挑戦を促すリーダーシップ:行動と言葉が創る組織文化:いまのたかの組織ラジオ#214
今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。今回は、第214回目「““挑戦したくなる土台”はどうやって作るのか」でした。
今回は、「挑戦したくなる土台」をどのように構築すればよいかについての議論でした。このテーマは、現代の組織が抱える重要な課題に関連しており、特にリーダーが果たすべき役割や、具体的な取り組みが中心に取り上げられています。内容から、考察をしてみたいと思います。
1. 挑戦の重要性とリーダーの役割
組織内で「挑戦」を促進するには、まずリーダー自身が積極的に高い目標を設定し、それに向けて行動を示すことが重要であるとのこと。リーダーが自身の行動を通じて挑戦の重要性を示すことで、部下たちに対して「挑戦することが自然である」という文化を伝えることができます。
また、リーダーは単に挑戦を指示するのではなく、挑戦を行いやすい環境、すなわち「挑戦したくなる土台」を構築する責任があります。リーダーが自ら挑戦する姿勢を見せることで、部下たちのモチベーションが向上し、彼らもまた新しいことに取り組む意欲を持つようになります。
2. 心理的安全性と「安全基地」の重要性
「心理的安全性」の確保が挑戦する風土の基盤となります。「心理的安全性」とは、部下が挑戦やリスクを取る際に、失敗しても責められることなく、安心して行動できる状態を指します。この考え方は、「セキュアベースリーダーシップ」という言葉で表現されています。セキュアベースリーダーシップとは、リーダーが部下に対して心理的な安全基地を提供し、挑戦やリスクを取るためのサポートを行うリーダーシップスタイルのことです。
特に注意すべきなのは、挑戦する環境を壊してしまうような言動、いわゆる「梯子を外す」ような発言や行動です。例えば、部下が新しい挑戦を始めた際に、それを否定するような言葉をかけると、その瞬間に挑戦意欲が損なわれます。このような状況を避けるために、リーダーは挑戦を支援する言葉や態度を意識的に取り入れるべきでしょう。
3. 挑戦を促進するための具体的な取り組み
挑戦を組織の文化として根付かせるには、定例ミーティングやワンオンワンの場で挑戦に関する話題を取り上げることが効果的です。例えば、「今月挑戦したことは何ですか?」や「次に挑戦したいことは何ですか?」といった質問を定期的に行うことで、挑戦を日常的なテーマにすることができます。こうした会話を通じて、挑戦を奨励し、それが組織の文化に浸透するようになります。
また、挑戦を実行した部下には感謝や称賛の言葉を伝えることが重要です。「よく挑戦してくれました」「素晴らしい結果ですね」といった言葉をかけることで、部下のやる気が一層高まり、次の挑戦への意欲が育まれます。
4. 社会的重要感の向上
挑戦を行わない人に共通する特徴として、自分が組織にとって必要とされていないと感じていることが挙げられました。この「社会的重要感」を高めることが、挑戦意欲を引き出す鍵となります。社会的重要感とは、自分が組織の中で重要な役割を果たしていると実感できる状態を指します。これを向上させるためには、リーダーが部下の意見や提案を積極的に受け入れ、彼らの貢献を認める必要があります。
例えば、日々の業務で目立ちにくい業務を担当する社員に対しても、その役割がいかに重要であるかを伝えることで、社会的重要感を高めることができます。こうした取り組みが、挑戦意欲の向上につながります。
以前、私が「ポテンヒットを防ぐ」話をしました。すなわち、「責任の所在が不明確で放置されがちな仕事」についてきちんと評価をしていくことが大切です。こうすることも、挑戦意欲をかき立てることの1つとなるのでしょう。
5. 実践例と学び
話の中では、実際の組織で取り組まれている例がいくつか紹介されました。例えば、小さな挑戦を認め、それに対して感謝の言葉を伝えるリーダーの姿勢が挙げられました。このような行動により、部下が安心して挑戦できる環境が形成されます。また、挑戦を続けるリーダー自身の姿勢が若手社員に大きな影響を与え、憧れや刺激となることも言及されました。挑戦したくなる土台を構築するには、リーダーが自らの行動を見直し、部下に対する接し方や言葉遣いを意識することが重要であるとされました。
今回は、挑戦を促進する組織文化の構築について、リーダーの具体的な行動や注意点を詳細に議論されています。挑戦の風土を醸成することで、組織全体の成長と活性化が期待できることが示されているものです。
人事の視点から考えること
「挑戦したくなる土台」を組織内でどのように構築すればよいかを深く考察してみます。挑戦を促す環境や文化を整えるために、リーダーシップ育成、評価制度の見直し、心理的安全性の確保、そして個々の社員が組織の中で「必要とされている」と実感できる仕組み作りが重要であることが分かります。以下、いくつかの観点から取り組むべき具体的な施策や方針について考察してみます。
1. リーダーシップ育成の再定義と強化
「挑戦を促す風土」を育む上では、リーダーの役割は非常に大きいものです。特に、組織のリーダーが自ら挑戦し続ける姿を見せることは、部下に大きな影響を与えます。挑戦するリーダーが組織にいると、部下たちは「挑戦しても良い」というメッセージを受け取りやすくなり、その結果、挑戦が自然と促進される文化が生まれます。
具体的施策
リーダー向け研修の実施
リーダー自身が挑戦を恐れず、その姿勢を部下に示すために必要なスキルを学ぶ研修を行います。例えば、「心理的安全性を高めるコミュニケーション技術」や「挑戦を促すフィードバックの手法」といったテーマのトレーニングを提供することで、リーダーの挑戦を支援する能力を高めます。
模範となるリーダーの可視化
社内で挑戦を続けるリーダーの成功事例やエピソードを共有し、他の管理職にとってのロールモデルを明確にします。これにより、他のリーダーたちも「挑戦するリーダーシップ」の意識を持ちやすくなります。
2. 挑戦を奨励する評価制度の再構築
人事制度や評価基準を「挑戦」を促す方向へ調整することは、挑戦を組織文化に根付かせるうえで重要な施策です。単に挑戦を推奨するだけではなく、それを実行した社員が公正に評価される仕組みを構築する必要があります。
具体的施策
挑戦を評価基準に追加
業績評価において、「新しい提案の実施」や「挑戦したプロジェクトの数」などを評価指標に組み込むことで、社員が挑戦すること自体を正当に評価できるようにします。
失敗を許容する制度の整備
失敗を恐れず挑戦できるよう、失敗そのものではなく挑戦の過程や努力を評価する仕組みを取り入れます。例えば、失敗事例を共有する社内イベントを開催し、挑戦の重要性を再確認する場を設けることで、挑戦する社員をサポートします。
3. 心理的安全性の確保と挑戦支援
部下が安心して挑戦できる環境を作るために、心理的安全性を組織全体で高める取り組みが必要です。特に、「挑戦してもリスクがない」「失敗しても責められない」と感じられる環境を整えることは、挑戦意欲を引き出す上で欠かせません。
具体的施策
定期的な1on1面談の実施
リーダーが部下と定期的に1on1面談を行い、「今月挑戦したいこと」「うまくいったこと」「改善したい点」について話し合う場を作ります。これにより、部下は自分の挑戦を振り返りつつ、次の挑戦を計画する習慣を身に付けることができます。
失敗を許容する文化の醸成
挑戦が成功しなかった場合でも、そのプロセスを認め、前向きなフィードバックを行うことで、社員が安心して再挑戦できる環境を作ります。
4. 社会的重要感を高めるための取り組み
挑戦を行う意欲のない社員の多くは、自分が組織の中で必要とされていないと感じているケースが多いことが指摘されています。この「社会的重要感」を高めることで、社員が挑戦しやすい環境を作ることができます。社会的重要感とは、自分が組織の中で必要とされている、価値のある存在だと実感できる状態を指します。
具体的施策
全社員の貢献を見える化する仕組み
たとえば、定例会議や社内報を通じて、各社員の貢献を具体的に取り上げることで、社員一人ひとりの存在意義を再確認する場を作ります。
感謝の文化の醸成
上司や同僚が互いに感謝の言葉を送り合う文化を醸成します。具体的には、社内で「ありがとうカード」や「感謝を伝える月間」などのキャンペーンを行うことで、社員間のつながりと挑戦意欲を高めます。
5. 新たな挑戦を支援するキャリア開発の充実
社員が挑戦を続けるためには、新しいスキルや知識を学べる環境が必要です。挑戦の基盤となるスキル開発を人事が支援することで、社員の挑戦意欲をさらに引き出すことができます。
具体的施策
トレーニングプログラムの提供
新しい分野への挑戦を希望する社員のために、学びの機会を提供します。たとえば、異部門での業務体験プログラムやスキルアップ研修などを設けます。
キャリアパスの柔軟性
社員が自分の目標に応じたキャリアプランを選択できるよう、柔軟な人事制度を導入します。これにより、社員が自発的に挑戦しやすい環境が整います。
6. 人事部門の挑戦とモデル化
最後に、人事担当者自身も組織内での挑戦を実践し、それを社内でモデルとして示すことが求められます。例えば、新しい人事制度の提案や、挑戦する文化を醸成するプロジェクトをリードすることで、社員に「挑戦することの意義」を示します。
まとめ
挑戦する風土や文化を醸成するためには、リーダーシップ育成、評価制度の見直し、心理的安全性の確保、社会的重要感の向上、キャリア開発の支援といった多方面での取り組みが必要です。これらの施策を実行することで、社員一人ひとりが挑戦を恐れず、組織の成長に貢献できる環境を作ることが可能となります。また、人事部門自身も率先して挑戦の姿勢を示すことで、組織全体に挑戦する文化が浸透し、活性化した企業風土を実現できるでしょう。
リーダーがチームメンバーの挑戦を支える姿が象徴的に描かれています。リーダーが梯子をしっかりと支え、安心して登れる環境を提供している様子は、心理的安全性と支援を象徴しています。明るいオフィス空間や成長を象徴する要素が全体の雰囲気を盛り上げ、挑戦と進歩の希望に満ちたメッセージを伝えています。