アオサギ
夏の日、夕方。
海を右手に、山を左手にながめられる道を選んでわたしはお散歩するのが好きだ。
その日はいつもよりも少し遠くへ向かって歩いていた。
夕方の涼しい風が海から運ばれてくるのを感じながら歩く。
ピンクと、水色の、夢の中のような色をした空と、それを写した海と、山の緑を交互に見る。
けっこうな距離を歩くから汗だくだ。
淡いピンク色のシャツが、肌に張り付いたりふく風に膨らんだらするのを感じるのが楽しい。
そうして景色や感触を楽しみながら歩いていると、どこからかお祭囃子の音が聞こえてきた。
山側だ。
なんとなしにそう思って、思った瞬間、
海に向けていた視線をぐるっと空を通って山に向けようとした。
そしたら、まさに、いま
山の頂きから大きな大きな白い影が羽ばたき飛び出してきたところだった。
わぁ
アオサギだ。
アオサギの白いお腹。
そのまま大きく羽ばたいて、ピンク色の空と海の方へ飛んでゆく。
あまりの美しさに足を止めて、時を止めて、
飛んでゆくその後ろ姿をじっと見た。
ぼうっとしてしばらく立ったまま。
不思議だな、まるで世界のぜんぶと繋がっているみたい。
1人きりのお散歩に、世界のぜんぶを感じた。
すぐ側を歩いて通り過ぎてゆく2人組に、なんだか優しい親しみを感じる。
あなたたちも、さっきの美しいひと時を見たのかな。
淡いピンクのシャツと、海と、アオサギの白いおなか。
あのあとアオサギはどこへ行ったのかな。
見えなくなるまで見送った気がするけれど、海の向こうの山まで飛んでいったのかな。
偶然の
美しい
夏の日
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