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トマス・アクィナス、マッキーオン、ジェンドリン

「体験過程と意味の創造」の「第5章: 普遍の原理: 『IOFI』」では、トマス・アクィナスへの言及があります。この言及は、ジェンドリンの哲学上の師であるリチャード・マッキーオンの影響によるものと思われます。

私たちが導き出した結論は、伝統的な哲学的教義の (体験的) バージョンであり、すなわち、意味とは能力の行使である (または能力の行使が含まれる) というものである。さらに、「意味」を定義したり説明したりするための伝統的なやり方のひとつは、能力のそれ自身の振り返り (a reflection of a faculty upon itself) としてである。(また、聖トマスによれば、「それ自身に完全に還帰する知性 (the understanding turning upon itself with a full turn) 」とも表現される。) (Gendlin, 1962/1997, p. 182; 太字は筆者による追加)

したがって、ここでは、それ自身の実例 (それ自身への還帰または振り返り) として考えられた体験過程 (の能力) として、「意味」の再帰的 (reflexive) 定義の体験的バージョンを我々は持つのである。 (Gendlin, 1962/1997, p. 186; 太字は筆者による追加)

「それ自身に完全に還帰する知性」という表現の出典は、トマスの著作『真理論』です。この著作の英訳は、リチャード・マッキーオン編集の『中世の哲学者たちからの抜粋』に収録されています。

…知的実体のように、諸々の存在者の中で最も完全なものは、完全な還帰によって [suam reditione completa] その本質へと還帰する。なぜなら、それらは自分自身の外にある何かを知っているという事実において、自身の外にある特定の方法で進むが、自分が知っていることを知っているので、それから自身へと還帰し始める。なぜなら、認識の作用は、知る者と知られるものの間の中間項だからである。しかし、この還帰は、彼らが自身の本質を知ることで完了する。それゆえ、『原因論』 [Liber de Causis] の命題XVでは、自身の本質を知るものはすべて完全な還帰によって自身の本質へと還帰すると述べられている。 (Aquinas, 1928, p. 219; 太字は原文に追加)

知性は、判断の結果としてこの自己知を持つ。この自己認識によって比較が可能になり、真と偽の区別が可能になる...。…知的実体は、より完全であるがゆえに、完全な還帰によって本質へと還帰する。トマス・アクィナスは、『原因論』からの引用により、あるものが本質を知るとき、そのものは本質へと還帰するという結論を補強した。 (McKeon, 1928c, p. 437; 太字は原文に追加)

マッキーオンは、アリストテレス主義と新プラトン主義がそれぞれトマス・アクィナスの著作にどのように影響を与えたかについて論じました。

その枠組みは一貫して新プラトン主義的であり、哲学の進歩は通常、その枠組みの中でアリストテレスが詳細を埋める程度によって示される。アラブ、ユダヤ、キリスト教の思想は、新プラトン主義の枠組みの中で、アリストテレス主義が何世紀にもわたって統合される中で、さまざまな割合で洗練されていった。アリストテレスの教義は、新プラトン主義の要素と頻繁に矛盾する運命にあったが、時にはそれを修正することもあった。しかし、中世の思想史は、概ねアリストテレスの教義の進歩的な勝利の歴史であったが、新プラトン主義が完全に排除されたのは、中世の終わり近くになってからであった。 (McKeon, 1928a, pp. 131–2; 1928b, p. 24; 太字は原文に追加)

... アリストテレスの著作とされるものの中に、2つの著作があった。『アリストテレスの神学』と『原因論』である。前者は実際にはプロティノスの『エネアデス』 (第4巻から第6巻) からの一連の抜粋であり、後者はプロクロスの『神学綱要』から借用したものである。 (McKeon, 1928a, p. 132; 1928b, pp. 24–5; 太字は原文に追加)

さて、ジェンドリンとマッキーオンが中世哲学の影響を受けているのはなぜでしょうか? この点については、続編の記事「デカルト、スピノザ、マッキーオン、ジェンドリン」をご覧ください。


文献

Aquinas, T. (1928). The disputed questions on truth (question I). In Selections from medieval philosophers; vol. 2 (Roger Bacon to William of Ockham, edited, by R.P. McKeon, pp. 159–234). C. Scribner.

Gendlin, E.T. (1962/1997). Experiencing and the creation of meaning: a philosophical and psychological approach to the subjective(Paper ed.). Northwestern University Press.

McKeon, R.P. (1928a). Spinoza and Medieval philosophy, The Open Court, 42, 129–45.

McKeon, R.P. (1928b). The philosophy of Spinoza: the unity of his thought. Lomgmans, Green.

McKeon, R.P. (1928c). Thomas Aquinas’ doctrine of knowledge and its historical setting, Speculum, 3(4), pp. 425–4.

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