあし余裕よゆうくと、両手りょうてでそれぞれの首根くびねっこをガシっとつかんで二人ふたりはなった。

光男みつお「オイ!!」

トンプソン兄弟きょうだい「ヒッ!!?」

光男みつお今夜こんやがしてやるが……つぎはないぞ?……ここは喧嘩ケンカをする場所ばしょじゃねぇんだ」

グレイブ「わっ!…かった!!かったからはなしてくれ!!」

光男みつお二度にどとここには近付ちかづくな…!!つぎ気絶きぜつ程度ていどじゃまねぇからな…!!」

ジェイコブ「かったからゆるしてくれ!!もう二度にどとここにはかかわらねぇから!!」

光男みつお「だったら…かえったときに、ボスになにかれたら、こうこたえとけ……『みちでドジをんでころんでこんな大怪我おおけがしちまいました』ってな……もしテメェらのボスに事実じじつがバレてここにることになったら、このみちのドなか大量たいりょうのおまえらのお仲間なかま死体したいあふかえっちまうことになるぞ?」

トンプソン兄弟きょうだい「ひいいいィィィィィィ!!!!」

光男みつおかったら、とっととけ!!!」


エリック「ーーーーーあんなふうおどすと逆効果ぎゃくこうかじゃないか?アイツらは絶対ぜったいボスにこのたたかいでアンタの息子むすこのことを報告ほうこくするぜ?」

光男みつお「そのほう都合つごういんです」

エリック「なぜ??」

光男みつおヤツらの背後バックにいる組織そしきがこちらにかっててくれるほうがやりやすいですからね…あるいてたら偶然ぐうぜんでくわしたほうがよっぽど危険きけんですからね」

エリック「きたなおそってくる可能性かのうせいほうがかなりおおきいはずだ。ヤツらのボスがだれであれアンタの息子むすこたちつよさを警戒けいかいして背後はいごからってくることだって躊躇ちゅうちょなくしてくる」

光男みつお「どっちにしろおなじなんですよ……正面しょうめんからかかってようが搦手からめて使つかってようが、こっちにかってていることで返技カウンターかえせるんです…かりたいのは手段しゅだんじゃなくてタイミングです」

エリック「………よくわかんないんだが……」

源太げんた「とりあえずおなかめっちゃったんだけど?」

竜賀りゅうが二人ふたり勝手かってがってないで御飯ゴハン用意よういしてしいんですけど??」

 竜賀りゅうが源太げんたはらをグ〜〜とらしながらっているのをてエリックはあわてて二人ふたりなだめるようはなしかけた。

エリック「あーーっ!スマンスマン!いまからいそいで準備じゅんびするからそこですわってっててくれるかな?」

 エリックが指差ゆびさしたながテーブルに光男みつお竜賀りゅうが源太げんた順番じゅんばんおくからめて三人さんにんともすわっていった。

竜賀りゅうが「さっきのたたかいですっかりはらペコだよ…!!」

源太げんた伽霊能力ギアルスキル使つかうとかなりの霊力ギーラー使つかってるから、メチャクチャつかれんだよな」

竜賀りゅうが「その霊力ギーラーって、一体いったいなんなんだ?まえからいてみたかったんだけど??」

源太げんた適能者デュナミスト源力エネルギーみたいなモンだよ…なんらないヤツって伽霊能力ギアルスキル無尽蔵むじんぞう使つかえるとおもんでるのもいるけど、それってとんでもないおお間違まちがいでな……1かい伽霊覚醒ギアルアクセス』を発動はつどうしたら使つかえる霊力ギーラーって大体だいたいまってんだよな」

竜賀りゅうが「ああ……RPGでうマジックポイントみたいなもんか」

源太げんた「マジックポイントってなに??」

竜賀りゅうがおれ世界せかいにあるテレビゲームの冒険ぼうけんファンタジーものまりのルールで魔法まほうとか必殺技ひっさつわざとかを使つかうと体力たいりょくとはべつの、っていく魔法まほう使つかため源力エネルギーみたいなことさ」

源太げんた「そうそう!そんなかんじ!…あっ、でもやっぱちょっとちがうかも?」

竜賀りゅうがちがうの?」

源太げんた「そのマジックポイントってのはっても体力たいりょく影響えいきょうはないかもしれないけど、霊力ギーラー使つかえば使つかほど、スタミナも消費しょうひするからな」

竜賀りゅうが「そうなのか〜〜」

源太げんた「だから霊力ギーラー使つかったらはらるのはなんもおかしいことじゃねぇのよ」

竜賀りゅうが「ふーーん……とうさんどうおもう?」

 竜賀りゅうが父親ちちおやほうかおけてはなしったら、なん返事へんじかった。

光男みつお「……くー……くー……」

 光男みつおはテーブルにして寝息ねいきてていた。

竜賀りゅうが「……とうさーん……てるーー?……」

源太げんた駄目ダメだね……完全かんぜんてる、充電じゅうでん完全かんぜんちちゃってる」

 光男みつおがテーブルにかおをベッタリけるよう熟睡じゅくすいしているのを完全かんぜん無視むしして竜賀りゅうがはV.I.Pルームをあるいてまわった。

 すると綺麗キレイかべけられた1まい写真しゃしんいた。竜賀りゅうが一体いったいだれだろうとおも写真しゃしんをよくてみると、そこにはちいさなボロにして腕組うでぐみしている二人ふたり若者わかもの姿すがたうつっていた。

竜賀りゅうが「……これってエリック・ブラックさんか……」

源太げんた竜賀りゅうが?どうかした?」

竜賀りゅうが「この写真しゃしんうつってるひとって…エリック・ブラックさんとあともう一人ひとりだれだったっけ?」

源太げんた「ん?……なになになになに??なになんだい?」

 源太げんたせきち、竜賀りゅうがそばまでやって写真しゃしんた。すると途端とたん源太げんた写真しゃしんうつるもう一人ひとり人物じんぶつ反応はんのうした。

源太げんた「え!…このひと俺達おれたちがシカゴにときにこのホテル紹介しょうかいしてくれたおじさんだよ!」

竜賀りゅうが「え?……たしかに…面影おもかげあるな…」

源太げんた「でしょ!?ここにときなんかみょうあたまかってたんだよな……」

竜賀りゅうが「あのひと……エリックさんの友達ともだちなのかな」

 竜賀りゅうが源太げんたがしばらくそうしてると、おくからカートをガラガラとおとこえてきた。

エリック「は〜〜い!おたせしました〜!ホテルローグのスタッフのエリックがうでによりをかけてつくった特製とくせい絶品ぜっぴん料理りょうりだよ〜!!」

 カートにせられていたのはホテルの料理りょうり数々かずかずであった。野菜やさいや、スープ、肉料理にくりょうり出来立できたての湯気ゆげてながらならべたてられていった。

エリック「おや?光男みつおさん!なんだよ〜!せっかく料理りょうり用意よういしたのにすっかりねむっちゃって!」

 料理りょうり竜賀りゅうが源太げんたせきいていきながらている光男みつおこえをかけていた。

エリック「ん?…竜賀りゅうがくん?源太げんたくん?そこでなにをやっているんだい?」

竜賀りゅうが「エリックさん?…この写真しゃしんうつってる二人ふたりおとこひとって、エリックさんともう一人ひとりだれなんですか?」

源太げんた「このおとこひと俺達おれたちがこのシカゴにとき街中まちなかったもん…そんで今夜こんやまるとこおしえてくれってたのんだらここを紹介しょうかいしてくれたんだ」

エリック「……………」

源太げんた「でもそのひと理由りゆうわかんないけどなんかすっごいさびしそうなかおしてたんだ…」

竜賀りゅうが「エリックさん…おしえてくれませんか?…も、もちろん!できればでいんですけど…」

エリック「………まぁ…かく意味いみとくにないし…はなしてやってもいが…それは料理りょうりべながらでもいかな?」

竜賀りゅうが「……!!是非ぜひ!!」

源太げんた「そりゃそうだ!!御馳走ごちそう!!御馳走ごちそう!!」

 二人ふたりならべられている料理りょうりまえ電光石火でんこうせっかのスピードですわると両手りょうてまえわせてこえそろえた。

竜賀りゅうが源太げんた「「いただきます!!」」

エリック「そんなにいそがなくてもきみらの料理りょうりげていかねぇから!!のどまるぞ!!」

 くちなかものをありったけもうとする二人ふたりて、エリックは半分はんぶん心配しんぱいそうに、そして半分はんぶん面白おもしろそうにこえをかけた。

 ガツガツとまえ料理りょうりべているよこでまだしている光男みつおはイビキをしながらねむっていた。

竜賀りゅうが「〜〜〜ッ!!……ゴクッ!!……も〜うとうさん!!はやべないとせっかくつくってくれた料理りょうりめちゃうよ!!勿体もったいいよ!!」

光男みつお「クカーー……クカーー……スピーー…スピーー…」

竜賀りゅうがはやきてって!」

源太げんた「まぁまぁ…流石さすがに5時間じかん以上いじょう連続れんぞく運転うんてんしたんだから無理むりもないって!」

エリック「5時間じかん連続れんぞく運転うんてんしてたのか!?そんなことしてたら事故じここすぞ!!一体いったいなにがあったんだ!?」

竜賀りゅうがじつ我々われわれマクシム連合れんごうわれているんです」

エリック「マクシム連合れんごうだと!?なんであんなだい組織そしきわれてるってんだ!?」

源太げんた具体ぐたいてきうとおれわれてるんです」

エリック「きみが?なぜ!?」

源太げんたおれがインディアナポリス支部しぶから脱走だっそうしたからですよ。おれ元々もともとそこの実験体じっけんたいとして実験施設じっけんしせつれられてたんですよ」

エリック「なに!?」

源太げんた「そこで同胞どうほう何人なんにん実験体じっけんたいとしていろんなくすりたれてるのがいや監視かんしくぐって施設しせつからしたんですよ」

竜賀りゅうが源太コイツ施設しせつからしてモートレートタウンのまちなかまよっていたところを、おれたすけたんですけど……それがバレてマクシム連合れんごうからげてる途中とちゅうなんです」

 とんでもないはなし淡々たんたんすすめていく二人ふたりにポカーンとしながら、エリックはなんとかはなしもうとしていた。

エリック「え〜〜と…つまりだ……きみたちだい組織そしきわれるとなっている犯罪者はんざいしゃってことか?」

竜賀りゅうがわれているであることはたしかなんですけど、犯罪者はんざいしゃではないですね」

源太げんた「マクシム連合れんごうインディアナ支部しぶでは非合法ひごうほう人体じんたい実験じっけん沢山たくさんやってるんですよ……でもその実験体じっけんたいになってるのは見捨てられた町スノップル市民権しみんけんていない適能者デュナミストたちなんですよ……だからアメリカではどんなにころしてもいためつけてもつみにはわれないんですよ」

エリック「そんなことが……」

竜賀りゅうが「マクシム連合れんごうもそんな違法いほう実験じっけんおこなわれていることを世間せけんにバラされたくないから、源太コイツつかまえにわれてたんでとうさんは5時間じかんぐらいぶっとおしで運転うんてんしてくれたんです」

エリック「それでこんなにつかれきっているのか……これはしばらくこさないほういだろう」

竜賀りゅうが「ところでエリックさん!」

エリック「ん?なんだ?」

竜賀りゅうが「あそこにある写真しゃしんひとって?」

源太げんた俺達おれたちったあのおとこひととこのホテルってどうゆう関係かんけいなんですか?」

エリック「ああ……そのはなしか……」

 エリックはふところれ、ジャケットのうちポケットから葉巻はまきし、なにやら模様もよういたシルバーのライターで葉巻はまきけむりいた。

エリック「さって……どこからはなしたモンか……」

源太げんた「…お友達ともだちなんですか?」

竜賀りゅうが源太げんた!」

 源太げんたはついになってくちいていってしまったが、竜賀りゅうがはそれを気遣きづかって源太げんためようとした。

エリック「いや……幼馴染おさななじみだよ」

竜賀りゅうが「え?」

源太げんた幼馴染おさななじみ?」

エリック「ああ……幼馴染おさななじみくさえんってところか……なにせいがながいもんでね…」

源太げんた何歳なんさいからですか?」

 ホッとむねろす竜賀りゅうが無視むしして源太げんたはどんどん質問しつもんめした。

エリック「丁度ちょうどきみらとおなじくらいのとしくらいのときにあったんだよ……二人ふたりおんな野球やきゅうクラブにいてそこでったんだよ」

竜賀りゅうが野球やきゅうクラブ?…ってことはメジャーリーガーとかになるってゆめ子供こどもときかたったりしたなかだったんですか?」

エリック「え!?……竜賀りゅうがくんきみ野球やきゅうってるのかい!?」

竜賀りゅうが「え?え、ええ!!まぁ…たまたまってたんですよ!!」

源太げんた「?……野球やきゅうってなに?」

竜賀りゅうが「…………」

エリック「これが普通ふつう子供こども反応はんのうだよ?」

竜賀りゅうが「とりあえずその幼馴染おさななじみはなしかせてください」

エリック「ああ……その幼馴染おさななじみはマーカス・ジャッジ……おれおなどしで53さいだ」

 二人ふたり食事しょくじめて、エリックのはなしみみかたむけていていた。

エリック「高校こうこうまでシカゴとはちがまちんでいた俺達おれたち将来しょうらいどうすればいのかからないまま『まぁどうにかなるだろう』ってかんじできてたんだけどさ」

 葉巻はまきけむりがユラユラと天井てんじょうたってはかなえていった。

エリック「マーカスと一緒いっしょまちであるいてたとき街外まちはずれからやってきたであろう少女しょうじょがやってきてな……あきらかにスラムがいからまよんでいたような姿すがたをした少女しょうじょだったんだ……」

エリック「マーカスのヤツおれはそのをほっておけなくてな…最初さいしょ警察けいさつあずけるべきかどうか、スッゲーなやんだんだが、少女しょうじょはたった1にちだけ雨風あめかぜしのげる場所ばしょしいとだけってきたんだ」

エリック「だが屋根やねいた場所ばしょなら、なんでもいって雰囲気ふいんきじゃなかった……だからおれ少女しょうじょ自分じぶんいえれてかえったんだ」

エリック「その少女しょうじょなにいたげだったが……こわがっている様子ようすにもえた俺達おれたちはそのとき…『おなかいてんのか?』っていてみたんだ…」

エリック「そしたらその少女しょうじょちいさく…クビたてったんだよ……そんときおれなにおもったのか…『よし!じゃあ俺達おれたちなに美味うまいモンわしてやる!』ってったんだよ」

エリック「ったはいがおれとマーカスはそれまで野球やきゅうばっかりしてて、料理りょうりなんかしたことは全然ぜんぜんかったんだ…だからとりあえずキッチンにあるありったけの食材しょくざいあつめてさ……パンとハムエッグ、きソーセージそれとたしか…野菜やさいスープ…みたいなもんかな」

エリック「いまおもかえしてもあんまり出来でき料理りょうりだとはおもわなかったんだが、そのとき俺達おれたち人生じんせいはじめて他人ひと自分じぶんたちつくった料理りょうりしたんだ」

エリック「そしたらその少女しょうじょ料理りょうり一口ひとくちべて『おいしい』って……そうってくれたんだ……そのとき笑顔えがおいまでもわすれられなくってな……」

エリック「そのあと色々いろいろ世話せわしてベッドで安心あんしんしてるところまでやったんだがな……あさ御飯ごはん準備じゅんびをしようと、あさいそいできたらその少女しょうじょ部屋へやのどこにもいなかった……」

エリック「ベッドのよこのテーブルにはちいさな紙切かみきれにたった一言ひとことだけ…『ありがとう』…ってかれていたんだ…」

 物音ものおとひとてずっていた二人ふたり表情ひょうじょう徐々じょじょやわらかくなっていた。エリックはである二人ふたり表情ひょうじょう安心あんしんしたのかつづけてった。

エリック「そのときめたんだ…!!おれとマーカスは、これからどんなことがあっても…こんな笑顔えがおせる宿屋やどやつくっていこう…ってな…」

エリック「まぁ…宿屋やどや仕事しごとってのはめちゃくちゃ大変たいへんでな…おれもマーカスも何度なんどこころれそうになることがあったんだ……だけどそんなときにはまってあのおんな笑顔えがおおもしてたんだ…」

竜賀りゅうが「それが…切掛きっかけですか?」

エリック「ああ……あの出会であえてなけりゃ…俺達おれたちはシカゴの都市まちにホテルをてることもできなかったんだからな……それでもここにホテルをてるのはなみ大抵たいてい苦労くろうじゃなかったな……」

源太げんた「ここの背景はいけいうつってるのってこのホテルなんですか?」

エリック「いいや、ちがうよ…そこにうつってるのは俺達おれたち一番いちばん最初さいしょつくった宿屋やどやなのさ……シカゴのきたほうにあるまちいとなんでいたボロい宿やどだったんだけどな…経営けいえい軌道きどうせるのに5ねんくらいかかったかな…」

竜賀りゅうが「5ねんもかかったんですか!?」

エリック「ああ……なん一番いちばん最初さいしょつくった宿屋やどや二人ふたり資金しきんわずかななかやりくりしなけりゃいけなかったから雨漏あまもりはするわ、むしがたかるわ、ベッドがこわれるわでクレームのあらしだったんだ…」

源太げんた「そんなところからのスタートだったんだな…」

エリック「でもあきらめなかったんだ……ずっと借金しゃっきんもしながら経営けいえいつづけていきながら、ようやく手応てごたえをかんはじめたとき、ある資産家しさんかからこのシカゴの都市まちのドなかでホテルをやってみないか?ってわれてな……俺達おれたち返事へんじに2びょうもいらなかったね」

エリック「このホテル『ローグ』は俺達おれたち宿屋やどや2号店ごうてんなのさ……ここにももちろんおもまってるんだ…もう23ねんってるんだ」

竜賀りゅうが「23ねんかん……」

エリック「おまえらがかげかたちときからずっとこのホテルで沢山たくさんのお客様きゃくさま笑顔えがおをここでた……ここにはおれとマーカスの“おも”がまってんのさ…なのに……」

源太げんた「……そのマーカスさんがこのホテルからっちゃった?」

エリック「……ああ……それもおまえらにこんな手紙てがみたくしやがって……馬鹿バカ野郎ヤロウ…」

源太げんた「…………」

竜賀りゅうが「ここは二人ふたりにとって大切たいせつ場所ばしょなんですね」

エリック「ああ……ここは俺達おれたちにとっての宝物たからものさ……」

源太げんた宝物たからもの?」

エリック「ああ、そうだ…だれかからうらやましがられるものたからってわけじゃねぇんだ……マーカスとおれにとっていのちけてでもまもりたい価値かちのあるものかどうか?すべてをけたいとおもえるかどうか?宝物たからもの定義ていぎなんてそんなモンなんだよ」

竜賀りゅうが「……大人おとなになると、みんなかね一番いちばん大事だいじになってくるのに…そんなに大切たいせつものがあるってすっごくしあわせですね」

源太げんたなん大人おとなになるとみんなかね大切たいせつになるんだろう……」

エリック「きんぎん財宝ざいほう意味いみなんざねぇさ……そんなものこころうばわれちまうのは、そいつのこころ本当ほんとう大切たいせつものつかってねぇ証拠しょうこさ」

竜賀りゅうが大切たいせつなもの?」

エリック「ああ…それはかねにはけっしてえられねぇそいつだけの“宝物たからもの”さ……かね所詮しょせんどこまでいこうが紙切かみきれやいしコロでしかねぇとおもってんだよおれは」

竜賀りゅうが「ハハハッ!」

エリック「オイオイ…わらうとこじゃねぇぞ?おれ本気ほんきってんだからな!かねってのはあくまで“手段しゅだん”なんだよ!ゆめかなえるためのな……それがいつのにかかねつことが“目的もくてき”にわっちまうんだよ!だから二人ふたりにこれだけはむねおくめとけ!」

 自分じぶんはなし熱心ねっしんいてくれる二人ふたり気分きぶんくなったのか、徐々じょじょこえおおきくなっていた。しかしそのあとかおくらくなりこえのトーンががっていった。

エリック「それがいまとなってはこのホテルが『ブルガントだん』の占領域せんりょういきひとつになっちまった……」

竜賀りゅうが「ブルガントだん?」

エリック「ん?らねぇのか?このイリノイしゅうではかなり有名ゆうめいどころの適能者デュナミスト集団しゅうだんだぞ?かなりの財力ざいりょくのあるマフィアなんだ」

源太げんた「やっぱり俺達おれたちたたかったアイツらって…そのブルガントだん一員いちいんだったのか?」

エリック「ああ……以前いぜんからいやがらせはけていたんだ…このシカゴの都市まちちからかね支配しはいしようとしていて何人なんにんもその被害ひがいけているんだ。げんまちんでいた人達ひとたちがどんどんべつまちようになっちまった。いまじゃこの都市まちひとんでいないゴーストタウンみにさびしくなっちまった」

竜賀りゅうが「でもエリックさんはここにのこっていくことを決意けついしたんですね」

エリック「ああ…さっきもったがここはおれ宝物たからものなんだ…!!おもれがありぎて簡単かんたんてられなくなっちまったよ」

源太げんた「……でもそれはきっと…マーカスさんも一緒いっしょじゃないかな?」

エリック「え……」

源太げんた「あのひとすっごいかなしそうなかおしてたから……くちでは『もうわりだよ、この都市まちは』とかってたけど、本当ほんとうあらがいたがっていたんだとおもいますよ」

エリック「へ……餓鬼がきがいらないつかうんじゃねぇよ…!!ホラ!!折角せっかくのメシがめちまうぞ!!さっさとっちまえよ!!」

 いきおくエリックは椅子イスからがりおく厨房ちゅうぼうえていった。

 竜賀りゅうが源太げんたのこっていた料理りょうりをドンドンくちなかれていった。めても中々なかなかイケるとおもいながら御飯ゴハンべていると、テーブルにしていた光男みつおようやました。

光男みつお「ふああああぁぁぁぁ……あ〜〜そっかおれけてちまってたのか……ん!?」

 こすりながらびをしている光男みつおは、竜賀りゅうが源太げんたべている料理りょうり絶句ぜっくした。

光男みつお「おまえら!?さきにメシってたのか!!?」

竜賀りゅうが「うん」

源太げんた「おさきに〜」

光男みつおなんこしてくれなかったんだよ〜!!」

竜賀りゅうが「いやこしたって!」

源太げんた「にもかかわらずスッゲェむってたから…しばらくそっとしとこうってエリックさんがったんだよ」

光男みつおおれのは!?おれぶんは!!?」

竜賀りゅうが「もうしょうがないな〜…エリックさーーん!!!おとうさんがやっときたよーー!!!」

エリック「おお!!やっときたか!!じゃあ料理りょうりいまからあったかいのってく!!」

光男みつおかった〜〜はらぎてにそうなんだよ」

竜賀りゅうが「そりゃかったね?今夜こんやのメシが美味うまくなるぞ」

 するとすぐに厨房ちゅうぼうからエリックがてきて、ワゴンに料理りょうりせてやってきた。

光男みつお「おおおお!!ってました!!いっただきまーーす!!」

 子供こどもみたいにムシャムシャハイペースで料理りょうりべている光男みつおてエリックは

エリック「………やっぱり親子おやこだね…」

 そうつぶやいたのだった。


 食事しょくじわったあと三人さんにんは、ホテル『ローグ』のスイートルームに案内あんないされて、シカゴのうつくしい夜景やけいることのできる部屋へやはいった。

竜賀りゅうが「うわーーー!!めっちゃ綺麗キレイ景色けしき!!」

源太げんた「この部屋へやサイッコーーー!!!」

光男みつおいんですか!?こんな部屋へやまっても!!?俺達おれたちそんなかねないですよ!??」

エリック「ああ……かねいのさ…かねにはえられないくらい大切たいせつ宝物たからものまもってくれたおれいおもって今夜こんやはここでぐっすりてしっかりやすんでいってくれ」

光男みつお大切たいせつな…宝物たからもの?」

竜賀りゅうがとうさんはそのとき丁度ちょうどてたからね」

 エリックは竜賀りゅうがうとイタズラっぽくウインクして部屋へやあとにした。


To Be Continued

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