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#41 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第28話「お別れと旅立ち」

 藍川あいかわ光男みつお竜賀りゅうがはホテル『ローグ』からすこはなれたところにおいてあったジープに近付ちかづいた。

光男みつお「えーーっと……たしか…ここにカギはいってるはずだけど…」

竜賀りゅうが「…もしかしてくしたとかうんじゃ?」

光男みつお「お!…あったあった♪…ほらよ」

 光男みつおはポケットのなかからくるまカギしドアをけた。

竜賀りゅうがとうさん…源太げんたはどうするの?」

光男みつお「ん?…まっ…そのままかせておいてやりな…」

竜賀りゅうが「またれてかなかったっていたら、おこるかもよ?」

光男みつお「まぁまぁ…『サウザンド・ダイ』にはあのとしのアメリカじんるには刺激しげき強過つよすぎるとおもったしな」

竜賀りゅうがかたなについてケリガン・コーエンさんにきにくんでしょ?べつによくない?」

光男みつお「あのひとみせにはこの藍風あいかぜだけじゃなく、じゅう沢山たくさんあったから…わる知恵ちえでもいたら大変たいへんかな〜てな」

竜賀りゅうが「……はぁ…あと絶対ぜったいおこられるけど…それならあまんじてけるしかないな…」


  _____千の死サウザンド・ダイ竜賀りゅうがたち到着とうちゃくした。

光男みつお「さてと…これもチェックしてもらうとして…竜賀りゅうがきたいことがあるんだよな?」

竜賀りゅうが「うん…」

 みせまえときにはとびらには『close』の看板かんばんていた。

光男みつお「やっぱりな…」

竜賀りゅうが「もしかしたら…ないかな?」

 竜賀りゅうがとびらをできるだけおおきなおとようたたき、大声おおごえけた。

竜賀りゅうが「ごめんくださーーい!!!Mr.ミスターコーエン!!!」

 するとしばらっているととびらおくから足音あしおとひびわたった。徐々じょじょ近付ちかづいて足音あしおとおだやかではなかったので竜賀りゅうが光男みつおかお見合みあわせ、いそいでかたなカバン地面じめんいて両手りょうてげた。

   バンッ!!

 物凄ものすごいきおいでとびらひらいたとおもったらみせ門番もんばん回転弾銃ライフルかまえてた。

門番もんばんA「だれだ!!」

光男みつおわたしですよ…えず…いてじゅうろしていただけませんか?ジェントルマン?」

門番もんばんA「おお!!?…Mr.ミスターアイカワではありませんか!?これはとんだ失礼しつれいを!!ささ!なかへ!!」

竜賀りゅうが「……はじめてったとき全然ぜんぜん対応たいおうちがいますね?」

門番もんばんA「それもそうですよ!!貴方アナタがたはこの都市まちシカゴをすくってくださった英雄えいゆうでございますから!!」

 二人ふたりかたなカバンみせなかはいってった。みせなかには武器ぶき所狭ところせましとならんでいたが竜賀りゅうが光男みつおはそこにはもくれず、案内あんないされるままみせおくはいってった。

門番もんばんA「師匠マスター!おつかれのところもうわけないんですが、もうひと仕事しごとましたよ!」

ケリガン「なんだ?一体いったい…」

 おく部屋へやとびらからつかれたようこえしながら筋肉きんにく隆々りゅうりゅう白人はくじん大男おおおとこた。そのおとこ二人ふたり客人きゃくじんかおると途端とたんかおがパァっとあかるくなった。

ケリガン「おお!!またすぐにてくれるとは!!シカゴの英雄えいゆうたちよ!!」

光男みつお「コーエンさん…単刀直入たんとうちょくにゅうにおねがいがあってきました…」

ケリガン「いよ…おれにできることならなんなりと!」

光男みつお今朝けさわったばっかりのブルガントだんのシカゴ襲撃しゅうげき事件じけんで、貴方アナタからあずかっていた大切たいせつかたな実戦じっせんでかなり使つかってしまいました。そのかたなのメンテナンスを貴方アナタにおねがいしたい」

 光男みつお刀袋かたなぶくろから藍風あいかぜし、ケリガンにわたした。

ケリガン「そんなことか…いよ、そこにテキトーにけてっていてくれ」

 ケリガンは作業台さぎょうだいさやからいた藍風あいかぜき、椅子イスすわってかりにらしながら刀身とうしん状態じょうたいていた。竜賀りゅうが光男みつおはケリガンがした椅子イス腰掛こしかけ、ケリガンの様子ようす見守みまもっていた。

 そこから沈黙ちんもくつづき10ぷんったくらいのタイミングでケリガンはひと深呼吸しんこきゅうをした。それを合図あいず二人ふたりともかおげた。

光男みつお「どうでした?」

ケリガン「うん…かぎ状態じょうたい良好りょうこう目立めだった刃毀はこぼれもかった」

 その言葉ことば光男みつおはホッとしたよういきいた。その様子ようすたケリガンはニヤッとわらいながら光男みつおった。

ケリガン「ははは…当然とうぜんかたなけん心得こころえたない素人しろうとふるえば、ただてつ棒切ぼうきれにがってしまう…しかし、一度ひとたび達人たつじんにぎればそれは“芸術品げいじゅつひん”とる」

光男みつお「え?」

ケリガン「おれ師匠ししょうであった沢城さわしろ大吾郎ダイゴロウ言葉ことばさ…かたなかざっても格好良カッコいい。しかしやはりかたなえらんだぬし使つかっているときもっとかたな本来ほんらいあるべき姿すがたなんだとおしえだ…」

光男みつおおれ師匠ししょうから剣道けんどうまなんだときとはまったちがおしえですね」

ケリガン「ほう?…それはどんなおしえかな?」

光男みつおけん凶器きょうき剣術けんじゅつ殺人さつじんじゅつかたなとはれるもの生命いのちうばためまれてきたもの…そして剣士けんしとはその運命うんめいあやつものである…と」

ケリガン「………興味きょうみぶか言葉ことばだね…けんひところためまれてきたと……」

 ケリガンはにぎっていたかたなうつし、刀身とうしんをじっとながらつぶやいた。

ケリガン「たしかにそうかもしれないな…藍風コイツ本当ほんとうひともとめてんのかもしれねぇな…かたなぬしえらぶ」

 ケリガンはがって光男みつおかたなさやわたした。

ケリガン「かたなこえおれにはこえねぇ…しかしもしそのこえけるとすれば、きみとお藍風あいかぜひともとめてんのかもしれねぇ…それがこのかたな運命うんめいであり、のぞみかもしれん」

 光男みつおかたなさやおさめて、刀袋かたなぶくろれた。

ケリガン「このかたな光男君キミえらんだのは、藍風コイツ満足まんぞくさせられる技術ぎじゅつっている剣士けんしようやつかったからかもな」

光男みつお真実しんじつはまだかりません…しかし、それが本当ほんとうだったとしてもわたし人間にんげんころすつもりは一切いっさいいので…」

ケリガン「それがい」

竜賀りゅうがMr.ミスターコーエン」

ケリガン「!おおわすれていたよ竜賀りゅうがくん!」

竜賀りゅうが「あの…もうひとしいかたながあるんですけど…」

ケリガン「……いまっていないようだが…?」

 ケリガンは竜賀りゅうが手元てもとた。竜賀りゅうがみぎてのひらひろ霊媒印コモンベスタすと、伽鍵礼符キーカードした。ひかりはなちながら礼符カードかたな姿すがたわった。

ケリガン「なるほど…その霊具ギーツか…」

竜賀りゅうがまえときしかったんですけど、タイミングのがしちゃって…これをていただけませんか?」

ケリガン「…本来ほんらい霊具ギーツってうのはなぞちた道具どうぐだ…そのめられたちから理解りかいできるのは…そのぬしだけなんだがな…研究けんきゅう機関きかんでもねぇのに霊具ギーツ調しらべてくれなんてってきたのはおまえはじめてだぜ」

 ケリガンはかたなると、さやからゆっくりかたなした。するとケリガンのまれるよう刀身とうしん釘付くぎづけになった。

ケリガン「…………………なんだこれは……」

 ケリガンはかたなるとまゆせて、やいば怪訝けげんそうな表情ひょうじょうていた。

光男みつお「………やはり……妖刀ようとうですか?」

ケリガン「そうとしか説明せつめいできんだろうな……しかもかなり悪質あくしつな…」

 ケリガンは慎重しんちょういろんな角度かくどやいばていた。

ケリガン「わるいがこれを一度いちど分解ぶんかいしてたしかめさせてもらえるかな?」

竜賀りゅうが「はい……」

 ケリガンはつか中央ちゅうおうにあった金具かなぐはずし、木槌きづち目釘めくぎはずつかから刀身とうしんぬの使つかってした。

 竜賀りゅうがはじめて自分じぶんかたな刀身とうしん部屋へやあかりにらされ不気味ぶきみかがやいていた。

ケリガン「たこともねぇ刃紋はもんだし……りがそんなにい…」

竜賀りゅうがりがい?」

ケリガン「そうだ…日本刀にほんとう大体だいたい湾刀わんとうつって刀身とうしん全体ぜんたいてき曲線状きょくせんじょうがっているもんだが、このかたなりがあんまりない直刀ちょくとうタイプ日本刀にほんとうだ」

竜賀りゅうが直刀ちょくとうタイプだと湾刀わんとうタイプとどうちがうんですか?」

ケリガン「湾刀わんとうタイプだと…たとえばはらときんでまったときかたな引く・・りながらかたなくことができる。つまりぎの攻撃こうげきつよいんだ。丁度ちょうどいまきみのおとうさんのにぎっている藍風あいかぜはオーソドックスな湾刀わんとうタイプだ」

 ケリガンが藍風あいかぜ指差ゆびさしてしめすと光男みつおさやからすこしだけき、刀身とうしんがり具合ぐあいせた。

ケリガン「それにたいして竜賀りゅうがっているこの直刀ちょくとうタイプときにも多少たしょうあじがあるかもしれんが、かなり刀身とうしんぐだからはらうよりは突く・・ほうちから発揮はっきするんだ」

竜賀りゅうがく?わざってこと?」

光男みつお剣道けんどうでもれっきとしたわざとしてはあるが、刺突つきわざだけをきわめる剣士けんしなんてたことがない」

竜賀りゅうが「でも幕末ばくまつ日本にっぽんでは刺突つき得意とくいとしていた戦闘せんとう集団しゅうだんがいたって」

光男みつお「ああ…新撰組しんせんぐみだな…戦術せんじゅつ鬼才きさい土方ひじかた歳三としぞうした“平刺突ひらづき”だな」

ケリガン「ヒラ…ヅキ?なんなんだそれは?」

光男みつお通常つうじょう剣術けんじゅつにおける刺突つきしたけるんですけど…」

 光男みつお藍風あいかぜ使つかってわざ説明せつめいはじめた。

光男みつお新撰組しんせんぐみ使つかっていた“平刺突ひらづき”はよこきにして刺突つきおこなうことで、かりけられても間髪かんぱつれずに横薙よこなぎの第二だいに攻撃こうげき変換へんかんすることができるんです」

 ケリガンはその説明せつめいをかなり興味きょうみぶかそうにっていた。自分じぶんかかわっている武器ぶきたいして使用者しようしゃがどんな使つかかたをしているのかになっているようだ。

竜賀りゅうが「そっか…それじゃ無理むりとうさんの真似マネをしようとせず、このかたなわざみがいていけばいのか…」

光男みつお「それと…おまえ身体からだ見合みあったわざをな」

 ケリガンはつか刀身とうしんもどし、さやかたなおさめるとかたな竜賀りゅうがかえした。

ケリガン「竜賀りゅうがいまかっているのはコイツは相当そうとう凶暴きょうぼう武器ぶきだ…ぬし意志いし無視むししてひと生命いのちうばってしまうかもしれない」

 竜賀りゅうがはその言葉ことばいた瞬間しゅんかんなにかをおもしてハッとした。ケリガンはその表情ひょうじょう見逃みのがさなかった。

ケリガン「なに心当こころあたりがあるんだな!?」

光男みつお「……Mr.ミスターコーエン…このは…このかたなひところしたことがあるんです」

ケリガン「いつ!?」

 ケリガンはけわしいかお光男みつおめた。

光男みつお丁度ちょうど十日とおかまえぐらいです…」

ケリガン「………」

光男みつお「この伽霊能力ギアルスキル目醒めざめたときぐらいのときにこのかたなあらわれたんです…でもこのはじめてにぎ真剣しんけんこしけて満足まんぞくあつかえなかったんです」

 竜賀りゅうがくら表情ひょうじょうになっていった。ケリガンはワナワナとふるえていた。なにいかりをおさけるようしゃべりかけた。

ケリガン「それで?…どうなったんだ?……つみひところしたとでも?」

光男みつお「いえ、ミーモスト一味いちみって伽霊能力ギアルスキル犯罪はんざい集団しゅうだんです。そいつらと戦闘せんとうになって最後さいご息子むすこころされそうになってたときだったんですよ」

 さっきまでいかりにふるえていたケリガンがコロっと表情ひょうじょうやわらかくなった。

ケリガン「なーーんだ!!そうか!!ミーモスト一味いちみか!!かったかった!!」

竜賀りゅうがおこらないんですか?」

ケリガン「つみ無適能者アンチステージころしてしまったんなら、それはゆるせねぇ事態じたいだったがミーモスト一味いちみなんてごろつき集団しゅうだんだったならかったよ…いち鍛冶かじ職人しょくにんとしてはけんかたな正義せいぎため使つかわれているんなら職人しょくにん冥利みょうりきるってもんだ」

光男みつお「……お気楽きらくだなぁ…」

ケリガン「でもきみらのいたいことも理解りかいできる。妖刀ようとうとは剣士けんしばれるものけんあやつるのではなく、けん使つかわれていただけなんてなさけないはなしだからな」

 ケリガンはなおってぐな竜賀りゅうがはなった。

ケリガン「竜賀りゅうが……これはおれ師匠ししょうっていた言葉ことばだ…妖刀ようとうとは天命てんめいまっとうする誉高ほまれだかつるぎであるってな」

竜賀りゅうが妖刀ようとうが!?だってのろわれているんですよ」

ケリガン「おれもその言葉ことば意味いみわからなかった…今日きょうきみつそのかたなるまではね」

竜賀りゅうが「このかたな?」

ケリガン「ああ…おれ妖刀ようとうってのはもっと不気味ぶきみはなっているとおもっていた。でもそうじゃなくて……そのかたなやいば刃毀はこぼひとうつくしいままだった…そして最高さいこうあじをずっとたもっている。れするほどにな」

竜賀りゅうが「こんなぬし意志いし無視むしして勝手かってうごして、無闇むやみ殺生せっしょうをするかたなうつくしいなんて…」

ケリガン「その結果けっかそのかたなぬしであるきみまもったじゃないか?ちがうか?」

竜賀りゅうが「それは……そうですけど…」

ケリガン「ぬしまもため勝手かってうごいた。刃毀はこぼひときない。あじ絶大ぜつだいたたかつづけているのにやいばうつくしさをずっと維持いじしている。そんなかたなつくれるなんてかたな鍛冶かじにとってはほこりだよ…たとえそれが“妖刀ようとう”と凡人ぼんじんおそれられようがな」

竜賀りゅうがかたな鍛冶かじの…ほこり…」

ケリガン「竜賀りゅうが。そのかたな名前なまえはあるか?」

竜賀りゅうが名前なまえ?そんなモノがあるんですか?」

ケリガン「あるさ!すべての霊具ギーツには名前なまえがそれぞれあるんだ!その名前なまえせるのはぬしである適能者デュナミストだけだがな…竜賀りゅうが、これからもっとつよ適能者デュナミストになっていけばいつかこのかたな名前なまえるかもしれん!それまでんだりすんなよ!」

竜賀りゅうが精進しょうじんします」

ケリガン「それと光男みつおくんおれ親友しんゆうにそのかたなかならとどけてくれ!それがおれねがいだ!たのんだぞ!それを使つかってたたかってもいから…その本物ほんもの藍風あいかぜをな」

光男みつお本物ほんもの?」

ケリガン「師匠ししょうおれにそのかたなたくときにそのことをはなしてくれたんだ…藍風あいかぜだけじゃない、沢城さわしろ大吾郎ダイゴロウさく七聖剣しちせいけんのある剣客けんかくであればノドからほどしい逸品いっぴんだ…だからそれをめぐっていくつものあらそいがこるだろう……6ぽん真打しんうちつかっているが最後さいごの1ぽん真打しんうちまぼろしとしてケリガン・コーエンがかくしておいてしいってな」

光男みつお「これがその真打しんうち…ってことは影打かげうちは!?」

ケリガン「そう…藍風あいかぜれなかった影打かげうち…つまり贋作がんさくいま日本にっぽんで3ぼん出回でまわっているらしい…なるべくはやくこの真打しんうち存在そんざいなかあかるみして安全あんぜん場所ばしょ保管ほかんしておいてしい」

光男みつお「それまでにこのかたなれたりしないかが心配しんぱいだけどね」

ケリガン「大丈夫だいじょうぶ…そのかたなぬし光男キミだとみとめている。そこはもっと自信じしんってい」

 ケリガンはそううとニコッとわらった。竜賀りゅうが光男みつおはケリガンの言葉ことばすこ気持きもちの整理せいりがつきくるまってホテル『ローグ』までもどった。


 もどってときには猿渡さわたり源太げんた食事しょくじわらせたあとだった。源太げんたはホテルの玄関げんかんホールで二人ふたりっていた。

源太げんたおれ内緒ないしょでまたサウザンド・ダイにってきたなんてズルぎるよ!!」

光男みつお「だって源太げんたずっとてたからな」

竜賀りゅうがおれらはただかたなのチェックをしてもらいにたずねただけだから」

源太げんたおれだって如意棒にょいぼうのチェックしてもらいにくぜ!!」

 そうやってギャーギャーさけんでいるところで源太げんたうしろ二人ふたりのマクシム連合れんごう隊員たいいん近付ちかづいてきた。

ルーカス「Mr.ミスターアイカワ」

メリアン「ご機嫌きげんいかがかしら?」

光男みつお「お!ルーカスとメリアンじゃないか!」

 二人ふたり光男みつおなにやら複雑ふくざつそうな表情ひょうじょうをしていた。

光男みつお「どうしたんだ?なん元気げんきさそうだけど」

メリアン「あの…もうわけありませんでした!!!」

光男みつお「え?」

ルーカス「我々われわれ勘違かんちがいで貴方アナタがた攻撃こうげきしてしまって!!それに息子むすこさんである竜賀りゅうがくんまで傷付きずつけてしまった!!」

光男みつお「ああ…そのこと?」

竜賀りゅうがべつにしてませんよ」

ルーカス「しかし!!そのせいで貴方アナタがたは!!」

光男みつお貴方アナタたちなにらされず自分じぶんたち任務にんむまっとうしようとした。それをとがめるつもりはありませんよ」

竜賀りゅうが二人ふたり源太げんた事情じじょうをちゃんと理解りかいしてくれてる。それでいま十分じゅうぶんですよ。な!源太げんた!」

源太げんた「うん!」

メリアン「そうってくれるのは有難ありがたいですが…」

 おもいのほか律儀りちぎだったルーカスに光男みつおすこおどろいていた。光男みつおはこのままでははなしまえすすまなそうとかんじて、あることをひらめいた。

光男みつお「それじゃあ我々われわれたのみをふたれてもらえませんか?」

ルーカス「!…どんなたのごとですか?我々われわれにできることであればどんなことでも!」

光男みつお「この源太げんたくなったことにしてもらえないですか?」

 光男みつお源太げんたかたつかんでった。

光男みつお「マクシム連合れんごうのインディアナ支部しぶ咄嗟とっさいたウソ大事おおごとにしたくないでしょうし、源太げんたはこのシカゴの騒動そうどうまれてんだことにしておけばそれ以上いじょうなにってこないとおもうんです」

ルーカス「それはいですけど……」

竜賀りゅうがなに気掛きがかりなことでも?」

ルーカス「それじゃあ源太げんたくんはどうするんですか?」

光男みつお「それは…我々われわれ一緒いっしょ日本にほんれてかえろうかな、と」

ルーカス「それは…正直しょうじきすすめできませんね」

メリアン「わたし同感どうかんです!いま貴方アナタがた一緒いっしょにこのれてけば目立めだぎてしまいます!」

竜賀りゅうが「え!?なんで!?」

ルーカス「いまシカゴでは藍川あいかわ光男みつおと、竜賀りゅうがうわさになってしまほど有名ゆうめいじんになっています…源太げんたくんんだとウソ情報じょうほうながしても、貴方アナタがた親子おやこそばにいるだけでインディアナ支部しぶにダミアン・シーベルトがきていることがバレます」

竜賀りゅうが「それじゃあ行方不明ゆくえふめいなら…」

メリアン「そっちのほう血眼ちまなこになってさがしにるでしょうね……」

竜賀りゅうが「そっか…」

 五人ごにんかんがようだまんだ。しかしそこにくちはさみにものがいた。

マーカス「かったらウチでそのあずかろうか?」

 その提案ていあん五人ごにん一斉いっせいかえった。そこには一仕事ひとしごとえ、ほっと一息ひといきついたマーカス・ジャッジがっていた。

ルーカス「いんですか??」

マーカス「ああ…親友しんゆうがいなくなっちまっておれ一人ひとりってかんじだし…かろうじて無事ぶじだったこのホテルをまわしていくには人手ひとでしいのさ」

源太げんた「それだったらうれしい!!おれ頑張がんばって仕事しごとおぼえるよ!!」

マーカス「そうか……それにコイツが一番いちばんきていることが確認かくにんできるうえに、そのインディアナ支部しぶうらをかくことができる絶好ぜっこう穴場あなばがホテルスタッフだからな」

メリアン「たしかに…んだって報告ほうこくけても一応いちおう調しらなおしそうではあるからかなら貴方アナタがた二人ふたりはマークされるでしょうね」

光男みつお「そんなタイミングで源太げんた俺達おれたちそばにいたら…」

ルーカス「勿論もちろん我々われわれ二人ふたりウソ報告ほうこくをしたことで処罰しょばつされ、貴方アナタがたみなころされるでしょうね…そうならないためにもインディアナ支部しぶあざむ必要ひつようがあります」

マーカス「そのためにシカゴ都市内としないのホテルのスタッフとしてはたらかせる……大分だいぶ紙一重かみひとえけにはなっちまうが」

竜賀りゅうが「でも日本にっぽんには『灯台下暗とうだいもとくらし』って言葉ことばもあるくらいだから…シカゴ支部しぶはなさきのホテルでお目当めあてのダミアン・シーベルトが呑気のんき仕事しごとしてるワケなんてないっておもうかも?」

メリアン「大分だいぶ希望きぼうてき観測かんそくになるわね…それでも一人ひとり行動こうどうさせるよりずっとマシか…」

光男みつお「マーカスさん…こののこと…よろしくおねがいします!」

マーカス「ああ…まかせておけ!このはいつか自分じぶんでホテルをてるところまでそだげるさ」

竜賀りゅうが源太げんた?それでもいか?」

源太げんた「うん!…いつかまたえるまでおれおれ成長せいちょうしていくよ!」

光男みつお棍術こんじゅつうで並行へいこうしてばしながらな?」

源太げんた「うん!!」


 _____必要ひつよう荷物にもつくるまわった光男みつお竜賀りゅうがはもうわすものはないかどうか確認かくにんしていた。

マーカス「本当ほんとうっちまうんだな?もっとゆっくりしていってもいんだぜ?」

光男みつお「いえ!ここにいま我々われわれがいるとなにかと状況じょうきょうわるくなりますんで…なるべくはやこうとおもってます!」

竜賀りゅうが「それに!僕達ぼくたちはや日本にほんきたいですし!」

レスリー「本当ほんとうに…なん御礼おれいえばいか…」

竜賀りゅうが「その気持きもちだけで十分じゅうぶんですよ!」

光男みつお「それでうんなら、アンタだけはってるっとおもうけど…インディアナ支部しぶにいるジョージ・マッカートニーっておとこ源太げんたさがしにはずだけど、それにかんしてはらないフリしてまもってください」

レスリー「はい。それについては責任せきにんってかれまもります」

メリアン「Mr.ミスターアイカワ…さっきのはなしなんですが…」

光男みつお「ああ…ふたねがいね…きみとおにいさんのウィルソンくん一緒いっしょにモートレートタウンにもどって両親りょうしんって挨拶あいさつしていってねがい」

メリアン「あの……そんなことでいんですか?」

 荷物にもつ作業さぎょうめ、メリアンのながらはなった。

光男みつおきみ大分だいぶあのご両親りょうしんのところにかおしてないんだろう?仕事しごといそがしいのを理由りゆうにして」

メリアン「!……やっぱり…両親りょうしんのことってたんですか?」

光男みつお「ああ…世話せわになっていたからね」

メリアン「この仕事しごといま適能者デュナミストとしてのわたしかがやける居場所いばしょだから…」

光男みつお「その気持きもちは理解りかいできるが…きみもウィルソンもちゃんと成長せいちょうできてはいないらしいな…」

メリアン「どういうことよそれ!私達わたしたちはマクシム連合れんごう能力のうりょくみがいて霊段階ステージをドンドンげてきた!それなのに!」

光男みつお両親りょうしんがその努力どりょくまったてくれないって?それはちがうぞ」

メリアン「え?」

光男みつお君達きみたちのご両親りょうしんはね、君達きみたち適能者デュナミスト霊段階ステージたかさとか、組織そしき軍人ぐんじんとしての地位ちいたかさなんて外側そとがわ部分ぶぶん評価ひょうかしてるんじゃない」

メリアン「どういうこと?」

光男みつお君達きみたち内面ないめん評価ひょうかしてるんだ…適能者デュナミストとしてではなく、メリアン・ベイカーっていう一人ひとり人間にんげん成長せいちょうを…見守みまもってるんだよ」

メリアン「私達わたしたちの…内面ないめん…」

光男みつお「ちゃんと一端いっぱし大人おとなとしてあの二人ふたりみとめられたいなら、“一人ひとり人間にんげん”としてやるべきことはちゃんとやれ…自分じぶんでやったことの責任せきにんらずわらせてるうちはまだまだ半人前はんにんまえだな」

メリアン「そんな…!!」

光男みつおおれにもそんな時期じきがあったよ…自分じぶんちから過信かしんしてぱしって、まわりの大人おとなたち迷惑めいわくばっかりけてたからな…きみはそんなふうにはなるなよ」

 メリアンは光男みつおはなし反対はんたい意見いけんをクッとんだ。するとそこへルーカスがやってきた。

ルーカス「丁度ちょうどいじゃねぇか!ここんところはたらきっぱなしだったから休暇きゅうかついでにおやっていよ」

メリアン「リーダーまで…」

光男みつお「ついでにおにいさんもれてな」

メリアン「あに仕事しごと没頭ぼっとうしてしてますので…」

ルーカス「おれうえたのんで二人ふたり休暇きゅうか取得しゅとくできるようにするから、おまえ兄貴アニキちからづくでモートレートタウンにれてって長期ちょうき休息きゅうそくれ」

メリアン「………わかりました…」

光男みつお「あの二人ふたり君達きみたち兄妹きょうだいしばらえなかったのをさびしくおもってたらしいから…しっかり二人ふたり我儘わがままってやってくれ」

メリアン「………はい」


 大人おとなたちがそんなやりりをしているなか竜賀りゅうが源太げんた大人おとなたちえない物陰ものかげかくれていた。

源太げんたなんだよ竜賀りゅうが?」

竜賀りゅうが源太げんたこれからおれはなばなれになっちまうだろ?だからまたえるまで…これ…」

 竜賀りゅうが右手みぎてから伽鍵礼符キーカードした。それは竜賀りゅうががこのたたかいでれた霊段階ステージ4フォー礼符カードであった。

源太げんた「これ…!!?」

竜賀りゅうが「その能力チカラ昨日きのうおれをずっとまもってくれたんだ…源太げんた大変たいへんかもしれないけど御守おまもりだとおもって」

源太げんた「でもこの能力チカラ竜賀りゅうがじゃないと使つかえないんだよ?」

竜賀りゅうが「うん!だからこれは源太げんた大切たいせつってて…そんでいつか大人おとなになったらこれをおれかえしにて」

 竜賀りゅうがはそううと源太げんた伽鍵礼符キーカードにぎらせた。源太げんたはそれを大切たいせつそうにって竜賀りゅうがぐにつめた。

源太げんた「………よし!!そんじゃおれもっとつよくなる!!つよくなって立派りっぱ適能者デュナミストになって竜賀りゅうが一緒いっしょたたかえるくらいになって!これかえしにくる!それまでにりゅうちゃんもつよくなってろよな!!」

竜賀りゅうが「うん!!!」

 二人ふたり少年しょうねんはおたがいににぎり、1まい礼符カードちかいをめた。いつかまたえるそのまでにつよくなると。

 そしてジープに二人ふたり出発しゅっぱつしようとした。その運転うんてんせきまどにレスリー・コーナーが近付ちかづいてた。

レスリー「ヘーイ…ほんっとうにっちまうのかい?しばらくシカゴにればいじゃないか?」

光男みつおったでしょ、俺達おれたちにはかえ場所ばしょがある…ここにはずっといられないですよ」

竜賀りゅうが「コーナーさん!みじかあいだでしたけど本当ほんとうにお世話せわになりました!貴方アナタえたことこころから光栄こうえいおもいます!」

レスリー「ありがとう竜賀りゅうが…またおう」

光男みつお「…源太げんたのことよろしくおねがいしますね」

レスリー「まかしてください」

 そして光男みつお竜賀りゅうが二人ふたりせたジープは瓦礫ガレキやまひろがるシカゴの都市まちをあとにした。さらなる試練しれん二人ふたりかまえているともらずに。


To Be Continued

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