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【書籍】戦う勇気ー佐藤愛子とバイロンの遺言

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp297「9月16日:人は負けるとわかっていても(佐藤愛子 作家)を取り上げたいと思います。

 佐藤愛子氏の父親は佐藤紅緑という人物です。彼女の作品『花はくれない』では、自身の父親に焦点を当て、その人物像を深く掘り下げています。この作品の副題として用いられたジョージ・ゴードン・バイロンの言葉、「人は負けるとわかっていても、戦わねばならないときがある」は、佐藤氏自身の人生観を象徴しているともいえます。

 佐藤氏がこの言葉を副題に選んだのは、彼女が直面した人生の大きな試練、特に昭和42年に経験した倒産という重大な出来事に直面した際の心境を反映しています。彼女の家族は、二億円という莫大な借金を背負い込むことになり、夫は行方不明となり、借金取りは彼女に対して厳しい言葉を浴びせました。このような絶望的な状況の中で、彼女はバイロンの言葉を思い出し、困難に立ち向かう決意を固めました。

 佐藤氏の人生におけるもう一つの重要なアドバイスは、整体の先生からのものでした。先生は彼女の体を診た後、「苦しいことがあった時に逃げようとすると、かえって苦しくなる。その苦しさの中にもう座り込んで、受け入れた方が楽」とアドバイスしました。この言葉は、佐藤氏が借金問題に立ち向かう上で大きな助けとなりました。彼女はこのアドバイスを深く心に刻み、自身の苦境を乗り越えるための力としたのです。

「実はうちは倒産していま借金取りでこうでこうで」と言ったら、「佐藤さんね、苦しいことがあった時に逃げようとするとね、かえって苦しくなりますよ。その苦しさの中にもう座り込んでね、受け入れたほうが楽という場合もあるんですよ」って言われたんですよ。それで、私はその整体の先生を尊敬してましたので、父の日記に書かれていたバイロンの言葉と先生の言葉とで借金を引き受けたんです。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p297より引用

 バイロンの言葉と整体の先生のアドバイスは、佐藤氏にとって困難な時期を乗り越えるための重要な精神的支柱となりました。彼女はこれらの言葉を胸に、二億円という莫大な借金を一人で背負い、逃げ出すことなくその重圧と向き合いました。彼女のこの決意は、多くの人々に勇気と希望を与えるものであり、佐藤氏の作品や人生を通じて、困難に直面した際には前に進む強さと、逆境を乗り越える勇気がいかに重要かを教えてくれます。

 佐藤氏の人生と作品には、逆境に負けず、困難に立ち向かう強さが込められており、彼女の経験は多くの人々にとって大きな教訓となります。彼女が直面した試練から学んだ教訓は、どんなに厳しい状況にあっても、決して諦めずに前向きに進むことの大切さを私たちに教えてくれるのです。

人事としてどう考えること、応用

 佐藤氏が話題にしたバイロンの言葉、「人は負けるとわかっていても、戦わねばならないときがある」というフレーズは、人事の立場から考えても非常に重要な示唆を与えています。この言葉には、個人の挑戦や逆境に立ち向かう勇気だけでなく、組織やチームを率いる上でのリーダーシップやマインドセットにも通じるものがあります。

 まず、私自身が人事として長年にわたり様々な業務を経験してきた中で、組織内での挑戦や変革の推進、時には厳しい決断を下すことの重要性を理解しています。組織は常に変化し続ける環境にあり、市場の変動、技術革新、競争の激化など外部からの圧力にさらされています。こうした状況下で、組織や個人が直面する課題には、必ずしも容易に勝利できる保証はありません。しかし、バイロンの言葉にあるように、「戦わねばならないときがある」のです。この「戦い」は、単に外部の競争に限らず、組織内部での文化変革や新しいビジネスモデルへの移行、人材の育成や動機づけなど、多岐にわたります。

 特に人事として重要なのは、こうした「戦い」の中で組織のメンバーがその挑戦に対して前向きに取り組むためのサポートをすることです。具体的には、適切な人材の採用と配置、効果的な研修プログラムの提供、公正な評価とフィードバックのシステムの構築、そして何よりも従業員が自らの能力を最大限に発揮できる環境の整備が挙げられます。また、従業員一人ひとりが自身のキャリアと組織内での役割において価値を見出し、充実感を感じられるような福利厚生の設計やキャリアパスの提案も重要です。

 佐藤氏自身の経験からもわかるように、人生においては予期せぬ困難に直面することもあります。組織や個人が目の前の困難に打ち勝つためには、時には直観や信念に従って前に進む勇気が必要です。人事としては、こうした個々人の「戦い」を理解し、支えることが求められます。従業員が自らの潜在能力を信じ、困難に立ち向かう姿勢を持てるよう、心理的安全性の高い職場環境の構築や、個々の成長と組織の目標を結びつけるための施策が重要になります。

 また、佐藤氏が経験されたように、困難な時期には組織内でのコミュニケーションが特に重要になります。不安やストレスが高まる中で、組織のリーダーや人事が明確で、理解しやすいコミュニケーションを行うことで、従業員の不安を軽減し、組織全体の士気を高めることができます。この過程で、佐藤氏が尊敬した整体の先生のように、従業員の苦しみや困難を受け止め、支援する姿勢を示すことが、組織の信頼と結束力を高めることにつながります。

 最後に、佐藤氏さんの経験は、組織や個人が直面する困難を乗り越える過程で得られる学びや成長の価値を教えてくれます。人事として、従業員がこのような経験を通じてより強く、柔軟で、自信を持てるよう支援することが、組織の持続的な成長と発展に不可欠です。結局のところ、人事の役割は、単に業務の効率化や管理に留まらず、組織とそのメンバーが直面する「戦い」を共にし、共に成長することにあるのです。

逆境を乗り越える旅を象徴的に捉えた、静かで柔らかな風景を描いています。挑戦に立ち向かう勇気と強さに触発されたもので、暗く困難な森を抜ける曲がりくねった道が、明るく希望に満ちた開けた場所へと続いています。この道は、試練と困難を通じての厳しい旅を象徴しており、ジョージ・ゴードン・バイロンの言葉「逆境の道は真実への道」から着想を得ています。場面は、森の暗さと開けた場所の明るさの対比を強調する柔らかく落ち着いた色彩で描かれ、希望、回復力、そして最終的な逆境の克服を象徴しています。この画像は、厳しいオッズに直面しても前進し続ける本質を捉え、深い内省と人生の戦いに臨む勇気を反映しています。このビジュアル・ナラティブは、視聴者に対して、たとえ巨大な挑戦に直面しても、常に前進する道があるというメッセージを伝えることを目指しています。


1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。


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