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クリスマスなんて嫌いだった

僕にはながらくクリスマスを家族と祝った記憶がなかった。

僕の実家はケーキ屋さんをやっていた。(今はもうやめてしまったけど)

自慢じゃないけど、近所ではそれなりに評判のいい店だった。

いうまでもないが、クリスマスは掻きいれ時でケーキの予約がいっぱい入る。

クリスマス1週間前ともなると我が家の厨房は戦場と化す。

スポンジを焼きまくり、クリームを塗りたくり、きれいに切ったイチゴなりチョコなりを飾り付けていく様からは想像もつかないほど。

まだ幼い僕はクリスマス商戦を乗り切る戦力には数えられていなかった。

戦力にならない僕ができる唯一のこと。それは「空気」になること。
仕事の邪魔をしないこと。

生まれてから小学校を卒業するまでの間
多分一番親に甘えたい時期に僕はクリスマスを親と一緒にいることが出来なかった。

正確には一緒にいるのだが、
親は1階の店舗で作業していて、
僕は2階の住居スペースで「空気」になった。

たまに外に出て友達の家に遊びに行くのだが年末の忙しい時期なので、友達とも遊べなかったり。

結局かなりの時間を一人で過ごした。

自転車で3キロくらい離れた神社にまでの道を散歩したり。

わりと楽しかったけど、ちょっと寂しかった。

だけど小学校低学年から僕には弟ができた。

それからはあまり寂しくなかった気がする。

子守りという名目ではあったけど、誰かと一緒にいることができたから。

大学に入って実家を出てからも、
なんだかんだと盆と正月には帰省している。

自分でも不思議だがこの時期になるとどうしても家族に会いたくなる。

それは元ケーキ屋さんのノウハウが詰め込まれたケーキと当時から使われている業務用オーブンで焼いたチキンがおいしすぎるだけだからかもしれないが。

#クリスマス #井の中秀政の頭ん中  

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井の中秀政
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