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#22 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第9話「託された宝刀」

 真夜中まよなかのネオンにらされた大都市だいとしシカゴ。しかしそんな場所ばしょとはおもえないほど不気味ぶきみ薄暗うすぐらいしづくりのせまながいトンネルを二人ふたり双子ふたごおとこたちあしようあるいていた。

グレイブ「ジェイコブ?大丈夫だいじょうぶか?」

ジェイコブ「ぅ……ああ…」

グレイブ「あとすこしでアジトにく…だから頑張がんばれ」

 あたまからしたたちるおとこかたかついでいるのはあにであるグレイブ・トンプソン。あし満足まんぞくうごかせないほうおとうとのジェイコブ・トンプソン。

 二人ふたりともトンネルのおくまであるいていくと、とびらまえとびら独特どくとくのリズムでたたくと、小窓こまどきがおおきなふたつのがギョロギョロと二人ふたりとらえた。

門番もんばん合言葉あいことば

グレイブ「戦場せんじょうこそかねのなる

門番もんばんはいれ」

  ガチャッ!

 とびらカギけられ、門番もんばん二人ふたりいそいでまねれた。

 二人ふたりとびらなかはいると、そこには大理石だいりせき綺麗キレイととのえられたゆかしろはしらならべられており、たか天井てんじょうからげられていたランプが通路つうろあかるくらしていた。

 その通路つうろかたわらにあるかべあずけ、もたれかかっているオレンジいろかみおとこがグレイブにはなしかけた。

???「ヨーーー……これはこれは〜ハハハハハハ…トンプソンくんではあーーりませんか〜〜?そのあたまからながれてるのは…ホットドッグのケチャップではあーーりませんか〜〜?中々なかなかワタクシよう凡人ぼんじんには到底とうてい理解りかいおよばないファッションセンスをおーーちのようで〜〜!?」

グレイブ「ノルスタインきょう……相変あいかわらず…ふざけた口調くちょうだな」

ノルスタイン「オーーー…ソーリー…これはこれはおさわーーりになりましたか〜〜?しかーーし普段ふだんであればにもめーーないようなトンプソンくんが〜〜そのようこわーーいかおをなさーーるだなんて〜〜」

グレイブ「なにいたい…?」

ノルスタイン「きみたちトンプソン兄弟きょうだいをそこまでくるしめーーる宿敵ライバルぶに相応ふさわし〜〜い強敵きょうてきだった…とでもわけなさりたーーいのですか〜〜ワレらがボスに…??」

グレイブ「…ッ!!!」

  ドン!!

 グレイブのレーザービームがノルスタインのかお目掛めがけてはなたれた。しかしノルスタインはその攻撃こうげきをいとも簡単かんたんかわ飄々ひょうひょうとしたかお言葉ことばつづけた。

ノルスタイン「おお〜〜こわこわいでーーす!なんともヤバーーンなおかたで〜〜す!」

グレイブ「うっせぇぞ!!つぎまたその鬱陶うっとうしいくちひらきやがったらただじゃおかねぇぞ!!」

???「トンプソン!そこまでにしておけ!!」

 通路つうろでまたべつ雄々おおしいこえけるおとこおくからあらわれた。

グレイブ「スティーブン……」

 スティーブンとばれるそのおとこ英国えいこく騎士きしよう服装ふくそうをし、背筋せすじをピンとばしととのえられたオールバックの黒髪くろかみひげをした、いかにも軍隊ぐんたいのおえらいさんにしかえない風貌ふうぼうおとこだった。

スティーブン「グレイブ…苛立いらだ気持きもちをおさえてくれないか?いまはボスはちゅうなんだ。来客らいきゃくでマクシム連合れんごうのウイリー少将しょうしょうていらっしゃるんだ。ノルスタインきょう……そんなときひと揶揄からかよう口調くちょうひかえていただきたいとたのんでいたはずだが?」

ノルスタイン「オオ〜〜ソーリーソーリー……ワタクシけまーーすのでそのようこわ〜〜いかおをなさらな〜いでくださーーい」

スティーブン「……グレイブ…ジェイコブの治療ちりょうはとりあえずおれ医療いりょうチームにたのんでおく。おまえなにがあったのかボスに報告ほうこくしろ。ウイリー少将しょうしょうかえったあとでな」

グレイブ「了解りょうかい……」

 スティーブンはジェイコブの身体からだれると、ジェイコブの身体からだちゅうはじめスティーブンのうごきにわせて移動いどうしていったーーー


 ーーーしばらく時間じかんつとおくとびらひらき、しろ軍服ぐんぷくまとったネイビーいろかみおとこ部屋へやからてきた。そのとなりにスーツを片眼鏡カタメガネおとこかえりにっていた。

ウイリー「それでは…わたしはこれで失礼しつれいする」

???「ええ…ウイリー少将しょうしょう……これからもこの関係かんけいながつづようにおねがいいたしますね?」

ウイリー「あ、ああ……こちらもきみ組織そしき資本しほんりょく恩恵おんけいって、この地位ちいを“う”ことができたんだ。ではまた」

???「こちらこそ!」

 二人ふたりおとこはおたが握手あくしゅして、そこでわかれた。片眼鏡カタメガネおとこはウイリー少将しょうしょうくのを見届みとどけたあと部屋へやもどろうとした。

グレイブ「ボス!!Mr.ミスターアレックス・ブルガント!!」

アレックス「?」

 通路つうろっていたグレイブが、ボスらしき片眼鏡カタメガネおとここえけてめた。

アレックス「グレイブ……一体いったいなにがあった?おまえをそこまで苦戦くせんさせるてきだれなんだ?」

グレイブ「ッ!……シカゴのホテル『ローグ』のまえったんです!名前なまえはゲンタ・サワタリとリュウガ・アイカワです!二人ふたりとも適能者デュナミストです」

アレックス「…………」

グレイブ「おれおとうと攻撃こうげき一撃いちげきらわず俺達おれたちたおしたガキどもです」

アレックス「…とりあえずなかはなしこうか…」

 アレックスはグレイブを手招てまねきすると、グレイブはそれにしたがってなかはいっていった。

 その部屋へや黄金おうごん硬貨こうかかこまれていた。綺麗キレイならてられた金貨きんかまばゆひかりはなっていた。

アレックス「さっきのはなしだが……ガキってことは、子供こどもってうことか?」

グレイブ「え、ええ!……ゲンタってうガキは棍棒こんぼう使つかいで、もう一人ひとりのリュウガってガキが剣術けんじゅつ使つかいです!二人ふたりとも接近戦せっきんせんつよ機動きどうりょくたかいですが、遠距離えんきょりからの攻撃こうげきにはよわいので……」

アレックス「……で?」

グレイブ「え?」

アレックス「そこまでわかっていながら、なぜおまえらはそのガキどもいようにやられたんだ?たおせないワケはねぇよな?そこまで分析ぶんせきできてて」

グレイブ「それは……あっちがガキだったモンでこっちが油断ゆだんしちまって…」

アレックス「結局けっきょく理由りゆうはそこにあるんじゃねぇか?おまえらがてきまえにして相手あいて判断はんだんしていた結果けっかいまだろう?」

グレイブ「……!!」

アレックス「まぁ…そこの椅子イスにでもすわりな」

グレイブ「それじゃ」

 グレイブはアレックスの指差ゆびさした椅子イス腰掛こしかけるとなにやらばつける子供こどもように、ビクビクこわがっていた。

アレックス「なぁ」

グレイブ「はっはい!!」

アレックス「この金貨きんかどうだよ?中々なかなか出来できだろ?」

 アレックスはつくえうえいてあった金貨きんか一枚いちまいげ、それをグレイブにわたした。グレイブはあわててそれをると、金貨きんかられている文字もじ必死ひっした。しかしグレイブの意識いしき金貨きんかにはかっていなかった。グレイブのひたいからはものすごりょうあせていた。

グレイブ「………はぁ…はぁ……ッ!とっ!とっても!!とっても素晴すばらしい出来できだとおもいます!!」

アレックス「そうだろう!そうだろう!ハッハッハッハッハッッハ!!」

 グレイブはどもりながらもなんとか言葉ことばひねした。それをいたアレックスはわざとたからかにわらってせた。

アレックス「ハッハッハッハッハッハ!!……でもな?所詮しょせんどれだけ品質ひんしつのモンつくったってな……いやおうでも“偽物にせもの”だってことに気付きづかされんだよ…」

  ガッ!!

グレイブ「!!?ガハッ!!」

 そうった瞬間しゅんかん、アレックスは左腕ひだりうでをグレイブのクビまわはじめた。ジワジワとげる腕力ちからつよくしていき、グレイブはくるしさのあまりあたまなかしろになっていった。

アレックス「こうやって偽造ぎぞう通貨つうかつくつづけてるとよ……“偽金にせがね”だってバレんのがこえぇから必死ひっしになって品質クオリティこだわつづけてあたま狂っイカれちまいそうな毎日まいにちごすことになっちまうんだよ」

グレイブ「うううう……!!アレックスさん……!!ぐるじ…い……!!」

アレックス「でもそんなときふと気付きづいちまったんだよ……かねってのはどこまでこうが、ただのいしコロと紙切かみきれにしかならねぇんだってことになぁ…!!!」

グレイブ「あ……!!カハ……!!!」

 グレイブは手足てあしをバタバタさせ必死ひっし抵抗ていこうしようとするが背後はいごからの首絞くびしめにくるしむだけでどんどんちからけていくだけだった。

アレックス「元々もともとかね”に“ちから”があるんじゃねぇ…“ちからがあるもの”が“かね”を使つかわせるから……だからみんなだれもが“かねちから宿やどっている”とう“幻想げんそう”をるんだよ」

グレイブ「ウグ………!!」

アレックス「“かねつくがわ”の人間にんげん弱者じゃくしゃちからづくでだまらせてかね流通りゅうつうさせなきゃ意味いみねぇよな?グレイブ?テメェとテメェのおとうとがそのガキどもけちまったせいで、おれつくかね価値かちがっちまったんだよ!ここにある金貨きんかもただのいしコロにがっちまった」

アレックス「テメェみたいな馬鹿バカいま事態じたいわかるか?そのガキ二人ふたりごとききっちりシメられねぇヤツがいるブルガントだんなんかなんにもこわくねぇっておもわれちまうんだよ!テメェの醜態しゅうたいさらしたおかげでな!」

グレイブ「オ……エ……」

アレックス「テメェも適能者デュナミストだってんならシメるとこはきっちりシメてこいや!!!」

  ガン!!!

グレイブ「ガハ!!!……はぁぁ…!!はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…!!!」

 地面じめんたたけられたグレイブはようやく解放かいほうされて必死ひっしはい酸素さんそたそうと呼吸こきゅうをした。

アレックス「……チッ!ソルマン!!」

 アレックスがなかばキレながらびつけると、かべをすりけるようにノルスタインが部屋へやなかはいってた。

ノルスタイン「オオ〜〜おーーびですか〜〜??」

アレックス「グレイブこのバカがやらかしたしくじりのためにこのおれ直々じきじきることになった…」

ノルスタイン「まぁーーーなんてこ〜〜とでしょーーう?てきはいった〜〜いだれでーーすか〜〜??」

アレックス「都市としないのホテル『ローグ』ってとこにいるガキ二人ふたりらしい……このままブルガントだんをナメられたままにしてたまるか!!」

 アレックスはそのあととびら蹴破けやぶよう部屋へやった。ノルスタインはその様子ようすてしばらくしてそのあといてようあるいてった。

ノルスタイン「……シカゴこのまちもこれでわりでしょーーかね〜〜」


 ーーーーーー早朝そうちょうホテル『ローグ』にて、


竜賀りゅうが源太げんた「どりゃああああああ!!!!」

  ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!ガガン!!

光男みつお「おお!やってる♪やってる♪あさから稽古けいことは師匠ししょう冥利みょうりきるな〜!」

 藍川あいかわ光男みつお木刀ぼくとうかたかつぎながらホテルのにわ実戦じっせん稽古けいこをしているのを愉快ゆかいそうなこえげた。木刀ぼくとうたたかっている藍川あいかわ竜賀りゅうがと、木製棍もくせいこんたたか猿渡さわたり源太げんたはそのこえ気付きづいてめた。

源太げんた「あ!おはようございます!!」

竜賀りゅうが「!?おはようございます!!」

光男みつお「おはようございます!!今日きょう一段いちだんといい挨拶あいさつだねぇ……昨日きのうたたかてたのがそんなにうれしかったか?」

源太げんた「いやーーバレちゃいましたぁ〜?」

竜賀りゅうが「おい!そんなんじゃないけど」

光男みつお「いいよいいよ!そうやってひとつの成功せいこう体験たいけん自信じしんつなげていくってのは」

源太げんた「ホラ!おやっさんもこうってんだし!」

光男みつお「……だが成功せいこう体験たいけん邪魔じゃまするときもかなりあるからな」

竜賀りゅうが「ホレろ!そんな簡単かんたん油断ゆだんしていことじゃねぇんだ!」

光男みつお「ハハハ……まぁ昨日きのうたたかいは二人ふたりともわるかったとこもかったとこもキッチリ整理せいりして自信じしんになったとおもうよ…慢心まんしんじゃなくて、自信じしんにな」

 光男みつお身体からだばしながら準備じゅんび体操たいそうすすめていき、二人ふたりのもとへ近付ちかづいてた。

竜賀りゅうがとうさんさ……今日きょうはどうする予定よていなの?もうすぐでシカゴこのまちからくの?」

光男みつお「ん?…イヤ、ちょっとこの都市まち様子ようすてみようかなっておもってる」

源太げんた「え?この都市まちからかないの?」

 源太げんた不安ふあんそうなかおをしていたが光男みつおはそれをかせるようにやさしくかたりかけた。

光男みつお大丈夫だいじょうぶだよ源太げんた…なるべくはやくこの都市まちからようにするから…」

竜賀りゅうが「この都市まちなにしいものでもあるの?」

光男みつお「うん」

源太げんたなにしいの?」

光男みつおおれたたかため真剣しんけん…つまりはかたなだな。なるべく日本刀にほんとうほういけど」

竜賀りゅうが「やっぱり昨日きのうみたいにとうさんだけ丸腰まるごしってのは不安ふあんなの?」

源太げんた木刀ぼくとうがあるじゃん」

光男みつお木刀ぼくとうじゃ防御ぼうぎょ心許こころもとなさぎるからな……そこはなるべく真剣しんけんれておきたいんだよ」

竜賀りゅうが「でもアテはあるの?」

光男みつお「そりゃエリックさんにくのさ!おっ!うわさをすればナントやらだ」

 にわ部屋着へやぎはいってて、こすりながら欠伸あくびをしていた。

エリック「こんなあさはやくから、剣術けんじゅつ訓練トレーニング?」

光男みつお「いつもの日課ですよ!あさ人間にんげん集中しゅうちゅうりょく発揮はっきしやすい時間じかんたいにキツめの稽古けいこをすると技術ぎじゅつきやすいんですよ!」

エリック「そっか…そりゃいけど…今日きょうはどうするんだい?この都市まちからくのかい?」

光男みつお「それもあるんですが……この都市まち鍛治屋かじや武器屋ぶきやはありませんか?」

エリック「え?……そりゃあるにはあるが……なんだい?無適能者アンチステージとして武器ぶきいのがこわくなったのかい?」

光男みつお「ええまぁ……あんなに適能者デュナミスト物騒ぶっそう規模きぼ破壊力はかいりょくっているんであれば、ぼく自身じしんいまのままじゃ息子むすこたちなんたすけにもならないので……」

エリック「かった……そんじゃあ武器屋ぶきやをいくつかってるから、そこにくとい!かなり拳銃けんじゅう機関銃きかんじゅうそろってるらしいから…」

光男みつお「ああ!いや!!…あの…」

エリック「どうした?」

光男みつおしいのはピストルけいじゃなくって…けんなんですよ…できればかたないので」

エリック「はぁ!?けん!?光男みつお!!アンタ正気しょうきかい!?そんなもんじゃ息子むすこどころか自分じぶんいのちだってまもれやしないぜ!!」

光男みつお「いえ…じゅう使つかれていないので、馴染なじぶか武器ぶきほういんです」

エリック「………アンタがそううんなら……とりあえず心当こころあたりのあるとこに連絡れんらくして、紹介状しょうかいじょうもアンタたちすよ」

 エリックは言葉ことばんで、光男みつお要望ようぼうどおりにするとはらくくった。光男みつおはその言葉ことば深々ふかぶかあたまげた。

光男みつお「ありがとうございます」


光男みつお「ーーーーーここか…」

 光男みつおくるまりながらそうつぶやいた。シカゴの都市まち目立めだたない路地ろじすこはいったすぐそこにさがしていたみせがあった。

 ーーーー鍛冶屋かじや『サウザンド・ダイ』ーーーー

竜賀りゅうが「“千のサウザンドダイ”…か……カッコいいんだか、物騒ぶっそうなんだか」

光男みつお「まぁまぁ…これかられるものかんがえたらかわいい名前なまえじゃないか…」

 みせ自体じたい鉄筋てっきんコンクリートでできた頑丈がんじょうなバーのよう雰囲気ふんいきしていたが、みせ内側うちがわからは異様いよう空気くうきただよっていた。

源太げんた「こんなところに本当ほんとうしい武器ぶきがあんのか?」

竜賀りゅうが「さぁね?」

光男みつお元々もともと日本にっぽんにあるよう骨董品こっとうひん尚且なおかつレアな品物しなものだからな……駄目ダメ元々もともとかもしれん」

竜賀りゅうが「そんじゃここで大人おとなしくくるまてろよ」

源太げんた「はぁ?せっかくだし!おれみせはいりたいっての!!」

竜賀りゅうが我儘ワガママうなよ……くるまなかには食料しょくりょうたび必需品ひつじゅひんやまようにあるんだぞ!だれかが監視かんししてなきゃ駄目ダメだ!」

源太げんた「だったら竜賀りゅうががやれよ!」

竜賀りゅうが日本刀にほんとう見本みほんいまっているのはおれなんだよ……それにおまえだけじゃなくてつかってこまるのはおれとうさんも一緒いっしょなんだからリスクも一緒いっしょだ」

光男みつお「そういうことだ……けどもし本当ほんとうにやばくなったらこのからはなれてもいいからな」

源太げんた「……かった」

光男みつお「ありがとう…マクシム連合れんごうまえかえってくるのをいのっといてくれ」

 それだけのこすと光男みつお竜賀りゅうがあしみせ入口いりぐちまではしってってしまった。源太げんたくるまなかかがめながらいのっていた。

源太げんた「マジでいそいでくれ二人ふたりとも…」


 ーーーーサウザンド・ダイの入口いりぐち近付ちかづいたとき突然とつぜんとびらひら二人ふたりばしそうになった。

光男みつお「おおう!??」

竜賀りゅうが「うわあ!??」

 とびらうちがわから屈強くっきょう大柄おおがらなスキンヘッドおとこた。いかにも自分じぶんたちはこのみせ門番もんばんですと主張しゅちょうするかのよう腕組うでぐみして光男みつおまえふさがった。

門番もんばんA「なんようだ?」

門番もんばんB「子供こどもれていればあやしがられないとおもっているのか?」

光男みつお「……はぁ…こんなとこで喧嘩ケンカしたくはいんですよ…」

 光男みつおはポケットのなか突っ込ツッコんだ。門番もんばん素早すばやうごきでこしのホルスターにあった拳銃けんじゅうき、光男みつおあたまけた。しかし光男みつおはそれにどうじずポケットから手紙てがみし、それを門番もんばんおとこにゆっくりした。

光男みつお「エリック・ブラックさんからの紹介しょうかいでここにた。これがその証拠しょうこです」

 門番もんばんたちまるくしておたがいにかお見合みあわせたが警戒けいかい一切いっさいかず、一人ひとり手紙てがみをゆっくり手紙てがみ中身なかみ確認かくにんした。

門番もんばんA「………確認かくにんした。こちらへどうぞ」

 そういうともう一人ひとり門番もんばん拳銃けんじゅうろし入口いりぐちへのみちゆずった。光男みつお竜賀りゅうがにアイコンタクトをみせなかはいってった。


 ーーーーみせなかすべてのかべにズラッとてかけられている拳銃けんじゅう機関銃きかんじゅう重火器じゅうかき所狭ところせましとならんでおり、様々さまざま武器ぶききゃくむかえるつくりになっていた。

 門番もんばん一人ひとり入口いりぐちでまた待機たいきして、もう一人ひとり門番もんばん光男みつお竜賀りゅうが二人ふたりみせのカウンターにまで案内あんないした。

門番もんばんA「このみせのリーダーはこのおくにいます。いてきてください」

光男みつお「ありがとうございます」

 そのまま門番もんばんうしろいてカウンターのおくにあるとびらなかはいってった。

  カーン!カーン!カーン!

 そこにはこれまた筋骨隆々きんこつりゅうりゅう白人はくじんおとこ巨大きょだい釜戸かまどまえてつ作業さぎょうをしていた。

門番もんばんA「リーダー!れいのお客様きゃくさまれてきました」

光男みつおMr.ミスターケリガン・コーエンですね?」

 ケリガン・コーエンは作業さぎょううしろかえ光男みつおかおつめ、さっきまでの無表情むひょうじょうくずして気難きむずかしそうなかおけた。

ケリガン「ああ……アンタらか…Mr.ミスターブラックのってた客人きゃくじんってのは…」

光男みつお「ええ……藍川あいかわ光男みつおいます。こっちはわたし息子むすこ竜賀りゅうがです」

竜賀りゅうが藍川あいかわ竜賀りゅうがいます!よろしくおねがいします!」

ケリガン「元気げんき餓鬼がきだな……だがおれはあんまり世間せけんばなしにはうとくってな…興味きょうみいからあんまりはなしはずまねぇぞ」

光男みつお「……今日きょう我々われわれがここに理由りゆう事前じぜんMr.ミスターブラックから連絡れんらくっていますよね?」

ケリガン「ああ……おれじゅう以外いがい武器ぶきもらいたいそうだな?」

光男みつお「ええ……わたしたち親子おやこじゅう社会しゃかいとは随分ずいぶんえん世界せかいごしていたものなんでね、じゅうまった使つかれていないんでおどしにもならないんですよ…」

ケリガン「……ほう?……たところ二人ふたりとも東洋人オリエンタルえるが間違まちがいないかな?」

光男みつお「ええ…日本人ジャパニーズですよ」

 ケリガンはその言葉ことばいた途端とたんかおがパァっとあかるくなり、口数くちかず一気いっきえた。

ケリガン「おお!!マジか!?おれむかし日本にっぽんってたことがあるんだぜ!!」

光男みつお本当ほんとうですか!?」

ケリガン「ああ本当ほんとうさ!!こりゃきゃくたもんだ!!おれむかし日本にっぽん冥臥めいが連合れんごういのちすくわれてから人生じんせいわったんだからな!」

竜賀りゅうが冥臥めいが…?連合れんごう??なんですかそれ??」

ケリガン「おん?らねぇのか小僧こぞう冥臥めいが連合れんごうえば日本にっぽん唯一ゆいいつ適能者デュナミスト組織そしきじゃねぇか!おれむかし冥臥めいが連合れんごうのダイゴロウっておとこたすけられてな!そのひとからいま武器ぶきづくりの基礎きそ知識ちしきおそわったのさ!」

光男みつお「そうだったんですね!」

ケリガン「ああ!………そうか日本人ジャパニーズか…ってことは御所望ごしょもうしなってのはじゅうではなくアレ・・だな?」

 ケリガンはすこまゆをイタズラっぽく上下じょうげうごかしながら光男みつおつめた。

光男みつお「もちろん我々われわれ親子おやこ剣士けんしですのでけんです!できれば日本刀にほんとうで!」

ケリガン「だろうな!!はなしがようやくかるきゃくてくれてありがてぇよ!ってろよ!」

 ケリガンはいきおいよくがり、部屋へやすみいてある宝箱たからばこ近付ちかづいていき胸元むなもとからカギし、それを光男みつおせびらかしながらニヤニヤしてきた。

ケリガン「かぜうわさではな……日本にほんのある剣士けんしならノドからるほど逸品いっぴんだからな…コイツは」

 ケリガンが宝箱たからばこをそのカギひらき、おもそうなふたをゆっくりげた。ケリガンはおおきく深呼吸しんこきゅう緊張きんちょうかんちながらゆっくりはこそこ両手りょうてれていった。

 ケリガンが宝箱たからばこからしたのは、しろきぬぬのかった刀掛かたなかけだった。

 竜賀りゅうがはそれを背筋せすじがゾクゾクした。光男みつお緊張きんちょうしたかおおく興奮こうふんれていた。剣士けんしであれば条件じょうけん反射はんしゃてき反応はんのうするこれは、

竜賀りゅうが真剣しんけんですか……!!?」

ケリガン「ああ…!!だがそこいらにあるナマクラのレプリカやハンパもんじゃねぇ…正真しょうしん正銘しょうめい本物ほんもの真剣しんけんだ」

光男みつお一体いったい……だれった…逸品いっぴんなんですか?」

ケリガン「さっきもったがな、おれ師匠ししょうたるひと……沢城さわしろ大吾郎ダイゴロウ渾身こんしん七作しちさく沢城さわしろ大吾郎ダイゴロウさく七聖剣しちせいけん』のうち一振ひとふり『聖剣せいけん藍風あいかぜ』だ」

光男みつお「……なぜそんなすご作品さくひんわたしなんかに?一応いちおう剣術けんじゅつ心得こころえっているとはえ、らずのあか他人たにんわたしにそんな大切たいせつものを…?」

ケリガン「いやな?……じつむかしおれ日本にほんからアメリカにかえってくるとき大吾郎ダイゴロウ先生せんせいおれ一生懸命いっしょうけんめいかたなづく頑張がんばってた御礼おれい意味いみめてこの藍風あいかぜをいただいたんだよ。でも日本にっぽんではいま沢城さわしろ大吾郎ダイゴロウさく』の宝刀ほうとうじつ六作ろくさくじゃなくて七作しちさくあったってことで剣士けんしたちなかだいパニックがきてるらしいんだ」

 竜賀りゅうがまれるようにケリガンのはなしっていた。いま日本にっぽんにいる剣士けんしたちがこのアメリカにまれた伝説でんせつ逸品いっぴん血眼ちまなこさがしているというのだ。

光男みつお「これを……わたし使つかってもいと?」

ケリガン「それもある!…でも本当ほんとうはこれを日本にっぽんにいるおれ友達ともだちわたしてしいんだ」

光男みつお日本人にほんじんの?」

ケリガン「ああ!名前なまえ大嶋おおしまじょうってうんだ。そいつはおれ中華ちゅうか連邦れんぽう拉致らちされているのをたすけてくれた大吾郎ダイゴロウ先生せんせいところでお世話せわになっていたとき親友しんゆうになったんだ」

竜賀りゅうが「その大嶋おおしまさんってMr.ミスターコーエンが何歳なんさいときったんですか?」

 竜賀りゅうがはどうしてもになってついくちをついて質問しつもんしてしまった。

ケリガン「ん?おれが10さいときさ。そのときじょうヤツが12さいだからいまたしか61さいのはずだ」

竜賀りゅうが「それじゃあMr.ミスターコーエンはいま59さいなんですか!?メチャクチャわかそうなのに!!」

 またついおもったことがくちをついててしまった。

ケリガン「ハッハッハッハッハッハ!!そうってもらえて光栄こうえいだね!わかさの秘訣ひけつきんトレだぜ!!筋肉きんにく裏切うらぎらねぇからな!」

光男みつお大分だいぶはなしれましたけど、この藍風あいかぜをその大嶋おおしまじょうさんに友情ゆうじょうあかしとしておさめにってしいってことですね?」

ケリガン「ああ…アイツとはくさえんだからな……はなれててもじょう親友しんゆうだ」

光男みつお連絡れんらくっているんですか?いまでも?」

ケリガン「いや……もう随分ずいぶんまえから連絡れんらくえてねぇんだ。だから藍風コレ師匠ししょうおれにくれた、おれじょう友情ゆうじょうちかいなんだよ。じょう藍風コイツてくれればおもしてくれるはずだ。まだまだ未熟みじゅくだったけどかたなづくりにたましいめていたころちかいを…」

竜賀りゅうが「ケリガンさんってかたなづくりが大好だいすきなんですね」

ケリガン「ああ……師匠ししょうかたなづくりに生命いのちけてるようひとだったからな…この藍風あいかぜだって師匠ししょう自身じしん伽霊能力ギアルスキルつくったんだよ」

光男みつお「え?かたなつのにも伽霊能力ギアルスキル使つかったんですか?」

ケリガン「ああ…それでうならおれもそうさ……このあやつ伽霊能力ギアルスキル金属きんぞくかして、錬成れんせいして、武器ぶききたえる技術ぎじゅつ師匠ししょうからおそわったもんだからな」

光男みつお「そうだったんですね」

竜賀りゅうが「どうしてそんな大切たいせつ宝物たからものをなぜ僕達ぼくたちたくしてくれたんですか?日本人にほんじんだからですか?」

ケリガン「……理由りゆうか……そんなモンとくにねぇよ」

竜賀りゅうが「へ?」

ケリガン「いて無理矢理むりやり理由りゆうくわえるとすれば、光男みつお!アンタが武器ぶきしくてここにたはずなのにじゅうにはもくれずさきかたなをくれとってたからかな?ひところ武器ぶきでもなく、聖剣せいけん藍風あいかぜでもなく、『俺達おれたち剣士けんしだからけんでおねがいします』ってな」

光男みつお「それぐらいの理由りゆうでこんなに大事だいじかたな我々われわれたくしてくれるなんて……」

ケリガン「ま…かんってヤツだな……アンタにならたくしても大丈夫だいじょうぶそうだなと勝手かっておもっただけさ…」

 ケリガンが絹布けんぷけて二人ふたり合図あいずした。

ケリガン「さて!!まえきはここまでだ!まずは藍風コイツもらおうか!」

 バサッ!!

 絹布けんぷいきおいよくはらけたとき刀掛かたなかけのうえには藍色あいいろくろ雲模様くももよう漆塗うるしぬりのさやつかうつくしいぎん装飾そうしょくほどこされた見事みごと太刀たちっていた。

 光男みつお竜賀りゅうがはそのうつくしさにいきんだ。

ケリガン「まだおどろくのははやいぜ?まだ外面そとずらてるだけだ」

 ケリガンはさやつかんでつか光男みつおほうけて、いてみろとうったえた。

光男みつお「それじゃあ…」

 光男みつおおそおそつかにぎかたなくと、かたなあおみがかったくろかがや刀身とうしんのぞかせた。

光男みつお竜賀りゅうが「ふわああああ……」

ケリガン「クククク…」

 感嘆かんたん溜息ためいきらす二人ふたり必死ひっしわらいをこらえながらていた。かたな完全かんぜんさやからくと切先きっさきまでうつくしい直刃すぐは全貌ぜんぼうあらわした。

ケリガン「適能者デュナミストとしての能力チカラ生涯しょうがい日本刀にほんとうづくりにささつづんだ伝説でんせつ刀匠とうしょう沢城さわしろ大吾郎ダイゴロウ傑作けっさく一振ひとふり……」

光男みつお「これが……聖剣せいけん藍風あいかぜ

竜賀りゅうが「………綺麗キレイ

ケリガン「光男みつお……これはいまだけアンタが使つかってもいい…時間じかんかってもいい……でもいつか…」

光男みつお「このかたな大嶋おおしまじょうさんにとどける!……でしょ?」

ケリガン「……ああ!!そうだ!!」

 ケリガンは満足まんぞくそうな笑顔えがおせた。

 そして光男みつおはあることにハッとがついたのか、突然とつぜんドッとたきようあせをかきはじめた。

光男みつお「………ち…ちなみに代金だいきんって……」

ケリガン「なにってんだよ……これはむしろおれからのたのみなんだ!かねなんからねぇよ!久々ひさびさ日本にっぽん剣士けんしれたんだ!これを大事だいじ使つかって、じょうのもとにおくとどけるのが代金だいきんわりだ」

光男みつお「それじゃあ……これはあずからせてもらいます」

 光男みつおかたなさやおさめ、そのかたな刀袋かたなぶくろれた。光男みつお竜賀りゅうがつづ武器ぶきとして真剣しんけんれた。


To Be Continued

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