#23 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第10話「感謝の想いに花一輪」
シカゴシティの武器屋の近くにある駐車場でポツンと1台だけ停まっているジープ。その車中で身を屈めて、身を潜めている褐色肌の黒髪の少年がいた。
源太「あ〜〜〜一体刀一本にどんだけ時間掛かるんだよあの二人は…」
そうぼやいていた猿渡源太は待たされる時間が長いことに徐々に飽きてきて、
源太「ちょっと外出てみようかな……」
と、完全に気の弛んだ思考に陥っていた。
源太「ちょっとだけなら…」
源太は頭を上げ車の窓から外の様子を見てみた。そして外に人の気配が無いことを確認してから、ゆっくり車の鍵を開けドアを開いた。
源太「誰もいませんよね〜〜?」
外にピョンと飛び出し、新鮮な空気を吸うと思いっきり伸びをした。
源太「ん〜〜〜!!やっぱり外は良いよねーー!!」
源太は窮屈な車内から出て気持ち良かったのか、身体を伸ばしたりグルグル肩を回したりしてストレッチを始めた。
源太「………しっかしホントに誰もいない都市だな」
辺りを見渡しても人の気配を感じない、どこかに誰かが隠れている雰囲気もない寂しい風景が何となく嫌になり、源太は…
源太「ちょっとぐらいココ離れても良いだろ…」
そんな風に考えてしまい車のドアを閉めてから、大通りに向かって早足で歩いて行った。
源太「こんなに自由に歩き回るなんて何時ぶりだろ……」
久々の自由を堪能しながら色々な店をキョロキョロしながら見回っていると突然…
???「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
どこからともなく女性の大きな悲鳴が聞こえてきた。
源太「!!??」
源太はほとんど無意識で悲鳴のしたところに駆け付けた。道を全速力で走ったその先には小さなお花屋さんがあった。
???「離して!!お願い!!娘だけは!!」
???「ハーーッハッハッハッハ!!!」
そこには花屋の前で女の子を蹴り飛ばしている男がいた。そしてそれを必死に止めさせようとする母親を地面に伏せている男が二人立ってた。
???「メリッサ!!メリッサ!!」
メリッサ「ママーー!!ママーー!!」
源太はその光景を見た時頭で考えるよりも先に身体が動き出していた。左手からAの伽鍵礼符を出し能力を発動した。
???「ハッハッハッハ!!コイツら泣いてやがるぜ!!弱ぇ奴に生きる権利なんてねぇんだよ!!」
その男がメリッサと呼ばれている女の子に散弾銃を向けて引き金を引こうとした、その瞬間ーーー
ガンッ!!!
その男の後頭部に鈍い打撃音が響いた。そして男の腹部に長くしなる棍が当たり思いっきり後方へ吹き飛ばされた。
ビュオン!!…ドサ!!
母親を取り押さえていた二人の男達は長い棍の反対側を目で追っているとそこには子供が棍を握っていた。
???「オイ!!テメェ!!何しやがる!?」
???「今取り込み中だ!!それを邪魔しやがったら容赦しねぇぞ!!」
源太「黙れよ……」
???「……あ?」
源太「テメェら何無抵抗の親子に暴力振るってんだよ…」
???「は?……この親子がこの店で営業する時にはこのブルガント団の縄張りでのみかじめとして金を納めなきゃいけねぇんだよ」
???「それがこの都市で生きていく無適能者共の助かる道なんだよ!」
源太「……んで?」
???「あ?」
源太「テメェらはじゃあこの都市に来たのはいつ頃なんだよ?」
???「そんなこと聞いてどうすんだよ」
メリッサ「5ヶ月!!」
源太「!!」
メリッサ「この人達ここに来てから5ヶ月も経ってないよ!!そのクセに威張って酷いことばっかりやって都市に住んでる人達を沢山困らせてるの!!それが嫌で都市からいなくなった人だって沢山いるの!!」
???「口の減らねぇ餓鬼だな…もっと痛めつけられなきゃ気がすまねぇか!!ああ!!?」
源太「おいおい……自分達より弱そうな奴しか相手にできない三流の脅し文句しか言えねぇくらい馬鹿なのか?テメェらは?」
???「はぁ?」
???「オイクソ餓鬼……口には気を付けろよ…!?俺達はブルガント団だぞ?ナメた態度してるとどんな目にあうか解ってんのか?」
源太「………大したことのねぇ雑魚の集まりってことぐらいは知ってるぜ?」
その言葉を聞いた二人の男達からブチッと血管が切れる音が聞こえそうなくらい表情が激変した。
???「決まりだ!!お前はここでブチ殺す!!!」
二人のブルガント団員は女性から離れ源太に向かって飛びかかってきた。源太は棍を短くし二人に一気に距離を詰め、二人を押し返した。
源太「一応……名前を聞いておこうか…」
ボブ「ボブ・カッセル!」
ロドリック「ロドリック・サーキース」
そう言い返され源太も棍を再び構え直し、言い放った。
源太「猿渡源太…アンタらを倒す男の名だ……よろしく!!」
その直後ボブの伽鍵礼符から光が放たれ、身の丈程の長さの巨大な回転弾銃が現れた。
ボブ「この俺に喧嘩売ったことを後悔させてやるよ小僧!!」
源太「………そんなモン出したら俺がビビって腰が引けるとでも思ってんなら、随分おめでたい頭してんな?」
ロドリック「オイ小僧……適能者の世界では能力の大きさがモノを言うってのが常識だってことをここで身体に叩き込んでやろうか?」
源太「だったらグチグチしゃべってねぇでかかって来いよ……わざわざ口喧嘩する為にテメェらに関わってんじゃねぇんだよ…!!」
そういうと源太はいきなりボブの懐に飛び込んで棍を相手の顎に向けて突いた。
コンッ!
ボブ「ぶお!?」
カンッ!コンッ!
ボブ「グオ!?ガハッ!!」
源太は決して大きな動きではなく、小さな小回りのきいた技の連続でボブの関節目掛けて攻撃を叩き込んでいった。
源太は自分が光男から教わった戦いの極意を思い出していたーーー
光男「ーーーだーかーらー!違うっつーの!!」
ガン!!
木刀で強く突き飛ばされて尻もちをついた源太に向かって言い放った。
光男「朝から教えてた基礎の素振りで最初は攻撃してくるんだよ」
源太「だって…全然おやっさんに攻撃が当たらないんだよ!!」
光男「だってもクソもないんだよ!!お前はまだ棒術の基礎を習いたてなんだから、そんな簡単に技を修得できるレベルじゃないんだ!」
源太「だったらこんなこといくらやったって意味ないじゃん!!」
そこまで源太が言うと光男はハアァァとため息をつきながらやれやれと言った感じで説明を始めた。
光男「あのな?源太…お前が確かにこの三日の稽古で飲み込みの早さも良いからかなりのスピードで成長はしている…でもそれは竜賀も一緒でお前と同じ様に稽古をしてるし、なんだったらお前より3年以上も基礎の稽古を積み上げてきてるんだからそんな簡単に竜賀や俺に勝てる訳はないんだよ」
源太「それじゃあ竜賀を絶対倒せる方法教えてくれよ!!おやっさんはいつも竜賀をボコボコにできてるんじゃん!!」
光男「それは俺が20年以上剣術や武道の稽古をずっと続けてきてる訳だから技の練度が竜賀と一緒な訳ないんだよ」
源太「………」
光男「源太…お前は竜賀や俺を倒す秘訣や裏技を教えて欲しいのか?」
源太「!欲しい!!それを教えてくれるの!?」
光男「……だったら闘いにおける心構えとして防御70%:攻撃30%ってのを教えておいてやる」
源太「??……何それ?攻撃100%:防御0%じゃないの??」
光男「ぷっ…はははははははは!!やっぱりお前そう思ってたのか!!ははははははは!!」
源太「笑うなっての!!何がおかしいんだよ!!」
光男「そりゃおかしいって思うさ!そんなんじゃお前戦闘になったら真っ先に死ぬ奴の考え方だぞ?戦いにおいてまず最も大事なことが何か解ってねぇじゃねぇか」
源太「何なんだよ……戦いで一番大事なことって…」
光男「戦いにおいて最も大事なこと…それは…生き残ることだよ……生き延びることが大切なことなんだ」
源太「生き……残ること…?」
光男「ああ……その理由はここであえて教えないけどな……もう一回俺と勝負する時そこらへん意識してもっかいかかってこい」
源太「……よーーし!!」
光男「解ってるな源太?10回中7回攻撃を躱せば相手を3回攻撃しても良い……それを意識して俺と立ち合い稽古するぞ!」
源太「防御7回:攻撃3回……」
光男「そうだ!それじゃ行くぞ!!ーーーー」
ロドリック「ーーーー調子こいてんじゃねぇぞ!!」
ガン!!…ゴン!!…ガン!!…ブオン!!
巨大なモーニングスターを振り回しながらロドリックが襲い掛かってきたのを身体をヒラリを動かしながら躱し続けた。ロドリックは自分の攻撃を楽々躱されていることにイライラし始め、より大振りになってきた。
源太(……こっちも攻撃躱しながら、3回の機会で攻撃しかけるタイミングを待つやり方にはフラストレーション溜まるんだよ…!!)
そう思っていた源太の背後でガシャンと金属音が鳴り、咄嗟に振り返ると、ボブが回転弾銃の銃口を源太の頭に狙い定めていた。
ボブ「死ねええええええ!!!」
ガンッ!!!
放たれた弾丸は空気を引き裂く様に一直線に飛んでいった。しかし源太はこれも躱しきった。
ボブ「な!!?」
源太「〜〜〜ッぶねぇ!!」
源太は避けた反動で地面にゴロゴロと転がったが、そこに間髪入れずロドリックのモーニングスターが襲い掛かってきた。
源太「ぐっ!!」
ガン!!ガガン!!ドン!!
振り回されるモーニングスターが手当たり次第に地面や壁を破壊していくのを軽い身のこなしで避けまくり、何とか攻撃を凌いでいた。
その近くでまたボブが回転弾銃の銃弾をまた装填していた。
ボブ「今度は外さねぇ…!!」
源太「……!!またこのパターンか!!」
再び源太を狙う回転弾銃の銃弾が被害を及ぼさないようにする為に人の気配のない建物を回転弾銃と自分の延長線上に来る場所に移動した。
ボブ「くたばれぇ!!」
ガンッ!!!
また源太はその銃弾をまたヒラリと躱した。銃弾は背後の煉瓦造りの壁を連続で貫通していった。
源太「なんつー武器だよ…」
ボブ「クククク……俺の霊具である対戦車回転弾銃には2枚の礼符の効果を付加してある……一つは『銃弾装填』、そしてもう一つは『絶対等速』だ」
源太「プルスピード??…何じゃそりゃ??」
ボブ「この絶対等速の効果を受け放った物体は地球の重力、自転、公転、慣性…あらゆる力の影響を受けず、一直線にスピードを維持したまま進み続けるんだよ……ま、限界距離はあるがな」
源太「嘘だろ……ずっと同じスピードを維持したまま物体が進み続けるなんて聞いたことねぇぞ!?」
ボブ「解ってるはずだぜ……ありえない!…そんなガキみてぇな理屈が一切通じないのが伽霊能力が支配するこの世界の絶対のルールだったはずだ!」
ロドリック「余所見してると寿命が縮むぞ!!」
ガンッ!!!
いきなり横から不意打ちで飛んできたモーニングスターを源太はまた躱して、連続で襲ってきたロドリックの攻撃を如意棒でまた回避した。
源太(ん!?)
源太はロドリックのモーニングスターを躱しながら、ボブの様子をチラっと見た。
するとそこには礼符を回転弾銃にかざしているボブが見えた。
源太(……なるほどな…あの回転弾銃は銃弾装填から一発ずつしか弾を放てねぇのか……次撃つまでの時間の浪費に攻撃を受けない為にロドリックが揺動をしかけるって訳か!)
次の銃弾を装填し終わったボブが回転弾銃を構え、また源太の頭を狙おうとしていた。
源太(だったら!!)
そのタイミングを狙った源太はボブに隠す様に伽鍵礼符を出し、能力を一瞬で発動した。
源太「これでどうだ!!」
源太は棍を持っていた手の反対の左手をボブに向けて突き出した。
すると左手が瞬く間に長く伸びてボブの構えた回転弾銃の銃身をガシッと鷲掴みにした。
源太「ホイ♪」
伸びた左手で掴んだ銃身をロドリックに向けた。
ボブ・ロドリック「「っな!!?」」
ドンッ!!!
ボブが引き金を引くのを止めるのがが間に合わず銃声が鳴り響き、ロドリックの右肩に風穴が空いていた。
ロドリック「ああああああああああああああああああああああああああ!!!?」
ボブ「兄弟ァァァ!!!」
ロドリックの右肩からどっと血が溢れ出てきて二人はパニック状態に陥った。
ロドリック「血が!!血が!!ああああああ!!!」
ボブ「落ち着け!!まだ死んだ訳じゃねぇんだ!!止血すれば…」
???「それを我々がさせると思うか?」
源太はこの場にいるはずのないもう一つの声にハッとして声の主を探そうとキョロキョロすると少し離れた場所から手をボブとロドリックに向けている男がいた。
???「“激流滅火”!!!」
ドン!!
その男がそう唱えると男の手から強烈な水柱が発射され、ボブの所まで一直線に伸びていった。
ボブ「ぐあああああああ!!?」
強烈な水の放射をダイレクトに喰らったボブはいとも簡単に身体を浮かされ、壁に叩きつけられた。
男はボブの前に駆け足で近付いてきて、再びボブに向かって手をかざした。するとボブは水の球体の中に閉じ込められ身動きが取れなくなっていた。
その男はボブを完全に拘束した後、ロドリックの傍に近付き大きな水の球体の中に閉じ込めた。ロドリックの肩の傷からの出血が止まっているのを確認したその男はさっきまで被害を受けていた母娘のそばまで駆け寄り安否の確認をしていた。
???「大丈夫ですか?どこか痛むところはありませんか?」
母親「ええ私は大丈夫です……それより娘は!…メリッサは!?」
メリッサ「ママ!私も大丈夫だよ!あのお兄ちゃんのお陰で!」
メリッサと呼ばれている少女が指差した先にいた源太は、三人の視線が一気に集まってドギマギした。
その男は源太の元にツカツカを歩み寄って来た。
源太「……あーー…」
???「どうやら…君の勇敢な行動に感謝の意を示さねばならないらしいね?」
その男は光男よりも身長が高く、肩幅が広く立派なところを見ても、かなり逞しいイケメンだった。源太はこの男に若干ビビりながらもなんとか言葉を捻り出した。
源太「えーーっと……貴方のお名前は…?」
源太は、何で今ようやく絞り出した台詞がそれなんだ!と自虐しながらも今一番気になっている事を聞いてみた。
???「おっと失礼!私はマクシム連合シカゴ支部大佐レスリー・コーナーだ!この辺りの治安維持活動及び警察としての業務にあたっている!」
源太「!!?」
源太はこのレスリーがマクシム連合の大佐と聞いた途端ギョッとした。しかしそれを何とか悟られまいと背筋をピンと伸ばし、表情を必死に笑顔に戻していた。
源太「そ…そうなんですか!!…僕は猿渡源太と言います!」
源太はこの瞬間、しまった!と思った。なぜここで馬鹿正直に本名言ってるんだと後悔した。
レスリー「…そんなに緊張しなくても別に取って喰ったりしないから安心して大丈夫だよ」
源太「あっ……はい…」
しかし源太はアレ?っと心の中で首を傾げた。
源太(この人、マクシム連合の人間なのに俺がインディアナ支部から逃走中の実験体だってこと知らないの?アレ?訳分かんないんだけど??)
源太「……あの…」
レスリー「ん?何だい?」
つい源太は自ら墓穴を掘りに行きそうになっていることに気付き、何とか別の内容にすり替えた。
源太「いや!…あの…俺今…ロドリック傷付けましたけど…そのことに関しては何も言わないんですか?」
レスリーはその言葉を受け、じっと源太の顔を見つめたが、やがてゆっくり話し出した。
レスリー「君があの男を傷付けたのか?」
源太「………」
源太はゆっくり頷いた。
レスリー「そうか……」
レスリーは周りを見渡し、あの母娘しかいないことを確かめた後源太の目を真っ直ぐ見つめて言い放った。
レスリー「…ロドリック・サーキースの肩の負傷はこのレスリー・コーナーの伽霊能力によるものである!報告書にはそう記入しておこう。しかし次はないよ」
源太「!」
厳格そうな顔をしていたレスリーはフッと笑い源太を安心させようとしていた。源太も少し表情が和らいだ。
するとそこへーーー
竜賀「源太!!」
光男「お前探したぞ!!車の中にいろって言っただろう!!」
藍川竜賀と父親の光男が近付いて来た。レスリーはちゃんと保護者がいたことにホッとした。
光男「全く!さっき大きな音がしてもしかしてって思って!車の中を見たらもぬけの殻!どんだけ心配したと思ってるんだ!!」
源太「いや!女の子の叫び声が聞こえてきて何かあったんじゃないかって身体が条件反射で動いちゃって…」
助けた母娘を指差しながら必死に言い訳した。
竜賀「それは一体どっちな訳?車の中にいて女の子の声が聞こえたのか?それとも車の中にいるの退屈だな〜って思って車の外に出て気分転換の為に歩いていたら女の子の声が聞こえてきたから駆け付けたのか?」
源太「………お前は他人の頭の中覗けんのか?」
光男「…どうなんだ?源太?前者か?それとも後者か?」
源太「………後者です…」
竜賀・光男「「やっぱりか…」」
レスリー「あの…あなた方は?」
光男「あ…この子の保護者の藍川光男です」
竜賀「それと息子の藍川竜賀です」
レスリー「光男さん…この源太君の保護者ですね?さっきここで彼がこのブルガント団の二人と戦闘をしていました」
レスリーは水の球体の中にいる二人を指差した。
レスリー「今から私はこの二人をシカゴ支部に連行します。ここで起きた事件の目撃者は幸いあの母娘だけですので、報告書には戦闘は私がやったことにします」
光男「あの…何が起きたか全然分からないんですが…」
レスリー「詳しくはその少年に確認を取って下さい…あっ…やっとニコラスが来たな」
ニコラス「大佐!!もう現場先に行くの早過ぎますって!はぁ…はぁ…はぁ…」
レスリー「いや…もう遅過ぎたくらいさ…事件はもう終わったよ」
ニコラス「早!?」
レスリー「私は早速支部に戻って報告してくるよ。君は現場保存と調査を頼む」
ニコラス「今回はおいしいとこナシか〜!!」
レスリー「今回もだろ?」
ニコラス「………」
レスリー「それじゃね源太君…それと何かあったら連絡するからMr.藍川連絡先を教えていただけませんか?」
光男とレスリーがやりとりしている間、現場保存と状況確認を行っていたニコラスを見ながら源太は竜賀に聞いた。
源太「ところでさ、どうだったんだよ?例の買い物」
竜賀「ああ。最高だよ」
源太「マジ?」
竜賀「店長さんが昔日本で刀鍛冶の師匠からいただいた最高傑作の逸品ってことで大事にしていた刀をくれたよ」
源太「よくそんなもんくれたな?」
竜賀「それを故郷の友人に渡してくれってよ」
源太「そんな大事な仕事よく引き受けたな?」
竜賀「何故か知らんけど俺らのこと気に入ったらしい」
そんな会話をしていると源太の服の袖をさっきの少女が引っ張ってきた。
源太「ん?」
メリッサ「はい!これあげる!」
少女の手には一輪の花が握られていた。
源太「……俺に??」
竜賀「…受け取ってやれよ!この色男!」
竜賀は揶揄う様に源太に花を受け取れと促した。
源太「いいの?」
メリッサ「うん!」
源太「ありがとう!…お嬢ちゃん名前は?」
メリッサ「メリッサ!メリッサ・エドワーズ!」
源太「メリッサちゃんか〜…俺花詳しくないんだけど、このピンクの花何て名前なのかな?」
メリッサ「ガーベラ!西洋の花言葉で『感謝』!」
源太「ガーベラか〜良い花言葉だね〜!」
竜賀「綺麗な花だね?」
源太「あげねぇかんな?」
竜賀「別に取ったりしねぇよ」
源太「メリッサちゃん、これって店で売ってる大事な物でしょ?良いの?」
メリッサ「うん!母さんも良いって言ってたよ!」
源太「ありがとう…大事にするね?」
源太はこの日人助けで感謝されるという初めての経験を味わった。
それを傍らで見守っていた光男も知らず知らずの内に成長していく子供の姿を見て感慨に耽っていったのであった。
To Be Continued
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