【書評】『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』
杉原里美さん(@asahi_Sugihara )の『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』を読了しました。色々な活動の取材や、人々へのインタビューをとても分かりやすく取りまとめられています。
自分自身、あまり深く知らなかったので、家庭教育支援法については、ホームスクーリング(学校ではなく家庭において学習を進めていくこと)を推進するのは、教育の多様性を確保する点でよいことではないか?と思っていました。しかし、本書で紹介されている、教育基本法の改正の目的等から見えてくるその背景にある「家庭観」(子どもを育てるのは親の責任)を考えると、危うさも見えてきます。このような思想をさらに法により強制することはかなり危ないと言わざるを得ません。
いじめ防止対策推進法やその施策でも、やたら「道徳教育」が重視され、規範意識を涵養することでいじめを防止することが強調されています。特にいじめにより法的な責任を負うことを教育すべき、という点は、根強く主張されている状況です。ただ、現状のいじめの定義の広さからすれば、犯罪でも不法行為でもない行為も「いじめ」に相当含まれますし、そのような「いじめ」も十分対応が必要なことを考えれば、その面だけ強調するのは得策ではないように思います。
個人的には、第五章の「国のための子ども、経済のための子ども」の部分もとても興味深く読みました。やはり、「あるべき教育の姿」を議論されるときに強調される教育は、結局は経済活動において役立つスキルに偏っているように感じます。本当に子どもたちが、その子自身の能力を発揮して生きるために必要なスキルは何なのか、今一度しっかりと考える必要があるかもしれません。
今後も教育制度の改革にあたっては、表面的な制度のみならず、その背景や思想等も見たうえで、制度が目指しているものは何か見ていくようにしたいと思います。