#24 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第11話「もう一度だけ会わせたい」
アメリカ・シカゴシティの春の暖かい日差しが燦々と照りつける中、花屋の現場をようやく離れ赤いジープの所まで戻って来た。三人組の親子の姿があった。
源太「そんで?」
竜賀・光男「「ん?」」
源太「二人は例の武器屋で日本刀を手に入れたって言ってたけど、どんな感じのモンなの?」
そう言われ光男は左手に握っていた刀袋を持ち上げ、紐を解いた。
袋からは美しい藍色の漆塗りの柄が顔を覗かせた。
源太「え!?めっちゃ綺麗じゃん!?」
竜賀「まだ全部見せてないよ……」
袋から刀を完全に取り出し、光男は柄を握り鞘から刀を抜いた。
太陽に照らされた藍色の刃は青い光を放ち、見る者を魅了するほど美しかった。源太はあまりの美しさに溜息を漏らした。
光男「溜息が漏れる程の美しさとはこのことだな…」
竜賀「文字通り…」
源太の様子を見て二人共クククと笑いを堪えていた。
源太「だって俺日本刀なんて竜賀の持ってる奴しか知らねぇもん!他の日本刀なんて見たことなかったから!」
源太は人生で2回目に見た日本刀に興奮している様子だった。
源太「名前は!?この刀の名前は何って言うの!?」
光男「ああ…『聖剣・藍風』って言うらしい沢城大吾郎って有名な刀匠が造った七本の傑作の刀の一本らしい……店長からはこの刀をそのお弟子さんの大嶋丈さんって人に渡して欲しいらしい」
源太「おやっさん責任重大じゃん!」
光男「そうだな…この刀は大事にしねぇと……」
竜賀「もしもヘマしてこの刀を折ったりなんかしようモンなら」
光男「地獄行きだな…」
源太は二人の最後の言葉に背筋が凍りつく様な感覚になった。
源太「そんな大事な物を何でおやっさんに渡したの?」
竜賀「その店長の勘らしい…」
光男「ま!これでこの世界でやり遂げることも決まったな!何が何でもこの藍風を大嶋さんの元に届ける!それが俺の役目なんだ!」
源太「絶対やり遂げようぜ!」
光男「ああ!」
そう言いながら三人共車に乗り込んだ。光男は助手席の最も手が届くところに刀を置いていた____
____ブルガント団のアジトにて____
アレックス「また…醜態を晒したってのか…!?」
スティーブン「ええ……ボブ・カッセルと、ロドリック・サーキース、後ビル・ゴーントの三人がやられたそうです。それもゲンタ・サワタリって子供に」
アレックス「!?…昨日トンプソンが言ってたガキの名前と一緒じゃねぇか……」
スティーブン「ええ……その後現場に駆け付けたマクシム連合のレスリー・コーナーに連行してもらえましたが」
アレックス「そっちに関してはウイリー少将と話す!だが!…」
アレックスは苛立った感情を抑えきれず声を荒らげた。
アレックス「ソルマン!!」
ノルスタイン「は〜〜い!そろそ〜〜ろ呼ばれーーる気がしま〜〜したよーー」
アレックス「お前にこの命令をしなければならないのはかなり不満だが…!!トンプソン兄弟、そして今回のサーキース達の失態の尻拭いとして例の親子をここに連れて来てくれ…!!!」
ノルスタイン「まだ部下は〜〜沢山いるーーのではあ〜〜りませーーんか〜〜?」
アレックス「今朝、シカゴ全体にかなりの数送り出して暴れさせている……今自由に動けて適能者を生捕りにできるミッションを軽くこなせるとすればお前くらいだ」
ノルスタイン「た〜〜しかにーー昨日今日と同〜〜じ子供に我そーーしきの適能者がふた〜〜組もやらーーれているのはで〜〜き過ぎでーーすね〜〜」
アレックス「その理由も気になるから調査込みでやってくれるか?」
ノルスタイン「おま〜〜かせ下さーーい♪」
ノルスタインはそう言い残すと身体が浮き上がり天井に吸い込まれて行く様にすり抜けて消えていった____
____ホテル『ローグ』にて____
ホテルの正面玄関のガラスを貼り付ける作業を業者がやっているのを見ている男がいた。
エリック「悪いな!ありがとうね!」
業者「いやいや!こんな時代、こういう受注が沢山増えたから我々からしたら!こっち側からしたらありがたいとしか思ってないよ」
エリック「やっぱり最近こういう仕事めちゃくちゃ増えてるのか?」
業者「ああ…硝子を作れる適能者が以前は格安で商売していて、俺たち硝子業者は商売あがったりだったんだけど……ブルガント団が来てから、都市に住んでいた適能者がどんどん減っちまって俺達硝子職人の無適能者の方に仕事がガンガン回ってくるようになっちまってなぁ…」
エリック「……そっか……」
業者「まぁ!何とかこれは後30分で終わらせるよ!今朝何かアチコチでブルガント団関連の仕事が一気に増えちまってな」
エリック「一気に?」
業者「ああ!今朝だけでも都市の至る所で55件も来たからな!マクシム連合の警備隊も一気に仕事が来てアチコチ飛び回ってるってさ」
エリック「何で今朝になってそんな増えたんだ?」
業者「さぁねぇ…分かんねぇ…」
エリックは硝子貼りの作業を任せてホテルのトイレに向かった。トイレで用を足し、トイレから出ようと扉の取手に手を掛けようとした。
その瞬間扉の向こう側から壁をすり抜ける様にオレンジ色の長髪の長身の男が現れた。
ノルスタイン「はーーい♬ど〜〜もエリック・ブラックさーーんん♩」
エリック「ソルマン・ノルスタイン卿!!?」
そう言い終わるとノルスタインはエリックの首をガシっと掴み背後の壁まで叩き付けた。
ドンッ!
エリック「ガハッ!〜〜くるじい…!!」
ノルスタイン「Mr.ブラック?ワターーシは貴方に今〜〜から聞きたいことがあーーるのですが〜〜お時間よろしーーですかな〜〜?♪」
エリック「ぐ…!!一体私に何の用だ!?」
ノルスタイン「ン〜〜フフフ♪昨晩こちーーらに来ら〜〜れていた三人のおーーやこの話で〜〜す♫」
エリック「!!……それがどうした…!!」
ノルスタイン「我々の部下がアナ〜〜タのホテルの前でそのおーーやこにやられたんで〜〜あーーりま〜〜す♬」
エリック「……それで?…俺に何をしろと?」
ノルスタイン「そのおーーやこ三人を今〜〜すぐここに呼ーーんでいただけませ〜〜んか♪」
エリック「くっ……もし…その三人を呼んだら?…その三人はどうなる…?」
ノルスタイン「ン〜〜〜フッフッフッフ♬」
ノルスタインは不気味に笑うと左手から伽鍵礼符を取り出し、礼符がオレンジ色に輝き出した。
そして、そのまま左手を壁に向けたまま…
ドンッ!!!
一瞬の激しい音と共に壁に大きな穴を空けた。
エリック「!!?」
ノルスタイン「このよ〜〜にそのおーーやこの身体にお〜〜きな穴が抉ーーれてしまうかもし〜〜れませんよ??♬」
エリック「だったら……例え知ってても言わない…!!」
ノルスタイン「…!!」
ドン!
ノルスタインはその言葉を聞いた途端恐ろしい表情になり、エリックを再び壁に叩きつけた。
ノルスタイン「……たかがアンチステーーージの分際でこの〜〜私に逆ーーらうだな〜〜んて一体どーーんな思考回路な〜〜んでしょーーか!!♫」
エリック「ガハッ!?」
ノルスタイン「こーーん回は奴らの居場所が分かればゆる〜〜して上げようと思っていーーましたが予定へ〜〜んこーーで〜〜す♪」
ノルスタインはエリックの胸ぐらを掴み上げ、そのままトイレの床に水に沈み込む様に二人共消えていった。
そのしばらく後、扉の外では。
業者「おーーい!Mr.ブラック!!今硝子貼りの作業終わったよ!どこにいるの!」
業者の男は気付いていなかった。もうそのホテルにはエリック・ブラックがソルマン・ノルスタインに攫われてしまったことに___
____そして、赤いジープに乗ってシカゴの都市から出て行こうとしていた藍川光男は子供達二人に問いかけた。
光男「もうこの都市から出て行くけど、二人共思い残すことはないな」
竜賀「うん!」
源太「………」
竜賀ははっきりと返事をしたが、源太は何だか暗い表情のままであった。
光男「源太?どうした?どこか具合が悪いのか?」
源太「…おやっさん!やっぱり俺!ホテル『ローグ』を放っておけない!」
光男「それは……あそこに戻ってホテルを守りたいってことか?」
竜賀「昨日も言っただろ…俺達があそこにいたら…」
源太「そうじゃなくて!あのホテルは昔っからブラックのおじさんとマーカス・ジャッジさんの思い出の場所だから!」
光男「マーカス・ジャッジ?」
源太「俺達がこの都市に来た時にすれ違ったあの男の人……あのホテルをエリックと一緒に育ててきたんだ」
光男「……」
源太「せめてエリックのそばにマーカスはいるべきだと思うんだ」
竜賀「そういうことなら俺からも頼むよ父さん」
光男「それはあくまで二人の問題であって俺達は部外者だぞ…って言っても聞かねぇんだろ?」
竜賀と源太は顔がパァっと明るくなり俄然やる気になってきた。
竜賀・源太「「ありがとう!」」
光男「そんじゃしっかり掴まっとけよ!」
車のハンドルを握り直し、アクセルを踏み込みスピードを上げて三人を乗せたジープはシカゴの都市の西から抜けるルートを変更して北に進路を変えた___
___薄暗い洞穴の中で鎖に繫がれて、手足が動かない状態になったエリック・ブラックは今自分がどこにいるのか状況を必死に掴もうとしていた。洞穴の中には蝋燭の火の灯りが薄気味悪く揺れているだけだった。
エリック「ここは一体……」
ノルスタイン「ここーーーはブルガ〜〜ント団のアジトのーー牢獄である暗黒穴蔵で〜〜す♪」
エリック「シャドウホール…?」
ノルスタイン「イエーーース♩ブルガント団の裏切〜〜り者や役立た〜〜ずをここーーでゴ〜〜ウ問する為の牢獄でーーす♬」
二人の声が響き渡る洞穴の広さに耳を傾け、ここがどこなのか必死に探ろうとした。
エリック「こんな馬鹿みてぇに広い牢獄に招待してもらえるなんて随分なV.I.P待遇じゃねぇか…」
ノルスタイン「こーーんな場所に閉〜〜じ込めーーているのにヨユ〜〜ですねーー♫」
エリック「………で?こんなとこでパーティーでもしようってか?」
ノルスタイン「ノーーンノーーーン♫貴方とこ〜〜こでパーーティするのはワタ〜〜クシではなくこのーー人た〜〜ちでーーす♪」
ノルスタインが牢獄の檻の外側を指差すと、そこにはトンプソン兄弟がいた。その二人の手にはそれぞれ鞭が握られていた。
エリック「なんだテメェらいたのか…」
ジェイコブ「さぁ…答えてもらおうかおっさん…」
グレイブ「あのクソ生意気餓鬼二人と偉そうな男…三人の行方についてな」
檻の中に入って来た二人の目は竜賀達への復讐に燃え上がっていた。
エリック「残念だが…あのホテルの中にはあの三人はどこにもいねぇぞ」
グレイブ「そんなことは知ってんだよ」
ジェイコブ「さっきボブ・カッセルとロドリック・サーキース、ビル・ゴーントがゲンタ・サワタリって餓鬼にやられたって情報が流れてきてたんだからな!」
エリック「……ハッ!…ハーハッハッハッハッハッハ!!こりゃいい!!傑作だ!!実に滑稽だな!!」
突然大声で笑い始めたエリックを見てイラついたジェイコブはエリックの胸ぐらを掴みかかった。
ジェイコブ「野郎…!!何が可笑しいんだ!!」
エリック「ハッハッハッハッハ!!可笑しいさ!!これが笑わずにいられずか?このシカゴの大都市を支配しているあのブルガント団が餓鬼一人も満足に倒せないどころか!三人共良いようにやられたんだぞ!?これが笑わずにいられるか!!?」
この言葉を聞いたジェイコブは顔を血の様に真っ赤にして、鞭を握っている手をプルプル小刻みに震わせていた。
ノルスタインは少し眉をひそめ、グレイブは怒りに顔を歪めていた。ジェイコブは完全に逆上していた。
ジェイコブ「黙れ!!ジジイ!!黙らねぇとその汚い口を一生きけなくしてやるぞ!!!」
エリック「ハッハッハッハッハ!!これは随分面白くない脅しだな!俺を殺せばアイツらがここに来てくれるとでも本気でそう思っているのか?」
ジェイコブ「なぁにぃ…!!?」
グレイブ「貴様と奴らはグルではない……と、そう言いてぇのか?」
エリック「アイツらはただ日本に帰るついでにこのシカゴの都市に寄っただけのただの観光客さ…それ以上でもそれ以下でもない…」
ジェイコブ「だったら何故あの餓鬼共は俺達と戦ったんだ!?」
エリック「それが分かんねぇからテメェら適能者はサイコパスだとか言われんだろうが…」
ジェイコブ「!!?何ィ…!!」
エリック「テメェらがどんな気分だったかは知らねぇがな……道端でいきなり爆発なんか起こしたら、その周りに迷惑がかかるってことも分かってねぇから…あんな風に喧嘩を売られたんだろうが?」
グレイブ「そんじゃ悪いのは全部俺達だってか?」
エリック「差別を受けてるなんて主張は、言い出したモン勝ちじゃねぇんだよ……テメェら適能者側も完全に非があることを認められねぇんじゃずっと主張を潰され続けんのは当たり前だよな?」
ジェイコブ「さっきから聞いてりゃ好き勝手言いやがって!!そんなに殺されてぇか!!?」
エリック「殺したけりゃさっさと殺せよ…こんな老いぼれの生命一つ奪って気が済むんならな…そんなことでお前らの心が満たせるんだったらな!」
グレイブ「心を満たす?一体何が言いたい?」
エリック「お前らブルガント団がやってることをずっと続けていても絶対お前らが思い描いている様な幸せはやって来ねぇってことさ…」
グレイブ「俺達がやっていることが間違っているとでも…?だが忘れたとは言わせねぇ!!俺達適能者を一番最初に迫害し始めたのは紛れもなく無適能者らだろ!!!お前達がそうさせたんだ!!!真っ先にな!!!」
エリック「……ああ、その通りだな」
グレイブ「ようやく無適能者らの過ちを認めたか…」
エリック「俺は思い知ったよ……お前らが俺のホテルを襲った夜…あの子供達と話したよ…こんな人生枯れかけのジジイの心に寄り添ってくれた時の喜びを……」
ジェイコブ「……何が言いたい?」
エリック「どれだけ人を傷付ける能力を持とうがそれが幸せに繋がることはないんだってな…本当の幸せってのは人が互いに理解し合えた時に生まれるんだってことを……俺達無適能者に本当に足りなかった物…」
グレイブ「………」
エリック「それはお前達の心に寄り添おうとする優しさ・強さ・勇気そのものだってことさ」
ノルスタイン「おお〜〜〜なーーんともかんど〜〜う的なおはなーーしですね〜〜♪」
二人がエリックの話に耳を傾けていると突然ノルスタインが声を上げてきて、三人共飛び上がるほど驚いた。
ノルスタイン「そーーんな夢ものが〜〜たりなお話ーーしで我わ〜〜れが動くとでもおーーもいで〜〜すか?♫」
エリック「……はっ…お前はどんなことを言われようが自分の目的達成の邪魔になる意見には最初から聞く耳を持たねぇってか?」
ノルスタイン「おお〜〜酷い言われよーーうで〜〜すねーー♩」
エリック「どんな世界にも黒幕ってのがいるもんだがお前はその典型だなソルマン・ノルスタイン?」
ノルスタイン「ン〜〜〜フッフッフッフッフ…♫…さぁトンプソン兄弟この男の口車にの〜〜らずにじーーんもんをお願いしま〜〜〜すねぇーー♪あの子ど〜〜も達が我々のどーーほ〜〜を再び襲うかもしーーれませ〜〜ん♬必要なじょ〜〜ほ〜〜を早ーーく集めなければ〜〜♪」
ジェイコブ「お、おお!!」
グレイブ「………」
グレイブは鞭を構え、エリックに向かって鞭を振り下ろした。
バチィィ!!!
____シカゴの都市北部___
竜賀「___ってかなぜまず情報収集をせずに何の宛もなく人を探そうとしてんだ俺ら?」
源太「まぁとにかく良いじゃねぇか北を探せば良いんだよ北!」
光男「こういうの行き当たりばったりって言うんだぞ源太?」
ジープでとにかく北に向かう途中で源太がお気楽に言い放って、他の二人はげんなりしていた。
源太「まぁ北に向かって進んでいく途中ですれ違っていく人に片っ端から聞いていけば良いんだよ!」
竜賀「あのな…そんなやり方でやっていてマーカス・ジャッジさんに会える確率何%なんだよ」
光男「……いやもうここまで来た以上は絨毯爆撃作戦とまではいかないが手当たり次第聞いていった方が良いかもしれん」
源太「さっすがおやっさん!話が分かるね〜!」
竜賀「…しゃーない!手当たり次第聞いていくか…」
三人は道を歩いている通行人を見つけたらすぐに声をかけていこうとした。
しかし、シカゴの都市と比べ遥かに歩いている人の人数が少なかった。なので見つけ次第すぐ話しかけるのはできたのだが、圧倒的に母数が少ないという事態に陥ってしまっていた。
光男「そうですか…ありがとうございます。時間を取っていただいて!」
通行人「…オイ、アンタ…そんなに人を探しているんだったらシカゴシティに行ってみたらどうだ?こんなとこをあたるよりあっちなら情報が集まるぜ?」
光男「シカゴの都市から出て来たんですよ、その人……あの都市が危険だからってことで…」
通行人「ああ…道理でな……あの都市から逃げて来た奴を探してるってことかい?」
光男「え…ええ」
源太「おじさん何か知ってるの?」
通行人「いや!アンタらの探してる男についてじゃなくてな……あのシカゴの都市についての噂なんだがな…」
その通行人の男が周りをキョロキョロと見回して辺りに他人がいないかを確認してから光男に向かって囁く様に話しかけた。
通行人「あの都市には悪い噂があってな……どうやらマクシム連合とブルガント団が裏で繋がっているんじゃないかっていう噂が…」
光男「!!…その話詳しく聞かせてくれませんか!?」
通行人「しーーっ!!!」
光男、源太そして竜賀はその話について顔を真っ青にして聞いた。しかしその男は口の前に人差し指を立てて静かにするように訴えかけた。
通行人「声が大きい…!!!」
光男「…すみません…!!」
通行人「はぁ……俺が聞いた話だが、この話を聞いた以上はもうシカゴには関わるな…もうあそこは無適能者の住める安全な都市なんかじゃなくなるんだからな」
竜賀「それってもうシカゴには戻ってくるなってことですか?」
通行人「ああ……もうあの都市は伽霊能力と金の力に負けた欲望渦巻く絶望郷になっちまったんだよ」
その話をする時の男の顔がどことなくマーカス・ジャッジに|似ていると源太は思った。この人も今の世界に絶望してしまっているのだろうか____
___とある花屋の店内にて、
メリッサ「ねぇお母さん?」
母親「どうしたのメリッサ?」
メリッサ「あの人…私達を助けてくれたあのお兄ちゃんこの都市から出て行っちゃったのかな?」
母親「さぁ…どうなのかしらね?でも生きていれば必ず会えるわよ…」
メリッサ「…そうだね!」
???「すみません!」
母娘で話しているところへ白色の制服を着ている男が店の外で立っていた。
母親「あら!マクシム連合の人が…!今日の徴税の件についてだわ…」
連合員「こんにちは!」
母親「こんにちは!今日の徴税分ですね?」
連合員「ええ!いつもありがとうございます!」
そして母親はお金の入った封筒をマクシム連合の連合員に手渡した。
連合員「……はい確認完了しました」
そして連合員は封筒を光の輪の中に入れ、自身もその場から瞬間移動した____
____北に向かうと徐々に人が増えてきて話を聞ける機会も増えてきた。
光男「………そうですか…お時間とっていただきありがとうございました」
光男は道ですれ違った人にマーカス・ジャッジの情報を聞いていったがまだヒットが出ていない。源太も人に聞いてきたところだった。
源太「おやっさん!全然ダメ!!」
光男「ここまで来るとこの場所には情報がないのかもしれないな……場所をもっと変えた方がいいかもしれん」
源太「うん…」
二人はさっき道端であった男の話を聞いて焦燥感に駆られていた。急いでマーカスに会わなければ、もしかしたら……。そんな想像が冷静さを失わせてしまう。
光男「…ところで竜賀は?」
源太「ああ、それなら確かあそこらへんで」
竜賀「父さーーん!!!源太ーー!!!見つかったぞーー!!!マーカス・ジャッジの居場所!!」
光男・源太「「!!?」」
思わぬところで竜賀が当たりを引いたのに驚いて目を丸くした。急いで駆け寄って竜賀が話しかけていた男女カップルに話を聞きに行った。
光男「マジか竜賀!?」
竜賀「うん!この二人が知ってるって…」
光男「マーカス・ジャッジって人どこにいるか知っているんですか?」
女性「ええ…今朝泊まってたホテルの近くに昔お金持ちのお客向けの宿があると、ホテルマンの人に紹介してもらったのよ」
男性「そこを昔運営していたのがエリック・ブラック、マーカス・ジャッジって言われていたらしい」
光男「そのホテルの名前って…」
男性「確か…レイク・ジェニーバのホテル『アーチ』って名前だったはず…今は全く違う名前で、経営権が別の人が運営してるんだがな」
光男・竜賀・源太「「「ありがとうございました!」」」
そのホテルの名前を聞いた三人は条件反射的に車に駆けていった。
To Be Continued