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【書籍】「この世のすべては借り物」-古田貴之氏の哲学を人事に活かす

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp338「10月25日:この世のすべては借り物(古田貴之 千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長)」を取り上げたいと思います。

 古田氏は、千葉工業大学未来ロボット技術研究センターの所長として、彼の専門分野であるロボット技術を用いて、社会や未来をより良いものに変えることに情熱を傾けています。彼の哲学「この世のすべては借り物」は、彼の生き方や仕事へのアプローチに深く根ざしており、物質的な富や表面的な名声を追求することを避け、真の価値を創造し、それを世界に残すことに専念しています。彼の考え方は、短い人生の中で何を成し遂げ、どのように社会に貢献するかに焦点を当てています。

 古田氏の生活哲学は、個人的な野望や目標を超えて、技術を社会のためにどのように活用するかについての深い洞察を提供しています。彼は利益追求よりも、ロボット技術を通じて社会的な問題を解決し、未来の世代に持続可能な発展をもたらすことを重視しています。古田氏にとって、自分自身の専門知識と技術を用いて、より良い世界を形成することは、個人的な成功を超えた喜びをもたらします。

 この哲学は、彼の人間関係やビジネスの取り組みにおいても顕著です。金銭的な依存を避け、企業との対等な関係を築くことを重視しているため、彼は金銭を受け取ることなく、大企業の社長とも対等に交渉できると自負しています。このアプローチにより、彼は自由にイノベーションを追求し、企業間の力学に縛られることなく、真のパートナーシップを築くことが可能です。彼は「僕はあなたのパートナーです。お金は要りませんから、一緒に世の中を変えてくれますか」という姿勢で、多くのビジネスリーダーと接しています。

 さらに、古田氏は人間の生と死に対する考え方についても独特の視点を持っています。彼は、人間がいずれ死を迎えることを前提に、一日一日を大切に生きるべきだと説いています。悠久の宇宙の歴史の中で、人間の寿命はほんのわずかな誤差に過ぎないため、その限られた時間の中で何を達成し、どのような遺産を残すかが重要であると強調しています。

皆、人間は必ず死ぬということに気づかないんですよ。悠久な宇宙の歴史の中で百二十年生きようが、一日生きようが、それは誤差です。重要なのは何をして、何を残すかなんです。「明日これをやろう」と思っている人には明日は来ない。人に褒められたい、嫌われたくないと考えるよりも、本当の自分の心の声を聞いて、この世にどれだけのものを残せるかに時間を使うべきだと思います。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p338より引用

 古田氏はまた、睡眠時間を削減し、その時間を有意義な作業に使うことで、常人とは異なる成果を上げることが可能だと信じています。彼は一日に二時間以下の睡眠で活動を続け、この極限の生活スタイルを通じて、自らの限界を押し広げ、新たな可能性を追求しています。彼にとって、睡眠時間が長くなければならないというのは都市伝説に過ぎず、人間のボディは皆同じ能力を持っているため、それをどう活用するかが成果を左右すると考えています。

 最後に、古田氏は物質的な所有物について考える際、「この世のすべては借り物」という観点から、自分が本当に持っているものとは何かを問います。その答えは、自分の仕事や生み出した影響だけであり、それが彼の最も大切な財産です。彼は自分の知識と技能を社会に還元し、それを通じて世界を良くすることに全力を尽くしています。これが彼の生きがいであり、彼の遺すべき遺産であると確信しています。

自分のものって何だろうと考えると、唯一残るのは自分の仕事。それだけです。だとしたら、この生きている間の借り物をボロボロににして返してやろうと。能力も時間もボロボロに磨り減るまで使い切ってやろうと。磨り減るまで使い切ってやろうと。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p338より引用

人事の視点から考えること


 「この世のすべては借り物」という洞察は、私たちの生き方や仕事に対する姿勢に深く影響を及ぼします。この考えを人事管理の観点から掘り下げてみると、組織内の個々の人材に対するアプローチや、組織全体の戦略を根本から見直す機会を提供することになります。組織の中で働く人々一人一人が、与えられた時間とリソースを如何に価値あるものに変えていくか、そのプロセスをどう支援するかが、人事の大きな役割となります。

人材と時間の価値

 人材は組織の最も重要な資源とされています。各従業員が持っている時間は有限であり、それをいかに有効に活用するかは人事の主要な課題です。この考え方を人事戦略に組み込むことで、従業員の潜在能力を引き出し、個々のキャリア成長を支援することが重要になります。また、この「借り物」という観点は、限られた時間の中で最大限の成果を達成するために、どのような人材開発プログラムやワークスタイルの最適化が有効かを考える良い契機となります。

労働の倫理と組織の文化

 現代の労働倫理においては、持続可能な労働慣行と従業員のウェルビーイングが重要視されています。この観点から「この世のすべては借り物」という理念を取り入れることで、従業員が自分自身を犠牲にすることなく仕事に取り組む文化へとシフトさせることが可能です。これには、労働時間の適切な管理、精神的及び肉体的健康を支援するプログラムの充実、そしてバランスの取れた生活をサポートする福利厚生の提供が含まれます。人事がこうした環境を整えることにより、従業員は自分自身と仕事の両方に対して最高のパフォーマンスを発揮することができるようになります。

タレントマネジメントとキャリアの持続可能性

 組織は従業員が持続可能なキャリアを築けるよう支援する責任があります。これには、適切な研修プログラムの提供、昇進と配置の透明なプロセスの設計、そして個々の従業員のキャリア目標に対する明確な支援が含まれます。人事部門はこれらのプロセスを計画し、実行することで、従業員それぞれの「借りている時間」を最大限に活用し、組織全体の目標達成に貢献する人材を育成します。このアプローチは、従業員が自身のキャリアパスを自律的に管理し、長期にわたって組織に貢献する基盤を作るのに役立ちます。

組織変革とイノベーション

 組織は常に変化し続ける必要があります。人事部門はこの変化をリードする重要な役割を担っており、革新的なアイデアや戦略を組織に取り入れることが求められています。これには、従業員のスキルセットの進化に合わせた研修の提供、労働環境の改善、さらには組織文化の変革が含まれます。「この世のすべては借り物」という理念を基に、人事は既存の枠を超えて常に改善と進化を追求する文化を築くことができます。

 これらの取り組みを通じて、人事は「この世のすべては借り物」という哲学に基づき、組繗と従業員双方の利益を最大化し、持続可能な発展を促すことができます。組織としても、従業員一人ひとりが借りた「時間」という資源を有効に活用し、生産的かつ意義のある方法で貢献してもらうことが重要です。

周囲にはロボットアームや先進的な技術が配置されています。この設定は、「この世のすべては借り物」という哲学に則り、社会のためにロボティクスを活用するという献身を表現しています。全体には革新と深い専門への情熱が漂っています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。

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